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2015-05-21
FAQ S版
開始行:
***記録更新
#pre{{
255 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2011/01/12(...
あけましておめで投下します
}}
#pre{{
256 名前:記録更新・1[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:22...
「……ん?」
ひとりでに目が覚める。ぼんやりした頭で部屋の時計を見れば
いつもの起床時間ではあるが、何かがおかしい。
ああ、そうか。
京が起こしに来ていないんだ。
いつもなら、朝は決まって京が起こしてくれるのだが
今日に限って部屋に来ていない。
珍しいこともあるもんだ、と思いながら、もそもそと起きあが...
朝食の席についても、京は姿をあらわさない。
「珍しいですね、いつも大和さんと京さんは早いほうなのに」
「今朝は、俺を起こしにも来てないんだよ」
先に来ていたまゆっちも首を傾げる。
やがて、クリス、キャップと住人が集まってきたが
それでも京は姿をあらわさない。
「おかしいねえ……由紀江ちゃん、ちょっと部屋の様子、見てき...
麗子さんに言われて、二階に上がっていったまゆっちは
戻ってきたときに少し表情をこわばらせていた。
「京さん、具合が悪いそうです。何だか、熱があるようで」
「おや……珍しいこともあるもんだね。
ちょいと見てくるから、アンタたちは朝ゴハンすませちまい...
}}
#pre{{
257 名前:記録更新・2[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:26...
京は、いつもの習慣――たとえば、朝は俺を起こしに部屋に来る―...
とても大切にしている。
それができない、というのはかなり重症なのだろうか。
朝食を食べ終わったころ、麗子さんが二階から戻ってきた。
「京ちゃん、かなり熱があるから、今日は学校は無理だね。
昼間はなるべくアタシが見てるから、アンタたちは学校に行...
「ちょっと心配だから、学校行く前に、様子を見に二階に上が...
「ああ、いいよ。京ちゃんも、大和ちゃんの顔見たがってたか...
「では、私も行こう」「私も」俺もー」「……ま、顔見せぐらい...
なんだかんだで、結局残りの住人全員で京の部屋に行き
なんとなく俺が代表っぽかったので、ドアをノックする。
「京ー、俺だけどー。入ってもいい?」
『あ……大和……ちょっと待って。
…………どうぞー』
心なしか、声も弱々しい京の返事を待って
ゾロゾロと連れ立って部屋に入る。
「あれ……皆、来たんだ」
布団をひっかぶった京がちょっと驚いていた。
「お邪魔します……どうだ、具合?」
}}
#pre{{
258 名前:記録更新・3[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:30...
どうだ、なんて聞くまでもなく
京の具合はいかにも悪そうだった。
顔は赤く汗ばんで、目も潤んでいる。呼吸も荒い。
まあ、風邪だろうなぁ。
「うん……そんなにたいしたことない。
ちょっと熱が出ちゃっただけ。ゴメンね皆、心配かけて」
「気にすんな。しかし珍しいな、お前が熱出すなんて。どれく...
「そういえば、測ってなかった……大和、測って」
「ん……体温計とかあったかな」
「そんなんじゃなくて……おでことおでこで、ペタってして測っ...
何そのプレイ。皆もいるのにそんな恥ずかしいことできません。
「いや、ちゃんと体温計で測らないとダメだろ……」
「いいじゃありませんか大和さん」「測ってやれよ、大和」「...
あれ、何だか拒否しづらい空気に。
「遅刻してしまうではないか。見ていてやるから、早くしろ大...
「お前らがいるからイヤなんだよ!」
「……二人きりだったら、直腸で測ってもらっていた」
「スイマセンおでこで測らせていただきます」
}}
#pre{{
259 名前:記録更新・4[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:34...
「ん……来て、大和……」
布団に横たわった京が目をつぶる。
「いや、熱測るだけだからね!?」
そうは言うものの、俺もなんだかドキドキしてしまっている……
息を止め、かがみこんで顔を近づけ、額で額にそっと触れる。
京の体温が、かなり高くなっているのを確認して、またそっと...
イカン、俺まで顔が熱くなってきた。
「で、熱は何度あるのだ?」
「俺は体温計じゃないんだよクリス……」
「わからなかったのなら、もう一度測ればいいではないか」
冗談じゃない。そんなことしたらホントにこっちまで熱が出ち...
「まあ、すごく高いことは確かだ。こりゃ絶対安静だな」
「そうか……我々はそろそろ学校に行かねばならんが、大事にな...
「何か食べたいものとかありますか?」
「大和が食べたい……」
食われてたまるか。と思ったが
二人きりだったらヤバくなりそうな雰囲気だった。
「じゃ、行ってくるからな。あんまり麗子さんに世話かけるな...
}}
#pre{{
260 名前:記録更新・5[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:39...
登校の途中で合流してくる風間ファミリーの面々に
京の病状を説明していく。
「じゃあ、今日の金曜集会、京は欠席ね」
「あー、そうなるなー。というか、ワン子よく今日が金曜って...
朝、京の風邪騒ぎですっかり頭から抜け落ちていたが
今日は金曜だったのだ。
「バカにしないでほしいわね。
武道と食事とファミリーのことは忘れないわよ!」
他のことは忘れまくりだけどな。
と、モロがポツリとつぶやいた。
「京が集会に出ないって、初めてじゃないかな」
誰も、一度や二度は何かの都合で集会を休んだりしているが
京だけはそんなことがない。
もともと、転校していった京が金曜の夜に川神に戻ってくるのを
皆で迎えるための集会だったのだから
それが当然といえば当然なのだが。
「……誰か、京が集会に出なかった記憶ある?」
全員が顔を見合わせ、フルフルと首を横に振る。
「……けど、京の金曜集会皆勤記録も、今日までだな」
少ししんみりした、朝の登校風景だった。
}}
#pre{{
261 名前:記録更新・6[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:43...
退屈な授業が終わると、いろいろ買いこんでから寮に戻る。
あらかじめ、クリスに許可を貰っておいたので
戻るとさっそく二階に上がり、部屋のドアをノックする。
「京ー、大和だけどー。具合どうだー?」
『あ……おかえり大和。どうぞー、カギあいてるよー』
まだ少し、声に元気がないようだ。
「お邪魔しま……っと、失礼!……って、何やってんだよお前」
部屋の中、京は下着姿だった。
慌てて目を背ける。
「何、って着替え。大和なら見ててもいいよ」
「ああ、寝汗でもかいたか。じゃ、俺ちょっと出てるから」
別に誘惑しようとかそういうんじゃないだろう。
そそくさと部屋を出ようとして、布団がしかれていないことに...
ノロノロと着替えていく服は、京の普段の私服だった。
「おい……パジャマはどうした?」
「パジャマなんか着ない……金曜だもの。集会、行かなきゃ……」
「バカかお前は。あんなに熱があって学校も休んだのに、集会...
今だってフラフラじゃねーか!いいから布団しいて横になっ...
「学校なんかどうでもいいけど……金曜集会はそうはいかないよ…...
}}
#pre{{
262 名前:記録更新・7[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:47...
ファミリーの集会に出るという習慣が大事なのはわかるけど
ここは無理矢理にでも寝かせつけないと。
「頼むから、自分の体を大事にして
今日の金曜集会は休んでくれ。な?」
京がガックリと肩を落とす。
「……わかった。今日は……諦めるね」
「そうしてくれ。何だったら、俺も今日は集会パスして
ずっとお前のそばにいるからさ」
「マジで!?うん、すぐ寝る」
途端に、どろーんとしてした京の目が輝きだす。
なんかその場の勢いで余計なことまで言ってしまったかも。
まあ、素直に寝てくれるんならいいか。
京がおとなしく座って休んでいる間に
押しいれから布団を引っ張り出してしいてやる。
「パジャマは替えたほうがいいな……どこに入ってる?」
「えっと……箪笥の一番上、左のほう」
「ここか……って入ってるの下着じゃねーか!」
「好きなのを選んでいいよ。ちなみに、勝負下着は紫のスケス...
「パジャマはどこなんだよ!」
}}
#pre{{
263 名前:記録更新・8[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:51...
何とかパジャマを探しあてる。
「じゃ、これに着替えて」
「んー……大和、着せてー」
どこの小児だよ。というか、できるかそんなこと。
だが、京はすねるようにこんなこと言いだした。
「着せてくれないなら、集会に行く」
「わかったわかった……じゃほら、着てるの脱いで」
「脱がせてー」
……もうヤケクソだ。
「ハイハイハイ、じゃあ立って立って!ちょっと足開いて!
ハイ右足上げて!ハイ次左足!」
揺れる心を鋼に変えて、何とか下を脱がせる。目の前のパンツ...
「はい、じゃあバンザイして。バンザーイ!」
「バンザーイ」
上を脱がせはじめたときだった。
『京ー、起きてるかー?』『具合はいかがですか?』
イカン、クリスとまゆっちが来ちまった!
}}
#pre{{
264 名前:記録更新・9[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:55...
どうするこの状況見られたらヤバイ隠れるかでもそんな場所な...
『入ってもいいかー?』
よしここで何か適当なこと言って入るのを待たせてそのすきに...
「あいてるよー、どうぞー」
「どうぞ、じゃねええええええ!」
ガチャリ
非情にもドアは開く。
「なんだ、もう大和が来て……」「アイスクリーム買ってきま……」
その場の空気が凍りつく。
下はパンツ一丁、上が半脱ぎで頭から服をかぶっている京だけが
自体を把握できずにもぞもぞと動き回っていた。
「ふっ……不潔です、大和さんッ!」「オラ見損なったぜー!」
「こっ…この狼藉者ー!熱で京が朦朧としているのをいいことに...
あああああもう!!この誤解を解くには、京に説明してもらう...
「いや、違うんだよ!京、ちゃんと二人にどうしてこうなって...
「え……えっと、大和が、一緒にいてくれて、もう寝ようって言...
「ポッ、じゃねーよ!部分的に合ってるけど、はしょりすぎだ...
}}
#pre{{
265 名前:記録更新・10[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
結局、否応なしに部屋を叩きだされ
廊下に正座させられたうえで誤解を解くのに10分ほどかかっ...
「……ご納得いただけましたでしょうか」
「そうだったんですか……そうですよね、大和さんがそんなこと...
「まゆっち、さっき、俺のこと見損なったとか言った」
「あ、あれは松風がですね……」「ごめんよー、オラの早とちり...
まあ、そう思われてもしょうがないシーンではあったが。
「それで、今日の金曜集会は、大和も出ないのか?」
「ああ、京にそう約束したしな。今日はアイツのそばにいるよ」
「そうか……皆には、もう知らせたのか?」
「いや、まだ」
「では、私が伝えておこう。大和は、京のそばにいてやってく...
……勘違いして、すまなかったな」
「ああ、よろしく頼む」
「あと……着替えは、なるべく一人でさせたほうがいいと思うぞ...
「そう思うんなら、お前も集会まで一緒にいればいいだろ!」
今一つ信用されてないっぽかった。
}}
#pre{{
266 名前:記録更新・11[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
そして、夕方。
金曜集会に出かけていくクリスとまゆっちを見送って
また京の部屋に戻ると、本を読んだりして時間を過ごす。
その間、ずっと京の手を握っていた。
「夕食は食べられそうか?麗子さんがおかゆ作ってくれてるら...
昼は「食欲がない」ということで食べていないらしいのだ。
「うん……だいぶ楽になったから、夜は食べる。
ちゃんと食べないと、治るものも治らないしね。
おかゆかぁ……ザーサイとメンタイコの買い置きがあるから……」
「辛いものは適当にしとけよ……」
台所に降りて、麗子さんから熱いおかゆの入った土鍋や
おかずの乗ったお皿を受け取り、京の食器と一緒に盆に乗せる。
後は、ザーサイとメンタイコだっけ。冷蔵庫の京スペースを漁...
「ほれ、大和ちゃん、自分の茶碗忘れちゃダメだろ」
「え、このおかゆ、俺の分も入ってるの?」
「大和ちゃんの分だけ別に作るのもどうかと思ってね。
それに、これなら一緒に食べてやれるだろ?」
道理で量が多いと思った。まあ確かに一理ある。
「じゃ、俺も上でいただきます」
こうして、二人だけのおかゆパーティーが始まった。
}}
#pre{{
267 名前:記録更新・12[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
「あ、ザーサイけっこう合うな」
「でしょ?中華の朝がゆでは定番らしいよ」
二人でおかゆをすすっていたが、ふっと京が箸を止める。
「ねえ、大和?もし……このまま、私が死んじゃうとしたら
私のこと、受けいれてくれる?」
「バカなこと言うな。今どきの若者が、風邪ぐらいで死ぬか」
「だから、もしも、の話。
実はスッゴイ重い病気で、もう手遅れだってわかったら……」
「そのときは、『治ったらつきあってやるから早く治せ』って...
で、治ったら理由をデッチ上げて、なかったことにする」
「大和らしいなぁ……そういうところも、好き……」
「だいたい、そんな同情心から受けいれられても空しいだろ」
「同情から始まる恋もあってもいいと思うよ」
「そんなもんかな」
「レイプから始まる恋もあるらしい」
「いやそれはない。というか、俺がお前をレイプとかありえな...
「逆レイプって知ってる?」
「スイマセンデシタ」
}}
#pre{{
268 名前:記録更新・13[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
おかゆを食べ終わり、薬は飲ませたが
京が寝付くまではそばにいてやることにした。
とりとめもないことを話しながら、メールチェックとかして過...
「あれ……けっこう汗かいてるなお前」
「うん……ご飯食べて、暖まったからかな」
「汗拭くか。ちょっと待ってろ、タオル出すから」
えーと、タオルはどこだったかな。さっき箪笥をあけたときの...
「ん……なんだ騒がしいな」
なにやら一階がガヤガヤと騒がしくなっていた。
はて、集会が終わるにはまだ早い時間だし
こんな時間に誰か客でも来たのだろうか?
と思っている間に、騒がしさが二階に上がってきて
いきなり部屋のドアが開いた。
「おーす京ー、具合どう……だ?」
ああ、姉さんやワン子が見舞いに来てくれたんだ。
だが、なぜか入り口で固まっている……
まさか、と思い、恐る恐る京のほうを振り返る。
汗を拭くために、上半身を脱いでいるところだった。
慌てて目を背ける俺に、姉さんとワン子の声が飛んでくる。
「お前ら……何してたんだ?」「ギャー!大和変態ー!」
ああ、これはまた廊下で正座かなぁ……
}}
#pre{{
269 名前:記録更新・14[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
今日は京のために、秘密基地じゃなく京の部屋で集会しよう。
そうキャップが言い出して、皆で島津寮までやってきたのだそ...
姉さんたちが部屋に突入したときは、いちおう二階の女子部屋...
男連中がまだ待機していて一階にいたのが不幸中の幸いだった。
「キャップ……皆……ありがとう」
「なーに、いいってことよ!」
「で、どうだったんだ京?大和は落とせたのか?」
ガクトがニヤニヤしながら京に尋ねる。
「ん……もうちょっとだった」
「おいおい。そう簡単に俺は落ちませんよ?」
「ホントかー?さっきだって、私たちが来なかったら……」
「だから、アレは事故だってば!」
皆がどっと笑う。賑やかな、いつもの金曜集会だ。
「でも、二人きりがよかったのなら
かえってお邪魔になってしまったかもしれませんね」
「ううん。これはこれで……すごく、嬉しいから」
そうだな。習慣になっているから大事なわけじゃない。
大事なものだから、守りたいものだから続けてきたんだよな……
その笑顔に、確かに「もうちょっと」かもしれないと思いながら
金曜集会皆勤記録の更新に、心の中でおめでとうを言う俺だっ...
}}
#pre{{
270 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2011/01/13(...
おしまい。単に看病モノを書きたかっただけなので特にオチは...
}}
終了行:
***記録更新
#pre{{
255 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2011/01/12(...
あけましておめで投下します
}}
#pre{{
256 名前:記録更新・1[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:22...
「……ん?」
ひとりでに目が覚める。ぼんやりした頭で部屋の時計を見れば
いつもの起床時間ではあるが、何かがおかしい。
ああ、そうか。
京が起こしに来ていないんだ。
いつもなら、朝は決まって京が起こしてくれるのだが
今日に限って部屋に来ていない。
珍しいこともあるもんだ、と思いながら、もそもそと起きあが...
朝食の席についても、京は姿をあらわさない。
「珍しいですね、いつも大和さんと京さんは早いほうなのに」
「今朝は、俺を起こしにも来てないんだよ」
先に来ていたまゆっちも首を傾げる。
やがて、クリス、キャップと住人が集まってきたが
それでも京は姿をあらわさない。
「おかしいねえ……由紀江ちゃん、ちょっと部屋の様子、見てき...
麗子さんに言われて、二階に上がっていったまゆっちは
戻ってきたときに少し表情をこわばらせていた。
「京さん、具合が悪いそうです。何だか、熱があるようで」
「おや……珍しいこともあるもんだね。
ちょいと見てくるから、アンタたちは朝ゴハンすませちまい...
}}
#pre{{
257 名前:記録更新・2[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:26...
京は、いつもの習慣――たとえば、朝は俺を起こしに部屋に来る―...
とても大切にしている。
それができない、というのはかなり重症なのだろうか。
朝食を食べ終わったころ、麗子さんが二階から戻ってきた。
「京ちゃん、かなり熱があるから、今日は学校は無理だね。
昼間はなるべくアタシが見てるから、アンタたちは学校に行...
「ちょっと心配だから、学校行く前に、様子を見に二階に上が...
「ああ、いいよ。京ちゃんも、大和ちゃんの顔見たがってたか...
「では、私も行こう」「私も」俺もー」「……ま、顔見せぐらい...
なんだかんだで、結局残りの住人全員で京の部屋に行き
なんとなく俺が代表っぽかったので、ドアをノックする。
「京ー、俺だけどー。入ってもいい?」
『あ……大和……ちょっと待って。
…………どうぞー』
心なしか、声も弱々しい京の返事を待って
ゾロゾロと連れ立って部屋に入る。
「あれ……皆、来たんだ」
布団をひっかぶった京がちょっと驚いていた。
「お邪魔します……どうだ、具合?」
}}
#pre{{
258 名前:記録更新・3[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:30...
どうだ、なんて聞くまでもなく
京の具合はいかにも悪そうだった。
顔は赤く汗ばんで、目も潤んでいる。呼吸も荒い。
まあ、風邪だろうなぁ。
「うん……そんなにたいしたことない。
ちょっと熱が出ちゃっただけ。ゴメンね皆、心配かけて」
「気にすんな。しかし珍しいな、お前が熱出すなんて。どれく...
「そういえば、測ってなかった……大和、測って」
「ん……体温計とかあったかな」
「そんなんじゃなくて……おでことおでこで、ペタってして測っ...
何そのプレイ。皆もいるのにそんな恥ずかしいことできません。
「いや、ちゃんと体温計で測らないとダメだろ……」
「いいじゃありませんか大和さん」「測ってやれよ、大和」「...
あれ、何だか拒否しづらい空気に。
「遅刻してしまうではないか。見ていてやるから、早くしろ大...
「お前らがいるからイヤなんだよ!」
「……二人きりだったら、直腸で測ってもらっていた」
「スイマセンおでこで測らせていただきます」
}}
#pre{{
259 名前:記録更新・4[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:34...
「ん……来て、大和……」
布団に横たわった京が目をつぶる。
「いや、熱測るだけだからね!?」
そうは言うものの、俺もなんだかドキドキしてしまっている……
息を止め、かがみこんで顔を近づけ、額で額にそっと触れる。
京の体温が、かなり高くなっているのを確認して、またそっと...
イカン、俺まで顔が熱くなってきた。
「で、熱は何度あるのだ?」
「俺は体温計じゃないんだよクリス……」
「わからなかったのなら、もう一度測ればいいではないか」
冗談じゃない。そんなことしたらホントにこっちまで熱が出ち...
「まあ、すごく高いことは確かだ。こりゃ絶対安静だな」
「そうか……我々はそろそろ学校に行かねばならんが、大事にな...
「何か食べたいものとかありますか?」
「大和が食べたい……」
食われてたまるか。と思ったが
二人きりだったらヤバくなりそうな雰囲気だった。
「じゃ、行ってくるからな。あんまり麗子さんに世話かけるな...
}}
#pre{{
260 名前:記録更新・5[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:39...
登校の途中で合流してくる風間ファミリーの面々に
京の病状を説明していく。
「じゃあ、今日の金曜集会、京は欠席ね」
「あー、そうなるなー。というか、ワン子よく今日が金曜って...
朝、京の風邪騒ぎですっかり頭から抜け落ちていたが
今日は金曜だったのだ。
「バカにしないでほしいわね。
武道と食事とファミリーのことは忘れないわよ!」
他のことは忘れまくりだけどな。
と、モロがポツリとつぶやいた。
「京が集会に出ないって、初めてじゃないかな」
誰も、一度や二度は何かの都合で集会を休んだりしているが
京だけはそんなことがない。
もともと、転校していった京が金曜の夜に川神に戻ってくるのを
皆で迎えるための集会だったのだから
それが当然といえば当然なのだが。
「……誰か、京が集会に出なかった記憶ある?」
全員が顔を見合わせ、フルフルと首を横に振る。
「……けど、京の金曜集会皆勤記録も、今日までだな」
少ししんみりした、朝の登校風景だった。
}}
#pre{{
261 名前:記録更新・6[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:43...
退屈な授業が終わると、いろいろ買いこんでから寮に戻る。
あらかじめ、クリスに許可を貰っておいたので
戻るとさっそく二階に上がり、部屋のドアをノックする。
「京ー、大和だけどー。具合どうだー?」
『あ……おかえり大和。どうぞー、カギあいてるよー』
まだ少し、声に元気がないようだ。
「お邪魔しま……っと、失礼!……って、何やってんだよお前」
部屋の中、京は下着姿だった。
慌てて目を背ける。
「何、って着替え。大和なら見ててもいいよ」
「ああ、寝汗でもかいたか。じゃ、俺ちょっと出てるから」
別に誘惑しようとかそういうんじゃないだろう。
そそくさと部屋を出ようとして、布団がしかれていないことに...
ノロノロと着替えていく服は、京の普段の私服だった。
「おい……パジャマはどうした?」
「パジャマなんか着ない……金曜だもの。集会、行かなきゃ……」
「バカかお前は。あんなに熱があって学校も休んだのに、集会...
今だってフラフラじゃねーか!いいから布団しいて横になっ...
「学校なんかどうでもいいけど……金曜集会はそうはいかないよ…...
}}
#pre{{
262 名前:記録更新・7[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:47...
ファミリーの集会に出るという習慣が大事なのはわかるけど
ここは無理矢理にでも寝かせつけないと。
「頼むから、自分の体を大事にして
今日の金曜集会は休んでくれ。な?」
京がガックリと肩を落とす。
「……わかった。今日は……諦めるね」
「そうしてくれ。何だったら、俺も今日は集会パスして
ずっとお前のそばにいるからさ」
「マジで!?うん、すぐ寝る」
途端に、どろーんとしてした京の目が輝きだす。
なんかその場の勢いで余計なことまで言ってしまったかも。
まあ、素直に寝てくれるんならいいか。
京がおとなしく座って休んでいる間に
押しいれから布団を引っ張り出してしいてやる。
「パジャマは替えたほうがいいな……どこに入ってる?」
「えっと……箪笥の一番上、左のほう」
「ここか……って入ってるの下着じゃねーか!」
「好きなのを選んでいいよ。ちなみに、勝負下着は紫のスケス...
「パジャマはどこなんだよ!」
}}
#pre{{
263 名前:記録更新・8[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:51...
何とかパジャマを探しあてる。
「じゃ、これに着替えて」
「んー……大和、着せてー」
どこの小児だよ。というか、できるかそんなこと。
だが、京はすねるようにこんなこと言いだした。
「着せてくれないなら、集会に行く」
「わかったわかった……じゃほら、着てるの脱いで」
「脱がせてー」
……もうヤケクソだ。
「ハイハイハイ、じゃあ立って立って!ちょっと足開いて!
ハイ右足上げて!ハイ次左足!」
揺れる心を鋼に変えて、何とか下を脱がせる。目の前のパンツ...
「はい、じゃあバンザイして。バンザーイ!」
「バンザーイ」
上を脱がせはじめたときだった。
『京ー、起きてるかー?』『具合はいかがですか?』
イカン、クリスとまゆっちが来ちまった!
}}
#pre{{
264 名前:記録更新・9[sage] 投稿日:2011/01/12(水) 23:55...
どうするこの状況見られたらヤバイ隠れるかでもそんな場所な...
『入ってもいいかー?』
よしここで何か適当なこと言って入るのを待たせてそのすきに...
「あいてるよー、どうぞー」
「どうぞ、じゃねええええええ!」
ガチャリ
非情にもドアは開く。
「なんだ、もう大和が来て……」「アイスクリーム買ってきま……」
その場の空気が凍りつく。
下はパンツ一丁、上が半脱ぎで頭から服をかぶっている京だけが
自体を把握できずにもぞもぞと動き回っていた。
「ふっ……不潔です、大和さんッ!」「オラ見損なったぜー!」
「こっ…この狼藉者ー!熱で京が朦朧としているのをいいことに...
あああああもう!!この誤解を解くには、京に説明してもらう...
「いや、違うんだよ!京、ちゃんと二人にどうしてこうなって...
「え……えっと、大和が、一緒にいてくれて、もう寝ようって言...
「ポッ、じゃねーよ!部分的に合ってるけど、はしょりすぎだ...
}}
#pre{{
265 名前:記録更新・10[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
結局、否応なしに部屋を叩きだされ
廊下に正座させられたうえで誤解を解くのに10分ほどかかっ...
「……ご納得いただけましたでしょうか」
「そうだったんですか……そうですよね、大和さんがそんなこと...
「まゆっち、さっき、俺のこと見損なったとか言った」
「あ、あれは松風がですね……」「ごめんよー、オラの早とちり...
まあ、そう思われてもしょうがないシーンではあったが。
「それで、今日の金曜集会は、大和も出ないのか?」
「ああ、京にそう約束したしな。今日はアイツのそばにいるよ」
「そうか……皆には、もう知らせたのか?」
「いや、まだ」
「では、私が伝えておこう。大和は、京のそばにいてやってく...
……勘違いして、すまなかったな」
「ああ、よろしく頼む」
「あと……着替えは、なるべく一人でさせたほうがいいと思うぞ...
「そう思うんなら、お前も集会まで一緒にいればいいだろ!」
今一つ信用されてないっぽかった。
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266 名前:記録更新・11[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
そして、夕方。
金曜集会に出かけていくクリスとまゆっちを見送って
また京の部屋に戻ると、本を読んだりして時間を過ごす。
その間、ずっと京の手を握っていた。
「夕食は食べられそうか?麗子さんがおかゆ作ってくれてるら...
昼は「食欲がない」ということで食べていないらしいのだ。
「うん……だいぶ楽になったから、夜は食べる。
ちゃんと食べないと、治るものも治らないしね。
おかゆかぁ……ザーサイとメンタイコの買い置きがあるから……」
「辛いものは適当にしとけよ……」
台所に降りて、麗子さんから熱いおかゆの入った土鍋や
おかずの乗ったお皿を受け取り、京の食器と一緒に盆に乗せる。
後は、ザーサイとメンタイコだっけ。冷蔵庫の京スペースを漁...
「ほれ、大和ちゃん、自分の茶碗忘れちゃダメだろ」
「え、このおかゆ、俺の分も入ってるの?」
「大和ちゃんの分だけ別に作るのもどうかと思ってね。
それに、これなら一緒に食べてやれるだろ?」
道理で量が多いと思った。まあ確かに一理ある。
「じゃ、俺も上でいただきます」
こうして、二人だけのおかゆパーティーが始まった。
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267 名前:記録更新・12[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
「あ、ザーサイけっこう合うな」
「でしょ?中華の朝がゆでは定番らしいよ」
二人でおかゆをすすっていたが、ふっと京が箸を止める。
「ねえ、大和?もし……このまま、私が死んじゃうとしたら
私のこと、受けいれてくれる?」
「バカなこと言うな。今どきの若者が、風邪ぐらいで死ぬか」
「だから、もしも、の話。
実はスッゴイ重い病気で、もう手遅れだってわかったら……」
「そのときは、『治ったらつきあってやるから早く治せ』って...
で、治ったら理由をデッチ上げて、なかったことにする」
「大和らしいなぁ……そういうところも、好き……」
「だいたい、そんな同情心から受けいれられても空しいだろ」
「同情から始まる恋もあってもいいと思うよ」
「そんなもんかな」
「レイプから始まる恋もあるらしい」
「いやそれはない。というか、俺がお前をレイプとかありえな...
「逆レイプって知ってる?」
「スイマセンデシタ」
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268 名前:記録更新・13[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
おかゆを食べ終わり、薬は飲ませたが
京が寝付くまではそばにいてやることにした。
とりとめもないことを話しながら、メールチェックとかして過...
「あれ……けっこう汗かいてるなお前」
「うん……ご飯食べて、暖まったからかな」
「汗拭くか。ちょっと待ってろ、タオル出すから」
えーと、タオルはどこだったかな。さっき箪笥をあけたときの...
「ん……なんだ騒がしいな」
なにやら一階がガヤガヤと騒がしくなっていた。
はて、集会が終わるにはまだ早い時間だし
こんな時間に誰か客でも来たのだろうか?
と思っている間に、騒がしさが二階に上がってきて
いきなり部屋のドアが開いた。
「おーす京ー、具合どう……だ?」
ああ、姉さんやワン子が見舞いに来てくれたんだ。
だが、なぜか入り口で固まっている……
まさか、と思い、恐る恐る京のほうを振り返る。
汗を拭くために、上半身を脱いでいるところだった。
慌てて目を背ける俺に、姉さんとワン子の声が飛んでくる。
「お前ら……何してたんだ?」「ギャー!大和変態ー!」
ああ、これはまた廊下で正座かなぁ……
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269 名前:記録更新・14[sage] 投稿日:2011/01/13(木) 00:...
今日は京のために、秘密基地じゃなく京の部屋で集会しよう。
そうキャップが言い出して、皆で島津寮までやってきたのだそ...
姉さんたちが部屋に突入したときは、いちおう二階の女子部屋...
男連中がまだ待機していて一階にいたのが不幸中の幸いだった。
「キャップ……皆……ありがとう」
「なーに、いいってことよ!」
「で、どうだったんだ京?大和は落とせたのか?」
ガクトがニヤニヤしながら京に尋ねる。
「ん……もうちょっとだった」
「おいおい。そう簡単に俺は落ちませんよ?」
「ホントかー?さっきだって、私たちが来なかったら……」
「だから、アレは事故だってば!」
皆がどっと笑う。賑やかな、いつもの金曜集会だ。
「でも、二人きりがよかったのなら
かえってお邪魔になってしまったかもしれませんね」
「ううん。これはこれで……すごく、嬉しいから」
そうだな。習慣になっているから大事なわけじゃない。
大事なものだから、守りたいものだから続けてきたんだよな……
その笑顔に、確かに「もうちょっと」かもしれないと思いながら
金曜集会皆勤記録の更新に、心の中でおめでとうを言う俺だっ...
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270 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2011/01/13(...
おしまい。単に看病モノを書きたかっただけなので特にオチは...
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