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***義経は忘れない #pre{{ 381 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 21:42:00.87 ID:S5ifse6r0 小雪√、反乱鎮圧後の義経とマープルで投下 }} #pre{{ 382 名前:義経は忘れない・1[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 21:46:04.32 ID:S5ifse6r0 ヒューム・ヘルシング。クラウディオ・ネェロ。そしてミス・マープル。 造反に失敗した3人の従者が 九鬼家の裁きを受けるために、長い廊下を並んで歩く。 「アンタらには、迷惑かけちまったねぇ」 「気にするな。全て承知の上でのことだ」 「そうですねぇ……もし、詫びる必要があるとすれば……彼女たちに、でしょうか」 クラウディオにそう言われて、顔を上げて見る廊下の先に 源義経、武蔵棒弁慶、那須与一、葉桜清楚……クローンたち4人が立っていた。 「何してるんだい、アンタたち。 もう寝る時間だろ、さっさとお休み」 恨み言の一つも言われるだろう。それは仕方がない。言い訳もできない。 受け止めていかねばなるまいと、足を止めたマープルに 顔を上げた義経が言ったのは意外な言葉だった。 「義経も、罰を受けたい」 「……はぁ?何を馬鹿なことを。 いいかい、アンタらは、あたしに言われて無理やり戦わされたんだ。 もう、お咎めはなし、と決まってるんだよ」 「でも……でも、義経は自分の意思でマープルに味方した! 世話になったマープルに恩を返すのは当然だと思った! ……結果、それは九鬼を裏切ることになったから…… だから、やっぱり義経も罰を受けるべきだと思う」 「馬鹿な子だね……たいした世話など、しなかったろうに」 }} #pre{{ 383 名前:義経は忘れない・2[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 21:52:36.99 ID:S5ifse6r0 なおも義経は食い下がる。 「そんなことはない!マープルには、いろいろよくしてもらった!義経の恩人だ!」 「そりゃあね、『恩を売って』おいたのさ。 計画発動のときには、すんなりあたしに従ってもらうためにね。 あんたはね、もうちょっと人を疑うってことを……」 「嘘だ……嘘だ!だって……だって、義経は覚えている!」 「覚えている……?何をだい」 「義経は……授業参観には必ず来てくれて、教室の後ろで義経たちを見ていた マープルの笑顔を覚えている! 誕生日に焼いてくれた、マープルの手作りのケーキの味を覚えている! 山の中で迷子になって、疲れて動けなくなった義経を迎えに来て 背負ってくれたマープルの背中の温かさを覚えている!覚えているんだ!」 「じゃあ、忘れるんだね」 「!……嫌だ……嫌だ!忘れない!義経は忘れない!」 「お黙り!忘れるんだ……忘れるんだよ! いいかい、アンタらは、いい人ぶってるあたしに騙されてたんだ。 そういうことに、しておかなきゃあいけないんだ! だから、これからはあたしのことは忘れて……自分の好きに生きるんだ。 弁慶、与一、清楚。義経を部屋まで連れていきな。部屋から出すんじゃないよ 帝様に直訴でもされたら、面倒なことになりかねないからね」 弁慶たちに引きずられるようにして部屋に戻る義経の叫びが廊下に響く。 「忘れない!義経は、絶対、忘れないー!」 }} #pre{{ 384 名前:義経は忘れない・3[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 21:58:03.93 ID:S5ifse6r0 「馬鹿な子だねぇ……本当に、馬鹿な子だ……」 義経の姿が見えなくなって。声も聞こえなくなって。 やっとマープルが口を開く。 自分がいなくなっても、ちゃんとやっていけるだろうか。 それだけが、今のマープルの心残りだった。 「しかしまあ、子供ってのは つまらないことをいつまでも覚えているもんだねぇ」 「お前は覚えていないのか、マープル?」 「あたしを誰だと思ってるんだい。『星の図書館』だよ。 何一つ忘れるもんか。覚えている。覚えているさ…… ただね……思い出さないようにしてたんだ。 あの子達を計画の駒にする。計画のため、世界のため、と決めたとき、私情は捨てたんだよ」 「……世界のため、ですか。貴女もあの子達も、世界の一部でしょうに」 「そうだね……馬鹿なのは、あたしのほうだった。 さ、すっかり時間を食っちまった。 帝様をこれ以上お待たせするわけにもいかないよ、さっさと行こうじゃないか」 だが 待ち受けていた処罰は思いのほか軽く、驚き、呆れる。 それでも、閉じかけた「星の図書館」を 少しだけ、まだ開けておくことができるのならば。 「帝様。もし……もしもお許し願えるなら…… 最後に一つだけ、お任せいただきたい仕事があるのですが」 「……言ってみな」 }} #pre{{ 385 名前:義経は忘れない・4[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 22:02:25.46 ID:S5ifse6r0 ガンガンガンガンガンガン!! 「うわぁっ!?て、敵襲か!?」 翌朝。けたたましく鳴り響く金属音で飛び起きた義経に怒声が飛んでくる。 「なーにが敵襲だい。ほーら朝だよ朝!さっさと起きなー!」 目を覚ました義経の目に飛び込んできたのは 部屋の入り口で割烹着に身を包み、手ぬぐいを姉さん被りにして 手にした鍋をお玉で叩いている……マープルの姿だった。 「え……マープル……?ど、どうして……?そ、その格好は?」 「どうしてもこうしてもないよ。今日からね、あたしゃあんたらの世話係を仰せつかってるんだ。 ほら、ボーっとしてないで、さっさと起きて顔洗っておいで!朝稽古があるんだろ! そんでもって、弁慶と与一を起こしておいで!清楚はね、もうちゃんと起きてるよ! シャンとしなシャンと!稽古がすんだらすぐ朝ごはんだからね!遅れるんじゃないよ!」 機関銃のようにまくし立てるマープルに、わけがわからない義経が問いかける。 「マープル?あの……処罰は、どうなったのだろう?」 「さあね……おおかた、この先あんたらの面倒を見ていくのがあたしの罰なんだろうさ。 ほら、お喋りしてる暇はないよ!さっさと顔洗って……ホラ、タオルタオル!」 「わ……わかった!……マープル?」 「なんだい、まだ何かあるのかい?……言ってごらん」 「やっぱり……やっぱり、義経は忘れない!これまでのことも、今日のことも! ずっと、ずっと、義経は忘れない!」 }} #pre{{ 386 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 22:06:30.48 ID:S5ifse6r0 おしまい この後ヒュームとクラウディオが割烹着姿のマープルを見て大笑いしてしまい お玉でポコポコ叩かれて大騒ぎみたいなホームドラマもあったりしたけど割愛 }}
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***義経は忘れない #pre{{ 381 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 21:42:00.87 ID:S5ifse6r0 小雪√、反乱鎮圧後の義経とマープルで投下 }} #pre{{ 382 名前:義経は忘れない・1[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 21:46:04.32 ID:S5ifse6r0 ヒューム・ヘルシング。クラウディオ・ネェロ。そしてミス・マープル。 造反に失敗した3人の従者が 九鬼家の裁きを受けるために、長い廊下を並んで歩く。 「アンタらには、迷惑かけちまったねぇ」 「気にするな。全て承知の上でのことだ」 「そうですねぇ……もし、詫びる必要があるとすれば……彼女たちに、でしょうか」 クラウディオにそう言われて、顔を上げて見る廊下の先に 源義経、武蔵棒弁慶、那須与一、葉桜清楚……クローンたち4人が立っていた。 「何してるんだい、アンタたち。 もう寝る時間だろ、さっさとお休み」 恨み言の一つも言われるだろう。それは仕方がない。言い訳もできない。 受け止めていかねばなるまいと、足を止めたマープルに 顔を上げた義経が言ったのは意外な言葉だった。 「義経も、罰を受けたい」 「……はぁ?何を馬鹿なことを。 いいかい、アンタらは、あたしに言われて無理やり戦わされたんだ。 もう、お咎めはなし、と決まってるんだよ」 「でも……でも、義経は自分の意思でマープルに味方した! 世話になったマープルに恩を返すのは当然だと思った! ……結果、それは九鬼を裏切ることになったから…… だから、やっぱり義経も罰を受けるべきだと思う」 「馬鹿な子だね……たいした世話など、しなかったろうに」 }} #pre{{ 383 名前:義経は忘れない・2[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 21:52:36.99 ID:S5ifse6r0 なおも義経は食い下がる。 「そんなことはない!マープルには、いろいろよくしてもらった!義経の恩人だ!」 「そりゃあね、『恩を売って』おいたのさ。 計画発動のときには、すんなりあたしに従ってもらうためにね。 あんたはね、もうちょっと人を疑うってことを……」 「嘘だ……嘘だ!だって……だって、義経は覚えている!」 「覚えている……?何をだい」 「義経は……授業参観には必ず来てくれて、教室の後ろで義経たちを見ていた マープルの笑顔を覚えている! 誕生日に焼いてくれた、マープルの手作りのケーキの味を覚えている! 山の中で迷子になって、疲れて動けなくなった義経を迎えに来て 背負ってくれたマープルの背中の温かさを覚えている!覚えているんだ!」 「じゃあ、忘れるんだね」 「!……嫌だ……嫌だ!忘れない!義経は忘れない!」 「お黙り!忘れるんだ……忘れるんだよ! いいかい、アンタらは、いい人ぶってるあたしに騙されてたんだ。 そういうことに、しておかなきゃあいけないんだ! だから、これからはあたしのことは忘れて……自分の好きに生きるんだ。 弁慶、与一、清楚。義経を部屋まで連れていきな。部屋から出すんじゃないよ 帝様に直訴でもされたら、面倒なことになりかねないからね」 弁慶たちに引きずられるようにして部屋に戻る義経の叫びが廊下に響く。 「忘れない!義経は、絶対、忘れないー!」 }} #pre{{ 384 名前:義経は忘れない・3[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 21:58:03.93 ID:S5ifse6r0 「馬鹿な子だねぇ……本当に、馬鹿な子だ……」 義経の姿が見えなくなって。声も聞こえなくなって。 やっとマープルが口を開く。 自分がいなくなっても、ちゃんとやっていけるだろうか。 それだけが、今のマープルの心残りだった。 「しかしまあ、子供ってのは つまらないことをいつまでも覚えているもんだねぇ」 「お前は覚えていないのか、マープル?」 「あたしを誰だと思ってるんだい。『星の図書館』だよ。 何一つ忘れるもんか。覚えている。覚えているさ…… ただね……思い出さないようにしてたんだ。 あの子達を計画の駒にする。計画のため、世界のため、と決めたとき、私情は捨てたんだよ」 「……世界のため、ですか。貴女もあの子達も、世界の一部でしょうに」 「そうだね……馬鹿なのは、あたしのほうだった。 さ、すっかり時間を食っちまった。 帝様をこれ以上お待たせするわけにもいかないよ、さっさと行こうじゃないか」 だが 待ち受けていた処罰は思いのほか軽く、驚き、呆れる。 それでも、閉じかけた「星の図書館」を 少しだけ、まだ開けておくことができるのならば。 「帝様。もし……もしもお許し願えるなら…… 最後に一つだけ、お任せいただきたい仕事があるのですが」 「……言ってみな」 }} #pre{{ 385 名前:義経は忘れない・4[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 22:02:25.46 ID:S5ifse6r0 ガンガンガンガンガンガン!! 「うわぁっ!?て、敵襲か!?」 翌朝。けたたましく鳴り響く金属音で飛び起きた義経に怒声が飛んでくる。 「なーにが敵襲だい。ほーら朝だよ朝!さっさと起きなー!」 目を覚ました義経の目に飛び込んできたのは 部屋の入り口で割烹着に身を包み、手ぬぐいを姉さん被りにして 手にした鍋をお玉で叩いている……マープルの姿だった。 「え……マープル……?ど、どうして……?そ、その格好は?」 「どうしてもこうしてもないよ。今日からね、あたしゃあんたらの世話係を仰せつかってるんだ。 ほら、ボーっとしてないで、さっさと起きて顔洗っておいで!朝稽古があるんだろ! そんでもって、弁慶と与一を起こしておいで!清楚はね、もうちゃんと起きてるよ! シャンとしなシャンと!稽古がすんだらすぐ朝ごはんだからね!遅れるんじゃないよ!」 機関銃のようにまくし立てるマープルに、わけがわからない義経が問いかける。 「マープル?あの……処罰は、どうなったのだろう?」 「さあね……おおかた、この先あんたらの面倒を見ていくのがあたしの罰なんだろうさ。 ほら、お喋りしてる暇はないよ!さっさと顔洗って……ホラ、タオルタオル!」 「わ……わかった!……マープル?」 「なんだい、まだ何かあるのかい?……言ってごらん」 「やっぱり……やっぱり、義経は忘れない!これまでのことも、今日のことも! ずっと、ずっと、義経は忘れない!」 }} #pre{{ 386 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 22:06:30.48 ID:S5ifse6r0 おしまい この後ヒュームとクラウディオが割烹着姿のマープルを見て大笑いしてしまい お玉でポコポコ叩かれて大騒ぎみたいなホームドラマもあったりしたけど割愛 }}
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