働く梁山泊

642 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/04/23(月) 20:47:41.46 ID:l0EDHNwu0
では続きでちょっとだけ林冲さんを投下
643 名前:働く梁山泊・1[sage] 投稿日:2012/04/23(月) 20:53:40.48 ID:l0EDHNwu0
「あ~、違う違う、それそこに乗せるんじゃないから!」

「え……あれっ?」

梁山泊メンバーによる川神市復旧作業開始初日。
放課後、俺とキャップ、ガクトの3人で
林冲さんたちが作業している住宅街の公園に行ってみた。
史進はジャングルジム、楊志はブランコ、そして林冲さんはシーソーの修繕。
打ち合わせどおり、史進にはキャップ、楊志にはガクトがつき
俺は林冲さんについて作業の監督を始めたわけだが……

林冲さんは意外にも、なんというか、すごく、手際が、悪い。

凛とした外見とは裏腹に、やたらモタモタしているし色々と間違えていた。
俺が来たときには、すでに2つあるうちの一台は
シーソーではない妙な何かになっていて
今作業しているもう一台も
シーソーの板を真ん中ではなく端っこで台に乗せようとしていた。
早めに来なければ取り返しがつかなくなっていたかも。

とにかく、このままでは今日の予定も終わらせられない。
仕方がない、ちょっと手伝うか。まずは今やっている作業を完成させよう。

「ほら、ここに、こう……だ、よっ!」

「……おお!なるほど、そうやればよかったのか!スゴイな!」

「いやフツーにやればこうするしかないでしょ?バカにしてんの?」

「そ、そんなわけでは……すまない、こういう道具は初めて見たから……」

う、ちょっとキツイ口調で答えたら涙目になってしまった。
644 名前:働く梁山泊・2[sage] 投稿日:2012/04/23(月) 20:59:40.60 ID:l0EDHNwu0
「ああ、いや、初めてなら仕方がない……かな。
 けど、こういう道具……っていうか、シーソー見たことないの?」

「うん……幼い頃から、梁山泊で武術の修行ばかりだったから。
 そうか、これがシーソーというものか……
 なるほど、シーソーゲームのシーソーとは、これから来ているんだな。
 ……あの、具体的にはどうやって使うんだ?」

「それは修繕が終わってから。はい、そっちネジ締めて」

「わ、わかった!」

力はあるし手先も器用なので、細かく指示を出せばちゃんと作業は進む。
ただ、ちょっと目を離すと

「……なんで裏側にハンドルをつけようとする」

「あれ?足じゃないのかコレ?」

シーソーではない、別の何かを生み出そうとする。
結局、つきっきりで手伝うしかなかった。

夕方になって、ようやっと作業が終わる。

「すまない、大和くん……結局、全部手伝わせてしまった……」

「いや……林冲さんたちが来なかったら
 たぶん俺たちだけでボランティアで修理してたと思うから。
 来てくれただけでも、助かってるよ」

「そ、そうか!そう言ってもらえると、私も嬉しい。
 あと、この間も言ったが、呼び方は『リン』でかまわないから……」
645 名前:働く梁山泊・3[sage] 投稿日:2012/04/23(月) 21:05:40.53 ID:l0EDHNwu0
「あ、そうだ……これの使い方を、教わっていなかった。
 どういう道具なのだろうか?」

「遊び道具なんだけどね。そっちの端に座ってみて」

「こう?」

背中を向けて座っていた。シーソー初心者にしてはチャレンジャーだな。

「違う、こっち向きにまたがって。で、そのハンドルに掴まって」

ハンドルに掴まったのを確認して、俺もシーソーに腰を下ろすと
ふわ、とリンさんの体が持ち上がる。

「うわ、うわわわわ!?」

背丈は俺と同じくらいだが、やはり女の子なので体重は軽いようだ。
続いて、ポンと地面を蹴ると
今度は俺が浮き上がり、リンさんが下がっていく。

「お、おおおお!?」

「やってみて!」

「よーし……たぁ!」

ガゴン!!

「ぐお!?」

リンさんの鍛え抜かれた両足が勢いよく地面を蹴った結果
急降下した俺は尾てい骨をしこたま板に打ち付けられてしまった……
646 名前:働く梁山泊・4[sage] 投稿日:2012/04/23(月) 21:11:49.17 ID:l0EDHNwu0
「も……もうちょっと……ゆっくり……」

尻を抑えながらシーソーを降りると、泣きそうな顔でリンさんが駆け寄る。

「ああああああ、す、すまない!大丈夫か?」

「うん、まあ……」

痛む尻をさすっていると、キャップと史進がこっちにやってきた。

「よう大和、こっちは終わったけど……どした?」

「なんだコイツ、生まれたての子馬みたいになってるぞ?おもしれー!」

続いてガクトと楊志も。

「何やってんだ大和?ひょっとして、林冲さんに何かしようとして反撃されたとか?」

「それはアンタでしょ。ま、アタシにはおおかた見当はついてる」

楊志が呆れ顔で肩をすくめる。

「……見当がついてるって、どういうこと?」

「リンは戦いになれば滅法強いけど、普段はけっこう残念な子だから」

「残念な子って、ヒドイぞ青面獣……」「つか、お前が言うなヘンタイ」

そうか、ドジッ娘属性持ちなのね。
外見とのギャップもあってちょっと萌える……かな。
ま、こんな具合で、呆れられたり笑われたりもしたが
今日の作業は無事……いや俺の尻にダメージを残しつつも終了した。
647 名前:働く梁山泊・5[sage] 投稿日:2012/04/23(月) 21:17:40.62 ID:l0EDHNwu0
「せっかく直したんだから、ちょっと皆で遊んでいこうぜ!」

「お、いいな!わっちはブランコで遊んでみたいぞ!」

「よっしゃー!俺の必殺・ローリングハリケーンこぎを見せてやるぜー!」

キャップと史進がブランコに走っていく。

「おいおい、小学生のガキじゃねえんだぜ。
 今さらブランコやシーソーで遊ぶってのもよ」

「しょうがないね、九紋竜は胸と頭が子供だから。
 ま、ちゃんと直ったかチェックにもなるからいいけど」

呆れながらもガクトと楊志がそれに続く。

「あの……歩けるかな、大和くん?肩、かそうか?」

リンさんが心配そうに俺の顔を覗き込む。

「いや……ゆっくり行くから大丈夫。リンさん、先行ってていいよ」

「私が傷つけてしまったのだから、そういうわけにはいかない。
 さあ……肩を」

少しドジかもしれない。ちょっと泣き虫かもしれない。
だけど、寄せ合った肩は暖かかった。

いざ肩を組むと、互いの顔が間近になる。
微笑むリンさんの顔が少し赤いのは、照れているのか夕焼けのせいなのか。
二人でゆっくり行こう。ブランコは別に逃げない。
少しずつ、一歩ずつ進む。これからの二人のように。
648 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/04/23(月) 21:23:45.09 ID:l0EDHNwu0
おしまい
林冲には特にドジッ娘属性はなかったのだけど
立ち絵やHPのラフからそんなイメージがあったので勝手に追加してみた

この後、ファミリーの他のメンバーも段々打ち解けていって
皆で作業するようになるなか、林冲と大和の関係も……みたいな