君の名は
619 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 23:17:05 ID:GW9H+m0u0
ゲンさんで一本投下
620 名前:君の名は・1[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 23:20:07 ID:GW9H+m0u0
ユートピア騒動が終わって、風間ファミリーで何が変わったかといえば
やはりゲンさんが正式にファミリーの一員になったことが一番だろう。
それまでも、メンバーの多くと同じ島津寮の住人ということで
それなりに接点は多いほうだったが
一緒に行動する仲間になった、となるとまたちょっと違ってくる。
「おはよう、ゲンさん。いつも早いね」「おはよー」
「テメェらが遅ぇんだよ。直江と椎名なんかまだいいほうだが
風間やクリスときたら……ちったぁ1年坊を見習えってんだ。なあ、黛?」
「わ、私はまだまだ年下ですから、皆さんより早く起きるのは当然です」
「黛……まだまだ、って、いつまでたっても年下は年下だぞ」
「はうっ!?」
こんな感じで、会話も進むようになったのだが……
「んー」
「なんだ直江。言いたいことがあるなら言えよ」
「いや、ゲンさんの俺たちの呼び方がね……何ていうの、堅い。堅いよゲンさん」
直江。椎名。風間。黛。
外人のクリスは別として、基本ゲンさんは苗字で呼び捨てだ。
それはファミリーに入ってから、仲間を呼ぶときにも変わっていない。
「仲間なんだからさー、もうちょっとフレンドリーに呼んでほしいわけ」
621 名前:君の名は・2[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 23:23:08 ID:GW9H+m0u0
「フレンドリー?……朝っぱらから、やたら高ぇハードル出してきやがったな……」
「そんなに難しく考えないでいいよ、源君」
「京も、『源君』じゃなくて、フレンドリーで」
「おおう……じゃあ私も『ゲンさん』で。私のことは「京』でいいよ」
「わかった……大和、京……へっ、なんか今さらって気もするがな」
「そんなことない。呼び方は大事。ね、ダーリン?」
「クッキー、呼ばれてるぞ」
「またそうやって大和は意地悪なこと言う。僕のことは、クッキーでいいからね、ゲンさん」
「あいよ……ん、ようやく来やがったな。遅ぇぞ……キャップ」
「あれ……何か俺まだ夢見てる?ゲンさんが俺のこと……」
「夢じゃねーよ。大和が、もうちょっと、フ、フレンドリーに仲間を呼べってぇからよ」
うわー。ゲンさん顔赤いよ。
「ゲ……ゲンさーん!!やったー、何か俺スゲー嬉しいー!」
「うお!?てめ何しやがる!?朝っぱらから抱きつこうとかするんじゃねえ!」
朝じゃなきゃいいらしい。覚えておこう。
622 名前:君の名は・3[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 23:26:10 ID:GW9H+m0u0
「おはよう、皆。すまない、遅れてしまった」
最後のクリスがやってきて、朝食が始まる。
「源殿、すまないがソースをとってくれ」
「ん……ほらよ」
クリスは元からクリスと呼ばれていたので、ゲンさんのほうは問題ないが
「クリス、さっき話してたんだけど
もうちょっとゲンさんとフレンドリーに会話しようってことで
まず呼び方から改めることにしたから」
「おお、それはいい考えだな!源殿、私は今まで通り、クリスでかまわないぞ」
「問題なのはお前だクリス」
「ん?何か問題あるのか?」
「いや……その、源殿ってのは、さすがに俺も堅苦しいと前から思ってた」
「お、そ、そうか……確かに、そうだったかもしれん。
すまない、気配りが足りなかったな。では……ゲ、ゲン殿」
「違ーよ!取れって言ってんだよ!!」
「む、殿だけでいいのか?……それでは殿、これからヨロシクな。
ハハハ、何だかドラマの殿様と家来みたいだな。
ム?しかしそれでは私が家来……?」
「……仲間になって、初めてわかることってあるもんだな」
623 名前:君の名は・4[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 23:29:39 ID:GW9H+m0u0
とりあえず、クリスには強制的に「ゲンさん」と呼ばせることにした。
「わ、私は下級生ですから、『源さん』でいいですよね?」
食後のお茶をいれながら、まゆっちがゲンさんに確認する。
「お、おお……いいんじゃねえか?」
「そ、それで私のことはですね……」
ちょっとまゆっちの方に助け舟出してやるか。
「『まゆっち』でいいよね?皆も『まゆっち』って呼んでるし」
「わかった………………ま、まゆ…………まゆ……」
まゆ、まで言って先に進めないゲンさん。
確かに、フレンドリーな感じ満載の呼び名。
このハードルは、今のゲンさんにはまだ高すぎたようだ。
「くっ……ダメだ、言えねえ!俺にはそんな呼び方……すまねえ、黛!」
どんだけシャイなんだよ。
ガックリと肩を落とすゲンさんの手に、まゆっちがそっと手を添える。
「源さんは、頑張りましたよ!私はそれだけでもう……ううっ!」
「いい話しダナー。オラも思わずもらい泣きだぜー」
ゲンさんはわりとマトモな人だと思っていたが
確かに、仲間になって初めてわかることってあるんだなぁ。
624 名前:君の名は・5[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 23:32:41 ID:GW9H+m0u0
呼称・まゆっちはゲンさんの今後の課題として、皆で登校。
「ウーッス!」
すぐにガクトが合流。ガクトは元々「ゲン」って呼んでたし
ゲンさんのほうも、すんなり「ガクト」と呼んで無事解決。
「おはよー」
多馬川べりでモロが合流。これも「ゲンさん」「モロ」で問題なし。
「よー、皆揃ってるなー」
姉さんが合流。ゲンさんは「モモ先輩」と呼ぶことにしたようだ。
「ふーん。じゃあ私は『ゲンちゃん』と呼ぼう。なー、ゲンちゃん?」
「……その呼び方ではあまり呼ばれたくねえな……」
ゲンさんは少し困っていた。
「じゃあ、『ゲンゲン』で」
「可愛い系はやめてくれ……」
もっと困っていた。ていうか、可愛いか、それ?
「これは慣れてもらうしかないよ。姉さんのワガママは止めようがない」
「意外に厳しいファミリーだな……」
626 名前:君の名は・6[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 23:35:43 ID:GW9H+m0u0
やがて遠くから走ってくる体操服。
「おっはよー、皆ー!」
「ようワン子」「おはよーワン子」
皆が「ワン子」と呼ぶ中で
「うす、一子」
ゲンさんだけが「一子」と呼んだ。
そういえば、ほとんどの人間を苗字で呼ぶのに
ワン子のことだけは前から名前で呼んでたな。
昔からのつきあいで、やっぱりワン子は特別なんだろうけど
関係も変わったことだし、呼び方を変えるのもいいかもしれない。
「ゲンさんも、この際『ワン子』って呼んだら?」
「別にいいだろ……京のことだって名前で呼んでるんだし」
「そうよね。それに、タッちゃんに『ワン子』って言われても、反応できないかも」
「あれー?なんで私の『ゲンちゃん』は嫌がって
ワン子の『タッちゃん』はスルーなんだー?」
「じゃあ、俺たちも『タッちゃん』って呼ぼうか」
「 ダ メ だ ! 」
急にゲンさんが声を荒げた。
皆驚いて足を止めてしまう。
627 名前:君の名は・7[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 23:38:45 ID:GW9H+m0u0
「あ、いや……すまねえ、つい。
その、ガキの頃の呼び名だからよ……
同じ釜の飯食ったヤツら以外に、その呼び方されるのは、ちょっとな」
たまに俺やキャップがふざけて「タッちゃん」って呼ぶと怒ってたけど
同じ苦労をした、また別の仲間の特別な呼び名ということか。
「まあ、嫌がる呼び方で無理に呼ぶこともないだろ。
しかし、ゲンちゃんもいろいろ複雑なんだなー」
「いや、その呼び方も嫌なんスけど」
「じゃあ、ミニャモト?」
「……もう何でもいいッス」
「なるほど……『ミニャモトさん』というのも、悪くありませんね、松風?」
「オラは『もっさん』とかいいと思うんだけどナー」
「悪ぃよ!ざけんなまゆっち!…………あ」
「今ゲンさん『まゆっち』って言ったー!」「おめでとう、初『まゆっち』!」「イェアー!」
「い、言ってねえよ!ついウッカリしただけだ!」
はしゃぎながら歩く男女十人。
こうして過ごす時間を積み重ねていけば、少しずつ距離も詰まっていくんだろう。
「ファイトだ、ゲンちゃん」
「だからその呼び方はやめろー!!」
628 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/10/26(月) 23:40:41 ID:GW9H+m0u0
終わり。この後ゲンさんは犬笛をもらってちょっと嬉しそうだったりする。
全キャラSS制覇は遠いなー……