ジェノサイド!
462 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/03/04(日) 21:21:55.54 ID:HlYjtWWi0
ヒュームさんで1本
463 名前:ジェノサイド!・1[sage] 投稿日:2012/03/04(日) 21:27:57.87 ID:HlYjtWWi0
「えーと、この辺のはずだ」
ケータイのGPS機能で現在地を確認して
あらかじめ教わっていた情報と照合する。
「やれやれ……ここに来るだけでもう汗かいちゃったな」
夏も盛りの8月初旬。
俺たち風間ファミリーは、多馬川上流沿いの森の中までやってきていた。
その狙いは……
「それじゃ、採集開始!」
キャップの号令とともに始めたのは、昆虫採集だったりする。
もちろん、ただの昆虫採集ではない。
最近になって見つかった、川神コガネという新種のコガネムシが狙いだ。
何でも川神の固有種らしく、七浜の大学の研究室から依頼があったのだ。
生きたまま研究室に持ち込むと1匹5千円という
なかなかにおいしいアルバイトである。
「けどよ、これキャップだけでよかったんじゃねーの?」
確かに、ガクトのいうことももっともだ。
ガキのころから、虫取りといえばキャップの出番で
キャップ一人で残りのメンバーが取るより
何倍もクワガタを捕まえたりしたものである。
「まあそう言うなよ。皆でやったほうが
ファミリーの旅行資金って気がするだろ?」
このバイト代を軍資金に、皆でどこかに旅行しようというのがキャップのプラン。
夏休みが終わる前に何とかしたいところだ。
464 名前:ジェノサイド!・2[sage] 投稿日:2012/03/04(日) 21:33:59.72 ID:HlYjtWWi0
そういえば、昔から疑問だったのだが
「姉さん、気で虫とか探せないの?」
「オイオイ無茶言うなよ。
こんな森の中で虫みたいな小さな生き物の気
仮に探れても、区別がつけられないぞ」
「そうですね。単純に目の良さにかかってきますから
こういう場合、目のいい京さんに分があるかと」
「えへん」
「ところで、気といえば……まゆまゆ、気づいてるか?」
「は、はい……何かご用なのでしょうか?」
「?何かあるの姉さん?」
姉さんとまゆっちがよくわからない会話をしている前で
茂みがガサガサと揺れ動いた。
「何か、というか誰か、というか……何しに来たんだかなー」
ガサリと大きく茂みを揺らし、巨大な影が姿を現す。
「……気づいているだろうから、来てやったぞ」
現れた金髪の偉丈夫が、蓄えた髭をしごきながらそんなことを言う。
姉さんがやれやれといった顔でその人影に声をかけた。
「何かご用ですか、ヒュームさん」
465 名前:ジェノサイド!・3[sage] 投稿日:2012/03/04(日) 21:40:01.68 ID:HlYjtWWi0
現れたのは九鬼家従者序列零番
ヒューム・ヘルシングその人だった。
「なに、今日はお前たちに用があるわけではない。
たまたま居合わせただけだ」
「こんなところに、九鬼家の従者が何か用があるんですか?」
「今日は、いちおうオフだ。
俺の趣味は標本作りでな。新種の甲虫が見つかったというので
コレクションに加えようというわけだ」
「ああ、そちらも川神コガネ狙いですか」
「さらに言えば、九鬼財閥の生化学研究所から採集の依頼もあったのでな。
趣味と仕事の一石二鳥というわけよ。
で……そちらも、ということは、貴様等も川神コガネ狙いというわけか」
「ええまあ、アルバイトで」
「フッ……虫取りを甘く見るなよ。
この俺ですら、朝からまだ1匹も見つけては……」
「よっしゃー!まずは1匹、ゲットだぜ!」
姉さんとヒュームさんがやり取りしている間に
さっそくキャップが1匹捕獲していた。
「……運のいい赤子だ。が、所詮は赤子。
俺の知識と経験、さらに優れた視力、運動能力をもってすれば……」
「っと、こんなところにもいたぜ2匹目ー!」
466 名前:ジェノサイド!・4[sage] 投稿日:2012/03/04(日) 21:46:14.67 ID:HlYjtWWi0
「…………」
ああ、なんかもうイラッとしてるのがあからさまにわかるよこの人。
「姉さん、お喋りはこれぐらいにして、俺たちもそろそろ捕まえよう」
「そうだな、キャップばかり働かせるのも何だし。
じゃ、ヒュームさん、そういうことで」
「フン……まあ見ているがいい。最後に笑うのは……」
「っとぉ、今度はツガイか?オスとメス、まとめてイタダキー!」
「……チッ……(ガサガサ)……ん?(→カマドウマ)」
「よっしゃー5匹目ー!いやー、けっこう見つかるもんだなー」
「……(ゴソゴソ)……む?(→ゲジゲジ)」
「後はこの辺も怪しいな……ほら6匹目!」
「……(バサバサ)……ぬ?(→ダンゴムシ)」
キャップと比べるのも何だが、実はこの人ラック値低いんじゃなかろうか。
「あ、大和大和、コレ、そうだよな?」
「お、やったね姉さん、1匹ゲットだ」
「…………(プチ)ジェノサイドオォ!!」
「うわーっ!?」「ちょ、ヒュームさん!?」
467 名前:ジェノサイド!・5[sage] 投稿日:2012/03/04(日) 21:52:15.83 ID:HlYjtWWi0
「チェー……ん?……(そーっ)」
何かものすごくキケンな技を発動しかけたっぽいヒュームさん。
だがその動きが途中で止まり、ゆっくり、静かにかがみこむ。
蹴り足が吹き飛ばした地面の下で、何かがもぞもぞと動いていた。
「……はっ!」
ヒュームさんが掛け声とともに地面に手を伸ばす。
ああ、見つけたんだ。ようやく1匹目。
得意満面で、捕まえた川神コガネを俺たちに差し出す。
「フ…フハハハハハハハ!!見たか赤子ども!これが、川神コガネだ」
「知ってます」
「フフン、俺にかかれば、川神コガネなど赤子……いや、虫けらも同然よ」
「そうですね。虫ですね」
「さて、俺はもう少し採集していかねばならん。
お前たちも、せいぜい頑張ることだ」
ヒュームさんは悠々と立ち去っていく。
その姿が見えなくなり、やがて聞こえてくる野太い雄たけび。
「……ジェノサイドオォ!」
いくら今のでうまくいったからって、他のやり方はないんだろうか。
呆れる俺たちの耳に、しばらく「ジェノサイドオォ!」は聞こえていた。
468 名前:ジェノサイド!・6[sage] 投稿日:2012/03/04(日) 21:58:27.41 ID:HlYjtWWi0
その夜。九鬼財閥極東本部・生化学研究所。
「あ、ヒューム様。お疲れ様です」
「うむ。頼まれていた、川神コガネだ。数はこれで足りるな?」
「おお!さすがはヒューム様、希少種の川神コガネをこれほどとは」
「なに、俺にかかればこの程度のこと造作もないわ」
「それでは早速……あれ?」
「どうした」
「えーと……これ、オスしかいないんですが?」
「……いかんのか?オスのほうが大きく美しいぞ?」
「いや、研究に必要なアミノ酸はメスにしかないんで
メスを取ってきてくださいって……言いませんでしたっけ?」
「……聞いとらんぞ、そんなことは」
「あれぇ?……ああ、そうか、クラウ様にもお願いしたんですよ。
クラウ様にはお伝えしたんで、てっきりヒューム様もご存知かと」
「…………ジェノサイドオォ!チェーンソーッ!!」
「うわぁーっ!?」
半壊した生化学研究所を後に、ヒューム・ヘルシングは再び多馬川上流に向かう。
メスを見つけるためにはカイザーウェーブが必要だったという。
469 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/03/04(日) 22:04:36.19 ID:HlYjtWWi0
おしまい
川神ナントカって名前にすると何でもアリにできる、便利!
本編ではもうちょっとヒュームさんにギャグやってほしかった