遭遇
75 名前:遭遇・1[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 23:25:29 ID:LP7m4gtp0
「何か面白いことねーかなー」
板垣三姉妹が、今日はいつもたむろする親不幸通りではなく
川神駅前にでばっていた。
「この雰囲気は、アタシらには合わないねぇ。ま、気分転換にはなるけど」
「ふぁ……あ……多馬川のほうに行こうか~」
「それ、辰姉ぇ寝るだけだろ。あーあ、ゲーセンでも行くかなー」
歩いていく姉妹のうち、長女の亜巳の足だけが不意にピタリと止まる。
「!……これは……」
「どしたの、亜巳姉ぇ?」
「いる……近くに、とんでもないヤツが……」
亜巳の真剣な表情に、辰子と天使も目を閉じて集中し、気を探る。
「……んー、何も感じねーよ?気のせいじゃね?」
「ZZZzzzz……」
「寝るなよ辰姉ぇ!」
「アンタたちにはわからないだろうね……
でも、アタシにはわかるのさ。
とんでもないヤツが、すぐそばに来てる……」
「ちょ、どこ行くんだよ亜巳姉ぇ!?」
76 名前:遭遇・2[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 23:28:33 ID:LP7m4gtp0
「久しぶりの休日だってのに、なんで女3人で遊ばなきゃならんのかねぇ」
「まあまあ、いいじゃないおケイ。
川神って隣街なのに3人で来たことなかったからさー」
「ま、そうだけどよ。
あーあ、どっかにいい男落ちてないかなー……
夢のとこのさ、上杉でも呼ぼうか?いちおう、男だろ?」
「レンくんは仕事があるから無理だよ。っていうか、一応、ってヒドイよね」
「ちぇ……卒業してからアイツの顔全然見てねーから
どうしてるかなー、とか思ったんだけどな。
……で、オマエは一人で悶々と何やってんだ、ミィ?」
「あ、ふ……っ……来る……来ちゃう、の、ぉっ!」
「ちょ、ミィ?大丈夫、前より激しくなってない?
ぐ、具合でも悪いの?」
「オイオイ、駅のそばなんだぜ。
こんな人目の多いところで勘弁してくれよ……」
「ハァ……近づいてる……こっち……」
「?何か……来てるの?」
「うん……私の、運命の人が、すぐそこに来てる」
「なんだよその、言葉だけならロマンチックな展開……
っておい、どこ行くんだミィ!?」
77 名前:遭遇・3[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 23:31:36 ID:LP7m4gtp0
(……いる!この先にいる!)
亜巳の足取りが駆けだす一歩手前まで速くなる。
そして人ごみの中
同じようにこちらを目指して、早足で歩いてくる女の姿に目をとめた。
いた。間違いない。
亜巳が長年探しつづけた存在。
その姿を、まじまじと見つめた、次の瞬間。
「ア……ア、ア、ア……アハァアッ!!」
ミィが甲高い叫び声とともに、その場にへたりこんだ。
(!コイツ、アタシのSな視線だけでイきやがった!)
そういう亜巳も、愉悦に膝が笑っている。
「はぁ、はぁ、はぁ……あ……」
息を荒くしたまま、ミィが濡れた瞳で亜巳を見上げる。
(あ……ヤバ、こんな目で見られたら……ウソ、アタシ……イ、くぅ……!?)
ブルブルと体を震わせて、亜巳が軽い絶頂に達する。
立ったままなのは、Sであるがゆえか。
「ん……ふぅ……お……オマエ、名前は?」
「ミ……ミィとお呼びください、ご主人様……」
「よし……じゃあついといで、ミィ」
78 名前:遭遇・4[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 23:34:50 ID:LP7m4gtp0
二人の気配に気圧されたのか
遠巻きにしていた同行者たちが我にかえる。
「ちょ、ミィ?誰、その人?」「亜巳姉ぇ、どうしたんだよ!?」
「……ごめん、夢、ケイ……私、ご主人様と行くから……」
「なんでいきなり出あった人がご主人様になってんだよ!?」
「そういうことだ、辰、天……
しばらく帰らないかもしれないけど、後は頼んだよ」
「え……マズイって亜巳姉ぇ!今日は師匠が稽古つけてくれる日だぜ!?」
「まあ、上手く言っておいておくれ、じゃあね……ほら、行くよブタ!」
「ブヒィ!どこまでもお供いたしますー!」
あっけに取られる4人を残し
亜巳とミィがフラフラとしながら人ごみの中に消える。
「行っちゃったねー、あはははー」「私たちも帰ろっか、ケイ……」「なんなんだ、いったい……」
「辰姉ぇ、ヤバイって……師匠、稽古サボるとスゲェ怒るじゃん……」
「んー、アタシもさぼっちゃおうかなー。稽古とかめんどいしー」
「げ、冗談やめてくれー!とばっちりがウチ一人に来るやんか!」
「んー……天ちゃんもサボっちゃえばー?」
「うう……カーニバル近いってのに……雲がくれでもするしかねーかな、こりゃ」
79 名前:遭遇・5[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 23:38:07 ID:LP7m4gtp0
川神市街、廃工場後。ノートパソコンの画面に向かう男の姿があった。
『おや。今日は釈迦堂さんだけですか。他の人はどうしました?』
「いや、なんか行方不明になっちまって」
『……それは穏やかじゃないね。官憲に捕まったという情報はないが……』
「稽古にも顔ださねーわケータイも繋がらないわで、コッチもマジ困ってるんですわ」
『もうすぐカーニバルだというのに……』
「それなんすけどね、カーニバル、もうやめちゃいません?」
『は!?……いきなり何を言いだすかな』
「いやぁ、あいつらいねーと、あと雑魚ばっかりでしょ?
使える人手が足りねーと、いざってとき困りますんで」
『いやいや、人手ならこちらで何とかするって!』
「……なーんかねー、弟子どもは姿見せねーし
いつも行ってた梅屋は店閉めちゃうっていうしで、テンション下がりまくりなんですわ」
『いや、梅屋は関係ないでしょ!』
「んじゃそういうことで、失礼しますわ、大将。梅屋のない街には、未練もありやせんしね」
『どんだけ梅屋好きなんだよ!』
――こうして、運命の出あいのおかげで、川神の街は守られたのであった。
ありがとう、アナスタシア・ミスティーナ。ありがとう、ハードM――
80 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/19(土) 23:40:09 ID:LP7m4gtp0
終わり。自分で書いてて
なにこの超展開、と思ったけど気にしない。