幕間

490 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/03/07(水) 21:51:55.23 ID:7jPEa/AP0
清楚で一本投下
くっつきはしないけどサブカプっぽい流れになるので
嫌いな人はスルーで
491 名前:幕間・1[sage] 投稿日:2012/03/07(水) 21:57:56.38 ID:7jPEa/AP0
「う……?」

目覚めたときには、採石場の地面に仰向けに倒れていた。
気を失っていたらしい。起き上がろうとしてみたが、まだ無理のようだ。
崩れそうな意識を保ち、記憶の糸を手繰る。

城を出て松永燕と戦い、追い詰めたと思ったところで
京極の声を聞き、動揺したところで一撃もらって
最後は妙な機械が空から降ってきて……

(そうか……負けたのだな、俺は)

周囲を見回す。誰もいない。自分を倒した燕も。
すでに日は落ちて、薄暗くなってきている……

(そうだ、京極!何故ここにいた?俺を倒したとき、松永が何か言っていたが……)

「騅、いるか」

「はい、清楚」

大の字に横たわったままの自分に、ゆっくりと愛車が近づいてくる。

「戦いの最中に、京極の声を聞いたが……今もここにいるのか」

「いいえ。京極様はこの近辺には今はいらっしゃいません。
 データに残っている音声を分析しましたが、声紋が別人でした。
 しかも、録音されたものの再生音声でした。おそらくは……」

「わかった、もういい。いっぱい食わされた、というわけだな」

騙されたことが、腹立たしいよりも情けなかった。
492 名前:幕間・2[sage] 投稿日:2012/03/07(水) 22:03:56.88 ID:7jPEa/AP0
「戦はどうなったか、わかるか」

「残念ながら、わが軍の負けです。
 街を襲撃した部隊はことごとく撃退され、川神城も陥落。
 反乱分子は鎮圧され、マープルは捕縛されました」

「そうか……もはや、これまでだな」

「いいえ清楚。これから、です」

「これから?再起を期せ、というのか?
 ……もう幕は降りた。潔く舞台から降りるのが、覇王というものだろう」

「一幕は降りました。ですが、舞台は続きます。また幕を開ければいいのです。
 あなたが次の舞台に上がる助けになる人を、松永様がここに呼ばれました。
 もうじき、お見えになるでしょう」

「助け……誰だ、それは?何故松永がその手配をする?」

「それは……ああ、お見えになったようです。
 直接お話になられたほうがいいでしょう」

薄暮の向こうから車のヘッドライトが近づいてくる。
1台のタクシーが採石場のはずれにとまり、客が一人、降りてくる。

「葉桜君!葉桜君、無事か!?」

呼びかける声。聞きたかった声。今度は間違えない。二度と聞き違えない。

「ここだ、京極……騅、ライトをつけろ」

愛車のライトが灯り、倒れたままの自分を照らし出した。
493 名前:幕間・3[sage] 投稿日:2012/03/07(水) 22:09:57.83 ID:7jPEa/AP0
気づいた京極が走ってくる。
あの男が走るのなぞ、初めて見るな。
妙なことに気づき、それがまた妙におかしかった。

「だいぶ手ひどくやられたようだな……起きられるかね?」

駆けつけた京極が手を差し伸べてくる。

「たいしたことはない。貴様の手など借りずとも……一人で、起き……」

「無理をしてはいけない。さ、肩を貸そう」

肩を借りて何とか上体を起こす。

「何故ここに?」

「松永君から知らせを受けたのでね。事情もあらかたわかっている」

「そ、そうか……」

「松永君には、騙された、と思うかもしれないが
 もし彼女が頼んでいれば、僕はここに駆けつけて
 同じように君を止めただろう。だから、松永君を恨んではいけないよ」

「……ちと腹立たしいが、まあお前が言うならそうしよう。
 それよりも、あのような手に引っかかってしまった自分が情けない。
 覇王ともあろうものが、あれではまるでウブな小娘のようではないか……
 京極、このこと、他言無用だぞ?」

「承知した。では、帰ろうか。タクシーを待たせている」

「帰る……?どこにだ?九鬼にか?」
494 名前:幕間・4[sage] 投稿日:2012/03/07(水) 22:15:59.51 ID:7jPEa/AP0
「今の君の家はそこだろう。九鬼に戻って、また学院に来たまえ」

「九鬼に帰れば、処罰されるだろうな。学院も、俺を受け入れるかどうか」

「またやりなおすつもりがあるのなら、九鬼に帰らなければいけないよ。
 学院のほうは、君が案じるようなことはたぶんないだろう」

「やり直す、か……そんなことが覇王に許されるのか」

「……君はさっき自分を、ウブな小娘のよう、と言ったが
 僕に言わせれば、君はたまたま覇王の力を持ってしまった、ウブな小娘そのものだよ。
 それでいいじゃないか。さ、そろそろ行くとしよう」

肩を借りて、ゆっくりとタクシーに向かって歩く。

「騅……一人で帰れるか?」

「ご心配なく。それでは京極様、主をよろしくお願いいたします」

騅が走り去るのを見送って、タクシーに乗り込む。
シートに座ったら急に眠気が襲ってきた。

「すまん、京極……少し眠ってもいいか?」

「かまわんよ。九鬼についたら起こそう」

ウトウトしながら、さっきの京極の言葉を思い出す。
覇王の力を持ってしまった、ウブな小娘、か……

(……小娘でも、いいのかな)

そんなことを考えながら、いつしか眠りについていた――
495 名前:名無しさん@初回限定[] 投稿日:2012/03/07(水) 22:22:02.82 ID:7jPEa/AP0
おしまい スーパーイケメンタイムその2

ラストで清楚が元に戻っている理由が
平蜘蛛で倒されたから、というのだけでは今ひとつ弱い気がしたので
京極を再登場させてみた