ウメ先生の憂鬱

157 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:03:31 ID:zcDBd6Xy0
ウメせんせー投下
158 名前:ウメ先生の憂鬱・1[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:06:34 ID:zcDBd6Xy0
「おや……」「む……?」

宵の口の川神駅前、商店街。珍しい組み合わせの二人が出会った。

「マルギッテ、珍しいな、こんなところで」

「小島先生こそ、このような場所で何を?」

「視察だ。夏だからといって、羽目を外しすぎた生徒がいないかどうかな」

「ご苦労ですね」

「マルギッテは、島津寮に行っていたのか?」

「ええ、クリスお嬢様に届けものをして、基地に戻るところです」

「そちらも、お目付け役ご苦労なことだな。
 もっとも、クリスは真面目だから、お目付けが必要とも思えんが」

「ええ、お目付けというより、悪い虫がつかないように、という護衛のようなものです」

「悪い虫、か……つくだけマシな気もするが」

ため息をつくウメ先生28歳独身・彼氏いない歴=年齢。

「どうかしたのですか?……こう言ってはなんだが、貴方らしくない」

「ああ、うむ……こう、見まわっているとな、色々考えてしまうのだ」

「?何かあったようですね」
159 名前:ウメ先生の憂鬱・2[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:10:10 ID:zcDBd6Xy0
「お……なんだ珍しい組み合わせだな。何やってんだ?」

「ん?……おお、忍足か。いや、たまたまバッタリ会ってな」

TシャツにGパンというラフな格好の忍足あずみという、さらに珍しい顔が加わった。

「そちらこそ、英雄の供をしていないのは初めて見ます」

「うむ、メイド服以外の忍足は初めて見るな。休暇でももらったか?」

「ああ、英雄様は今日明日で、九鬼財閥の人間ドックに入られててな。
 今は医療スタッフがつきっきりになってる。その間、専属のアタイは休みなんだが……」

「どうした、浮かぬ顔だな?」

「正直、休みをもらってもどうしていいかわからなくてな……
 酒でも飲もうかと出てきたってわけだ」

苦笑いを浮かべるあずみ。

「酒か……忍足なら、飲酒もかまわんが……」

「あー、そうだ……どうせならウメちゃんとマルもつきあえよ」

「ウ、ウメちゃん!?おい忍足……!」

「あーいいだろ呼び方ぐらい、かてーコト言うなよ……マルは?」

「貴方にマルと呼ばれるのは釈然としないが……
 小島先生とは話をしてみたいと思っていた。つきあおう」

「んじゃ決まりな。たまにはこういうのもいいだろ」
160 名前:ウメ先生の憂鬱・3[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:14:15 ID:zcDBd6Xy0
こうして、妙齢の美女3人の突発飲み会スタート。

「……とはいったものの、この辺の飲み屋よく知らないんだよなアタイ」

「それなら、私に任せておけ……そうだな、和泉家あたりでいいか」

「意外です。詳しいのですね」

「まあな、けっこうこの辺は飲み歩いている」

「へえ……お堅いばかりかと思ってたぜ」

「私だって、生身の人間だ。酒を飲みたいときもあるのさ。
 生徒たちには、そんな所は見せられんがな」

「いや、アタイらも生徒だけどな」

ウメ先生の引率で商店街を歩き出す3人。

「ここだ」

「……って焼き鳥屋かよ!」

「ん?焼き鳥は嫌いか?」

「いや、そういうわけじゃねーけど……
 女3人なんだし、もうちょっと小洒落た店とか……まあ、いいか」

「これが日本のクナイペ(居酒屋)ですか……」

「ああ、私のお気に入りの店なんだ。
 さ、入った入った」
161 名前:ウメ先生の憂鬱・4[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:18:11 ID:zcDBd6Xy0
お気に入りと言うだけあって、暖簾をくぐって店に入ると
ウメ先生は手馴れた感じで注文していく。

「それでは……乾杯!」「カンパーイ!」「Prost!」

3人がビールの大ジョッキを、グイ、と一気に傾ける。

「んっ……はーーーっ!!」

「お、いい飲みっぷりだねー」

「ハハハ、これは変なところで誉められたな。
 ……おーい、生大、お代わりだー!」

「ペース早いなー。あ、梅サワーこっちー」

そうこうするうちに、3人とも次第に酔いが回り始める。

「……真面目に仕事一筋でやってきても!男には全然、ぜーんぜん評価されんのだ!
 見回りで、学院生のカップルがやたら目について、もう……やってられんのだ!」

「ウメちゃんにはヒゲがアタックしてんだろー」

「いや、あれはない。あれはないわ……」

「ぜーたく言ってんなよー。アタックかけてくれるだけ、いーじゃんよー」

「……男がいない、というのが、そんなに寂しいものなのだろうか……?」

「マルはまだ若いからなー。まだ間に合うから、男作っとけー?」

「作っとけ、と言われても……正直、興味がありません」
162 名前:ウメ先生の憂鬱・5[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:21:17 ID:zcDBd6Xy0
「興味がないといっても、好みのタイプとかはあるだろう?」

「タイプ……ですか?」

首を傾げるマルギッテ。

「たとえば、年下がいいとか、オジサマ系がいいとか、だな」

「いや……よくわかりません」

「ホンットに、興味ねえのかよ……あ、お前ひょっとして……女のほうがいいとか!?」

そう言いながら、あずみがマルギッテから体を遠ざける。

「いえ、それはもっと理解できません。非生産的です」

「生産的とかいうほうがわかんねーよ!」

「何故です?優秀なオスから遺伝子を受け取り、子孫を作るのが目的なのでは?」

「……すごい考え方だな……まあ、確かにそういう面もある。
 だが、伴侶を探すというのは、子孫を作るだけが目的ではないぞ」

「たとえばさー、マルはクリスと一緒にいると気持ちが和らぐだろ?」

「ええ。本当に可愛いらしい。妹のように思っています」

「そういう気持ちにさせてくれる男がいたらなぁ、ってことだよ」

「なるほど……少しわかったような気がしますね」
163 名前:ウメ先生の憂鬱・6[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:24:19 ID:zcDBd6Xy0
「まあ、マルギッテはまだ若いからな……これからだ、これから」

「後のないウメちゃんは、もうこの際ヒゲでいーんじゃねーの?」

「だから、あれはないと言っただろう!ていうか、後がないとはなんだー!!」

「じゃあー、どういうのがイイのよー、ウメちゃんとしてはー?」

言われてちょっと考えこむウメ先生。

「んー……どちらかというと、年下がいいな」

「おー、いいねー。やっぱ年下を愛でるのがいいよなー」

「うむ。あと、利発なほうがいいな!賢い子!」

「年下で賢い……葵冬馬とか、ですか?」

「あー、あれはダメだ。女性慣れしすぎだろあの若さで。
 もっとこう……純情なのがいいな」

「だよなー。年上としては、こっちがリードしてーもんなー」

「それで、素直で控えめだったりすると、こう……可愛がりたくなるなぁ」

「いやー、控えめじゃなくてもいいだろー?ハッキリ自己主張するほうがアタイはいいなー」

「普段が控えめでも、やるときはやる、みたいな感じがいいんだ、私は」

「……総合すると、小島先生の好みは
 年下で賢く素直、控えめだけどやるときはやる男の子、と。ふむ……」
164 名前:ウメ先生の憂鬱・7[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:27:23 ID:zcDBd6Xy0
「まあ、そんなのが都合よくいれば、苦労しないんだがな!おわり!ハハハハハ!」

「いえ、ピッタリなのがいると思いますが」

「ハハハハ……ハ?」

「直江大和が、先生の好みではありませんか?」

「な……!」

「あー、ウメちゃん今ビクッとしたー!図星?図星ー?」

「してない!ビクッとなんかしてない!だ、だいたい直江は私の生徒だぞ!?」

「障害があるほうが燃えるかもよー?」

「か、からかうな二人とも!……私が……直江と、だと……」

「まあ、彼は真面目一辺倒ではないようなので
 小島先生には合わないかもしれませんね……小島先生?」

「マズイよな……でも……確かにいいよな、うん……」

ウメ先生は、顔を赤くして、うつむいたまブツブツと独り言を始めた。

「あーあ、ウメちゃんスイッチ入っちゃったぞ。どうすんだよ、マル」

「いいではないですか。具体的な目標があったほうが、張りあいが出るというものです」

「いやでも……年の差が……そりゃまだ自信はあるが……」

ウメ先生の独り言は、しばらく続いていた。
165 名前:ウメ先生の憂鬱・8[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:30:26 ID:zcDBd6Xy0
翌日。

(あ~、直江の顔をまともに見られんなぁ……)

自分の教え子を、男として意識していたことを思い知らされ
朝のHRでは、大和の顔を見ないように、目線をあちこちに泳がせたりしていた。
昼休み、気分を落ちつけようと屋上に上がってみる。

(ん?あれは……マズイ、直江と川神百代か!)

「あー、ウメ先生……こんちゃーす」

百代は、気ですでに察知していた。

「あ……ああ、川神か。ちょっと気分転換に、外の空気を吸いに来ただけだ。邪魔したな」

そそくさと退散しようとして、そして思いなおす。

(今までも……こんな風に、逃げていたのだろうか、私は)

ちら、と二人の様子を見てみる。大和とじゃれあう百代。
自分にも、ああいう機会はあったのかもしれない。
ただ、自分はその機会に手を差しださなかった。この機会も、またそうやって逃すのか。

「……ウメ先生?」

年の差とか。立場とか。逃げ出したくなるものはいっぱいあるけれど。

「気が変わった……私も、そこ、いいかな?」

28歳だって、心は乙女。だから、今度は真剣で立ち向かってみる。
胸のときめきが、止められないのなら。
166 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 00:32:43 ID:zcDBd6Xy0
フツーに恋愛するウメ先生ルートがあってもいいと思った