Possession

29 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:07:00 ID:YmwFcJfc0
まゆっち物投下
30 名前:Possession・1[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:10:31 ID:YmwFcJfc0
「大和さん、大和さん」

ヒマな日曜日、寮の居間でぼんやりTVを見ていたら
まゆっちに呼びかけられた。

「ん?」

「これを見てください」

「これ、って……松風じゃん」

まゆっちが嬉しそうにテーブルの上に置いたのは
いつものケータイストラップだった。

『いいからいいからー、ちょっとオラに熱視線送ってみー』

「……別に何も変わってないと思うが」

と思ったのもつかの間

コト……

「え……?」

松風が……動いた?目の錯覚か?

コト……コト…コトコトコトコトコトッ!

「うお!?」

松風がひとりでに疾走してる!?
31 名前:Possession・2[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:14:11 ID:YmwFcJfc0
『イェアー!オラは自由だー!』

「なんだコレ……ちょ、ちょっと触ってもいい?」

「はい、どうぞ」

『ヘンなとこ触るなよー。オラの操はまゆっちに捧げてるんだー』

別に糸とかは……ついてないな。
何か細工がしてあるようにも見えない。
その辺は俺も時々使う手だから、何かあればわかるはず……

「どういう手品だよ……」

『手品なんかじゃねー、オラだってどんどん進化してるんだぜー』

「ふふふ、さすがの大和さんもビックリですね」

まゆっちは得意げだ。が、待てよ……

「確かに驚いたけど、これ、見せるのは俺が初めて?」

「はい、そうですが?」

「じゃあ、あまり他の人には見せないほうがいいと思うぞ。
 なんかオカルトっぽくて、下手すりゃドン引きされる」

「そ、そうでしょうか……」

『いつになったらオラの市民権は確立するんだー!』

「そんなものは永遠に確立しないからな」
32 名前:Possession・3[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:20:50 ID:YmwFcJfc0
「……ということが、昨日あったんだ」

「ふーん?どうでもいいけど、最近お前ら仲いいよな」

翌日、学院からの帰り道で姉さんと一緒になったので
多馬川沿いを歩きながら、ちょっとまゆっちのことを話してみた。

「あー……それはともかく
 武道の達人になると、そんなことまでできるもんなの?」

「ああ、私はできるな。気を使って動かすんだ」

やっぱりそうか。

「ちょっとあそこに浮いてる空きビンを見てろ」

姉さんが遠くの水面に浮かぶ空きビンを指差すと
そのまま大きく息を吸い、そして

「はっ!」

ザバーン!

掛け声とともに、水面が爆発した。

「ほら、動いただろ?」

「動いたというか周りごと吹き飛んだというか……」

「細かいことはいいんだよ!」

あくまで豪快な姉さんだった。
33 名前:Possession・4[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:24:07 ID:YmwFcJfc0
「ま、原理は同じだ。いわゆる遠当てってやつだな。
 まゆまゆは、たぶん送り出す気を絞りこみ
 流れを微妙にコントロールしてたんだろう。
 私はそういう細かいのは苦手なんだが、ジジイは得意らしい」

「へえ。やっぱすごいんだ、まゆっち」

「ああ、たいしたものだが……ちょっと気になるな」

「何が?」

「動かしてたのは、松風だろ?
 ああいう愛着があるものとかは、操りやすい反面
 あまりやりすぎると気が吸い取られる危険がある」

「?……吸い取られる?」

「そうだ……ほら、刀で『妖刀』ってのがあるだろ?
 使うたびに、刀に力を吸い取られて衰弱していくっていう。あんな感じ」

「あ、なるほどよくわかった……ってヤバイじゃんソレ!」

「普通、こういう技はコツとか教えを受けないと覚えられなくて
 教えを受けたときにそういう注意も受けるんだ。
 黛十一段なら、たぶんこれぐらいは教えられるだろうが
 最近、まゆまゆって実家に帰ったっけ?」

「いや……お盆に帰ったきりじゃないかな」

「だよな……だとすると、自分一人で覚えちゃったか……
 それもまたすごいが、ちょっと注意しておいたほうがいいかもな」
34 名前:Possession・5[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:28:08 ID:YmwFcJfc0
「そういやまゆっち、今日は基地に寄ってから帰るって」

「まずいな。秘密基地にいれば、誰かしらやってくる。
 そのたびに技を見せていたりすると……」

見せびらかしたがってたっぽいからなぁ。

「まあ、私たちも行くか。皆より先につけばいいわけだし」

そのうち、秘密基地の前まで到着。

「……んー?」

「どしたの?」

「いや……誰がいるかなーって気を探ってみたんだ。
 まゆっちが一人でいるようなんだが、やたら気が弱い」

「寝てるとか?」

そのまま部屋に入ってみれば
まゆっちは、ソファにもたれて眠っていた。

「なんだ、やっぱり寝てただけか……」

「あー、見ただけだとそう見えるな……
 ちょっと触って、体温とか確かめてみろ」

「え?体温って……う、冷たい!?」

「寝てるんじゃない。魂が飛んじゃってるんだ」
35 名前:Possession・6[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:32:16 ID:YmwFcJfc0
「魂が……?」

「よく幽体離脱ってあるだろ。アレに近い状態だな」

生気がほとんど感じられない。脈拍も呼吸も弱いし少なくなってる……
ふとテーブルの上に目をやると、ぽつんと松風が置かれていた。

「皆に見せるために、動かす練習でもしちゃったんだろうか」

「そんなとこだろうな……さて、えらいことになったなぁ、まゆまゆ」

姉さんがかがみこんで、なぜか松風に語りかけた。

『はいー……どうすればいいんでしょうか……』

え……なんだ空耳かな。
今、松風がしゃべったような。
本体であるまゆっちが気を失っているんだから
松風がしゃべるわけは……

『えっと……松風の中ですが、私です』

「うお!?」

しゃべるわけはないのにしゃべっていた。
おまけに、カタカタと揺れるように動き回っている。

「えーと……どういう状況なんだろう?」

「まゆまゆの本体から抜けた魂が、松風の中に入ってるんだ。
 気で操ろうとして、勢い余って魂まるごと松風に込めちゃったんだな」
36 名前:Possession・7[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:36:20 ID:YmwFcJfc0
「だ……大丈夫なのかまゆっち!?」

『なんだか、頭の中まで木になったみたいですー。カチンカチーン!』

……意外に余裕だな。
このまま松風の中で生きていく……わけにもいかないか。

「仮にこのまま戻れなくなったりしたら
 いろいろ困るんじゃないかな。体が動かないわけだし」

「そりゃ困るだろうが……
 私も、こんな事態は初めてだから、どうすればいいのかわからん。
 ジジイに電話できいてみるから、ちょっと待っててくれ」

『よろしくお願いしますー』

姉さんが部屋の隅でケータイで話し始める。
しかし……松風のボディの中にまゆっちがいるということは
まゆっちのもう一つの人格ともいえる、松風の精神はどうなっているのだろう?

「なあ、まゆっち。松風はどうしているんだ?」

『あ、一緒に入っていますよ』
『定員オーバーで、オラ今にもはじき出されそうだー』

口調を変えているあたり、芸が細かいというか……

「とりあえず、松風が代わりにまゆっちの体の中に入るとかできないかな」

『オラが人間に?いつかそういう日がくると信じてたんだー!』

「……やっぱそれナシ」
37 名前:Possession・8[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:40:34 ID:YmwFcJfc0
「……よし、わかったぞ。
 まゆまゆ、松風を動かしたときと同じ要領で、自分の体を動かしてみろ」

「ああ、なるほど、逆にやればいいだけなんだ」

意外に対処法は簡単だった。

『う~、重くて、動き・ま・せ・んっ!』
『重いっていっても、別にまゆっちが太ってるとかじゃねえんだからな』

だよなぁ。気で動かすったって
ケータイマスコットと人間一人じゃ重さが違いすぎる。

「実際に動かなくてもいいんだ。
 動かそうと気を送り込み続けるのが大事らしいぞ」

『わかりました。んんんんんーっ!』
『オラまで息が詰まりそうダゾー』

……マジメにやってるのか遊んでるのかわからん。

まゆっちはしばらく悪戦苦闘していたが、元には戻らない。

「んー……こうなると、次の手かな」

「次はどうするの、姉さん?」

「本体の方に刺激を与える……こんな風に、な」

姉さんが意識のないまゆっちに寄り添うと
その体をエロい手つきで撫で回し始めた!
38 名前:Possession・9[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:45:04 ID:YmwFcJfc0
『はぁう!?』
『おおっとー、無防備なまゆっちのボディが蹂躙されていくぜー』

「……本当にソレ有効な手段なんですか?」

「モチロンだ。抜け出ているとはいえ、まだ肉体と魂は繋がってるからな。
 だからこうして刺激を与えれば……フフフ……いい体だ、まゆまゆ……」

まゆっちの、制服の上からでもその豊かさがうかがえる乳房を
下からすくい上げるように揉みはじめる。

「……ゴクリ」

「……混ざるか?」

『だだだだ駄目です大和さんまだ早すぎます!』
『いきなり3Pとかパねぇー!』

「し、刺激を与えるために仕方がないのなら……」

「エロい舎弟だ……いいぞ、こっち来い」

姉さんと俺でまゆっちを挟むようにしてソファに座る。

『はわわわわ、や、大和さんまでっ!?』
『もうまゆっちはここで散るのかー!?』

ああ、でも。
せっかく俺に好意を持ち始めてくれたまゆっちの体に
意識を戻させるためやむをえないとはいえ
こんなイタズラまがいのことをするのは、男としてどうなんだ。
39 名前:Possession・10[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:49:08 ID:YmwFcJfc0
「……よく考えたら、エロい刺激じゃなくてもいいじゃん」

「ヌ?」

俺はまゆっちの耳元に顔を寄せた。

「まゆっち、起きろよー!」

「こらこら、そんなんで戻したって面白くないだろー!」

「姉さん、放っておくとどんどんエスカレートしそうだし」

「ほう……私を止めようってわけか……?
 邪魔するなら、お前の意識もなくしちゃう、ぞっと!」

パシィッ!!

「……え?」

乾いた音がした。
俺の顔面に、目にも止まらぬ速さで繰り出されていた姉さんの拳。
そしてその拳を……まゆっちの掌が受け止めていた。

「……あらっ?……戻れ……た?」

「……うん、そのようだな。
 大和のピンチとみて、必死になったおかげで魂が戻ったんだろう。
 松風が一緒に出てくるあたり、なんかのん気だったから
 ちょっと必死になってもらおうと思ったんだが」

なるほど。
半ば計略、半ばシュミといった作戦だったのか。
40 名前:Possession・11[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:53:20 ID:YmwFcJfc0
「しかし、大和のピンチで必死になるとか……
 いやあ、愛されてるなぁ、舎弟……このぉ!」

「ぐはっ!?」

今度の姉さんのボディブローは、まゆっちは防いでくれなかった。

「あうあう……」

顔を真っ赤にして、それどころではないらしい。

「ま、私としては、戻れればよし
 戻れなくてもまゆまゆの体を堪能できるってわけで
 どっちでもよかったんだけどな」

「まあ……ゲホゲホ……戻れてよかったよ、まゆっち」

「あーあ、なーんか見せつけられたみたいで面白くなーい」

「オラは別に大和がイタズラするのはかまわなかったんだぜー」

「……まゆっち……今の、松風になってる」

「はぁう!?」

「本音か!それが本音か!この、エロ1年坊め!」

『おっと、オラの魂の一部がまゆっちに移っちまったようだぞ』

「め、珍しいこともあるものですねっ」

遅ぇよ。自制しろ、まゆっち……
41 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 18:55:39 ID:YmwFcJfc0
おしまい。
Possessionには「霊などが取り付く」という意味と
「自制」という意味があるって説明しないとわかりにくいオチでスマソ。