不死川大和の決戦

389 名前:不死川大和の決戦[sage] 投稿日:2009/10/10(土) 23:17:55 ID:26wbTceA0
>>332の後日談的なモノを捏造してみたので投下
390 名前:不死川大和の決戦1[sage] 投稿日:2009/10/10(土) 23:19:41 ID:26wbTceA0
「…ただいま、心」
「…随分と遅かったのう」
心と式を挙げてから数年後のとある夜…。自宅の玄関を上がったところで嫁のジト目に迎えられた。
そりゃ、日付を跨いでからの帰宅となると、ご機嫌でいる訳がないよな。

「さて…遅くなった申し開きでも聞こうかの」
そう言いつつ、俺の胸元を軽く押す心。マズイ!これ、『崩し』じゃないか!?
頭では理解しているものの、重心を思わず前にかけ直す。…その瞬間右腕を掴まれ、次の瞬間には床に転がっていた。
うん。見事な一本背負いだ。…でも、重心を立て直さなかったら、足技で刈られていたな。
「こんな時間まで何をしておった!?しかも酒の匂いだけでなく、女物の香水の臭いがするとはどういうことじゃ!?」
まずいな…大変にご立腹だ…。投げる瞬間に袖を引いてくれて余りダメージはないが、きっちり残心も取っている。
説得に失敗したら、腕ひしぎのコンボに繋がるな、コレ…。

「勘弁してくれよ…。経産副大臣と会談するって伝えてただろ?」
「で、キャバクラなどに行ったと申すなよ?支払いは問題ない手法は当然とったのじゃろうな?
 政党助成金で奢られたなどとあっては、末代までの恥じゃぞ」
「一応、ちゃんとした店の座敷に上げて貰ったし、こっちの飲み代は自腹切らせてもらった。
 そりゃお酌の女性が付く店ではあったけど、心のお酌で飲む酒が一番旨い」
「…それならばよいのじゃ」
照れたのか、視線をずらしながら赤面する彼女。残心を解いて貰ったところ、彼女はすかさず正座し三つ指を突く。
「お帰りなさいませ…なのじゃ」
「ああ、改めてただいま。…ん」

二人して立ち上がり、帰宅のキスをする。
スーツを脱がせ、ネクタイを外してくれる辺り、彼女も素敵な奥さんになっているのは密かな俺の自慢だったりする。
「軽く何か食べるか?それとも風呂にするか?」
機嫌が回復したようなので、調子に乗って口説いてみる。
「あえてここは心一択で…」
「もう一度、投げられたいか?腹が減っていないなら、莫迦なことを言っておらず、風呂に入ってくるのじゃ!」
調子に乗ってたら怒られた。
「…全く、他の女の臭いを振りまきながら口説きにかかるなぞ、何を考えておるのじゃ」
391 名前:不死川大和の決戦2[sage] 投稿日:2009/10/10(土) 23:21:40 ID:26wbTceA0
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さて、心の言葉に従い浴室へ向かう。かけ湯の後に浴槽に浸かって寛いでいた頃、扉が開き、見慣れた人影が入ってきた。
「背中を流しに来たのじゃ、大和」
一糸纏わぬ姿に手拭いのみ持ってきた心。何と言うか、ほんと良い奥さんですよ、彼女。

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強すぎず弱すぎない適当な加減で背中を擦ってくれるこの一時は、至福の時間だよな。
…一度、男の浪漫たる泡踊りをリクエストした事があったのだが、彼女の身体では無理があったことは内緒だが。
「…声に出ておるぞ、大和。何と不埒なことを申しておるのじゃ!?」
ごめんなさい。ここで投げられたら本気で洒落にならないので、勘弁して下さい。

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「で、当初の予定どおり、あの男の下に馳せ参ずるのか?」
浴槽に身を沈める俺の膝の上で、寛いだ様子ながらも割と重要な話題を振ってきた。
ちなみにあの男呼ばわりされている人物、KOSの際には現役総理として名を馳せた国会議員のあの御仁である。
「ああ。勝ち馬に乗った方が楽かもしれないが、政策面では元与党の方が賛同できるしな。
 …何よりあのオッサンは俺達にとって大事な友達だろ?」
解散総選挙が迫りつつある現在、不死川の当主となった俺の元に与野党問わず出馬要請が来ていた。
以前より政治に興味がある旨を現与党幹部の蘇我氏にも、野党幹部の元総理にも伝えてあったことが功を奏したのだろう。
もっとも、俺の腹も既に決まっていた。
「俺の目指す国政は、侍の魂を取り戻すことだ。友の為に立つことも、義として大切な行いだろ」
「しかし、意外じゃな。お前は理念よりも勝敗を優先すると思っておったが」
まじまじと俺の顔を覗き込んでるくる心の頬を撫でる。…吸い付くようなすべすべの肌って撫で心地いいよな。
392 名前:不死川大和の決戦3[sage] 投稿日:2009/10/10(土) 23:22:58 ID:26wbTceA0
「別に負けるためだけに立つ訳じゃないさ。…九鬼や葵たちにも協力を取り付けた。
 信義のために立ち上がる人間という筋書きで宣伝してもらう予定だな」
もちろん俺個人だけでなく、参加予定の政党にも支援をしてもらえる予定である。

「政策だけでなポピュリズムを煽る策も取るか…。大方のメディアを傘下にした九鬼まで取り込んでみせるとは…喰えぬ男じゃの」
驚いたのか呆れたのか、ため息混じりにぼやく心。
「政策勝負だって負けるつもりもないさ。俺や俺が合流する政党の政策を下策とみれば、むしろ切ってくれと頼んでもいる。
 それに議席を取ることが勝利条件じゃない。この国を変えることが勝利条件だからな」
「…ややこしいヤツじゃの。まぁ良い。お前が当選しようがしまいが、此方はお前と共に歩むだけじゃ」
ニヤリと、勝気な笑みを心が浮かべる。

「お前は俺の勝利の女神になってくれると信じてるよ。さて政治の話の続きだが、不死川家も少子化対策を始めようか」
そう言いながら、彼女を抱き上げる。うん、小柄で華奢だから運びやすくて助かる。
「にょわ!?きききき急に何をするのじゃ!?」
「寝室に連れて行く。そしてナニをする」
じたばた暴れていた心も観念したか、再びため息交じりにぼやく。
「全く…。我ながらとんでもない男を婿にしてしまったのじゃ」
その後、心のため息が嬌声に変るまで、それほどの時間はかからなかった。
そして彼女が俺の子供を身篭る頃には、俺の胸には議員バッジが着けられていたことも追記しておく。

<完>