新必殺技開眼

314 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 23:54:58 ID:GUWzuath0
ではルー先生で一本
315 名前:新必殺技開眼・1[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 23:58:02 ID:GUWzuath0
「ただいま戻りました」

「おかえりー。まゆっちー、実家から荷物が届いてたぞー」

まゆっちには実家から頻繁に荷物が届く。
今日も、土曜日なのに寮でゴロゴロしていたら
留守のまゆっちあてに大きな荷物が届いたのだ。

「あ、ありがとうございます大和さん」

「お邪魔するヨ」

「あれ、ルー先生も一緒?」

意外な人物が同伴していた。

「やあ、直江。ちょっと頼まれたからネ。
 ……それが、黛の言っていた食材だネ?」

「はい、おそらく。かなり量があるようですね」

「何かルー先生に頼んだの?」

「はい、今日送られてきた食材は、中華料理向きなのですが
 下ごしらえなどの手順が今一つよくわからなかったので、ルー先生にお願いを」

「え、ルー先生って、料理できるの!?」

「ハハハハ、実は、料理は得意なんダ。川神院でも、たまに作っているヨ」

武道一筋、よく自分のことをそう言っているが、意外な趣味を持っていたようだ。
316 名前:新必殺技開眼・2[sage] 投稿日:2009/10/06(火) 00:01:04 ID:GUWzuath0
「私も、ワン子さんに相談して、教えていただくまでは知りませんでした。
 こう言っては失礼ですけど、ちょっとビックリですよね」

「料理が得意だなんて、あまり人には教えていないからネ。
 知っているのは、川神院の人間ぐらいじゃないかな?」

「もったいないな、料理できるってアピールポイントですよ」

「ハハハ、そんなことをアピールしてもあまりメリットがないよ。
 身内にときどき料理を振舞って喜ばれル、その程度でいいのサ。
 さあ、話はこれぐらいにして、始めてしまおう」

「はい、そうですね!大和さん、今夜の夕食は、そんなわけで中華になりますよ」

「じゃあ、せめて荷物を運ぶぐらいはしようか」

思わぬところでご馳走になりそうだ。
大きなダンボールを抱えて、まゆっち、ルー先生と台所に向かう。

「……これで、何人前ぐらいできそうなの?」

台所で箱を開いて取りだしてみたが
いつものことながら食材はかなりの量があった。
中には、見ただけでは何だかわからないものも……

「そうですね……10人前ぐらいにはなりますか。どうですか、ルー先生?」

「そうだネ……少し食材を足せば、メニューも増えて15人前ぐらいはできるよ」

「なるほど……じゃあ、足りない分は俺が買ってきますから
 皆を呼んで中華パーティにしたいんですが、どうでしょう?」
317 名前:新必殺技開眼・3[sage] 投稿日:2009/10/06(火) 00:04:10 ID:GUWzuath0
「おー、イイネー!」「はい、せっかくですから賑やかにやりましょう」

「作る人は大変そうですが、じゃあお願いします」

「では、必要な食材をメモにするヨ。七浜の中華街で買ってくるとイイ。
 あそこなら、たいがいのものは揃うからネ」

そんな感じで、急遽中華パーティが決定。
七浜へ電車で移動しつつ、皆に召集をかける。
メモには必要なものをどこの店で買うかまで指示されていたので
買いものはスムーズに終了。
島津寮に戻ると、すでに結構な人数が集まっていた。

「ルー師範代が中華を作ると聞いて飛んできたぞ!」「きたぞー!」

声をかけた川神姉妹は当然として

「ワシに声をかけんとは、どういうことじゃ直江!」

なんかジイサンまで来た。まあ、料理はたっぷりできそうだからいいか。

「ん、追加の食材か。ではその代金は、ワシが出しておいてやろうかの」

お、ラッキー。台所に食材を届けに行くと

「遅ぇぞ直江……ルー先生、これ、茹でればいいんだよな」

「あ、ゲンさん帰ってたんだ……手伝い?」

「いやぁ、源が手伝ってくれるのは助かるネー。それに手際もよくて、驚きだヨ」

「いや、まあ……たいしたことはしてねえっすから」
318 名前:新必殺技開眼・4[sage] 投稿日:2009/10/06(火) 00:07:16 ID:Xumk+2WE0
「おーい、大和ちょっとそこどいてくれー」

「おっと、悪い……って、なんでテーブル運んでるんだガクト?」

「なんで、ってこんだけ人数がいたら台所じゃ無理だろ。
 庭にテーブル出して、立食バイキングにしようってさ」

なるほど。ちょっと庭の様子も見ておくか……

「お嬢様、飲みものはこの辺りでよろしいですか?」

「うん。ケースで重ねておけば、邪魔にはならんだろう」

「クリス、マルギッテ呼んだのか」

「ああ、今日は買い物に付き合ってもらったからな。かまわんだろ?」

「私は、中華料理でも美味しくいただけます。カニ玉などには目がありません」

「そうですか」

「はーい、紙コップとお皿買ってきたよー……あ、大和おかえりー」

「お、お疲れモロ。そっか、庭で立食ならそういうもんも必要だよな」

「だねぇ。キャップと京はデザートを仕入れに行ってるよ」

なんかどんどん大掛かりになってきたな。

「ただいまー!前にバイトしてた店で、中華の点心仕入れてきたぜー!」

「ただいま大和。私は果物。よく熟れてるよ……思う存分食べてね」
319 名前:新必殺技開眼・5[sage] 投稿日:2009/10/06(火) 00:12:05 ID:Xumk+2WE0
こうして、準備は整っていく。それとともに、台所からいい匂いが漂ってきた。

「しかし、ルー先生が料理上手とは知らなかったぜ」

「ああ、俺も今日初めて聞いたよ。どんな料理が出てくるのか、楽しみだな」

「俺様、もう腹が減ってきたぜ……先にデザート食ってもいいかな?」

「デザートは食後に食うものだ。それ食ったらガクトはもう食い終わりってことだな」

皆がそれぞれに雑談をしていると

「さあ腹ペコども!まずは前菜盛り合わせからだー!」「からだー!」

姉さんとワン子が、大きな皿を両手にひょいひょいと歩いてくる。

「おおー!」「う…わー……」「スッゲー!こんなの料理屋でも見たことねーぜ!」

「直江、コップ回せ。まずは乾杯だろ」

何時の間にか台所からゲンさんとまゆっちも戻っている。

「ワシとルーはビールもらおうかの。未成年は、ウーロン茶じゃぞ」

「私はビールでも問題ありません」

「……いちおう、ウチの生徒じゃけど……まあ、今日はええわい。
 それじゃ、乾杯を……」

「……いや、乾杯ちょっと待って。ルー先生は?まだ台所にいるのか?」

一番頑張った人が乾杯のときにいないんじゃ、あんまりだ。
320 名前:新必殺技開眼・6[sage] 投稿日:2009/10/06(火) 00:17:01 ID:Xumk+2WE0
と、台所からルー先生の声が。

「私にかまわず、どうぞ始めてくださーイ!」

「いや、ルー先生も来てくださいよー!」

「今、火加減の大事なところだから、手が離せないヨー!」

「……ああいうヤツなんじゃ。もうちょっと、我が強くてもええんじゃがのぅ」

うーん……これが人柄とはいえ、ルー先生をおいて勝手に始めちゃうのもな。
よし。声を潜めて、ルー先生には内緒の提案。

(皆、コップ持った?じゃ、皆で台所に行こう。そこで乾杯しようよ)

(うん、いいアイデアじゃの直江。では皆、台所に行くぞい)

皆がコップ片手にソロソロと台所へ。ルー先生は料理に集中しているのか気づかない。

「それでは!」

「おおっとぉ!?……アレアレ、いつの間に皆台所に!?」

「美味しい料理を作ってくれる、ルー・イーに感謝を込めて!乾杯!!」『カンパーイ!!』

皆がルー先生にグラスを差し上げる。
ルー先生も笑いながら、振るっている鍋を乾杯するかのように差し上げ……

「ホアッチャァ!?」

鍋の中身を、頭からかぶってしまった。
321 名前:新必殺技開眼・7[sage] 投稿日:2009/10/06(火) 00:20:02 ID:Xumk+2WE0
その後はてんやわんやの大騒ぎ。
幸い、ルー先生はたいした火傷もせず
その後は食事に加わったり料理に戻ったりで忙しそうだったが
終始にこやかに笑っていた。

やがて宴も終わり、一人また一人と場を去っていく中で
ルー先生はビール片手に庭で何事か考えているようだった。

「ルー先生?今日はごちそう様でした」

「おお、直江。いやいや、お粗末様でしタ……今日はネ、いい勉強になったヨ」

「……何がですか?」

「人のためになるコト、とても大事ネ。でも、それだけじゃダメ。
 自分が幸せになっていなければ、かえって周りに気を使わせてしまう。
 自分も、周りも、同じように幸せになる。コレが一番なんだとネ」

「そうですね……ルー先生、お嫁さんもらうとかどうですか?」

「それは飛躍しすぎだヨ。
 ……それよりもネ、今日、鍋の中身をかぶってしまったとき。
 あの動きを、拳法の技に応用できそうだと思ったんダ!
 これはスゴイ収穫だよ!新しい必殺技になるかもしれなイ!」

……お嫁さんは、無理かも。
でも、技の話をするルー先生の目はキラキラと輝いている。
これがルー先生の幸せなら

「良かったですね、技が完成したら、是非見せてください!」

応援しますよ、ルー先生。
322 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/10/06(火) 00:22:17 ID:Xumk+2WE0
終わり。ほのぼのルー先生。
鍋の中身をかぶってどんな技ができるのかはナゾ。