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FAQ A版
2016-04-01
ゲーム
2015-05-21
FAQ S版
開始行:
***策士策に溺れる
#pre{{
534 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/10/20(...
梅子アフター後妄想投下します。
}}
#pre{{
535 名前:策士策に溺れる1[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
大和が梅子となかば強引に付き合いだしてから、夏休みが過...
休みということもあって口実をつくっては頻繁に会い、調教...
例えば呼び名である。大和は名前のほうで呼ぶように言い、...
学校であっても、である。
「いいか、お前達には可能性があるんだ。それをないがしろに...
その日は進路調査の話があった。数名の名前が呼ばれた後、
「大和っ! ……阿呆か、お、お前は後で職員室へ来いっ! ふ...
なるべく態度にはあらわさないようにしていたが、目ざとい...
「あのさ、聞きたいことあるんだけどいい?」
千花や羽黒もその一人であった。
「なんだ? 進路の話なら言わないぜ」
「ううん、そうじゃないの。……あのさ、」
声を潜め、顔を近づける。
「最近、梅子先生といい感じじゃない?」
大和の顔色をうかがう。
「そう見えるかな?」
表情をかえることなく、返答した。
呼び方のことなど、いくつか軽い質問をぶつけた後、
「…直江さ、夏休みに梅先生とヤッたべ?」
羽黒が切り込んできた。
「ちょっ、羽黒、そのままズバっと言い過ぎ。……そこまではい...
ニヤニヤと笑う千花とニタニタと笑う羽黒。
}}
#pre{{
536 名前:策士策に溺れる2[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「それに雰囲気もなんか変わったし」
「なくはなかったとだけ言っておこうかな」
「ヒュー。やっるー。直江君勇気あるねぇ。梅先生狙いだなん...
「落としかたの相談ならのるぜぃ。プロであるアタイにまかせ...
「先生を物陰に連れ込んで押し倒すなんてことは俺の武力じゃ...
生徒と教師の間柄であるから、ひいきをしている、などとい...
―――放課後。
面接用の部屋で二人は机をはさんで差し向かいに座って、進...
[直江、私は真面目に話をしているんだぞ!」
「だから俺も真面目だって。それに直江じゃなくて、やーまー...
身をのりだし顔を梅子の耳に近づける。
「しかし、それでは噂が…」
吐息を耳に吹きかける。梅子の体が震えた。
「わかった、や、大和。真面目に話をしよう」
専業主夫。まんざら嘘ではないが、やはり問題はある。
進路調査書の内容について叱責するが、そのたびに大和はの...
「じゃあ、梅子は俺が嫌い?」
「進路調査書の話が、どうして好き嫌いに繋がる」
にらめっこのように視線を合わせ続ける。
}}
#pre{{
537 名前:策士策に溺れる3[] 投稿日:2009/10/20(火) 21:28...
「…嫌っているわけではない」
やがて叱られた子供のように、しゅんと目をそらす。
「俺は梅子を愛してるよ」
梅子の顔が一瞬のうちに耳まで真っ赤になった。
「ぞ、俗物め。よ、よくもまあぬけぬけと、そんな恥ずかしい...
「だって本気だし」
反論しようとする。けれど、言葉は出てこない。
「まあ、それはおいといて。進学はするつもりだよ」
「そ、そうか、お前の頭なら進学しないというのは勿体ないか...
大和が口にした大学を聞いて、顔をしかめる。よくも悪くも...
「まあいい。最近抜けているようだから、気を入れ替えろよ」
二学期になってからというもの、どうも成績がよくない。最...
大和が出て行った後も梅子は部屋に残っていた。
梅子は書類のはしを指でいじり、折り曲げしている。目を落...
「(……卒業したら結婚だと。い、いったい何を考えている)」
立ち上がり窓際による。
}}
#pre{{
539 名前:策士策に溺れる4[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「(本気なんだろうか)」
ガラスに指をつけ外を見ると、帰路につく生徒たちが校舎か...
ふと大和の姿を探している自分に気づき、梅子は苦笑しなが...
「(私も毒されているな)」
ふいに表情が苦くなる。
「(しかし……、この成績は問題がある。……ここのところやる気...
ため息をついた。
「(やはり、教師と生徒では問題がある……か)」
――――――朝。通学路。
この頃になると、梅子と毎日と言っていいほど遭遇するよう...
「おはようございます」
最初に気づいた由紀江が挨拶をし、それにあわせて銘々挨拶...
「おはよう皆、っ……、おい、大和……」
大和に近寄る梅子。それを阻むように不敵な笑みを浮かべた...
「おはようございます、先生」
「うむ、おはよう」
視線を外さずに返事をする。
「おい、襟」
大和の襟を直し、背中をばしんとはたき、くるりと向き直る。
}}
#pre{{
540 名前:策士策に溺れる5[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「……それで、先生。いかがしました?」
梅子から大和を隠すかのように、一歩を踏み出す。
「……いや、なんでもない」
空咳を一つついて、
「それでは皆、遅れぬようにな」
先に歩きだす。
と、数歩先で、ちらりと振り返り、何か言う素振りを見せる。
しかし、結局何も言わずに遠ざかっていった。
「そうとう躾けたんだね」
京が耳元で囁く。
「うらやましいなぁ」
「大和の癖に生意気だぞ!」
京に返事をする前に、百代が首に腕をまわし、締め付けた。
手加減はしているのだろうが、それでも相当な力が込もって...
それでも、大和はこんなことには慣れっこだ。
百代のうさ晴らしのために、大和は大げさに体をゆすり回さ...
「っ、! 死ぬって! 死ぬから!」
もちろん大げさに咳きをすることも忘れない。
「大丈夫だ。加減は分かる。気絶したらやめる」
「そしてなぜ京は手をワキワキとさせている」
「気絶したら大和を目くるめく桃色吐息の世界に連れ出そうと...
}}
#pre{{
541 名前:策士策に溺れる6[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「それ犯罪ですから!」
「だいたいお前は私の物なのに、あいつが盗もうとするからい...
「姉さん、先生に向かってあいつはよくないよ」
小さい子供をたしなめるような口調。
「盗人はあいつでいいんだもーん」
「もーんじゃありません!」
「大和が怒ったー。まゆっちー」
「あぅあぅ」
まゆっちの後ろに隠れているつもりなのだろうが、百代のほ...
そしてしっかりと手は由紀江の胸部をもみほぐしている。
「まゆっちも嫌なら、嫌って言っていいんだよ?」
「……最近になって一段とかしましくなったな。……いや、別に嫌...
「クリスも食べる?」
一子は口からキャンディーの棒を伸している。
「ありがたく頂こう」
「ところで、最近、先生と会う率高くねぇか?」
クリスが何事かいう。
口に物をふくんでいるせいで言葉にならないが、
「そうだな。これが縁というものか」
といいたいらしい。
モロと京、それと直接教えたので百代は知っていたが、風間...
}}
#pre{{
542 名前:策士策に溺れる7[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
梅子をおとすと心に誓ってほどなく、大和は京にはきっぱり...
彼女の思いが本物であるから返事も出来ないほどにきっぱり...
「いいよ。私は大和が振り向いてくれるまで待ってる」
けれど、京はそう返す。
「今は俺しか見えないのかもしれないけど……、それでも、京に...
「大和の癖にクサイセリフを言うね」
抱きしめたくなるような笑みを浮かべる。
けれど、大和は近寄りはしなかった。
しばらくの間、気持ちを利用しもしたし、幼い好意でもある...
「風が気持ちいいな」
すがすがしい風が吹きぬけていく、秋のある一日。
百代と大和は屋上にいた。最後の授業が終わるやいないや、...
大和は百代のふとももに頭をあずけ、空をぼんやりと眺めて...
と、扉がきしむ音がした。しかし人が出てくる様子はない。
しばらくしてから、またわずかに隙間が広がった。
「どうしました? 先生」
気配で梅子と察知したのだろう。百代が声をかけた。
「いや、特に用事というわけではない。……気分を変えるために...
ばつがわるそうに、梅子は出てくる。
「ひどいな先生。約束してたじゃないか」
}}
#pre{{
543 名前:策士策に溺れる8[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
頭をまわす大和。
確かに約束はしていた。調教の約束だ。言いつけを守って探...
「…その、用件はどうするんだ?」
百代の顔を、ちらちらと見やる。
「それなんですが、大和はこれから用事があるので無理です」
「そうなのか? 大和」
「まあ、そうなりますかね。先生には悪いんですが、また後日...
「……わかった。それで何時になる」
大和は調教の成果に内心ほくそ笑む。
「そんな急いで決めなきゃいけないことでもないでしょう。ま...
「まだ何か?」
なかなか立ち去ろうとしない梅子に、声をかける。
「……ああ。それじゃあ」
「いやぁ。年上の女性がしょんぼりとする姿は、ぐっとくるね」
梅子の姿が見えなくなってから、大和がつぶやく。
「私の膝の感触よりそっちのほうが良かったか? ん?」
表情は仏のように柔和だが有無をもいわさぬ迫力がある。
「そうだね」
「……そうか」
一瞬寂しげな笑みを浮かべたが、それはすぐに消え去る。
それっきり二人の会話は途絶える。
とたんに風は肌寒くなり、互いの距離の隔たりを、二人とも...
}}
#pre{{
544 名前:策士策に溺れる9[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「姉さん」
「ん? 何だ?」
あきらめにも似た表情が浮かぶ。
「俺は先生が好きだよ」
「……ああ」
「だから姉さんの気持ちには答えられない」
「なんだ。私がお前に恋してるとでもいうのか?」
デコピンをする。音は大きいが痛みはそれほどでもない。
「お前は私の物なんだ。……だいたい私がお前を好きなんて思い...
調教は生来才能があったのか順調に進んでいたが、いくら軍...
なのでこの手のことに長けている友人に頼ることは多かった。
「あー大和っち-? 最近メスはどんな調子よー?」
「おかげで順調だよこっちは」
話半分に聞くことも多かったが、は実体験に基づいていた話...
自分の思いを伝えるなど押すだけではなく、ときには引くこ...
「おーいい感じじゃん」
「だろう? 下北沢君のおかげだよ」
「じゃあ今度俺のセフレ含めて4pやらない?」
「んー。考えておくよ」
だが効果はありすぎたのか、
「……大和、話があるのだが」
}}
#pre{{
547 名前:策士策に溺れる10[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
ちょうど帰宅しようとしていた時のことだった。
「ん……わかった。時間は?」
思い詰めた様子の梅子に、内容を聞きはしない。
「いまだ。ついてきて欲しい」
校舎裏まで連れ出される。あたりに人気はない。
「大和!」
「何?」
「お前は本当に私のことを……、その……、思っているのか!?」
「なにをあたりまえのことを」
「思い返してみろ。ここ最近は私を放っておきっぱなしで、あ...
「友達なんだから仲良くするのは当たり前だろ?」
「ええい、誤魔化すな。あれは友人としてではないだろう」
「先生」
「う……な、なんだ」
「俺が本当に心のそこから好きなのは先生一人だけだよ。……先...
ぎゅっと抱きしめる。
「な、直江。ここは学校だぞ」
「そんなの関係ないよ」
「直江……」
有無を言わさぬまま口づけをした。
}}
#pre{{
548 名前:策士策に溺れる11[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
不安を感じるほど何事もうまくいっていた。
京が沈みがちなのは気に掛かったが、それ以外に特におおき...
そんなときのことだった。
「直江。夕飯は何が食べたい?」
梅子の自宅。台所のほうから梅子の声がとんでくる。
「先生が作るものだったらなんでもいいよ」
「それが一番困るのだが……文句を言うなよ」
やがて包丁の規則正しい音が流れはじめる。その心地よい音...
とつぜん、うっ、といううめき声が聞こえ、梅子はどたどた...
あわててこたつを抜け出し駆け寄る。吐瀉物の酸っぱさが鼻...
吐き気はおさまらないのか、まだ戻そうとしている。大和は...
「すまない。……最近どうも調子が悪くてな」
落ち着いてきたらしい。大和はコップを差し出し窓を開ける。
「こういうことよくあるの?」
「よくというほどではないが、ときどき戻してしまうんだ」
口をゆすいで、空になったコップを受け取る。
「戻す?」
「ああ。急に吐き気に襲われることがあってな」
「食欲は?」
「あまり無いな。体が弱っているせいか、最近臭いがどうも気...
臭いが鼻につく。その言葉が耳に残った。
「しっかり食べなきゃ。体力をつければ病気なんて逃げてくよ」
「ああ。恥ずかしい限りだ」
}}
#pre{{
549 名前:策士策に溺れる12[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
「もしかして酸っぱいものとか好きになったりする?」
かりにも28歳の女性であるし、調べてはいるのだろう。大和...
「……そういえばそうだな」
子供が表面上の意味だけをとって頷くように、素朴にそう返...
「ははは」
一応避妊はしていたが、心あたりがないわけではない。
「? おい、どうした?」
「ま、またまたからかわないでくださいよ。悪い冗談だなぁ」
「なにがだ?」
梅子は訝しげな目で大和を見ている。
「……あのさ」
「うむ」
「……検査した?」
「何のだ? 別に休んでいれば良くなると思って、病院にはい...
「ははは」
「おいおい、どうした」
つられて梅子も笑い出した。
「まさかそんなわけないよねー」
「はっきり言ってくれないとわからないだろう」
「それに教師なんだから教えることもあるしー」
「いい加減に教えてくれ」
「いやいや、……まさかないよ」
青ざめた顔をして、買ってくるものがあるし一人で考えたい...
大和は、一時間ほどたって近くの薬屋のビニール袋をぶらさ...
いったい何を買ってきたんだ、そう梅子が訪ねると、
}}
#pre{{
550 名前:策士策に溺れる13[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
「妊娠検査薬」
乾いた笑みを浮かべながら、絞り出すように言葉を吐く。
梅子の顔色が変わる。言葉少なにわかったと頷き、説明書き...
後ろに回り、大和も一文逃さず読み下す。
梅子はむくっと立ち上がり黙ってトイレに入った。
大和もじっと扉の前で待つ。
扉が開き、思い詰めた顔をした梅子が出てくる。
ひったくるように検査紙を取った。
判定窓の色が変わっている。
陽性反応だ。
「せ、先生。お、落ち着いて! 大丈夫、大丈夫だから。……い...
うろうろと歩き回る。
「落ち着くのはお前だ」
自分以上にうろたえている大和の姿をみて、落ち着きを取り...
「病院を調べる。……待ってろ」
「待って、知り合いに聞いて評判のいい病院を探してみるよ!...
「落ち着け。近々出産する友人がいる。今、電話する」
結婚はしているか、そちらの方が旦那か、同居はしているの...
「懐妊なさってます」
ちらりと大和の顔を見てから、医師は告げた。
帰りのタクシーの中では二人とも一言も喋らず、部屋に戻っ...
「熱っ」
ホットミルクを差し出す。
「ほら、大和」
「ありがとう、先生」
「うーめーこ、だろう?」
「……そうだね梅子」
}}
#pre{{
551 名前:策士策に溺れる9[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「男と女が付き合っていれば自然の成り行きだ。誰が悪いとい...
じっと耳を傾けている。
「私は堕ろすつもりはない。天からの授かりものであるし、生...
「お前に無理をさせるつもりはない。お前はまだ学生で、私は...
「……責任はとるよ」
カップを置く。
「……大和」
「梅子のことは好きだけど、……まさかこんなに早く子供ができ...
「確かに早すぎたな」
ぽつぽつと二人は言葉を交わしだす。この先のことを、話し...
学校をやめなくていいのか。やめはせずとも進学せずに就職...
それには、梅子が反対した。
「私のせいで、お前の将来を潰すことはしたくない。なに、貯...
「俺だって梅子にそんなことはしてほしくない。働くことは嫌...
籍は卒業後にいれることにした。いずれ分かることであるし...
「それと、話は変わるんだけど。……Sクラスに行きたいんだ。...
三年もFクラスでいい。
理由を訪ねはしない。梅子にはわかりきっている。
「無理ではない。前回が悪すぎたので次のテストで相当な点数...
「覚悟はしてる。それに梅子に比べたらなんでもないよ」
梅子は、笑みをこぼし、くしゃくしゃと頭を撫でた。
言葉通り大和は三年時にはSクラスに進学した。
梅子はどのクラスの担任もしていない。新学年にあがる前に...
相手が大和であることももちろん伝えた。
}}
#pre{{
552 名前:策士策に溺れる15[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
何らかのペナルティーがあるかと思われたが、実際には相手...
会議が開かれ、なかには声を大にして退学、せめて停学やS...
いることにはいたが、それは学長である川神鉄心の、我が校...
川神院の育児の支援も得られた。
育児支援は鉄心ではなく、百代と一子が言い出したことであ...
会議が開かれた数日後の金曜集会でのこと。
「えー……みんなに知らせがある」
ふらりと旅に出たキャップをのぞいて、メンツは全員揃って...
「実は梅子先生と付き合ってるんだ」
半数から驚きの声があがり、残りは百代を除いて、訳知り顔...
「それでここからが重要なんだけど。……妊娠させてしまったん...
場の空気が固まった。
クリスはせんべいを加えたまま微動だにせず回りの様子をう...
由紀江はあぅあぅと口を動かし続けていて、モロはあっけに...
「おいおい冗談はよせよ。全員ではめようったって、いくら俺...
口とは裏腹にガクトの頬は引きつっている。
「いや本当なんだ」
「嘘つくなよ。 女教師を妊娠させるなんてな、漫画だけの話...
「……大和のいったことは本当だ」
気だるそうに立ち上がり、窓辺からテーブルへと近づく。
「……わかってはいたんだ。……本当だって。いたんだよ! しか...
「お前は少し黙っていろ」
空気をよめというサインを放つモロに気づかず、哀れガクト...
}}
#pre{{
554 名前:策士策に溺れる16[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
冷静にこれまでの事態を説明する。
間に口を挟むものはいない。皆聞き入っている。
「俺の話は以上だ。なんていうか、若気の至りとしかいいよう...
ひざまずきこうべを垂れ、土下座をする。
「このとおりだ」
「頭をあげろ。そうやって土下座までしないと手助けしてくれ...
百代は、膝をかかえ、顔をさげ覗き込む。
「だとしたら心外だがな。……こいつらはお前が何もいわなくて...
振り向き同意を求める。もちろん異論を挟む者は一人もいな...
当たり前だろう。全員がそんな風に返す。
「ほら、立ち上がれ。シャキっとしろ。シャキっと。妻を娶る...
手を貸し、起き上がらせる。
「姉さん。……なんかおっさん臭いぜ」
「一言多いんだお前は」
お腹が大きくなる前に、梅子の実家へ訪れ両親へ挨拶をした。
いくら男気がなく、嫁の貰い手が見つかりそうにない娘とは...
しかしそこは大和である。事前に情報は調査済みである。手...
出産も無事に済んだ。
初産だし長いこととったらという周囲の言葉にも関わらず、...
―――そして、月日は流れ卒業式。
スーツ姿のガクトとモロは校庭にいた。最後の思い出にとぶ...
「高校生活なんてあっというまだったな」
「そうだね。このまえ入学したと思ったらもう卒業だもんね」
}}
#pre{{
555 名前:策士策に溺れる17[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
「結局俺達彼女できなかったな」
「まぁしょうがないと言えばしょうがないけど」
「あいつは勇者になったっていうのにな」
「大和は、キャップをある意味越えちゃったもんねぇ」
モロとガクトの目線の先には、駆け寄っていく大和の姿がある...
「ごめん。遅くなっちゃって」
「気にするな。お前は私の所有物なんだ。ということはお前の...
一足先に卒業した百代は、わりと暇しているらしく、最近で...
「おかあさんでちゅよー」
「こらこらこら。……洗脳するのはよしなさい」
「大和のこどもということは私のこどもも同然だもん。という...
「いかなくていいのか?」
大時計に目をやる百代。
卒業式が終わったら流れで、婚姻届を役所に出す手はずにな...
「そうだね。……悪いけどまた面倒見ててもらえる?」
「当たり前だ。ほら、行ってこい!」
校舎内に駆け戻る。
「先生」
教員室に入る。他の教師は出払っている。梅子は机で書き物...
けじめをつける意味で、学校内での呼び方は直した。
「大和か、待ってろ、もう少しで終わる」
しんとした部屋に、校庭のほうからの生徒たちの声と書き物...
「……よし。行くか」
手を握りあいながら廊下を進む。残っている生徒の姿は見受...
「……あっという間だったな」
}}
#pre{{
556 名前:策士策に溺れる18[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
「そうだね」
二人の足音が廊下の隅にまで響き渡る。
「お前のクラスを持ったときには、こんなことになるなんて思...
「俺もだよ」
「ふふっ」
吐息をこぼす。
「この一年頑張ったな」
大和は第一志望の大学に合格していた。もちろん努力のかい...
キャンパスは遠くはないが、子供も生まれたので二人は春か...
「当たりまえだろ。俺は梅子を守るって誓ったんだから」
「一丁前のことを言いおって」
門の近く、一台のセダンが止まっていて、そばには忠勝が立...
「勘違いするんじゃねーぞ。この後仕事があるから、ついでだ...
後部のドアを開け二人を乗せてから、運転席に乗り込む。
「ありがとゲンさん」
「ふん」
免許を取ってから月日は浅いが仕事柄運転することが多いの...
「ゲンさんにもいつかお礼をするよ」
「馬鹿いってんじゃねぇ。……お礼なんていい。……家族を守れる...
どこか遠くのほうを見つめながら、つぶやくようにそう言っ...
「わかってる」
手続きはつつがなく終わり、役所から出てくるときには、二...
「これでもう直江梅子なんだね」
「まだ違和感があるな」
「そうだね。少し経てば慣れるんだろうけど」
そのままとある場所へと向かいたかったが、卒業謝恩会とい...
大和と忠勝は終わり次第抜け出し、梅子が待っている喫茶店...
}}
#pre{{
557 名前:策士策に溺れる19[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
途中、忠勝は車を取りに別れる。もちろん忠勝は酒を一滴も...
悪いからタクシーで行く。だから飲め、そう幾度となく進め...
大和たちの姿に気づき、梅子は店を出た。
「おめでとうございます」
「ああ。ありがとう」
「先生、こいつに愛想がつきたらいつでも俺のところに駆け込...
「安心して下さい。そんな日は訪れませんから」
笑顔でばっさりと切り捨てる。
「ははは。そうですか。何よりです」
そのまま梅子は一子たちと話し始める。
「……なぁ……俺とお前いったいなにが違ったんだ」
肘で大和をつく。
「……大分前にもそれ言いましたよね」
「いっとくがなぁ! これからが地獄だぞ! 甘ったれ根性は...
「覚悟はしてますよ」
「……だよなぁ。お前この一年頑張ったもんなぁ」
「当然のことです」
「……選別だよ。とっとけ」
のしがついた封筒が渡される。
「ありがと」
「なあに、お前にじゃない。一度は惚れた女に向けてさ」
二人は車に乗り込み、七浜の港が一望できる公園に向かった。
夜景が美しい定番のスポットである。
梅子の手を引き高台へと向かう。
ビル街にはネオンのきらめきが、海のほうには灯台の輝きが...
深い藍色をした海はゆったりと波をたたえている。空には半...
けれど、海にはそれら全ての光りが映し出されている。
「梅子」
「なんだ」
「色々順番が入れ替わっちゃって、すまないことをしたと思っ...
}}
#pre{{
558 名前:策士策に溺れる20[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
優しく大和を見つめる。
「一生大切にします。……俺についてきて下さい」
懐から箱を取り出す。中には指輪が入っている。
「一生なんて大言していいんだな」
「あたりまえだろ」
じらすように間をおき、
「……私は一生大和についていきます」
指輪に指を通した。
――――――――その後
生徒が女教師とつきあい始め孕ませ結婚したという話題は川神...
同窓会が何回重ねられようが、この話題にはいつも花が咲き、...
大和は卒業後、一流企業に就職。後に子供のためになる世の中...
梅子はあれから二人子供をもうけた後、教師を辞め家庭に入り...
夫婦は最後の時までいつまでも仲良くくらしたとさ。
}}
#pre{{
559 名前:aerowa[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 23:20:16 ID...
以上です。無駄に長くてすみません。
>>535-537,>>539-544,>>547-552,>>554-558
レス番は以上です。
}}
終了行:
***策士策に溺れる
#pre{{
534 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/10/20(...
梅子アフター後妄想投下します。
}}
#pre{{
535 名前:策士策に溺れる1[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
大和が梅子となかば強引に付き合いだしてから、夏休みが過...
休みということもあって口実をつくっては頻繁に会い、調教...
例えば呼び名である。大和は名前のほうで呼ぶように言い、...
学校であっても、である。
「いいか、お前達には可能性があるんだ。それをないがしろに...
その日は進路調査の話があった。数名の名前が呼ばれた後、
「大和っ! ……阿呆か、お、お前は後で職員室へ来いっ! ふ...
なるべく態度にはあらわさないようにしていたが、目ざとい...
「あのさ、聞きたいことあるんだけどいい?」
千花や羽黒もその一人であった。
「なんだ? 進路の話なら言わないぜ」
「ううん、そうじゃないの。……あのさ、」
声を潜め、顔を近づける。
「最近、梅子先生といい感じじゃない?」
大和の顔色をうかがう。
「そう見えるかな?」
表情をかえることなく、返答した。
呼び方のことなど、いくつか軽い質問をぶつけた後、
「…直江さ、夏休みに梅先生とヤッたべ?」
羽黒が切り込んできた。
「ちょっ、羽黒、そのままズバっと言い過ぎ。……そこまではい...
ニヤニヤと笑う千花とニタニタと笑う羽黒。
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536 名前:策士策に溺れる2[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「それに雰囲気もなんか変わったし」
「なくはなかったとだけ言っておこうかな」
「ヒュー。やっるー。直江君勇気あるねぇ。梅先生狙いだなん...
「落としかたの相談ならのるぜぃ。プロであるアタイにまかせ...
「先生を物陰に連れ込んで押し倒すなんてことは俺の武力じゃ...
生徒と教師の間柄であるから、ひいきをしている、などとい...
―――放課後。
面接用の部屋で二人は机をはさんで差し向かいに座って、進...
[直江、私は真面目に話をしているんだぞ!」
「だから俺も真面目だって。それに直江じゃなくて、やーまー...
身をのりだし顔を梅子の耳に近づける。
「しかし、それでは噂が…」
吐息を耳に吹きかける。梅子の体が震えた。
「わかった、や、大和。真面目に話をしよう」
専業主夫。まんざら嘘ではないが、やはり問題はある。
進路調査書の内容について叱責するが、そのたびに大和はの...
「じゃあ、梅子は俺が嫌い?」
「進路調査書の話が、どうして好き嫌いに繋がる」
にらめっこのように視線を合わせ続ける。
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537 名前:策士策に溺れる3[] 投稿日:2009/10/20(火) 21:28...
「…嫌っているわけではない」
やがて叱られた子供のように、しゅんと目をそらす。
「俺は梅子を愛してるよ」
梅子の顔が一瞬のうちに耳まで真っ赤になった。
「ぞ、俗物め。よ、よくもまあぬけぬけと、そんな恥ずかしい...
「だって本気だし」
反論しようとする。けれど、言葉は出てこない。
「まあ、それはおいといて。進学はするつもりだよ」
「そ、そうか、お前の頭なら進学しないというのは勿体ないか...
大和が口にした大学を聞いて、顔をしかめる。よくも悪くも...
「まあいい。最近抜けているようだから、気を入れ替えろよ」
二学期になってからというもの、どうも成績がよくない。最...
大和が出て行った後も梅子は部屋に残っていた。
梅子は書類のはしを指でいじり、折り曲げしている。目を落...
「(……卒業したら結婚だと。い、いったい何を考えている)」
立ち上がり窓際による。
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539 名前:策士策に溺れる4[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「(本気なんだろうか)」
ガラスに指をつけ外を見ると、帰路につく生徒たちが校舎か...
ふと大和の姿を探している自分に気づき、梅子は苦笑しなが...
「(私も毒されているな)」
ふいに表情が苦くなる。
「(しかし……、この成績は問題がある。……ここのところやる気...
ため息をついた。
「(やはり、教師と生徒では問題がある……か)」
――――――朝。通学路。
この頃になると、梅子と毎日と言っていいほど遭遇するよう...
「おはようございます」
最初に気づいた由紀江が挨拶をし、それにあわせて銘々挨拶...
「おはよう皆、っ……、おい、大和……」
大和に近寄る梅子。それを阻むように不敵な笑みを浮かべた...
「おはようございます、先生」
「うむ、おはよう」
視線を外さずに返事をする。
「おい、襟」
大和の襟を直し、背中をばしんとはたき、くるりと向き直る。
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540 名前:策士策に溺れる5[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「……それで、先生。いかがしました?」
梅子から大和を隠すかのように、一歩を踏み出す。
「……いや、なんでもない」
空咳を一つついて、
「それでは皆、遅れぬようにな」
先に歩きだす。
と、数歩先で、ちらりと振り返り、何か言う素振りを見せる。
しかし、結局何も言わずに遠ざかっていった。
「そうとう躾けたんだね」
京が耳元で囁く。
「うらやましいなぁ」
「大和の癖に生意気だぞ!」
京に返事をする前に、百代が首に腕をまわし、締め付けた。
手加減はしているのだろうが、それでも相当な力が込もって...
それでも、大和はこんなことには慣れっこだ。
百代のうさ晴らしのために、大和は大げさに体をゆすり回さ...
「っ、! 死ぬって! 死ぬから!」
もちろん大げさに咳きをすることも忘れない。
「大丈夫だ。加減は分かる。気絶したらやめる」
「そしてなぜ京は手をワキワキとさせている」
「気絶したら大和を目くるめく桃色吐息の世界に連れ出そうと...
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541 名前:策士策に溺れる6[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「それ犯罪ですから!」
「だいたいお前は私の物なのに、あいつが盗もうとするからい...
「姉さん、先生に向かってあいつはよくないよ」
小さい子供をたしなめるような口調。
「盗人はあいつでいいんだもーん」
「もーんじゃありません!」
「大和が怒ったー。まゆっちー」
「あぅあぅ」
まゆっちの後ろに隠れているつもりなのだろうが、百代のほ...
そしてしっかりと手は由紀江の胸部をもみほぐしている。
「まゆっちも嫌なら、嫌って言っていいんだよ?」
「……最近になって一段とかしましくなったな。……いや、別に嫌...
「クリスも食べる?」
一子は口からキャンディーの棒を伸している。
「ありがたく頂こう」
「ところで、最近、先生と会う率高くねぇか?」
クリスが何事かいう。
口に物をふくんでいるせいで言葉にならないが、
「そうだな。これが縁というものか」
といいたいらしい。
モロと京、それと直接教えたので百代は知っていたが、風間...
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542 名前:策士策に溺れる7[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
梅子をおとすと心に誓ってほどなく、大和は京にはきっぱり...
彼女の思いが本物であるから返事も出来ないほどにきっぱり...
「いいよ。私は大和が振り向いてくれるまで待ってる」
けれど、京はそう返す。
「今は俺しか見えないのかもしれないけど……、それでも、京に...
「大和の癖にクサイセリフを言うね」
抱きしめたくなるような笑みを浮かべる。
けれど、大和は近寄りはしなかった。
しばらくの間、気持ちを利用しもしたし、幼い好意でもある...
「風が気持ちいいな」
すがすがしい風が吹きぬけていく、秋のある一日。
百代と大和は屋上にいた。最後の授業が終わるやいないや、...
大和は百代のふとももに頭をあずけ、空をぼんやりと眺めて...
と、扉がきしむ音がした。しかし人が出てくる様子はない。
しばらくしてから、またわずかに隙間が広がった。
「どうしました? 先生」
気配で梅子と察知したのだろう。百代が声をかけた。
「いや、特に用事というわけではない。……気分を変えるために...
ばつがわるそうに、梅子は出てくる。
「ひどいな先生。約束してたじゃないか」
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543 名前:策士策に溺れる8[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
頭をまわす大和。
確かに約束はしていた。調教の約束だ。言いつけを守って探...
「…その、用件はどうするんだ?」
百代の顔を、ちらちらと見やる。
「それなんですが、大和はこれから用事があるので無理です」
「そうなのか? 大和」
「まあ、そうなりますかね。先生には悪いんですが、また後日...
「……わかった。それで何時になる」
大和は調教の成果に内心ほくそ笑む。
「そんな急いで決めなきゃいけないことでもないでしょう。ま...
「まだ何か?」
なかなか立ち去ろうとしない梅子に、声をかける。
「……ああ。それじゃあ」
「いやぁ。年上の女性がしょんぼりとする姿は、ぐっとくるね」
梅子の姿が見えなくなってから、大和がつぶやく。
「私の膝の感触よりそっちのほうが良かったか? ん?」
表情は仏のように柔和だが有無をもいわさぬ迫力がある。
「そうだね」
「……そうか」
一瞬寂しげな笑みを浮かべたが、それはすぐに消え去る。
それっきり二人の会話は途絶える。
とたんに風は肌寒くなり、互いの距離の隔たりを、二人とも...
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544 名前:策士策に溺れる9[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「姉さん」
「ん? 何だ?」
あきらめにも似た表情が浮かぶ。
「俺は先生が好きだよ」
「……ああ」
「だから姉さんの気持ちには答えられない」
「なんだ。私がお前に恋してるとでもいうのか?」
デコピンをする。音は大きいが痛みはそれほどでもない。
「お前は私の物なんだ。……だいたい私がお前を好きなんて思い...
調教は生来才能があったのか順調に進んでいたが、いくら軍...
なのでこの手のことに長けている友人に頼ることは多かった。
「あー大和っち-? 最近メスはどんな調子よー?」
「おかげで順調だよこっちは」
話半分に聞くことも多かったが、は実体験に基づいていた話...
自分の思いを伝えるなど押すだけではなく、ときには引くこ...
「おーいい感じじゃん」
「だろう? 下北沢君のおかげだよ」
「じゃあ今度俺のセフレ含めて4pやらない?」
「んー。考えておくよ」
だが効果はありすぎたのか、
「……大和、話があるのだが」
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547 名前:策士策に溺れる10[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
ちょうど帰宅しようとしていた時のことだった。
「ん……わかった。時間は?」
思い詰めた様子の梅子に、内容を聞きはしない。
「いまだ。ついてきて欲しい」
校舎裏まで連れ出される。あたりに人気はない。
「大和!」
「何?」
「お前は本当に私のことを……、その……、思っているのか!?」
「なにをあたりまえのことを」
「思い返してみろ。ここ最近は私を放っておきっぱなしで、あ...
「友達なんだから仲良くするのは当たり前だろ?」
「ええい、誤魔化すな。あれは友人としてではないだろう」
「先生」
「う……な、なんだ」
「俺が本当に心のそこから好きなのは先生一人だけだよ。……先...
ぎゅっと抱きしめる。
「な、直江。ここは学校だぞ」
「そんなの関係ないよ」
「直江……」
有無を言わさぬまま口づけをした。
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548 名前:策士策に溺れる11[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
不安を感じるほど何事もうまくいっていた。
京が沈みがちなのは気に掛かったが、それ以外に特におおき...
そんなときのことだった。
「直江。夕飯は何が食べたい?」
梅子の自宅。台所のほうから梅子の声がとんでくる。
「先生が作るものだったらなんでもいいよ」
「それが一番困るのだが……文句を言うなよ」
やがて包丁の規則正しい音が流れはじめる。その心地よい音...
とつぜん、うっ、といううめき声が聞こえ、梅子はどたどた...
あわててこたつを抜け出し駆け寄る。吐瀉物の酸っぱさが鼻...
吐き気はおさまらないのか、まだ戻そうとしている。大和は...
「すまない。……最近どうも調子が悪くてな」
落ち着いてきたらしい。大和はコップを差し出し窓を開ける。
「こういうことよくあるの?」
「よくというほどではないが、ときどき戻してしまうんだ」
口をゆすいで、空になったコップを受け取る。
「戻す?」
「ああ。急に吐き気に襲われることがあってな」
「食欲は?」
「あまり無いな。体が弱っているせいか、最近臭いがどうも気...
臭いが鼻につく。その言葉が耳に残った。
「しっかり食べなきゃ。体力をつければ病気なんて逃げてくよ」
「ああ。恥ずかしい限りだ」
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549 名前:策士策に溺れる12[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
「もしかして酸っぱいものとか好きになったりする?」
かりにも28歳の女性であるし、調べてはいるのだろう。大和...
「……そういえばそうだな」
子供が表面上の意味だけをとって頷くように、素朴にそう返...
「ははは」
一応避妊はしていたが、心あたりがないわけではない。
「? おい、どうした?」
「ま、またまたからかわないでくださいよ。悪い冗談だなぁ」
「なにがだ?」
梅子は訝しげな目で大和を見ている。
「……あのさ」
「うむ」
「……検査した?」
「何のだ? 別に休んでいれば良くなると思って、病院にはい...
「ははは」
「おいおい、どうした」
つられて梅子も笑い出した。
「まさかそんなわけないよねー」
「はっきり言ってくれないとわからないだろう」
「それに教師なんだから教えることもあるしー」
「いい加減に教えてくれ」
「いやいや、……まさかないよ」
青ざめた顔をして、買ってくるものがあるし一人で考えたい...
大和は、一時間ほどたって近くの薬屋のビニール袋をぶらさ...
いったい何を買ってきたんだ、そう梅子が訪ねると、
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#pre{{
550 名前:策士策に溺れる13[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
「妊娠検査薬」
乾いた笑みを浮かべながら、絞り出すように言葉を吐く。
梅子の顔色が変わる。言葉少なにわかったと頷き、説明書き...
後ろに回り、大和も一文逃さず読み下す。
梅子はむくっと立ち上がり黙ってトイレに入った。
大和もじっと扉の前で待つ。
扉が開き、思い詰めた顔をした梅子が出てくる。
ひったくるように検査紙を取った。
判定窓の色が変わっている。
陽性反応だ。
「せ、先生。お、落ち着いて! 大丈夫、大丈夫だから。……い...
うろうろと歩き回る。
「落ち着くのはお前だ」
自分以上にうろたえている大和の姿をみて、落ち着きを取り...
「病院を調べる。……待ってろ」
「待って、知り合いに聞いて評判のいい病院を探してみるよ!...
「落ち着け。近々出産する友人がいる。今、電話する」
結婚はしているか、そちらの方が旦那か、同居はしているの...
「懐妊なさってます」
ちらりと大和の顔を見てから、医師は告げた。
帰りのタクシーの中では二人とも一言も喋らず、部屋に戻っ...
「熱っ」
ホットミルクを差し出す。
「ほら、大和」
「ありがとう、先生」
「うーめーこ、だろう?」
「……そうだね梅子」
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551 名前:策士策に溺れる9[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 2...
「男と女が付き合っていれば自然の成り行きだ。誰が悪いとい...
じっと耳を傾けている。
「私は堕ろすつもりはない。天からの授かりものであるし、生...
「お前に無理をさせるつもりはない。お前はまだ学生で、私は...
「……責任はとるよ」
カップを置く。
「……大和」
「梅子のことは好きだけど、……まさかこんなに早く子供ができ...
「確かに早すぎたな」
ぽつぽつと二人は言葉を交わしだす。この先のことを、話し...
学校をやめなくていいのか。やめはせずとも進学せずに就職...
それには、梅子が反対した。
「私のせいで、お前の将来を潰すことはしたくない。なに、貯...
「俺だって梅子にそんなことはしてほしくない。働くことは嫌...
籍は卒業後にいれることにした。いずれ分かることであるし...
「それと、話は変わるんだけど。……Sクラスに行きたいんだ。...
三年もFクラスでいい。
理由を訪ねはしない。梅子にはわかりきっている。
「無理ではない。前回が悪すぎたので次のテストで相当な点数...
「覚悟はしてる。それに梅子に比べたらなんでもないよ」
梅子は、笑みをこぼし、くしゃくしゃと頭を撫でた。
言葉通り大和は三年時にはSクラスに進学した。
梅子はどのクラスの担任もしていない。新学年にあがる前に...
相手が大和であることももちろん伝えた。
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552 名前:策士策に溺れる15[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
何らかのペナルティーがあるかと思われたが、実際には相手...
会議が開かれ、なかには声を大にして退学、せめて停学やS...
いることにはいたが、それは学長である川神鉄心の、我が校...
川神院の育児の支援も得られた。
育児支援は鉄心ではなく、百代と一子が言い出したことであ...
会議が開かれた数日後の金曜集会でのこと。
「えー……みんなに知らせがある」
ふらりと旅に出たキャップをのぞいて、メンツは全員揃って...
「実は梅子先生と付き合ってるんだ」
半数から驚きの声があがり、残りは百代を除いて、訳知り顔...
「それでここからが重要なんだけど。……妊娠させてしまったん...
場の空気が固まった。
クリスはせんべいを加えたまま微動だにせず回りの様子をう...
由紀江はあぅあぅと口を動かし続けていて、モロはあっけに...
「おいおい冗談はよせよ。全員ではめようったって、いくら俺...
口とは裏腹にガクトの頬は引きつっている。
「いや本当なんだ」
「嘘つくなよ。 女教師を妊娠させるなんてな、漫画だけの話...
「……大和のいったことは本当だ」
気だるそうに立ち上がり、窓辺からテーブルへと近づく。
「……わかってはいたんだ。……本当だって。いたんだよ! しか...
「お前は少し黙っていろ」
空気をよめというサインを放つモロに気づかず、哀れガクト...
}}
#pre{{
554 名前:策士策に溺れる16[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
冷静にこれまでの事態を説明する。
間に口を挟むものはいない。皆聞き入っている。
「俺の話は以上だ。なんていうか、若気の至りとしかいいよう...
ひざまずきこうべを垂れ、土下座をする。
「このとおりだ」
「頭をあげろ。そうやって土下座までしないと手助けしてくれ...
百代は、膝をかかえ、顔をさげ覗き込む。
「だとしたら心外だがな。……こいつらはお前が何もいわなくて...
振り向き同意を求める。もちろん異論を挟む者は一人もいな...
当たり前だろう。全員がそんな風に返す。
「ほら、立ち上がれ。シャキっとしろ。シャキっと。妻を娶る...
手を貸し、起き上がらせる。
「姉さん。……なんかおっさん臭いぜ」
「一言多いんだお前は」
お腹が大きくなる前に、梅子の実家へ訪れ両親へ挨拶をした。
いくら男気がなく、嫁の貰い手が見つかりそうにない娘とは...
しかしそこは大和である。事前に情報は調査済みである。手...
出産も無事に済んだ。
初産だし長いこととったらという周囲の言葉にも関わらず、...
―――そして、月日は流れ卒業式。
スーツ姿のガクトとモロは校庭にいた。最後の思い出にとぶ...
「高校生活なんてあっというまだったな」
「そうだね。このまえ入学したと思ったらもう卒業だもんね」
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#pre{{
555 名前:策士策に溺れる17[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
「結局俺達彼女できなかったな」
「まぁしょうがないと言えばしょうがないけど」
「あいつは勇者になったっていうのにな」
「大和は、キャップをある意味越えちゃったもんねぇ」
モロとガクトの目線の先には、駆け寄っていく大和の姿がある...
「ごめん。遅くなっちゃって」
「気にするな。お前は私の所有物なんだ。ということはお前の...
一足先に卒業した百代は、わりと暇しているらしく、最近で...
「おかあさんでちゅよー」
「こらこらこら。……洗脳するのはよしなさい」
「大和のこどもということは私のこどもも同然だもん。という...
「いかなくていいのか?」
大時計に目をやる百代。
卒業式が終わったら流れで、婚姻届を役所に出す手はずにな...
「そうだね。……悪いけどまた面倒見ててもらえる?」
「当たり前だ。ほら、行ってこい!」
校舎内に駆け戻る。
「先生」
教員室に入る。他の教師は出払っている。梅子は机で書き物...
けじめをつける意味で、学校内での呼び方は直した。
「大和か、待ってろ、もう少しで終わる」
しんとした部屋に、校庭のほうからの生徒たちの声と書き物...
「……よし。行くか」
手を握りあいながら廊下を進む。残っている生徒の姿は見受...
「……あっという間だったな」
}}
#pre{{
556 名前:策士策に溺れる18[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
「そうだね」
二人の足音が廊下の隅にまで響き渡る。
「お前のクラスを持ったときには、こんなことになるなんて思...
「俺もだよ」
「ふふっ」
吐息をこぼす。
「この一年頑張ったな」
大和は第一志望の大学に合格していた。もちろん努力のかい...
キャンパスは遠くはないが、子供も生まれたので二人は春か...
「当たりまえだろ。俺は梅子を守るって誓ったんだから」
「一丁前のことを言いおって」
門の近く、一台のセダンが止まっていて、そばには忠勝が立...
「勘違いするんじゃねーぞ。この後仕事があるから、ついでだ...
後部のドアを開け二人を乗せてから、運転席に乗り込む。
「ありがとゲンさん」
「ふん」
免許を取ってから月日は浅いが仕事柄運転することが多いの...
「ゲンさんにもいつかお礼をするよ」
「馬鹿いってんじゃねぇ。……お礼なんていい。……家族を守れる...
どこか遠くのほうを見つめながら、つぶやくようにそう言っ...
「わかってる」
手続きはつつがなく終わり、役所から出てくるときには、二...
「これでもう直江梅子なんだね」
「まだ違和感があるな」
「そうだね。少し経てば慣れるんだろうけど」
そのままとある場所へと向かいたかったが、卒業謝恩会とい...
大和と忠勝は終わり次第抜け出し、梅子が待っている喫茶店...
}}
#pre{{
557 名前:策士策に溺れる19[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
途中、忠勝は車を取りに別れる。もちろん忠勝は酒を一滴も...
悪いからタクシーで行く。だから飲め、そう幾度となく進め...
大和たちの姿に気づき、梅子は店を出た。
「おめでとうございます」
「ああ。ありがとう」
「先生、こいつに愛想がつきたらいつでも俺のところに駆け込...
「安心して下さい。そんな日は訪れませんから」
笑顔でばっさりと切り捨てる。
「ははは。そうですか。何よりです」
そのまま梅子は一子たちと話し始める。
「……なぁ……俺とお前いったいなにが違ったんだ」
肘で大和をつく。
「……大分前にもそれ言いましたよね」
「いっとくがなぁ! これからが地獄だぞ! 甘ったれ根性は...
「覚悟はしてますよ」
「……だよなぁ。お前この一年頑張ったもんなぁ」
「当然のことです」
「……選別だよ。とっとけ」
のしがついた封筒が渡される。
「ありがと」
「なあに、お前にじゃない。一度は惚れた女に向けてさ」
二人は車に乗り込み、七浜の港が一望できる公園に向かった。
夜景が美しい定番のスポットである。
梅子の手を引き高台へと向かう。
ビル街にはネオンのきらめきが、海のほうには灯台の輝きが...
深い藍色をした海はゆったりと波をたたえている。空には半...
けれど、海にはそれら全ての光りが映し出されている。
「梅子」
「なんだ」
「色々順番が入れ替わっちゃって、すまないことをしたと思っ...
}}
#pre{{
558 名前:策士策に溺れる20[sage] 投稿日:2009/10/20(火)...
優しく大和を見つめる。
「一生大切にします。……俺についてきて下さい」
懐から箱を取り出す。中には指輪が入っている。
「一生なんて大言していいんだな」
「あたりまえだろ」
じらすように間をおき、
「……私は一生大和についていきます」
指輪に指を通した。
――――――――その後
生徒が女教師とつきあい始め孕ませ結婚したという話題は川神...
同窓会が何回重ねられようが、この話題にはいつも花が咲き、...
大和は卒業後、一流企業に就職。後に子供のためになる世の中...
梅子はあれから二人子供をもうけた後、教師を辞め家庭に入り...
夫婦は最後の時までいつまでも仲良くくらしたとさ。
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559 名前:aerowa[sage] 投稿日:2009/10/20(火) 23:20:16 ID...
以上です。無駄に長くてすみません。
>>535-537,>>539-544,>>547-552,>>554-558
レス番は以上です。
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