右?左?

242 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 22:16:00 ID:61tQlq6t0
クリスマスに全く関係ないのを投下
243 名前:右?左?・1[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 22:19:00 ID:61tQlq6t0
「クリスお嬢様、お風呂の用意ができました」

「わかった。マルさんも一緒に入ろう!」

「はい。今日のオモチャは……はいっ、ペンギンくんです」

「うわ~、可愛いなー!」

何故か今日も島津寮の風呂に入りに来るマルギッテ。
というか、毎回オモチャ持ってきてるのか?

「む……何を見ているのです、直江大和」

「いや別に。そういえば、その眼帯って風呂では外すんだよな?」

マルギッテは、普段は片目に眼帯をしている。
確か、力をフルに発揮しないように、自らハンデを負っているとかなんとか。

「当然だろう」

「すると、風呂では全力なわけだな」

「お前はいったい何を言って……」

「なんと!マルさんの本気を、こんな身近にいつも見ていたとは
 私としたことが気付かなかった!なるほど、そうだったのか……」

「ええ、クリスお嬢様のお背中を流すためなら
 私は全力を出すことを惜しみません。さあ、参りましょう」

マルギッテが風呂で背中を流すのに全力使ったら
背中の皮が剥けるんじゃねえかなぁ……いいけど。
244 名前:右?左?・2[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 22:23:02 ID:61tQlq6t0
「はぁ~……いいお湯だった~」

風呂から上がってきたクリスが、サッパリした顔でリビングに。
冷蔵庫からコーヒー牛乳を出すと

「なぁ大和、こういうときは、腰に手を当てるんだよな?」

「いやどうでもいいが……マルギッテは?もう帰ったのか?」

「マルさんなら、まだ脱衣場にいたぞ」

と、やや遅れてマルギッテもリビングにやってきたが
その表情が困惑している。というか……

眼帯を、していない。

「あれ?眼帯どうしたんだ、マルさん」

「直江大和……念のため訊きますが、私の眼帯を知りませんか」

「いや、知らないぞ……風呂に入るので外したんだろ?」

「風呂から出て、着替えようとしたら脱衣場からなくなっていたのです。
 直江大和……私の眼帯に興味を持っていましたね?」
 
そう言って、ジロリと俺を睨むマルギッテ。

「オイオイ……いくらちょっと興味があったからって
 二人の入っている風呂の脱衣場に忍び込んで眼帯をチョロまかすなんて
 そんな自殺行為、俺がするわけないだろう?」

だいたい、そこまで危険を犯して眼帯だけのはずがないしな。
245 名前:右?左?・3[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 22:27:02 ID:61tQlq6t0
今現在、島津寮にいるのは京、まゆっち、クリスの女性住人にマルギッテ。
そして男は……俺一人か。
ぶっちゃけ、疑われても仕方がない状況ではあるが。

「いちおう、周囲の気配には気を配っていましたから
 誰も近づいていないのは確かなのですが……」

「だったら俺を疑うなよ!」

「もう一度、脱衣場を探してみてはどうだろう?」

「いえ、もう十分すぎるほど探しました。いったい、どこに……」

すったもんだしていると

「ただいまー!いやー、今日のバイトはキツかったー!」

いつものようにあわただしく、キャップがバイトから帰ってきた。

「お、マルちゃん来てたのか……あれ?今日は眼帯してねーの?」

「だから『マルちゃん』はやめなさい。
 眼帯は……(説明中)……というわけで、今捜索中です」

「ふーん。あ、よかったら、見つかるまで俺の眼帯貸そうか?」

「なんでそんなもん持ってるんだよキャップは」

「ほら、去年の仮装行列で海賊のカッコしただろ?あのときのヤツ。
 どうする、マルちゃん?」

「……別になくても困りはしないが、せっかくなので借りてもいい」
246 名前:右?左?・4[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 22:31:05 ID:61tQlq6t0
「持ってきたぜー!ジャーン!」

あっという間に部屋から戻ってきたキャップが
自慢げに掲げて見せた眼帯には、海賊らしくドクロマークが入っていた。
マルギッテにドクロマーク。似合いすぎて怖い。
と、クリスがちょっと首をかしげる。

「キャップ、それ、右目用じゃないのか?」

「ん?ああ、形からするとそうだな。何かマズイの?」

「マルさんは、いつも左目に眼帯してるんだ」

「いえ、たまたま入手したものが左目用だっただけで
 別に意味があって左目にしているわけではありません。
 この際ですから、これを借りておきましょう」

マルギッテはそう言うと、キャップから眼帯を受け取り、キュ、と頭に止める。
スッと顔を上げて、周りを見回すと

「これは……面白いですね、普段とちょっと見え方が違います」

まあ、そうだろうな。
右目と左目の視差というのはけっこうある。
だが、視力に問題があってしていたわけではないのだし
単純に慣れの問題ということか。

「でも、やはり眼帯をしていたほうがしっくりきます。
 ありがとう、風間クン」

は?今、キャップのこと何て呼んだ?風間……クン?
つか、何だか優しげに微笑んでる?
247 名前:右?左?・5[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 22:35:08 ID:61tQlq6t0
「直江クンにも、心配をかけてしまいましたね。
 もう大丈夫なので、安心してください」

直江「クン」!?何その斬新な呼び方!?

「落ち着いたところで、私もコーヒー牛乳でもいただこうかしら」

「うん、ちゃんとマルさんの分もあるぞ!」

いやのん気にコーヒー牛乳飲んでる場合じゃないだろ。
眼帯のせいだかどうかわからんが
明らかにこれ何か人格変わっちゃってるぞ。

「いやちょっと待ってあの……マルギッテ……さん?」

「?何かしら、直江クン?」

小首をかしげてにっこり笑うマルギッテさん。
仕草とか口調のせいもあってなんか色っぽい……
イカン、モノローグにまでさん付けしてるぞ俺。

「いや、その……何でもないっす!」

「?おかしな直江クン」

クスクスと笑って、慎ましやかにコーヒー牛乳をお飲みになられるマルギッテさん。
こうしてると、普通に色っぽいお姉さんだなぁ。いいなぁ、これ。

「あ、いーなー、俺も飲みたくなった。ちょっとコンビニ行ってくるぜー!」

キャップがジタバタし始めたと思ったらまた飛び出していってしまい
リビングにはまた俺たち3人だけになった。
248 名前:右?左?・6[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 22:39:10 ID:61tQlq6t0
「あら、もうこんな時間。クリスお嬢様、そろそろお休みの時間ですよ」

その後3人でしばらく談笑していたが
終始マルギッテさんはおだやかでにこやかでしとやかだった。

「はーい♪じゃ、おやすみ大和」

リビングを出ようとするクリスの手を取り、ちょっとの間引き止め耳打ちする。

(……ちょっとマルギッテさんおかしくないか?なんか性格が、柔らかくなってるような)

キャップはマルギッテさんの異変には気付かなかったようだが
普段から身近に接しているクリスなら……

「そうか?私にはいつもあんな感じだぞ?」

むう、気付いてねえ。
しかしいつもあれなら、クリスが懐くのもわかる気がするな。
と、クリスの背後でマルギッテさんが振り返る。

「直江クン?クリスお嬢様に何か?」

「ああ、いや、ちょっと訊きたいことがあっただけ」

「それならいいですけど……不埒なことすると……狩っちゃいますよ?」

ゾクリ

微笑まれているのに、背筋が凍りつく。
普段隠された左目を妖しく光らせて
本質は変わってないというか、かえって怖くなったマルギッテさんは
ゆったりとした動作で部屋に戻っていった。
249 名前:右?左?・7[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 22:43:10 ID:61tQlq6t0
「あ、眼帯戻ってる」

翌朝。洗面所で出くわしたマルギッテの顔には、昨夜のドクロマークの眼帯ではなく
いつもの眼帯が左目に付けられていた。

「直江大和、朝は『おはようございます』。復唱なさい」

「おはようございます、マルギッテさん」

「よろしい。敬称をつけたのも、評価してあげます。おはよう」

眼帯が戻り、マルギッテも元に戻っていた。くそ、もうさん付けなんかしねえ。

「で、眼帯、どこにあったん?」

「……それは、機密事項です」

と、大あくびをしながらクリスもやってきた。

「ふぁ~…あ……あー、大和、おはよー」

「ああ、おはようクリス。なあ、マルギッテの眼帯、どこにあったんだ?」

「そうそう、それがな、なんと……」「あ、あの、クリスお嬢様……!」

「マルさんの、パンティーのヒモに眼帯がからまってたんだ!見つからないわけだな」

「……プッ」

「Hasen……Jagd!」

「ちょ、いきなりトンファー!?やっぱ前のほうがいいー!」
250 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 22:46:44 ID:61tQlq6t0
おしまい
性格反転はドラマCDでもキノコでやってたけど気にしない
自分のSSでマルギッテ率高いのはかわしまりのが好きだから