ファースト・ステップ

658 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:17:59 ID:keGpJrQm0
規制解除されたのでガクトで一本投下。
前作のサブキャラと仲良くなるのでNTR耐性ない人はスルーで。
659 名前:ファースト・ステップ 1[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:20:59 ID:keGpJrQm0
「なあ大和、明日はヒマか?」

金曜の放課後。帰り仕度をしているとガクトに小声で話しかけられた。

「明日?……特に予定はないな」

このところ、休日といえば姉さんにベッタリなのだが
明日は姉さんが川神院の行事があるとかで、デートできないのだ。

「だったらよー、俺様と七浜につきあってくれよ」

「いいけど、ナンパか?」

「おう。モモ先輩とつきあえるように協力してやったよな。
 上手くいったんだから、今度は俺様の番。だろ?」

「まあ、確かに七浜のデート予行演習とかつきあってもらったけど。
 モロは誘わなくていいのか?」
 
「アイツはスグルとゲームイベントだってさ。
 ……アイツが二次元にハマっているすきに
 コッチは三次元で彼女をゲットしてやろうって寸法だ」

「ふむ。さすがに、キャップを誘おうとは思わないが……
 これだと、男二人で七浜行きという、予行演習の再現になっちまうぞ。
 ていうか、何故に七浜よ?」

「川神では連敗続きだからなー……俺様思うに、土地の相性が悪いんじゃねえかな」

「まあ、ゲン直しってのはあるか。いいぜ、時間とかは合わせる」

「じゃあ決まりな!アドバイス頼むぜ軍師!」
660 名前:ファースト・ステップ 2[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:24:10 ID:keGpJrQm0
というわけで、翌土曜日。寮の前でガクトと落ち合う。
天気は快晴、ナンパ日和と言えなくもないが

「……もうちょっと涼しければよかったんだがな」

もう十月だというのに、けっこうな暑さだ。

「そうか?俺様、これぐらいのほうがいいぞ」

もうちょっと涼しければ、さすがのガクトもタンクトップでは来なかっただろうに。
これでは、女の子が剥きだしの筋肉に引いてしまう。
天気は快晴でも、ナンパの行く末には早くも暗雲が。

「それでも、夜は涼しくなるらしい。上着を取ってきたほうがいいんじゃないか?」

「いや、いらねーだろ?」

「……ナンパでいいムードになる。そうなると時間はあっという間に過ぎる。
 日が暮れて、ナンパした女が寒そうにしたときに
 上着をかけてやるというイベントが作れるじゃないか」

「おお!さすが軍師だ、ちょっと上着取ってくるから待っててくれ!」

ガクトに、自慢の筋肉を隠せと言っても
そう素直に言うことはきいてくれないだろう。
これで「見た目がゴツすぎる」という問題は何とかなったようだ。

「お待たせー!それじゃ行こうぜ!」

……タンクトップの上に羽織ってきたのは、袖なしの皮ジャンだった。
ダメかも。
661 名前:ファースト・ステップ 3[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:27:12 ID:keGpJrQm0
そして七浜に到着。
駅前でナンパするより、観光名所で観光客を相手にするほうが
成功率は高いだろうということで、まずは中華街へ向かった。

「ん……大和、ちょっと待っててくれ」

「どした?」

ガクトが小走りに向かった先には、大きな荷物を抱えてよろけている人が。

「よう、よかったら手伝おうか?」

声をかけた相手は、ショートヘアの若い女性だった。
だが、ガクトにはナンパのつもりはないようだ。

「え?……ああ、大丈夫だって、これぐらい……っと」

「おいおい、ヨタヨタしながら強がりなさんな。ちょいと貸してみな」

ひょい、と荷物の一つを片手で持ち上げる。

「お、おい!……うわ、片手かよ。力あんねー、お兄さん」

「へへ、ざっと15kgってとこか?軽い軽い。
 なんなら、そっちのもよこしなよ、俺様が運んでやる」

「いいのか?この先の、『稲村屋』って中華料理屋まで運ぶんだ。
 俺、そこの一人娘でさ……けど、何か悪ぃな、見ず知らずの人に」

稲村屋か……確か、中華街じゃけっこう有名な店だ。

「気にすんなって……悪ぃな大和、ちょっと予定変更だ」
662 名前:ファースト・ステップ 4[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:30:14 ID:keGpJrQm0
少し歩くと、目指す稲村屋に。

「いやー、マジ助かったぜ!
 な、メシまだだろ?食ってってくれよ、オゴるから!」

「いや、いいよ、ヒマと力持て余してただけなんだから」

「……俺にいたっては何もしてない。それに、まだ開店前なんじゃ?」

「このまま帰しちゃ俺の気がすまないっての。
 おーい、オヤジー!今帰ったぜー!」

店の奥から怒鳴り声が返ってくる。

「遅ぇぞケイー!店開けられねえじゃねえか!」

「うるせーよ、あんな荷物あるのに俺一人行かせやがって!」

「てえした荷物じゃねえだろ……ん……どちらさんだい?」

奥から、調理服をまとった中年の男性が出てくる。
たぶん、この店の主で、父親なんだろう。俺たちを見て、怪訝な顔をしている。

「ああ、この人たち、俺がデカイ荷物抱えて困ってるのを見て
 わざわざ手伝ってくれたんだ。何か旨いもの出してくれよ」

「バカヤロ、そういうことは先に言え!
 ……すいやせんねぇ、コレがご迷惑おかけしちまったみてえで。
 おらケイ!ぼさっとしてねえで茶でも出しやがれ!」

「わかってるよ、うるせえな!オヤジはとっとと何か作れっての!
 ……悪ぃ、ちょっとそこら座って待っててくれや」
663 名前:ファースト・ステップ 5[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:34:15 ID:keGpJrQm0
女の子……ケイ、って呼ばれてたな。見た感じちょっと俺らより年上か?
早くナンパに戻りたいのか、ガクトがそわそわし始めた。

「なあ、ホントに俺様たち、別にかまわねえから……」

「いいから待ってな!」

「お、おう……わかった」

一喝されておとなしく椅子に座るガクト。仕方なく俺も隣に座る。
彼女は店の奥にズンズン入っていって、俺とガクトが残された。

「なんだよ、やけに素直だな」

「いや……なんか、あの声で怒鳴られたら、反射的に従っちまった」

「なんだそれ……で、この後どうする?」

「ナンパが上手く行ってれば、引っ掛けた女の子とメシ食うってプランだったんだがなー。
 まあこれも何かの縁だし、オゴられておくか」

と、店の奥から皿を持ってケイさんが戻ってくる。

「とりあえず、茶でも飲んでてくれや……よっこらしょ」

茶碗をテーブルに置くと、自分も俺たちの対面に座った。

「今さらだけど、自己紹介がまだだったよな?俺、稲村圭子。
 ま、見ての通りの料理屋の娘だ。ヨロシクな!」

俺とガクトもいちおう名乗ってから、雑談が始まった。
664 名前:ファースト・ステップ 6[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:38:19 ID:keGpJrQm0
「……へぇ~、揚羽の弟と同級生かぁ」

意外なことに、川神大戦で助っ人を依頼した九鬼揚羽と
ケイさんは同級生だったという。
広いようで世間は狭い、といったところか。

「やっぱり、弟も高笑いすんのか?」

「ああ、何かってーと『ウハハハハハ』って笑ってるぜ。
 ウルセーし暑苦しいし、勘弁してもらいてーよ」

「アッハッハッハ、なんだ同じじゃねーか!揚羽もよ……」

共通の話題があるので話しが弾む。ガクトもケイさんも楽しそうだ。

「……ま、そんなヤツでも、会わずにいると寂しいかな。
 ガクトたちも、今のうちだぜ、遊んでられるのは。
 ……じゃ、俺は店の準備に戻るけど、ゆっくりしてってくれよな」

「いや、邪魔になっちゃ悪いし、俺たちもそろそろ行きます」

「そうか?じゃあガクト、頑張れよ、ナ・ン・パ」

「なんだよ、お見通しかよ!……まあいいや、じゃあな!」

ケイさんは店の奥に戻ってしまう。俺はガクトに耳うち。

「なあ。ケータイの番号でも聞いておいたらどうだ?」

「はあ?何でよ?」

「けっこういい感じだったじゃん。そもそも、そういうつもりで助けたんじゃないのか?」
665 名前:ファースト・ステップ 7[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:42:23 ID:keGpJrQm0
「おいおい、そんな下心ねーよ。ああいうときは、なるべく手伝うことにしてる」

「あれ、そーなの?」

「ああ。力自慢なんてな、力を誰かの役にたててナンボなんだぜ。
 だから俺様、力の出し惜しみはしねーのよ」

そうだったな。
気は優しくて力持ち。この言葉がガクトはにピッタリだった。

「けど、ケータイ聞いとくぐらいはいいだろ。いい感じだったのにもったいないぞ?」

ガクトの好きな年上だし、可愛いしスタイルもまあまあだし
何より、今のところ相手がガクトに悪いイメージを持っていない。
ハッキリ言ってチャンスだと思う。

「んー……確かに、話してて楽しかったけど
 男のダチと話してるような感覚だったからなー。
 なんつーか、その……男っぽすぎて、色気が足りねえ」

「贅沢言える立場かよ。ファミリー以外の女の子と仲良くなれるチャンスだぞ」

「確かにな……じゃあ、ちょっと聞いておくか」

と、いいタイミングでケイさんが戻ってくる。

「あれ?ナンパ、諦めたのか?」

「ああ、そうじゃねえけど……なあ、おケイのケータイ、番号教えてくれよ」

「え?いや、その……悪ぃ、俺、ケータイ持ってねえんだ……」
666 名前:ファースト・ステップ 8[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:46:28 ID:keGpJrQm0
一気に空気が気まずくなる。
断り文句にしたってずいぶんな気もするが……

「あ、ああ、そう……ハハハ、持ってねえんじゃしょうがねえよな……
 じゃ、行こうぜ大和」

「……ああ」

「ホ、ホントに持ってねえんだからな!
 用があったら、だいたい店にいるからさ、また来てくれよ、な!?」

ケイさんが懸命に弁解する。
実際、もう会いたくないと思われてても
ここに来れば何とかなるわけで
ケータイ番号聞けなかったらオシマイというわけじゃない。
というか……まあ、ここはおとなしく引き下がろう。

「ああ、そうだね、そうするよ」

店を出ると、ガクトがため息をついた。

「ちぇ、そんな気なかったのに
 ケータイ番号聞いただけであの反応はねえよなー」

「あれさ、ホントにケータイ持ってないんじゃないか?」

「今どきそんなヤツいるかよ……あ、まゆっち持ってなかったか。まあいいや」

その後は、ガクトが「何か気乗りしねー」ということで
ナンパもせずに川神に戻った。
ケイさん、いい線いってると思ったんだがなぁ。
667 名前:ファースト・ステップ 9[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 00:50:28 ID:keGpJrQm0
数日後。
授業も終わって、教室でグダグダしている俺たちのところに
ウメ先生がやってくる。

「島津、校門で人が待っているぞ」

「は?誰すか?」

「稲村という若い女性だ」

とたんに周囲がザワつきはじめる。

「ガクトに若い女が会いにくるだとぉ!?」「ありえん、ありえんだろうソレは!」

そんな周囲の反応をよそに、ガクトはいたって冷静だ。

「稲村って、おケイのことだよな?わざわざ何の用だ?」

「さあ……しかし妙だな、俺たち、ここの生徒だってことまでは言ってないぞ」

「そういやそうだな?……まあいい、待たせても悪いから行くか」

いちおう俺もガクトについていく。
その後を興味本位でファミリーのメンバーもついてくる。
2-Fの連中も何事かとついてくる。
ガクトを先頭に、ゾロゾロと集団で校門に向かうと

「お、来た来た。遅ぇーぞガクトー!って、なんでそんな大勢なんだよ?」

本当にケイさんが待っていた。

「よう、この間はどーも。後の連中は気にすんな。で、何か用か?」
668 名前:ファースト・ステップ 10[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 01:03:20 ID:keGpJrQm0
「ああ、ケータイ、買いにいくからつきあってくれよ」

「はぁ!?」

「だーかーらー、ケータイ買うんだよ!
 ……ガクトさぁ、あのとき、俺がケータイ持ってないって言ったの、信じてなかっただろ?」

「え?いや、まあ……てか、マジで持ってなかったのかよ」

「あーあ、ヤッパリ、適当なこと言ってごまかしたと思ってやがったな。
 イヤなんだよ、そういうの。で、いい機会だからオレもケータイ買うことにした。
 一緒に行こうぜ、そしたらケータイ番号だって教えられるだろ?」

「おいおい……わざわざそこまでせんでも。
 ……けど、よく俺様がここの学生ってわかったな?」

「あー、揚羽の弟と同級生って言ってたろ?
 俺のダチに、揚羽と仲がいいのがいるから
 ソイツに揚羽の番号聞いて、そっから聞きだした。
 ここまで手間かけて、休みつぶして来たんだから、案内頼むぜ!」

「わーったわーったよ!ったく、強引だなー」

怒涛の展開に、俺も含めて皆ついていけずにポカーンとしている。

「えっと……ガ、ガクトの……彼女?」

モロがおずおずと質問。まあ確かにそんなふうに見えるか。

「いや、全然違う」「うん、そういうんじゃないね」

だが、本人たちの意識ではそうではないらしかった。
669 名前:ファースト・ステップ 11[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 01:07:45 ID:keGpJrQm0
「ケータイなら駅前かなー。モロ、どこがいい?やっぱヨドか?」

「え?ああ、うん……」

「ああ、君、ガクトのツレ?俺、稲村圭子、ヨロシクな!
 なんだったらさ、一緒に来てくれよ」

「え……そりゃちょっと、いくらなんでもお邪魔なんじゃ……」

むしろ、周りのほうが気を使ってしまっていた。
いくら彼氏彼女ではないと本人が言っても
二人の気安そうな話しぶりを見れば気を使いたくもなる。

「いやー、ガクトだけじゃ頼りねえからさー」

「ざけんな、無理矢理つき合わせようとしてるくせに!」

「うっさいな、男なら細かいことつべこべ言わねーの!
 なあ、皆ガクトのダチなんだろ?どうせなら、一緒に行こうぜ!」

皆が顔を見合わせる。

「うん、そうだね」「いろいろ話も聞きたいしな」「じゃ、チャッチャと行きますか!」

まあ、あまり女性として意識しない相手のほうが、ガクトはうまくやれるみたいだし
最初は友達としてつきあっていくというのもアリだろう。
そこから男女の関係になるかどうかは、本人たち次第だ。

「じゃ、今日はガクトのオゴリな!」「なんでだよ!?」

……そういう関係になるのは、果てしなく遠い先になりそうな気もするが。
670 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/11/03(火) 01:10:41 ID:keGpJrQm0
終わり。
ガクトがうまくつきあえそうな女の子を探していたらこんな話に。
ずーっとこのままで行きそうな気も。
てか、彼女が出来たらガクトじゃないような。