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FAQ S版
開始行:
***愛の螺旋
#pre{{
226 名前:愛の螺旋・1[sage] 投稿日:2010/12/12(日) 23:58...
「ん……そっち持とうか、クリス?」
「そうか?すまないな京、買い物つきあってもらってるのに、...
日曜日の七浜中華街。
観光客や買い物客でごった返す昼下がり
その人ごみをすり抜けるようにして、クリスと京が荷物を抱え...
「かまわない。私も、ラー油買いたかったし」
「味見でラッパ飲みはどうかと思うが……ん?あれは……何だ?」
足を止めたクリスの視線を京が目でたどると
漢字を書き連ねたノボリが一つ、ゆらゆらと風に揺れていた。
「ああ、あのノボリ?陰陽五行・四柱推命、だね」
「シチュウスイメイ?」
「ひらたく言えば、占いだよ」
「へえ、占いかぁ……面白そうだな、ちょっと寄ってみないか?」
「あんまり興味ないけど」
「恋愛運とかも、占えるのだろう?どうすれば大和の心を射止...
「行ってくる!」
言い終わる前に、京は脱兎のごとく走り出していた。
「うわ、速い!?ちょ、待ってく……ああ、タマゴ落としたー!...
}}
#pre{{
227 名前:愛の螺旋・2[sage] 投稿日:2010/12/13(月) 00:01...
看板とノボリが立っている横に
ほのかに香の匂いを漂わせて、中年の女性が机を前に座ってい...
「お願いします!」
猛スピードで駆け込むなり、ダン!と京がその前の椅子に座る。
やがて、ブツブツ言いながらクリスも追いつき、その後ろに立...
「いらっしゃい。お嬢さん、何を見たい……ああ、恋愛運、だね...
「当然!」「おお、わかりますか、さすがだ」
「いや、何ていうか……こんなに滲み出てる人は珍しいぐらいだ...
「このままでは、押さえきれぬ愛で切っちゃいそうで。どうす...
「まずは、人相と手相から見ていこうかね……」
手相を見ながらいくつかの質問をしたあと、占い師が大きくた...
「何か……大きな渦にアンタが捕らわれている、そんな光景が見...
「渦?」
「そう。愛のスパイラルにはまり込んでるね。
この恋を成就させるには『愛する人の好きなものを考える』...
そうすれば、アンタの愛する人も、その渦に飛び込んできて...
「愛のスパイラル……渦……」「何だか、よくわからないな」
「占いとは、そういうものさ。この占いを、生かすも無駄にす...
}}
#pre{{
228 名前:愛の螺旋・3[sage] 投稿日:2010/12/13(月) 00:04...
「あれ?帰ってたのか、クリス」
お茶でも飲もうと部屋を出たところで、ばったりとクリスに出...
「ああ、大和か、ただいま。ついさっき戻ったところだ」
「七浜で買い物だろ?京が一緒じゃなかったのか?」
「一緒だったんだが……買い物の途中から、何か考え事ができた...
帰ってくるなり部屋にこもってしまった」
珍しいな。出かけて帰ってくれば、俺の部屋に「ただいま」を...
「何かあったのか?ケンカでもしたとか」
「いや、途中で占いをしてもらったのだが……あ、コレ言っちゃ...
「遅ぇよ。しかし……そっか、占いで、あまりいい結果が出なか...
「そういうわけではないと思うのだが……」
おおかた、俺との恋愛運でも占ってもらったのだろう。で、ダ...
しかし、そういうものを気にするのも、らしくないといえばら...
「というか、何だかよくわからない占いでな、ナルトに飛び込...
「……確かにそれは何だかわからんな。
で、お前は何か占ってもらったのか?」
「ああ!タマゴは明日のほうがお買得だそうだ!」
「それ占いでも何でもなくね?」
}}
#pre{{
229 名前:愛の螺旋・4[sage] 投稿日:2010/12/13(月) 00:07...
それから数日。
島津寮にいるときの京は部屋にこもりがちで
俺のところにもあまり顔を出さなくなった。
かと思うと、時々出かけていっては大きな荷物を抱えて帰って...
それ以外、学校での行動や態度に特におかしなところはないので
俺も段々とあまり気にしなくなっていった。
そんな、ある日。
学校から戻ってみると、部屋のドアがうっすらと開いていた。
俺の部屋は、俺がいなくてもキャップや京がけっこう勝手に出...
たまにこういうことがあるのだが
「ただい……ま!?」
その日、部屋に勝手に入っていたのは巨大な貝だった。
「なんだこりゃ……」
直径2メートルはあるだろう、巨大な巻き貝。
もちろん、作り物だ。現実にこんな巨大な巻き貝は存在しない...
そのよく出来た作り物の巨大巻き貝の中から
ガサガサ……
何か、音がする。
何かが、この中にいる。
注目する俺の目の前で、巻き貝の入り口のところから
椎名京がニョキリと顔を出した。
「お帰り、大和」
}}
#pre{{
230 名前:愛の螺旋・5[sage] 投稿日:2010/12/13(月) 00:10...
ヤバイ。この京は、ヤバイ。
何がヤバイって……
これ、ヤドカリじゃん!
こんな、巻き貝の中から頭と手だけ出して這い回ってたらヤド...
ヤドカリ娘じゃん!
「み、京……おまえ……部屋にこもってると思ったら
これを、作っていたの、か?」
「うん。大和の好きなものになってみた。それよりこの渦巻き...
「あ、ああ……その、すごく……ヤドカリです……」
「大和も入ってみる?まだ余裕あるよ」
「いいの!?」
そうだ。
俺はヤドカリが好きだ。その愛らしい姿を眺め、癒されていた。
でも、それだけでは、どこか物足りなさを感じていた。
俺は――本当は、ヤドカリになりたかったのかもしれない。
「モチロン。ただ、私、この中では生まれたままの姿だけど」
望むところだ。
二人ヤドカリになって愛し合う。これほどの至福が、他にあろ...
全てを脱ぎ捨てた俺は、愛の渦の中に飛び込んでいく。
京がつぶやく。
「ああ……占いって、ホントに当たるのね……」
}}
#pre{{
231 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2010/12/13(...
終わり
書きながら
「侵略!ヤドカリ娘」
とか思ったけどアニメ化はしない
}}
終了行:
***愛の螺旋
#pre{{
226 名前:愛の螺旋・1[sage] 投稿日:2010/12/12(日) 23:58...
「ん……そっち持とうか、クリス?」
「そうか?すまないな京、買い物つきあってもらってるのに、...
日曜日の七浜中華街。
観光客や買い物客でごった返す昼下がり
その人ごみをすり抜けるようにして、クリスと京が荷物を抱え...
「かまわない。私も、ラー油買いたかったし」
「味見でラッパ飲みはどうかと思うが……ん?あれは……何だ?」
足を止めたクリスの視線を京が目でたどると
漢字を書き連ねたノボリが一つ、ゆらゆらと風に揺れていた。
「ああ、あのノボリ?陰陽五行・四柱推命、だね」
「シチュウスイメイ?」
「ひらたく言えば、占いだよ」
「へえ、占いかぁ……面白そうだな、ちょっと寄ってみないか?」
「あんまり興味ないけど」
「恋愛運とかも、占えるのだろう?どうすれば大和の心を射止...
「行ってくる!」
言い終わる前に、京は脱兎のごとく走り出していた。
「うわ、速い!?ちょ、待ってく……ああ、タマゴ落としたー!...
}}
#pre{{
227 名前:愛の螺旋・2[sage] 投稿日:2010/12/13(月) 00:01...
看板とノボリが立っている横に
ほのかに香の匂いを漂わせて、中年の女性が机を前に座ってい...
「お願いします!」
猛スピードで駆け込むなり、ダン!と京がその前の椅子に座る。
やがて、ブツブツ言いながらクリスも追いつき、その後ろに立...
「いらっしゃい。お嬢さん、何を見たい……ああ、恋愛運、だね...
「当然!」「おお、わかりますか、さすがだ」
「いや、何ていうか……こんなに滲み出てる人は珍しいぐらいだ...
「このままでは、押さえきれぬ愛で切っちゃいそうで。どうす...
「まずは、人相と手相から見ていこうかね……」
手相を見ながらいくつかの質問をしたあと、占い師が大きくた...
「何か……大きな渦にアンタが捕らわれている、そんな光景が見...
「渦?」
「そう。愛のスパイラルにはまり込んでるね。
この恋を成就させるには『愛する人の好きなものを考える』...
そうすれば、アンタの愛する人も、その渦に飛び込んできて...
「愛のスパイラル……渦……」「何だか、よくわからないな」
「占いとは、そういうものさ。この占いを、生かすも無駄にす...
}}
#pre{{
228 名前:愛の螺旋・3[sage] 投稿日:2010/12/13(月) 00:04...
「あれ?帰ってたのか、クリス」
お茶でも飲もうと部屋を出たところで、ばったりとクリスに出...
「ああ、大和か、ただいま。ついさっき戻ったところだ」
「七浜で買い物だろ?京が一緒じゃなかったのか?」
「一緒だったんだが……買い物の途中から、何か考え事ができた...
帰ってくるなり部屋にこもってしまった」
珍しいな。出かけて帰ってくれば、俺の部屋に「ただいま」を...
「何かあったのか?ケンカでもしたとか」
「いや、途中で占いをしてもらったのだが……あ、コレ言っちゃ...
「遅ぇよ。しかし……そっか、占いで、あまりいい結果が出なか...
「そういうわけではないと思うのだが……」
おおかた、俺との恋愛運でも占ってもらったのだろう。で、ダ...
しかし、そういうものを気にするのも、らしくないといえばら...
「というか、何だかよくわからない占いでな、ナルトに飛び込...
「……確かにそれは何だかわからんな。
で、お前は何か占ってもらったのか?」
「ああ!タマゴは明日のほうがお買得だそうだ!」
「それ占いでも何でもなくね?」
}}
#pre{{
229 名前:愛の螺旋・4[sage] 投稿日:2010/12/13(月) 00:07...
それから数日。
島津寮にいるときの京は部屋にこもりがちで
俺のところにもあまり顔を出さなくなった。
かと思うと、時々出かけていっては大きな荷物を抱えて帰って...
それ以外、学校での行動や態度に特におかしなところはないので
俺も段々とあまり気にしなくなっていった。
そんな、ある日。
学校から戻ってみると、部屋のドアがうっすらと開いていた。
俺の部屋は、俺がいなくてもキャップや京がけっこう勝手に出...
たまにこういうことがあるのだが
「ただい……ま!?」
その日、部屋に勝手に入っていたのは巨大な貝だった。
「なんだこりゃ……」
直径2メートルはあるだろう、巨大な巻き貝。
もちろん、作り物だ。現実にこんな巨大な巻き貝は存在しない...
そのよく出来た作り物の巨大巻き貝の中から
ガサガサ……
何か、音がする。
何かが、この中にいる。
注目する俺の目の前で、巻き貝の入り口のところから
椎名京がニョキリと顔を出した。
「お帰り、大和」
}}
#pre{{
230 名前:愛の螺旋・5[sage] 投稿日:2010/12/13(月) 00:10...
ヤバイ。この京は、ヤバイ。
何がヤバイって……
これ、ヤドカリじゃん!
こんな、巻き貝の中から頭と手だけ出して這い回ってたらヤド...
ヤドカリ娘じゃん!
「み、京……おまえ……部屋にこもってると思ったら
これを、作っていたの、か?」
「うん。大和の好きなものになってみた。それよりこの渦巻き...
「あ、ああ……その、すごく……ヤドカリです……」
「大和も入ってみる?まだ余裕あるよ」
「いいの!?」
そうだ。
俺はヤドカリが好きだ。その愛らしい姿を眺め、癒されていた。
でも、それだけでは、どこか物足りなさを感じていた。
俺は――本当は、ヤドカリになりたかったのかもしれない。
「モチロン。ただ、私、この中では生まれたままの姿だけど」
望むところだ。
二人ヤドカリになって愛し合う。これほどの至福が、他にあろ...
全てを脱ぎ捨てた俺は、愛の渦の中に飛び込んでいく。
京がつぶやく。
「ああ……占いって、ホントに当たるのね……」
}}
#pre{{
231 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2010/12/13(...
終わり
書きながら
「侵略!ヤドカリ娘」
とか思ったけどアニメ化はしない
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