My Life As A Dog

563 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/03/20(火) 23:10:17.06 ID:fPEnm4R60
なるほど、若獅子タッグマッチトーナメントは指標になりますね 皆様 thx

ではゲームではけっきょく出てこなかった設定シリーズ投下
564 名前:My Life As A Dog・1[sage] 投稿日:2012/03/20(火) 23:16:34.62 ID:fPEnm4R60
日曜日の多馬川のほとりを、マルさんと並んで歩く。
こういうノンビリとした時間もいいものだ。
日曜ということもあって、いろいろな人とすれ違う。
ジョギングをする人。サイクリングする人。

「釣れたかい、竜平」

「あー、今日は全然ダメだ。亜巳姉は野草とかどうよ」

「まあまあだね。師匠はどこ行ったんだい?」

「素潜りで捕まえるとよ。カッパみてーなオッサンだぜまったく」

釣りをしてる人。野草を採ってる人。素潜りしてる人。
本当にイロイロである。

と、マルさんがスッと歩く位置をずらす。
何かと思ったら、前から犬を散歩させている人がきていた。
犬と接触しないように、位置をずらしたのか。

犬とすれ違って、ちょっと間をおいてから
マルさんはふぅ、とため息をつき、元のポジションに戻る。
今日は犬の散歩も多い。
そして、すれ違うたびにマルさんは同じ行動をとる。
明らかに犬を避けていた。

「あれ、ひょっとしてマルさんって犬はキライ?」

「……いえ、そんなことはありません」

一瞬ためらってから否定してきた。強がっているのかな。
今さら、俺に弱みを見せるぐらいどうってことはないはずなのだが。
565 名前:My Life As A Dog・2[sage] 投稿日:2012/03/20(火) 23:22:34.85 ID:fPEnm4R60
だが、よくよく考えればマルさんのあだ名は「猟犬」。
キライなものをあだ名にされて、あの人が黙ってるわけはない。
気になったので、寮に戻ってから
マルさんのいないときを見計らってクリスにきいてみた。

「……ということがあったんだが、どうなんだクリス?」

「家では番犬を飼っていたが、特にそういう話は聞いていないぞ」

「へー、番犬がいたんだ。じゃあ別に犬がキライってわけじゃないのかな」

一緒に暮らしていれば接近することだってあっただろう。
それなのにクリスが気づいていないということなら
やはり俺の気のせいなのかな。

「あ、でも犬の世話は馬屋番の人がしていたし、普段犬たちは番小屋にいるから
 マルさんは直接は犬と関わっていないな」

なんだ馬屋番とか番小屋って……ああそういえば馬も飼ってましたねこのお嬢様。

「何か犬を避けているような素振りは見せたことない?」

「うーん……あ、そういえば」

「何かあるの?」

「自分とぬいぐるみで遊ぶとき、マルさんが犬のぬいぐるみを選んだことはないな」

結局、あんまり参考にならなかった。
キライならキライで、犬が多いところに近づかないとか
気を配ってあげないといけないし、ハッキリさせたほうがいい。
やはり直接きいてみるしかないかな。
566 名前:My Life As A Dog・3[sage] 投稿日:2012/03/20(火) 23:28:35.63 ID:fPEnm4R60
「……ですから、キライなわけではありません」

夜。布団に入る前にもう一度きいてみた俺に
やはりためらいがちにマルさんは答えた。

「じゃあ、今度ドッグカフェとか行ってみようか?」

「そ、それは困ります……キライではないのですが、犬は苦手ですから」

「苦手?」

キライと苦手とたいして変わらない気がするが。

「ええ、子供の頃にちょっと」

「ああ、大型犬に襲われて怖かったとかそういうヤツ?」

よくあるよね、そういうトラウマ。

「いえ……まだフリードリヒ家にあがる前の話ですが
 私の家では犬を飼っていました。私は、その世話をしていたのです」

「それが、なんで苦手に?」

「私が、殺しました」

「……え?」

「狂犬病に罹ってしまったのです。
 周囲に被害を広げないためにも、殺すしかなかった。
 それ以来、犬を見るとどうしても思い出してしまい
 気が滅入ってしまうので、あまり近寄らないようにしているのです」
567 名前:My Life As A Dog・4[sage] 投稿日:2012/03/20(火) 23:34:36.08 ID:fPEnm4R60
一度話しはじめると、マルさんの舌は滑らかになった。

 本来であれば、ワクチンを接種しておけば罹らない病気だったのに
 あまりに犬が獣医に連れて行かれるのを嫌がったので
 まだ子供だったマルさんは、つい可哀想になって
 両親にはもう医者に診せたと嘘をついて、連れていかなかった。
 結果、野良犬から感染してしまい、責任をとるということで
 両親からマルさんの手で処分するように言われ……

「甘やかすのは、相手のためにならないこともある。
 たとえ嫌われても、そのほうがためになるなら厳しくあたる。
 それが、あの一件で得た教訓です」

そっか……確かに、寮に来た頃は俺にうるさいこと言ってきたけど
それはそのほうが俺のためになるから、という
マルさんなりの優しさだったっけ。

「というわけなので、犬がキライなわけではありません。
 それどころか、本当は好きなのですが……
 どうしても胸が痛むので、近寄らないようにしているのです」

「……ごめん、嫌なこと思い出させて」

「いえ、いずれは大和にもお話したことだと思います。
 それに、昔にくらべればだいぶ心の傷も癒えました。
 ですから……大和と家庭を持って、子供ができたら……
 また、犬を飼ってみたいです」

「いいね。俺も犬けっこう好きだし、子供ができたら飼ってみようか。
 それまでは、マルさんが俺の犬ね」

「……わんっ♪」
568 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/03/20(火) 23:38:37.98 ID:fPEnm4R60
おしまい シリーズと言ったけど次の予定はない

犬が苦手とOHPのキャラ紹介に書いてあるのに
あだ名が犬っておかしくね?みたいなところから

他メディアで犬が苦手な理由が出ていたらスマンカッタ