やつらは戻ってきた

629 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 22:16:41.03 ID:4dTleMnD0
林冲たち梁山泊メンバーをアフターで再登場させる導入部みたいなもの投下
630 名前:やつらは戻ってきた・1[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 22:22:41.02 ID:4dTleMnD0
中国のとある山中。強固な守りに固められた山塞の中を
梁山泊の頭領の一人、青面獣・楊志が声を上げながら歩き回っていた。。

「リンー。林冲ー?どこー?」

声を聞きつけて、ひょっこりと一室から同じ頭領の豹子頭こと林冲が顔を出す。

「どうした、青面獣?」

「ああ、いたいた。パンツ頂戴」

「ちょ、そんな用事でいちいち呼ぶな!」

「私にとっては大事な用。パンツがないと……うぐぐぐ……」

「もう……川神から戻ってからは平気だったから
 治ったのかと思っていたのに」

「そんなわけない……脱がなくてもいいから、せめて匂いを……」

「もう……しょうがないなぁ……」

林冲がチャイナドレスの裾をぴら、とめくりあげる。

「はぁ~……リンの生パンツはやっぱり一番効くなぁ~」

「こ、こら、鼻を押し付けないで!
 ……これで気が済んだか?もういいなら、書庫の整理に戻るから」

「あ、そうだ、リンに用事があるんだった。総頭領が呼んでるって」

「な!?先にそれを言え!」
631 名前:やつらは戻ってきた・2[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 22:28:42.83 ID:4dTleMnD0
数日後、所変わって日本は川神。

「ん?」

「どしたの大和?……あれ?」

俺とワン子でブラブラしていると
川神院の門前通りを歩いているチャイナ服姿の女性が目に付いた。

「うーん……誰だっけ?大和の知り合い?」

「そっか、お前は学院の守備に回っていたから見てないんだっけ。
 アイツ、川神城で最後までマープルを守ってたヤツなんだ」

「あ、じゃあ……えっと、何だっけ……高タンパクの連中?」

「梁山泊な……しかし、まだ日本にいたのか、それともまたやってきたのか……」

川神城攻防戦からまだ一月もたたない。
あの後、いつのまにか姿を消していたが、今日ここで見かけるとは。
周囲をうかがうに一人だけのようだが
かなりの腕だと聞いているし油断はできない。

「とにかく、目を離すなワン子。俺は皆に連絡する」

「!待って大和、門前にジイちゃんがいるわ!」

チャイナ服の女は門前まで行くと、立っていた鉄心先生の前で会釈をした。

「戦う気はないのかしら?そういう雰囲気じゃないし……」

「どうなってるんだ……とにかく、俺たちも行ってみよう」「うん!」
632 名前:やつらは戻ってきた・3[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 22:34:41.46 ID:4dTleMnD0
「おお、なんじゃ、お前たち血相を変えて」

ジイさんは俺たちを見ても特に慌てる様子もない。
梁山泊の女のほうも、目線はこちらに向けたがじっとしたままだ。

「なんでコイツがここに?」「爺ちゃん、これはどういうこと?」

「うむ、これはワシが呼んだんじゃよ」

「呼んだ?何でまた……」

「呼んだといっても、ワシは連絡をしただけでな。
 用があるのは……おお、来たようじゃな」

ジイさんが門前町のほうに目を向けると
黒服の一団がやってくるところだった。今度は何だ、と思っていたら
その一団の中から、ずいと一人進み出てきた。

「そ……総理大臣!?」

見間違えるはずもない、テレビや新聞でおなじみの顔だ。
時の総理大臣が何でまたこんなところに……って、そうか
かつては川神院の高弟で、今でも川神鉄心と昵懇なんだっけ……

「よーう、すまねえな、遅れちまって。一子ちゃんも、久しぶり。
 で、こちらが梁山泊の?」

梁山泊の女が、総理の姿を認め一礼する。

「梁山泊頭領、五虎将が一人豹子頭林冲。御呼びによりまかりこした」

「おう、ご苦労さん。話は総頭領からされたと思うが、ま、よろしく頼むぜ」
633 名前:やつらは戻ってきた・4[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 22:40:41.16 ID:4dTleMnD0
何がどうなってるのか、さっぱりわからない。
よろしく頼む、って……総理が何かこの女に頼んだってことか?

「あの……すいません。質問よろしいですか?」

「んん?おお、確か、川神城に攻め込んだ兄ちゃんだな。いいぜ、言ってみな」

「総理がこの梁山泊の人を呼ばれたんですか?」

「ああ、そうだ。
 ま、一言でいえばオトシマエをつけてもらおうってことよ」

「オトシマエ?」

「おう。傭兵集団とはいえ、あれだけこの国で暴れられて
 こっちも黙っているわけにゃあいかねえ。
 とはいえ、表向きはあの事件は映画の撮影ってことになってるから
 表だって法の裁きにかけるわけにもいかなくてな……」

確かに、民間人の拉致監禁やら障害沙汰やら
外国人とはいえ普通なら逮捕されて裁判にかけられてるところだ。
九鬼家の人間は九鬼家で裁きを言い渡されている。
梁山泊の人間だけはお構いなしともいかないだろう。

「そこで、代表者に来てもらって、いろいろ働いてもらうことで
 今回のことはチャラにしようというわけよ。
 さしあたって、一般人にも色々迷惑をかけた、この川神で働いてもらう。
 それで、そっちもいいんだよな?」

総理の問いかけに、梁山泊の女――林冲もうなずいた。

「んじゃま、そういうことだ。詳しい話は、中でさせてもらおうか」
634 名前:やつらは戻ってきた・5[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 22:46:41.05 ID:4dTleMnD0
3人が川神院の中に入っていく。総理の護衛は門のところで待機するらしい。
俺たちは……ついていっていいものか迷っていると

「何しとる。一子、直江、お前たちも来なさい」

ジイさんに手招きされた。
来てもいい、ではなく来なさい?

「俺たちにも何かご用があるんですか?」

「うむ。実は、後で呼ぼうと思っとったんじゃよ。
 今おるなら好都合じゃからの」

下手すりゃ国際問題、しかも日本の総理大臣が出席という場が
俺たちにどんな用があるのだろう。
まあ、呼ばれたからには行ってみるしかないか。

川神院の中でも奥のほうの間に通されて
俺たちがいささか居心地の悪さを味わっている間
総理が林冲にいろいろ説明していった。

「……で、これが市内の施設の被害総額。
 うち、これが公共物の分で、すでに修繕済みのものがこれ。かかった費用は……」

なんだかお金の話になっている。
林冲はといえば、しおらしく話を聞いていた。

「……だいたい以上だな。何か質問はあるかい?」

「いえ。総頭領の指示でもありますので、精一杯努めさせていただきます」

改めて、林冲が深々と頭を下げた。
635 名前:やつらは戻ってきた・6[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 22:52:41.09 ID:4dTleMnD0
「……あのー」

話が一段落したようなところで、ワン子が恐る恐る手を上げる。

「ん、なんだい一子ちゃん。また、聞きたいことがあるのか?」

「アタシたちは、どうすればいいんでしょうか?」

「おお、そうそう。ま、今聞いていたと思うが
 これからこの姉ちゃんには川神の復旧のために働いてもらうわけだ。
 が、なにぶんよく知らん土地で勝手もわかるまいと思ってな。
 お前さんたちのグループに、そのサポートをしてやってほしいのよ」

「サポート、かぁ……ジイちゃん、それって修行僧の皆には頼めないの?」

「まだ怪我の治っておらんものも多いし
 治ったものは治ったもので、この川神院の修繕があるしのぅ。
 なにしろ、人手が足らんのじゃよ。九鬼のほうも、けっこう一杯一杯らしいしの」

確かに、梁山泊の襲撃を受けて川神院のダメージは大きい。
修行僧の人の姿も、いつもの半分も見かけないしな……

「まあ、何となくはわかりましたが……
 昼間は俺たち学校ですけど、その間はどうします?」

土日はともかく、平日は一日つきっきりというわけにはいかない。
と、ジイさんが答えてくれる。

「朝方、モモと一子でついていって、その日の分の作業指示をする。
 学校が終わったら、お前さんがたの誰かが様子を見にいって、進捗状況を確認する。
 他の作業があるようなら、そこで新たに指示する。
 こんな感じでいこうと思っとるんじゃが、どうかの?」
636 名前:やつらは戻ってきた・7[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 22:58:41.33 ID:4dTleMnD0
「それならいけそうですね……けど、作業してもらうなら
 もっと大勢来てもらったほうがよかったんじゃないですか?」

と、それまで黙っていた林冲が口を開く。

「それについてですが……流石に、兵を引き連れては来ませんでしたが
 あと2人の頭領、青面獣・楊志、並びに九紋竜・史進を待機させています。
 我ら3人で働きますので、多少なりともお役に立てるかと」

「3人ですか……まあそれなら。あとは、こちらの問題ですかね」

「そうじゃのう……まあ経緯がああじゃったから、無理に協力せいとは言わんがの。
 作業を始めてもらう週明けまで、お前たちでも話し合ってみい」」

「おおよそ、話は決まったかな。じゃあ悪いんだが、後の細かいことは頼んだぜ」

総理がすっくと立ち上がる。

「相変わらず忙しいのぅ」

総理が部屋を去り、ジイさんもそれを見送るために部屋を出る。
後には俺とワン子と……林冲が残された。

「えーと……林沖さん、こっちの自己紹介がまだだったんで、今さらですけど
 俺は直江大和。川神学院の2年生です」

「アタシは川神一子!大和の同級生で、ここの孫娘よ。ヨロシク林冲さん!」

「よろしく……あと、私のことはリンでいい。皆もそう呼んでいる」

……悪い人ではなさそうなんだが、やったことを思い返すと複雑な気分だ。
ジイさんの言ったとおり、皆と相談しなきゃな。
637 名前:やつらは戻ってきた・8[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 23:04:40.87 ID:4dTleMnD0
「……すまないが、自分はちょっと協力できない」

ファミリーの皆を秘密基地に緊急招集して、事情を説明する。
真っ先に反対を表明したのは、クリスだった。

「まだマルギッテのことで怒ってるのか?」

「それもあるが……雇われたからとはいえ、一般人にも危害を加えたからな。
 正直、そんなヤツらと上手くやっていける自信がない」

まあ、クリスはそうかもなぁ……

「姉さんはどう?」

「私とワン子はジジイの言いつけだから、手伝わないわけにもいかないし
 個人的にも、もう水に流してもいいと思ってる。
 素人に手を出したのは確かに許せんがな」

「意見が分かれるな……どうする、キャップ?」

「んー……全員の意見を無理に揃えなくてもいいんじゃね?
 たまには別行動でもいいだろ」

「そうねー。ジイちゃんも、無理強いはしないって言ってたから
 協力してもいいよ、って人だけでもいいんじゃないかしら?」

こうして、珍しく参加組と不参加組に分かれることになった。

参加はキャップ、ガクト、姉さん、ワン子。
不参加は京、クリス、まゆっち、モロ。

「で、お前はどうすんだ弟?」
638 名前:やつらは戻ってきた・9[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 23:10:41.31 ID:4dTleMnD0
川神院で顔を合わせた林冲という人物からは
それほどの悪人だという印象も受けなかったし
何より、一度顔を合わせておいて断るのは気まずい感じがした。

「この際、手伝ってもらえるのなら過去には目をつぶろう。
 というわけで、俺も参加ね」

「オッケー。じゃあクリス達には今回は独自に動いてもらうってことでいいな。
 モモ先輩、もう実際の作業予定とかわかってんの?」

「ああ、ジジイから予定表はもう貰ってる……っと、これだ」

姉さんがポケットから日程表と地図を取り出す。意外に住宅街が多いな。

「公園の遊具修繕とか、けっこう作業キツそうだよな……
 これって俺様のパワーを見せるチャンスか?」

「そうかもな……しかし、この公園こうして地図で見るとけっこう広いな」

「だな。なあワン子、これ手分けしてやってもらってもいいのか?」

「たぶんかまわないけど、こっちも手分けして監督しなきゃならないわよキャップ?」

「私とワン子は朝の案内役で、午後の監督はキャップ達に頼むことになるんだぞ。
 分かれて行動して大丈夫か?」

「別にやりあうわけでもねえから平気だろ?向こうもこっちも3人だからちょうどいいじゃん」

「ついでだから、誰が誰を監督するか決めておこうぜ。俺様、楊志ってのがいいな!」

話し合いの結果、史進はキャップが、楊志はガクトが
そして林冲は俺が監督することになった。さて、どうなることやら。
639 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/04/21(土) 23:15:41.03 ID:4dTleMnD0
導入部なのでここでおしまい

梁山泊3人は年齢がわからないけど
自分としては林冲は大和より年上、楊志が同い年で史進は同じか一つ年下ぐらいかな
と予想している