アンド

677 名前:アンド・1[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 22:04:41 ID:keGpJrQm0
朝の島津寮。
学校は休みだが、ゲンさんはもう仕事に出かけている。キャップはまだ寝ているらしい。
俺と京、まゆっちで簡単な朝食をすませて
まゆっちのいれてくれたお茶でちょっと一息いれていると
ランニングに出ていたらしいクリスが戻ってきた。

「おはよう、大和。休みの日にしては早いな?」

「ああ、おはよう。今日は色々準備があってな」

「ん?何のだ?」

「今日はハロウィンだろ」

「ああ、そういえばそうか。トリック・オア・トリートか、懐かしいな」

「クリスさんも、子供のころはやっぱり仮装して
 ご近所を周ったりしたんですか?」

「小さい頃にはな。訪れる家庭は、どこも私を恐れて大量にお菓子をくれたものだ」

「へえ。どんな仮装をしてたんだ?」

「普通に、子悪魔だったりだな。あまり貰うお菓子が多いので
 後ろにいる父様の部下たちに持ってもらったりしてた」

兵隊引き連れてトリック・オア・トリートか。おっかねえや。

「やはり日本でも、ハロウィンの仮装はするのか?」

「ああ、そういやクリスやまゆっちは知らないのか。
 川神では、毎年ハロウィンに盛大なイベントがあるんだ」
678 名前:アンド・2[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 22:09:00 ID:keGpJrQm0
「あ、私聞いたことがあります。仮装パレードとかあるんですよね?」

「お、よく知ってるなまゆっち。
 そう、川神のハロウィンパレードは、規模もレベルも日本最大と言われてるんだ」

「そうなのか。じゃあ、それに参加する準備なんだな?」

「……甘い。甘いよクリス。私たちのハロウィンは、そんな生っちょろいもんじゃない」

「……え?」「……はい?」

「……残念ながら、京の言う通りだ。
 俺たちのハロウィンは、地獄の戦場だと思え」

「な、何があるというんだ一体!?」

「具体的に言うと、川神姉妹が島津寮を襲撃しにくる」

「なんだ、モモ先輩と犬が遊びに来るのか?」

「遊び?……アレが遊びだったら、地獄の底だって遊園地だよ!」

「な、なんで京さんはそこまでキレてるんでしょう……」

「普通のハロウィンは『トリック・オア・トリート』
 つまり『お菓子か、いたずらか?』だ。
 しかし、姉さんたちの場合は『トリック・アンド・トリート』なんだ」

「……アンド、って……両方なのか?」

「ああ。ワン子が寮の中のお菓子を勝手に漁って食いまくる強制『トリート』で
 そして姉さんがイタズラをしていく『トリック』、この両方なんだ」
679 名前:アンド・3[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 22:13:05 ID:keGpJrQm0
「それは、ちょっとヒドイですね」「犯罪者一歩手前ではないか!」

「と、いうわけなんで、お菓子の類は隠しておくか
 夜になる前に食べきってしまうように。俺はその準備で早起きしてたんだよ。
 あと、クリスとまゆっち、夜には寮にいないほうがいいぞ」

素直にうなずくまゆっち。
だが、クリスは、この処置では不満のようだった。

「モモ先輩のイタズラか?だが、それではやられ放題になってしまうぞ。
 いかにモモ先輩とはいえ、私たちの寮で
 あまりひどいイタズラをされては困るではないか」

「そうか。俺と京は出かけるし、キャップは午後からパレードに参加のはずだ。
 ゲンさんも仕事があって一日留守だからな。
 留守番はクリスにまかせるとしよう」

「まゆっちは、私たちとおいで」

「え?で、でもクリスさん一人でモモ先輩のお相手は……」

「なに、いくらモモ先輩でも
 ハロウィンのイタズラに拳を振るうような真似はすまい。
 よく見張っていればいいだけさ。ここは私に任せておけ!」

クリスは意気揚揚と自室に戻っていく。
まゆっちはまだ少し心配そうだ。

「本当に、大丈夫なんでしょうか……?」

「まあ死にはせんだろ……たぶん」
681 名前:アンド・4[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 22:19:07 ID:keGpJrQm0
そして、翌朝。
秘密基地に外泊したのだが、まゆっちがいてくれたおかげで
京が暴走することもなく、無事に島津寮に戻ってきた。

「ただいまー……うお!?」「ただいま戻りまし……ク、クリスさん!?」

食堂に入ると、いきなり半裸でクリスがテーブルに突っ伏していた。

「見ちゃダメ」

京が素早く俺に目隠し。

「いや、それより助けろよ!」

「大丈夫ですか、クリスさん!?一体何が!?」

まゆっちが着ていた上着をクリスにかけ、揺り起こす。

「う……ううう……」

「あーあ……イタズラされたんだろうね」

「イタズラって……倒れてしまうようなイタズラなんてヒドすぎます!」

「ああ、暴力を振るわれたわけじゃないと思う……いや、ある意味、暴力なのか?」

「イタズラっていっても、モモ先輩のは性的な意味だから」

「せ、性的ッ!?」

「うん。俺、去年は尻にネギ差しこまれた」
682 名前:アンド・5[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 22:25:14 ID:keGpJrQm0
「私なんか、愛する大和の目の前で指をいれら……」

「俺見てないからね!見てなかったからね!」

「そ、それじゃ……クリスさんも……(ゴクリ)」

ちょっとまゆっちは残念そうだった。

「うう……あ……まゆっち……?」

む、クリスが意識を取り戻したようだ。というか、失神するほどのイタズラだったのか……

「クリスさん、大丈夫ですか!?」

「モ、モモ先輩は……?」

「もういませんよ、安心してください。
 いったい、何があったんですか?」

「何って……(ポッ)」

「なんで頬を染めてるんだお前は」

「そ、そんなことはない!……ちょっと、予想してたイタズラと違っただけだ!」

「顔赤くして言っても説得力ないぞ……
 あー、ここに隠しておいたマロングラッセ全部食われてる!」

「クリスさんも食べられちゃいましたしね」

『誰が上手いこと言えと』
683 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 22:27:49 ID:keGpJrQm0
終わり。
せめて一昨日に投下したかったハロウィンネタ。
モモ先輩は一歩手前どころか完璧に犯罪者。