検索
AND検索
OR検索
トップ
|
リロード
|
新規
|
一覧
|
単語検索
|
最終更新
|
ヘルプ
Top
/ a001_119
a001_119 の編集
Last update on |
編集
|
複製
|
名前変更
|
差分
|
バックアップ
|
添付
メニュー
TopPage
登場人物
ラジオ
ゲーム版AA
アニメ版AA
SS保管庫
メディアミックス早見表
テンプレ
過去ログ
避難所
Menuの編集
真剣で私に恋しなさい!!
FAQ
発売日カウントダウン
起動ボイス
真剣で私に恋しなさい!S
FAQ
発売日カウントダウン S版
起動ボイス
バレンタインボイス S版
バースディボイス S版
真剣で私に恋しなさい!A
FAQ
発売日カウントダウン A版
起動ボイス
真剣で私に恋しなさい!R
FAQ
発売日カウントダウン R版
アニメ版
FAQ
放送情報
各話情報
今週の金曜集会
PV
用語集
あ
か
さ
た
な
は
ま
や
ら
わ
関連商品
ゲーム
BD/DVD
CD
ファンブック
コミック
アンソロ
小説
トレーディングカード
フィギュア
痛車グッズ
衣服
その他
最新の10件
2024-02-29
登場人物
2021-02-12
TopPage
過去ログ
テンプレ
2017-01-17
発売日カウントダウン A版
2016-10-14
RecentDeleted
2016-05-16
か行
2016-04-27
FAQ A版
2016-04-01
ゲーム
2015-05-21
FAQ S版
-- 雛形とするページ --
BD
BD/DVD
BracketName
CD
FAQ
FAQ A版
FAQ R版
FAQ S版
FAQ アニメ版
FormattingRules
FrontPage
Help
InterWiki
InterWikiName
InterWikiSandBox
MenuBar
PHP
PV
PukiWiki
PukiWiki/1.4
PukiWiki/1.4/Manual
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/A-D
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/E-G
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/H-K
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/L-N
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/O-R
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/S-U
PukiWiki/1.4/Manual/Plugin/V-Z
SS
STORY
SandBox
TopPage
VOICE
VOICE A版
VOICE S版
WikiEngines
WikiName
WikiWikiWeb
YukiWiki
a001_003
a001_014
a001_029
a001_044
a001_057
a001_069
a001_075
a001_084
a001_094
a001_119
a001_137
a001_150
a001_157
a001_174
a001_189
a001_201
a001_216
a001_235
a001_256
a001_260
a001_275
a001_292
a001_314
a001_331
a001_340
a001_367
a001_389
a001_397
a001_417
a001_441
a001_455
a001_475
a001_495
a001_505
a001_519
a001_534
a001_569
a001_589
a001_606
a001_619
a001_633
a001_649
a001_658
a001_677
a001_691
a001_704
a001_712
a001_751
a002_013
a002_030
a002_106
a002_123
a002_135
a002_148
a002_181
a002_198
a002_226
a002_235
a002_242
a002_256
a002_276
a002_293
a002_312
a002_323
a002_354
a002_359
a002_369
a002_381
a002_393
a002_403
a002_427
a002_440
a002_454
a002_462
a002_471
a002_480
a002_490
a002_499
a002_521
a002_531
a002_551
a002_563
a002_573
a002_598
a002_613
a002_629
a002_642
a002_652
a002_665
m
あ行
か行
さ行
その他
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行
わ行
アニメ版AA
アンソロ
ゲーム
ゲーム版AA
コミック
テンプレ
トレーディングカード
バレンタインボイス S版
バースディボイス S版
ファンブック
フィギュア
メディアミックス早見表
ラジオ
今週の金曜集会
小説
放送情報
痛車グッズ
発売前情報
発売日カウントダウン
発売日カウントダウン A版
発売日カウントダウン R版
発売日カウントダウン S版
登場人物
衣服
過去ログ
***この指、とまれ #pre{{ 119 名前:この指、とまれ・1[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:34:53 ID:ep7akMpb0 「いやあ、今日もモモ先輩、無敵だったよなー」 秘密基地で、今朝挑戦してきた武道家をあっさり返り討ちにした姉さんの話題。 「……思うのだが、モモ先輩ほどになると、もう怖いものとかはなくなるのだろうか? ……ちなみに、私は虫がちょっと苦手なんだが」 「私はこの先、友達が全然出来なかったらと思うと怖くて怖くて……」 「アタシはゴハンが食べられなくなるのが怖いワ……」 「大和がいなくなるのが一番怖い……」 皆がそれぞれに弱点を口にする中で、姉さんは悠然としていた。 「んー、まあ、私は怖いものはないなー」 「……あるでしょ、姉さん。一つだけ怖いものが」 「あー、あれは……怖いというより、苦手なだけだ」 「っていうか、大和……今日じゃね?3月14日だから」 「ああ、そういやそうだな……クリスたちに話してもいい、姉さん?」 「今さらだが……まあ、好きにするがいいさ」 それは、彼らからすれば昔の話 川神百代が風間ファミリーに入ったあと そして椎名京がファミリーに入るよりちょっと前 それぐらいの、過去の話だった。 }} #pre{{ 120 名前:この指、とまれ・2[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:38:57 ID:ep7akMpb0 「あれ?……おい、あそこで誰かこっち見てるぞ」 いつもように縄張りの原っぱで遊んでいるうちに 木の陰からこちらをうかがう、同い年ぐらいの女の子に気がついた。 「……見たことないやつだな」 「隣の学校のヤツかな……どうしたの、姉さん?」 「いや、おかしいだろ……あんな所に近寄られるまで 私が気づかなかったんだだぞ?」 「そういえばそうだね」 いつもは、この原っぱに近づく者がいれば 気づいて教えてくれるのだ。 「声かけてみるか」 「もうそろそろ夕方だよ?」 「いいじゃねえか、まだちょっとは遊べる」 「皆OK?じゃあ、リーダーの俺が行ってくる!」 「うん、お願い」 人見知りしないし、人にも警戒されにくいのか こういう役にはうってつけだった。 走っていく姿を見て、女の子はさらに陰に隠れてしまったが かといって、逃げ出す様子もなかった。 }} #pre{{ 121 名前:この指、とまれ・3[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:43:00 ID:ep7akMpb0 やがて、女の子を連れて戻ってきた。 連れてきた女の子は、痩せていて、着ている服もみすぼらしかったが 嬉しそうな笑顔はまぶしいほどに輝いていた。 「ホントに……ホントに遊んでくれるの?」 「ああ、特別にお客さんとして歓迎するぜ」 「この辺じゃ見ないけど、どこから来たの?」 「えっと……あっち」 女の子が指差したのは川の向こう。 「なんだ、東京側からかよ。そりゃ見たことねえはずだぜ。 俺らだいたい4年生だけど、何年?」 「あ、同じ!アタシも4年生なの」 「よーし、じゃあ改めて、よろしくな!えーと……オレ、風間翔一! キャップって呼んでくれ!」 皆が自己紹介を始め、最後に残った女の子を見つめる。 「えっと……わたし、ラン!」 「よーし、それじゃ……缶蹴ーりすーるもーのこーのゆーびとーまれっ!」 「やるやるー!」「は、宇宙まで缶を蹴り飛ばしてやる!」「いや、それだと続かないから」 差し上げた指先に、わっ、と皆が殺到する。 少女もその真っ只中で、抱きつくように飛びついていた。 }} #pre{{ 122 名前:この指、とまれ・4[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:47:01 ID:ep7akMpb0 やがて、あっという間に日が暮れる。 「ハラも減ったし、そろそろ帰るかー」 「え……もう、帰っちゃうの?」 「そうだな……よお、橋の向こうまで送ってやるよ」 「やだ……もっと遊びたい……」 寂しそうにうつむく少女。慰めるように皆が近づきかける。 「おいおい、オマエが一番家が通そうなんだから……!?」 少女の雰囲気が一変した。 うつむいたまま、すっ、と手を掲げ 「……缶蹴ーりすーるもーのこーのゆーびとーまれ……」 「お、な、何だ!?足が……あれ、ちょ、どうなってんだ!?」 皆がフラフラと少女の方に集まっていく。 「……ぐ……なんだ、この力……!」 百代だけは、並外れた力と精神力で踏みとどまっていた。 「百代さんは、遊ばないの? ……一緒に、遊んでくれるって言ったのに……!!」 「ふざけるな!……気配とか、おかしいと思ったんだ…… オマエ、人間じゃないな!」 }} #pre{{ 123 名前:この指、とまれ・5[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:51:05 ID:ep7akMpb0 百代がそう言った、その瞬間。 「う……うわあああぁぁぁっ!?」 少女が、影のように真っ黒な姿になった。 真っ黒な、人型の影。 だが、それはよく見れば影などではなく 炭のように真っ黒に焦げた人間の姿だった。 その焦げた人型が、もう一度言葉を発する。 「……缶蹴ーりすーるもーのこーのゆーびとーまれ……」 差し上げた指に、皆が吸い寄せられるように集まっていく。 心まで縛られてしまったのか、もはや目もうつろだ。 「ダメだ……!その指に触るな!!」 ただ一人踏みとどまった百代だが、踏みとどまるのが精一杯で 身動き一つできず、ただ必死に叫ぶ。 だが、その叫びも空しく 皆が手を伸ばし、指を掴もうとしたとき チリン 鈴の音がした。 皆の動きが止まる。 少女も百代も、鈴の音のしたほうを見る。 赤い夕焼けを背にして 一つの小さな影が立っていた。 }} #pre{{ 124 名前:この指、とまれ・6[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:55:37 ID:ep7akMpb0 「……無理やり一緒に遊ばせても、それで友達とは言えまいよ」 チリン 鈴の音をさせながら、人影が近づいてくる。 いわゆる巫女の衣装。銀色の短い髪。 身の丈は百代たちとそう変わらないが、子供ではないようだ。 手にした扇子につけられた鈴が、歩くたびにチリン、と鳴った。 「だって……!ずっと一人だったんだもん!寂しかったんだもん! もっと遊んだっていいはずだわ!もっと一緒にいてくれていいはずだわ!」 「寂しいのなら、家に帰ればよかろう」 「……わかんないの……おウチが……皆がどこだか、わかんない……」 「家は、川の向こうであろう?ほれ、見てみるがよい」 チリン、と音をたてて扇子が指した向こう岸に、3つの人影があった。 「……ああ!ああ!父ちゃん!母ちゃん!兄ちゃんも!」 もう薄暗くて見えるはずもないのに 「手を振っておるぞ。早く帰っておいで、とな」 確かに、手を振っているのがわかる。 「でも……でも!どうやって帰ったらいいのか、わかんない! 何時の間にかここにいたから、帰り道がわかんない!」 「なに……橋を渡っていけばいい」 }} #pre{{ 125 名前:この指、とまれ・7[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:59:41 ID:ep7akMpb0 ここに橋なんてない。 その場の皆がそう思ったとき 巫女がゆっくりと動き出す。 百代には、すぐにそれが「舞い」だとわかった。 そしてそのすぐそばに、淡い光が集まり始める。 「我が送ってやろう……向こうへ、な」 集まった光が、舞いに合わせるように、向こう岸へと、長く長く伸びていく。 それは光のかけ橋だった。 「う……わあ……」「キレイ……」 皆が思わず見とれていた。 「これで……向こうに……」 「ああ、これこれ…… こんなに真っ黒では、父親も母親も、お前と見分けがつくまいぞ、ほれ」 舞い踊りながら、巫女が少女に近づいて 扇子の先で、つい、となでる。 チリン 鈴の音とともに、元の少女の姿になっていた。 「これでよし。女の子は、キレイにしておらねばな。 さあ、行くがよい」 「……うん!」 }} #pre{{ 126 名前:この指、とまれ・8[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:03:44 ID:jVSr/ULC0 勢いこんだ少女が、橋を渡りはじめるそのとき 巫女がその背中に声をかける。 「友達に、『さようなら』は言わなくてもよいのか?」 「あ……」 その場でクルリと振りかえる。 もう金縛りがとけた皆が、光の橋のたもとに揃っていた。 「あの……ヒドイことして、ごめんなさい」 「いいさ。寂しかったんだろ」 「あの……アタシ、向こうに行くから……もう会えないかもしれないけど……」 「……会えなくなっても、友達だろ」 「!うんっ!じゃあ、さよならっ!」 「おう、じゃあな!」「た……楽しかったぞ!」「じゃーねー!元気でねー!」 少女が橋の上を走りだす。 見る間に小さくなっていくその姿が いつしか小さな光の点になって やがて向こう岸についたころ ふっとかき消すように見えなくなった。 巫女の動きが止まった。 向こう岸を見つめながら、ぽつりとつぶやく。 「……昔、大きな戦争があったときのことであろうな」 }} #pre{{ 127 名前:この指、とまれ・9[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:07:49 ID:jVSr/ULC0 その言葉に、大和は気づく。 「そうか……!今日は、3月10日……だから、あんな黒焦げで……」 「ほう、知っておったか。よく勉強しているのだな」 「え……今日が3月10日だから、何なの?」 「……今日は、東京大空襲のあった日なんだよ」 「あ……」「アタシ、ばあちゃんに聞いたことある……」 「うむ。もう60年ほど前のことだ。 この街には爆弾は落ちなかったが、川の向こう、東京は火の海だったという。 炎に巻かれ、失われた命は数知れず、その亡骸は川から海にあふれたそうな。 波に運ばれ、上げ潮に乗って、このあたりにも亡骸が流れついたときく」 「じゃあ……アイツ……」 「誰知れずここに流れつき、そのまま埋もれてしまった亡骸の一つだったのやもしれぬな」 「かわいそう……」「もっと……遊んでやればよかったかな」 「なあ巫女さん……俺たち、アイツに何かしてやれないかな」 「あの子と遊んでやったのであろう?それで充分。 我が家族の元へ送ったのであるから、もうお前たちが心配することはない。 それより、もう日も暮れた。お前たちも、家に帰るがよかろう」 と、土手の斜面を人影が降りてくる。髪の長い、すらりとした大人の女性だった。 「終わりましたか、姉さん」 }} #pre{{ 128 名前:この指、とまれ・10[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:11:51 ID:jVSr/ULC0 降りてきた女性に巫女が答える。 「うむ、待たせたな、かなめ……何とか……間に合ったよう、だ……」 答えながら、突然、巫女の体がグラリと揺らいだ。 「姉さん!?」 あっという間にかけ寄って、その肩を支えた百代が驚く。 先ほど舞いを舞っていたときには あふれるほどに気力に満ちていたのに 今は気を失いかけないほどに消耗していた。 「はは……少し、張りきりすぎたようであるな…… よ、と……もう、大丈夫であるぞ。 なに、こんなのは、いつものことよ……だから、気に病むことはないぞ。 さあ、我らも帰ろうか、かなめ」 「本当に、大丈夫なんですか……?どこかで休んでいかれては」 「なに、家に帰って、皆の顔を見るのが何よりの薬というものよ。 ……そうそう、何かできることはないか、と言ったな?」 「え?……うん……何かできるなら、してやりたい」 「ではな、『命を大切にする』、これを心がけるとよいぞ」 「それは大事なことだとは思うけど……なんで?」 「それは、いつかわかる……いつか、それが花開き、実を結ぶ…… そしてそれが、あの娘への供養となるであろう……」 }} #pre{{ 129 名前:この指、とまれ・11[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:15:02 ID:jVSr/ULC0 「……というお話だったのさ」 秘密基地での話が終わると、皆がため息をついた。 体験していたメンバーは思いだしながら。 初めて聞いたメンバーは驚きながら。 「はぁ~……何か、悲しいお話ですね……」 「……というわけで、別に幽霊が怖いわけじゃないが 何もできなかったのが悔しくてな。まあ、苦手ってヤツだ」 「ところで、自分は一つ気になったのだが」 「ん?何がだ、クリス?」 「女の子の名前は、『ラン』と言ったな?」 「ああ、そう言ってた」 「それで……その後、キャップたちはリュウゼツ『ラン』を見つけたわけか?」 「ん……確かに、そうだが……それは偶然の一致とかじゃないか?」 「あの……リュウゼツランが花開くのは、何十年もたってから、なんですよね? 逆に言えば、キャップさんたちが守ったリュウゼツランは ちょうど戦争のころに生まれたという可能性が……」 「けど、子供を植えかえるんで掘り起こしたときには……何もなかったぜ?」 やがてキャップが口を開く。 「ちょっと見てくるか、リュウゼツラン」 }} #pre{{ 130 名前:この指、とまれ・12[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:18:07 ID:jVSr/ULC0 「……これが、そうなのかなぁ?」 リュウゼツランを囲んで、首を傾げる。 「巫女さん、言ってたよね、命を大事にしろって。 その言葉が頭に残ってて、それでこれを守ったのかな、僕たち」 「さあ、どうだろな……」 と、キャップがまだ小さなリュウゼツランの 芽の先っぽの部分をそっと指でつまんだ。 「何してんだ?」 「アイツ、言ったろ?『缶蹴りするもの、この指とまれ』ってさ。 ……あのとき、とまってやらなかったからな」 皆が顔を見合わせ、そして一つ、また一つと手が重ねられていく。 「よーし、じゃあ缶蹴り始めるぞ!」 「ええ!?もう外暗いよキャップ!?」 「いーじゃねーか!……あのときも、今ぐらいの時間だったぜ?」 「しょうがねーなキャップは……」 皆が原っぱ目指して走っていく。あの日の、子供だったときと同じように 「……よーし、次だ!『かーくれんぼすーるもーのこーのゆーびとーまれ!』」 あの日と同じように、掲げた指に重なる手のひらがあった…… }} #pre{{ 131 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:21:34 ID:jVSr/ULC0 終わり。 ゲームではあまり生かされなかった百姉の苦手設定から。 1の「3月14日」は「10日」の間違い。 ホワイトデーだろそれは…… }}
タイムスタンプを変更しない
***この指、とまれ #pre{{ 119 名前:この指、とまれ・1[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:34:53 ID:ep7akMpb0 「いやあ、今日もモモ先輩、無敵だったよなー」 秘密基地で、今朝挑戦してきた武道家をあっさり返り討ちにした姉さんの話題。 「……思うのだが、モモ先輩ほどになると、もう怖いものとかはなくなるのだろうか? ……ちなみに、私は虫がちょっと苦手なんだが」 「私はこの先、友達が全然出来なかったらと思うと怖くて怖くて……」 「アタシはゴハンが食べられなくなるのが怖いワ……」 「大和がいなくなるのが一番怖い……」 皆がそれぞれに弱点を口にする中で、姉さんは悠然としていた。 「んー、まあ、私は怖いものはないなー」 「……あるでしょ、姉さん。一つだけ怖いものが」 「あー、あれは……怖いというより、苦手なだけだ」 「っていうか、大和……今日じゃね?3月14日だから」 「ああ、そういやそうだな……クリスたちに話してもいい、姉さん?」 「今さらだが……まあ、好きにするがいいさ」 それは、彼らからすれば昔の話 川神百代が風間ファミリーに入ったあと そして椎名京がファミリーに入るよりちょっと前 それぐらいの、過去の話だった。 }} #pre{{ 120 名前:この指、とまれ・2[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:38:57 ID:ep7akMpb0 「あれ?……おい、あそこで誰かこっち見てるぞ」 いつもように縄張りの原っぱで遊んでいるうちに 木の陰からこちらをうかがう、同い年ぐらいの女の子に気がついた。 「……見たことないやつだな」 「隣の学校のヤツかな……どうしたの、姉さん?」 「いや、おかしいだろ……あんな所に近寄られるまで 私が気づかなかったんだだぞ?」 「そういえばそうだね」 いつもは、この原っぱに近づく者がいれば 気づいて教えてくれるのだ。 「声かけてみるか」 「もうそろそろ夕方だよ?」 「いいじゃねえか、まだちょっとは遊べる」 「皆OK?じゃあ、リーダーの俺が行ってくる!」 「うん、お願い」 人見知りしないし、人にも警戒されにくいのか こういう役にはうってつけだった。 走っていく姿を見て、女の子はさらに陰に隠れてしまったが かといって、逃げ出す様子もなかった。 }} #pre{{ 121 名前:この指、とまれ・3[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:43:00 ID:ep7akMpb0 やがて、女の子を連れて戻ってきた。 連れてきた女の子は、痩せていて、着ている服もみすぼらしかったが 嬉しそうな笑顔はまぶしいほどに輝いていた。 「ホントに……ホントに遊んでくれるの?」 「ああ、特別にお客さんとして歓迎するぜ」 「この辺じゃ見ないけど、どこから来たの?」 「えっと……あっち」 女の子が指差したのは川の向こう。 「なんだ、東京側からかよ。そりゃ見たことねえはずだぜ。 俺らだいたい4年生だけど、何年?」 「あ、同じ!アタシも4年生なの」 「よーし、じゃあ改めて、よろしくな!えーと……オレ、風間翔一! キャップって呼んでくれ!」 皆が自己紹介を始め、最後に残った女の子を見つめる。 「えっと……わたし、ラン!」 「よーし、それじゃ……缶蹴ーりすーるもーのこーのゆーびとーまれっ!」 「やるやるー!」「は、宇宙まで缶を蹴り飛ばしてやる!」「いや、それだと続かないから」 差し上げた指先に、わっ、と皆が殺到する。 少女もその真っ只中で、抱きつくように飛びついていた。 }} #pre{{ 122 名前:この指、とまれ・4[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:47:01 ID:ep7akMpb0 やがて、あっという間に日が暮れる。 「ハラも減ったし、そろそろ帰るかー」 「え……もう、帰っちゃうの?」 「そうだな……よお、橋の向こうまで送ってやるよ」 「やだ……もっと遊びたい……」 寂しそうにうつむく少女。慰めるように皆が近づきかける。 「おいおい、オマエが一番家が通そうなんだから……!?」 少女の雰囲気が一変した。 うつむいたまま、すっ、と手を掲げ 「……缶蹴ーりすーるもーのこーのゆーびとーまれ……」 「お、な、何だ!?足が……あれ、ちょ、どうなってんだ!?」 皆がフラフラと少女の方に集まっていく。 「……ぐ……なんだ、この力……!」 百代だけは、並外れた力と精神力で踏みとどまっていた。 「百代さんは、遊ばないの? ……一緒に、遊んでくれるって言ったのに……!!」 「ふざけるな!……気配とか、おかしいと思ったんだ…… オマエ、人間じゃないな!」 }} #pre{{ 123 名前:この指、とまれ・5[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:51:05 ID:ep7akMpb0 百代がそう言った、その瞬間。 「う……うわあああぁぁぁっ!?」 少女が、影のように真っ黒な姿になった。 真っ黒な、人型の影。 だが、それはよく見れば影などではなく 炭のように真っ黒に焦げた人間の姿だった。 その焦げた人型が、もう一度言葉を発する。 「……缶蹴ーりすーるもーのこーのゆーびとーまれ……」 差し上げた指に、皆が吸い寄せられるように集まっていく。 心まで縛られてしまったのか、もはや目もうつろだ。 「ダメだ……!その指に触るな!!」 ただ一人踏みとどまった百代だが、踏みとどまるのが精一杯で 身動き一つできず、ただ必死に叫ぶ。 だが、その叫びも空しく 皆が手を伸ばし、指を掴もうとしたとき チリン 鈴の音がした。 皆の動きが止まる。 少女も百代も、鈴の音のしたほうを見る。 赤い夕焼けを背にして 一つの小さな影が立っていた。 }} #pre{{ 124 名前:この指、とまれ・6[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:55:37 ID:ep7akMpb0 「……無理やり一緒に遊ばせても、それで友達とは言えまいよ」 チリン 鈴の音をさせながら、人影が近づいてくる。 いわゆる巫女の衣装。銀色の短い髪。 身の丈は百代たちとそう変わらないが、子供ではないようだ。 手にした扇子につけられた鈴が、歩くたびにチリン、と鳴った。 「だって……!ずっと一人だったんだもん!寂しかったんだもん! もっと遊んだっていいはずだわ!もっと一緒にいてくれていいはずだわ!」 「寂しいのなら、家に帰ればよかろう」 「……わかんないの……おウチが……皆がどこだか、わかんない……」 「家は、川の向こうであろう?ほれ、見てみるがよい」 チリン、と音をたてて扇子が指した向こう岸に、3つの人影があった。 「……ああ!ああ!父ちゃん!母ちゃん!兄ちゃんも!」 もう薄暗くて見えるはずもないのに 「手を振っておるぞ。早く帰っておいで、とな」 確かに、手を振っているのがわかる。 「でも……でも!どうやって帰ったらいいのか、わかんない! 何時の間にかここにいたから、帰り道がわかんない!」 「なに……橋を渡っていけばいい」 }} #pre{{ 125 名前:この指、とまれ・7[sage] 投稿日:2009/09/21(月) 23:59:41 ID:ep7akMpb0 ここに橋なんてない。 その場の皆がそう思ったとき 巫女がゆっくりと動き出す。 百代には、すぐにそれが「舞い」だとわかった。 そしてそのすぐそばに、淡い光が集まり始める。 「我が送ってやろう……向こうへ、な」 集まった光が、舞いに合わせるように、向こう岸へと、長く長く伸びていく。 それは光のかけ橋だった。 「う……わあ……」「キレイ……」 皆が思わず見とれていた。 「これで……向こうに……」 「ああ、これこれ…… こんなに真っ黒では、父親も母親も、お前と見分けがつくまいぞ、ほれ」 舞い踊りながら、巫女が少女に近づいて 扇子の先で、つい、となでる。 チリン 鈴の音とともに、元の少女の姿になっていた。 「これでよし。女の子は、キレイにしておらねばな。 さあ、行くがよい」 「……うん!」 }} #pre{{ 126 名前:この指、とまれ・8[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:03:44 ID:jVSr/ULC0 勢いこんだ少女が、橋を渡りはじめるそのとき 巫女がその背中に声をかける。 「友達に、『さようなら』は言わなくてもよいのか?」 「あ……」 その場でクルリと振りかえる。 もう金縛りがとけた皆が、光の橋のたもとに揃っていた。 「あの……ヒドイことして、ごめんなさい」 「いいさ。寂しかったんだろ」 「あの……アタシ、向こうに行くから……もう会えないかもしれないけど……」 「……会えなくなっても、友達だろ」 「!うんっ!じゃあ、さよならっ!」 「おう、じゃあな!」「た……楽しかったぞ!」「じゃーねー!元気でねー!」 少女が橋の上を走りだす。 見る間に小さくなっていくその姿が いつしか小さな光の点になって やがて向こう岸についたころ ふっとかき消すように見えなくなった。 巫女の動きが止まった。 向こう岸を見つめながら、ぽつりとつぶやく。 「……昔、大きな戦争があったときのことであろうな」 }} #pre{{ 127 名前:この指、とまれ・9[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:07:49 ID:jVSr/ULC0 その言葉に、大和は気づく。 「そうか……!今日は、3月10日……だから、あんな黒焦げで……」 「ほう、知っておったか。よく勉強しているのだな」 「え……今日が3月10日だから、何なの?」 「……今日は、東京大空襲のあった日なんだよ」 「あ……」「アタシ、ばあちゃんに聞いたことある……」 「うむ。もう60年ほど前のことだ。 この街には爆弾は落ちなかったが、川の向こう、東京は火の海だったという。 炎に巻かれ、失われた命は数知れず、その亡骸は川から海にあふれたそうな。 波に運ばれ、上げ潮に乗って、このあたりにも亡骸が流れついたときく」 「じゃあ……アイツ……」 「誰知れずここに流れつき、そのまま埋もれてしまった亡骸の一つだったのやもしれぬな」 「かわいそう……」「もっと……遊んでやればよかったかな」 「なあ巫女さん……俺たち、アイツに何かしてやれないかな」 「あの子と遊んでやったのであろう?それで充分。 我が家族の元へ送ったのであるから、もうお前たちが心配することはない。 それより、もう日も暮れた。お前たちも、家に帰るがよかろう」 と、土手の斜面を人影が降りてくる。髪の長い、すらりとした大人の女性だった。 「終わりましたか、姉さん」 }} #pre{{ 128 名前:この指、とまれ・10[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:11:51 ID:jVSr/ULC0 降りてきた女性に巫女が答える。 「うむ、待たせたな、かなめ……何とか……間に合ったよう、だ……」 答えながら、突然、巫女の体がグラリと揺らいだ。 「姉さん!?」 あっという間にかけ寄って、その肩を支えた百代が驚く。 先ほど舞いを舞っていたときには あふれるほどに気力に満ちていたのに 今は気を失いかけないほどに消耗していた。 「はは……少し、張りきりすぎたようであるな…… よ、と……もう、大丈夫であるぞ。 なに、こんなのは、いつものことよ……だから、気に病むことはないぞ。 さあ、我らも帰ろうか、かなめ」 「本当に、大丈夫なんですか……?どこかで休んでいかれては」 「なに、家に帰って、皆の顔を見るのが何よりの薬というものよ。 ……そうそう、何かできることはないか、と言ったな?」 「え?……うん……何かできるなら、してやりたい」 「ではな、『命を大切にする』、これを心がけるとよいぞ」 「それは大事なことだとは思うけど……なんで?」 「それは、いつかわかる……いつか、それが花開き、実を結ぶ…… そしてそれが、あの娘への供養となるであろう……」 }} #pre{{ 129 名前:この指、とまれ・11[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:15:02 ID:jVSr/ULC0 「……というお話だったのさ」 秘密基地での話が終わると、皆がため息をついた。 体験していたメンバーは思いだしながら。 初めて聞いたメンバーは驚きながら。 「はぁ~……何か、悲しいお話ですね……」 「……というわけで、別に幽霊が怖いわけじゃないが 何もできなかったのが悔しくてな。まあ、苦手ってヤツだ」 「ところで、自分は一つ気になったのだが」 「ん?何がだ、クリス?」 「女の子の名前は、『ラン』と言ったな?」 「ああ、そう言ってた」 「それで……その後、キャップたちはリュウゼツ『ラン』を見つけたわけか?」 「ん……確かに、そうだが……それは偶然の一致とかじゃないか?」 「あの……リュウゼツランが花開くのは、何十年もたってから、なんですよね? 逆に言えば、キャップさんたちが守ったリュウゼツランは ちょうど戦争のころに生まれたという可能性が……」 「けど、子供を植えかえるんで掘り起こしたときには……何もなかったぜ?」 やがてキャップが口を開く。 「ちょっと見てくるか、リュウゼツラン」 }} #pre{{ 130 名前:この指、とまれ・12[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:18:07 ID:jVSr/ULC0 「……これが、そうなのかなぁ?」 リュウゼツランを囲んで、首を傾げる。 「巫女さん、言ってたよね、命を大事にしろって。 その言葉が頭に残ってて、それでこれを守ったのかな、僕たち」 「さあ、どうだろな……」 と、キャップがまだ小さなリュウゼツランの 芽の先っぽの部分をそっと指でつまんだ。 「何してんだ?」 「アイツ、言ったろ?『缶蹴りするもの、この指とまれ』ってさ。 ……あのとき、とまってやらなかったからな」 皆が顔を見合わせ、そして一つ、また一つと手が重ねられていく。 「よーし、じゃあ缶蹴り始めるぞ!」 「ええ!?もう外暗いよキャップ!?」 「いーじゃねーか!……あのときも、今ぐらいの時間だったぜ?」 「しょうがねーなキャップは……」 皆が原っぱ目指して走っていく。あの日の、子供だったときと同じように 「……よーし、次だ!『かーくれんぼすーるもーのこーのゆーびとーまれ!』」 あの日と同じように、掲げた指に重なる手のひらがあった…… }} #pre{{ 131 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/22(火) 00:21:34 ID:jVSr/ULC0 終わり。 ゲームではあまり生かされなかった百姉の苦手設定から。 1の「3月14日」は「10日」の間違い。 ホワイトデーだろそれは…… }}
テキスト整形のルールを表示する