二人の部屋

14 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 15:24:46 ID:ZuCZQgSu0
クリスルートアフターっぽいもの投下
15 名前:二人の部屋・1[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 15:27:47 ID:ZuCZQgSu0
「短い間ではあったが、離れるとなると寂しいものだな」

「そうだな……二人が初めて同棲した部屋だもんな」

日曜日。
俺とクリスは親不幸通りの二人の部屋で
荷物の整理をしていた。

みんなのおかげもあって、俺とクリスの川神学院への復学は認められた。
川神学院の学生の身分に戻ったことで
二人ともまた島津寮に戻れる。
仕送りも再開されることだし
麗子さんもこころよく受け入れてくれたのだが
そうなると、二人で借りたこの親不幸通りの部屋は無駄になってしまう。

この部屋から二人で学院に通うのは
流石に認めてもらえそうにないし
クリスと話しあって、結局引き払うことに落ちついた。

「これは……リサイクルショップにでも引き取ってもらうか」

今日すぐに荷物を移動させるわけではないが
島津寮にもって戻るもの、秘密基地に運ぶもの、処分するもの、と
とりあえず部屋の中のものを行き先に応じて仕分けしていく。

「次は台所まわりだな」

「うん……」

台所に立ったクリスが、コンロの前で物思いにふけり始めた。
料理では、けっこう苦労していたからな。
その分、思い出でもあるんだろう。
16 名前:二人の部屋・2[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 15:30:56 ID:ZuCZQgSu0
「このガスコンロは、火力調節がなかなかうまくいかず、厄介だった」

「ずいぶん焦げたおかずを食わされたよな」

「おまけに、換気扇の調子も悪くて、しょっちゅう部屋中煙だらけになった」

「いや、そもそも焦がさなければ煙は出ないからな?」

「焦げついたフライパンの汚れを落とすのに、随分と苦労したものだ」

「いやだからそもそも焦がしてる時点で……」

「あーもう!だから、コンロの調子が悪かったと言っているではないか!」

「見ていた限り、コンロの調子というより、常に火力最大だったっぽいが」

「ぐ……き、騎士は常に全力なのだ!」

「そんなところで騎士道を持ちだされてもな」

「というか、気づいていたなら止めればよかっただろう!」

「だって『いいから私に任せておけ』とか言って何もさせなかったじゃん」

「う……とにかく、人がせっかく感傷に浸っているのに、いちいち茶々を入れるな!
 まったく……こんな風に、ケンカもしたっけな……大和のせいで」

「俺はお前のヘマに突っ込んでたに過ぎない」

「だからそういう……!もう、知らん!」

相変わらずだった。
17 名前:二人の部屋・3[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 15:34:00 ID:ZuCZQgSu0
一段落ついたので、二人並んでベッドに座って休憩。

「卒業したら……」

ふいに、ポツリとクリスがささやく。

「うん?」

「川神学院を卒業したら、またここで暮らしたいな」

クリスは、俺が思っていたより、この部屋に愛着があるようだった。

「コンロのことはいいのか」

「だから、それはもう忘れろ!
 まじめな話、卒業すれば島津寮を出て……その、また二人で暮らすのだろう?」

クリスは卒業まで、いや、その後もずっと
俺と一緒に日本で暮らす気でいる。まあ、もちろん俺もそうだが。
そして卒業というのも、そう遠い先、というわけでもない。

「でもな、それまでこの部屋が空いてるとは限らないぞ」

「それなら、父様に頼んで、ここの家賃も払いつづけてもらったらどうだろう?」

いまだに、時々お嬢様思考が出てくるなぁ。

「甘えすぎだろう。住んでもいない部屋の家賃とか無駄だし」

「む……確かにそうだな……」

クリスがちょっと肩を落とした。
18 名前:二人の部屋・4[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 15:37:05 ID:ZuCZQgSu0
その肩を抱き寄せて、ささやく。

「俺は、お前さえ一緒にいてくれれば、どこでもいい」

俺だって、この部屋に名残惜しさは感じている。
けど、それは「クリスと二人で暮らした部屋」だからであって
それはこの先、クリスさえそばにいてくれるなら
どこでも同じように大事な場所になるはずだ。

「うん……そうだな。私も、大和がいてくれればどこでもいい」

二人の顔が近づく。

「……この部屋での最後のHでもしておくか」

「え?ちょ、待て、まだ真っ昼間だぞ?」

「かまうか。隣が留守なのは確認済みだ」

「私はかま、うむぅ!?」

うるさい口をキスで塞いだときだった。

ピンポーン

無粋なドアチャイムが鳴る。

「や、大和!誰か来たから!
 ……はーい、今あけまーす!」

パッと体を離し、クリスは立ち上がって玄関に行ってしまった。
せっかくいい雰囲気だったのに、誰だ、邪魔しやがって……
19 名前:二人の部屋・5[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 15:40:02 ID:ZuCZQgSu0
「あ……マルさん!」

「お久しぶりです、クリスお嬢様。
 寮に寄ったところ、こちらだろうと聞いたものですから」

突然の来客はマルギッテだった。
クリスが嬉しそうに飛びついていく。
邪魔されても、これじゃ怒るに怒れないかな。

「いつまた日本に?やっぱり……中将さんの命令で?」

まあ、また無理やり連れ戻そうとか
そういうのではないだろう……な?

「そう身構えるのはやめなさい、直江大和。
 中将殿は、もう二人のことはお認めになられている」

「では、今回の来日の目的は?」

「今回は、以前のような監視や報告の義務はない。
 お嬢様と……直江大和、お前の二人を見守らせてもらう」

「え、俺も入ってるんだ?」

「無論だ。クリスお嬢様の大切な人物であれば
 中将殿にとっても、私にとっても、大切な人だ」

そう言うマルギッテの顔が、ほんの少し赤いような気がする。

「そうか……父様、本当に認めてくれているんだな」

まあ、認めてもらえたほうが俺も嬉しいかな。
20 名前:二人の部屋・6[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 15:43:08 ID:ZuCZQgSu0
「……実を言えば、中将殿の落胆ぶりは目を覆うばかりでした」

「!……やっぱり、あんな別れ方だったから……」

「まあ、あの場合はああするしかなかったからなぁ
 あの後、電話とかで連絡はとってないのか?」

「さすがに、気まずくてな……」

「中将殿のお傍にいるべきか、こちらに来るべきか迷ったのですが
 『若い二人のそばにいてやってくれ』との中将殿の願いで
 こうしてやってきたわけです」

「たまには、クリスをドイツに里帰りさせてやらないと悪い気がしてきた」

「うん……いずれおちついたら、そうしよう」

「ところで、これは引越しの準備ですか?」

部屋の中の荷造りされたダンボールを見て、マルギッテがきいてくる。
さしあたっての事情を説明してみた。

「なるほど……」

「まあ、ここにも愛着はあるんだが
 寮に戻ればここは無駄になるからな。仕方がない」

マルギッテが腕を組んでちょっと考えこむ。

「……マルさん?」

「クリスお嬢様……私がここに住む、というのはどうでしょう?」
23 名前:二人の部屋・7[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 23:03:34 ID:EBQuVdIF0
「あー……それ、いいかもしれんな」

「うん!ここなら寮もそう遠くないから
 お互い行き来しやすいな」

今までは、日本にいるときは基地で生活してたんだよな。
マルギッテが寮に来ることはあっても
クリスが基地に遊びに行く、ということはなかったようだが
ここなら会いに来るのも問題なさそうだ。

「でも、家賃とかはどうするんだ?」

「それぐらいは、軍の経費でどうとでもなる」

意外に融通がきくようだった。

「では、二人に異論がないようなら
 ここに住まわせてもらうことにしましょう」

「うん!家具や生活用品は揃ってるわけだから、いつでも大丈夫だな!」

「なんか悪いな、こっちの感傷につきあわせちゃって」

「問題ありません。この部屋に住むほうが互いに都合がいい。
 それに、私にとってもこの部屋は……その、思い出の場所でもある」

マルギッテが顔を赤らめる。
それを見てクリスも顔を赤らめる。

「ん、マルギッテここで何かあったっけ?」

「!あ、あの夜のことを忘れたというのか!?」
24 名前:二人の部屋・8[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 23:13:47 ID:EBQuVdIF0
「いや、照れ隠しの冗談だから!ってか、いきなりトンファー出すなよ!」

忘れるわけがない。
酔った勢いとはいえ、ここで俺たち3Pしちゃったわけで。
マルギッテなんか処女だったし
にもかかわらず後ろまで一気に経験しちゃったわけで。

「……コイツはこういうヤツなんだ、マルさん。
 まあ、私も思いだすとアレは相当恥ずかしい……」

「う……わかりました。とにかく、その……そういうわけだ」

「大和、マルさんの責任も取らなければな」

「え……?それって今後も3P公認んぐぅ!?(←蹴られた)」

「そ・ん・な・わ・け・な・い・だ・ろ!(ゲシゲシ)」

「いて、ちょ、やめ……マルギッテ、見てないで止めて!」

「身から出た錆と知りなさい」

「まあ、冗談はともかく……大和、マルさんのこともよろしくな」

冗談でボロボロにされちゃたまらんのだが。

「けど、責任とれって言われても俺にはクリスがいるわけだし」

「いや……でも、何かその……なぁ?」

「……クリスお嬢様、私のことならお気になさらずに。
 あの夜のことは、いい経験だったと、そう思っています」
25 名前:二人の部屋・9[sage] 投稿日:2009/09/15(火) 23:16:54 ID:EBQuVdIF0
「マルさん?」

「私は……軍人の家に生まれ、軍人になるべく育てられ
 中将殿に見出され、予定通りに軍人となりました。
 そのことに後悔はなく、軍人であることにも誇りを持っています」

「うん……私も、そうだった」

「ですが……直江大和。
 貴方が私に、違う私を見せてくれた。違う可能性を見せてくれた。
 そのことに、私は感謝している。責任など、問うつもりはありません」

そうだよな。軍の任務が、人生の全てってわけじゃない。
軍人だって、恋愛したっていい。別の自分があっていい。
あの夜のことで、マルギッテがそう思ってくれたなら嬉しい限りだ。

「うん、ベッドでのマルギッテはまるで別人だっぐはっ!?(←また蹴られた)」

「な・ん・で・そ・う・い・う・こ・と・言・う・か・な!(ゲシゲシゲシ)」

「これが恋人同士……恋愛というのは、奥が深いものですね」

「だから見てないで止めてくれマルギッテ!」

「いいえ、お二人の邪魔をするほど、私は野暮ではないつもりです」

クリスが俺に蹴りを飛ばし、俺は必死にそれを回避して
そしてマルギッテが優しい笑顔でそれを見守る。
若干納得できない部分もあるが
そんな感じに3人の関係は落ち着きそうだった。