タイトル無し
3 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/14(月) 23:26:39 ID:dWJMLn5/0
「ただいまー……あれ?」
寮に帰ってきたら、何やら香ばしい、いい匂いが。
腹を空かせたキャップあたりが何か作っているのだろうか?
「おかえりー、大和!」
「お、ワン子、来てたのか」
「うん!今ね、まゆっちに料理教わってるの!」
「へえ」
いい匂いの元はワン子だったようだ。
「栄養管理も大事だけど、
やっぱり美味しく食べてもらうことも大事かな、って思って」
「なるほど、作るところまでやろうってわけか。頑張ってるな」
「うん!でも、作るほうはちょっとアレだったから……」
「ワン子さん、そろそろ煮こみが終わり……
あ、お帰りなさい、大和さん」
「や、ただいま。ありがとうね、まゆっち。ワン子に料理教えてくれて」
「いえいえ、私も勉強になりますから。
ではワン子さん、そろそろ次の手順ですよ」
「了解よ!じゃあ大和、できあがったら試食させてあげるわね!」
4 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/14(月) 23:28:34 ID:dWJMLn5/0
「うー……もまだちょっと胃もたれがする」
「うぅ……悪気はなかったのよぅ」
昨日のワン子の料理は、まゆっちが見ていてくれたおかげで
味はそれなりのものになっていたのだが
分量を間違えたのか、量がとんでもなく多かった。
日もちしそうになかったので
俺とまゆっちとワン子で必死に処理した結果がこのざまである。
「大変だねぇ。ハーブ入りクッキーでも食べる?
気分がよくなると思うよ」
クマちゃんがどこからかクッキーを出してくる。
いつも思うんだが、どこに隠してあるんだろうか。
「いや、今は食欲ないからいいや……」
「じゃあ、アタシもらうわね」
「お前、胸焼けも胃もたれもしてないだろ」
昨日の試食(?)も俺の2倍は食べていたはずだが
どういう胃袋なんだか。
「ところで、クマちゃんって料理部だったわよね?」
「うん、日々美味しくて体にいい食事を研究してるよ」
「アタシも、料理部に入れてもらおうと思うんだけど……どうかしら?」
5 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/14(月) 23:32:52 ID:dWJMLn5/0
クマちゃんの顔がぱっと輝く。
「うん!食について真剣に考えてる川神さんなら、大歓迎だよ!」
そういえば、ただ食べ歩いてるだけじゃなくて
自分でも料理作るんだよな、クマちゃん。
ときどき試作品をもらうが、なかなかの腕前だった。
あれなら、ワン子の先生にはもってこいだろうが
「まゆっち先生はいいのか?」
「まゆっちにも教わるけど、友達作りで大変そうだし
あんまりアタシの相手ばかりさせるのも悪いかな、って」
「そっか。じゃあ、頑張ってみな」
しかし、料理の方面じゃあまり手助けはできないなぁ。
せいぜい出来た料理を試食するぐらいか。
まあ、その分俺は勉強の手伝いをしてやろう。
「じゃあ川神さん、今日はいちおう見学してもらうってことで
放課後、調理実習室に来てね」
「はーい!」
ふいに、ある懸念が頭に浮かび
ワン子に釘をさす。
「……頑張りすぎて、クマちゃんみたいに太るなよ」
「あはははは、大丈夫よー!」
7 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/14(月) 23:36:44 ID:dWJMLn5/0
大丈夫では、なかった。
ワン子が料理部に入って1週間。
授業が終わっても、なかなか教室を出ようとしない。
「おいワン子、部活はいいのか?」
「あ、うん……どうしようかな……」
「おいおい、入部してまだ1週間だろ?
もう挫折したのか」
「挫折というか……あのね(ゴニョゴニョ)」
「……なんと」
1週間で2キロ太るってのは、ワン子の身長を考えると
けっこうヤバイ太り方かもしれん。
このままいったら……本当にクマちゃんみたいに……
「?大和?なんか悲しそう……ゴメンね、太っちゃって」
あ、いかん、想像が想像だけに顔に出てしまった。
「クマちゃんがね、『作ったものは残さず食べなきゃダメ』ってキビシイの」
「そうか……あんまり太ったようには見えないけどな」
「目に見えて太っちゃったら、手遅れな気がする……」
そうかも。
8 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/14(月) 23:40:52 ID:dWJMLn5/0
「太るのは、消費してるカロリーより
摂取してるカロリーが多いわけだな」
「そうね……正直、鍛錬は前に比べれば全然してないから……」
「それだな」
川神院師範代への道が閉ざされたため
ワン子の生活のほとんどを閉めていた修行の時間は
管理栄養士になるための勉強や
俺とすごす時間に変わっていた。
「食べる量、減ってないのか?」
「んー……ちょっとは、減ってるかな?」
「ちょっとかよ」
そりゃマズイな。
今まで食べてた量はハンパない。
かといって、今さら体を鍛えるのにそうそう時間はさけない。
「とりあえず、食いすぎないように気をつけながら
部活はもうちょっと続けてみろ」
「食べ過ぎないようにかー……難しいわ」
頑張り屋のワン子も
ダイエットは頑張りにくいようだった。
9 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/14(月) 23:44:45 ID:dWJMLn5/0
さらに1週間。
なんとか体重増加には歯止めがかかってきたらしい。
ちょっと安心したので、帰りに二人で秘密基地に寄ってみると
金曜でもないのに、皆揃っていた。
「あは、皆来てたんだ」
「ようワン子、聞いたぜー、お前、ちょっと太ってきたんでダイエット中だってな?」
「え、誰に聞いたの?」
「クマちゃん。なんか料理部のメシ、ワン子が喰いきらなくなったから
その分も自分が食べてるって話から」
ああ、そういえば別に口止めとかしなかったな。
まあ隠すようなことでもないし、いいだろうけど。
「う……もう、そんなに増えてないわよ」
「でも、見た感じは全然変わらない」
「そうだな……着るものとかキツクなってはいないのか、犬?」
「別に服は……あ」
「なんだ?」
「えっと……そういえば、ちょっと……ブラがきつくなった、かも」
一瞬、場が固まった。
10 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/09/14(月) 23:49:31 ID:dWJMLn5/0
「大和ぉーッ!!」
「うおわっ!?」
いきなり飛んできた姉さんに、両手をガッシと握られる。
「この手かッ!この手がワン子をッ!あの、いたいけなワン子をッ!!」
「ちょ、いた、潰れる潰れるッ!何なの一体!?」
「アレなこととか!アレなこととかしたのか!姉である私をさしおいて!」
「別にそれは姉のすることではないと思う!」
「ほえー……そっか、大和のおかげだったのね……」
つまり……今までは修行のために運動量が多すぎて
いくら喰っても胸まで栄養がいってなかったのが
運動量が減って、なおかつエロいこともするようになったんで
急に胸に栄養が行き届き始めたわけか。
「じゃあ、お姉さまみたいにバイーンとなるのも夢じゃないかも!」
一つの夢が潰えたおかげで、別の夢がかないそうになるとは皮肉なものだ。
だが、それぐらいは夢がかなったっていいじゃないか。
今まで目一杯、頑張ってきたんだから。
「これはアレね、『でっかいメロンが二つもあるぜ』って言われるのも時間の問題だわ!
えっと……よろしくね、大和!」
「……夏みかん程度までにしておいてくれ」