【姉しよ〜】タカヒロ作品SSAAスレ1【〜マジ恋】
- 1 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 22:08:39 ID:mpALZYKy0
- シナリオライター タカヒロ氏のゲーム
きゃんでぃそふと「姉、ちゃんとしようよっ!」「姉、ちゃんとしようよっ!2」「つよきす」
みなとそふと「君が主で執事が俺で」「真剣で私に恋しなさい!」
のSS&AAネタ投稿スレッドです。
★保管庫
きゃんでぃそふと SS&AA保管庫 (過去ログも保管)
ttp://yellow.ribbon.to/~nechan2/
- 2 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 22:09:19 ID:mpALZYKy0
- 【投稿ガイドライン】
1.テキストエディタ等でSSを書く。
2.書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
投下の際は2分以上間隔をあけないと連投規制にあって書き込めなくなるので注意。
名前の欄にタイトルを入れておくとスマート。
なお、一回の投稿の最大行数は32行、最大バイト数2048バイトです
3.SSの書き込みが終わったら、名前の欄に作者名を書きタイトルを記入して、
自分がアップしたところをリダイレクトする。>>1-3みたいな感じ。
4.基本的にsage進行でお願いします。また、長文uzeeeeeeと言われる
恐れがあるため、ageる場合はなるべく長文を回した後お願いします。
5.スレッド容量が470KBを超えた時点で、
ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。
6.書き手の方々へ。
心構えとして「叩かれても反応が無くても泣かない」位の気概で。
何を書こうが作者の自由。どんな反応を返そうが読者の自由。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。
- 3 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:26:39 ID:dWJMLn5/0
- 「ただいまー……あれ?」
寮に帰ってきたら、何やら香ばしい、いい匂いが。
腹を空かせたキャップあたりが何か作っているのだろうか?
「おかえりー、大和!」
「お、ワン子、来てたのか」
「うん!今ね、まゆっちに料理教わってるの!」
「へえ」
いい匂いの元はワン子だったようだ。
「栄養管理も大事だけど、
やっぱり美味しく食べてもらうことも大事かな、って思って」
「なるほど、作るところまでやろうってわけか。頑張ってるな」
「うん!でも、作るほうはちょっとアレだったから……」
「ワン子さん、そろそろ煮こみが終わり……
あ、お帰りなさい、大和さん」
「や、ただいま。ありがとうね、まゆっち。ワン子に料理教えてくれて」
「いえいえ、私も勉強になりますから。
ではワン子さん、そろそろ次の手順ですよ」
「了解よ!じゃあ大和、できあがったら試食させてあげるわね!」
- 4 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:28:34 ID:dWJMLn5/0
- 「うー……もまだちょっと胃もたれがする」
「うぅ……悪気はなかったのよぅ」
昨日のワン子の料理は、まゆっちが見ていてくれたおかげで
味はそれなりのものになっていたのだが
分量を間違えたのか、量がとんでもなく多かった。
日もちしそうになかったので
俺とまゆっちとワン子で必死に処理した結果がこのざまである。
「大変だねぇ。ハーブ入りクッキーでも食べる?
気分がよくなると思うよ」
クマちゃんがどこからかクッキーを出してくる。
いつも思うんだが、どこに隠してあるんだろうか。
「いや、今は食欲ないからいいや……」
「じゃあ、アタシもらうわね」
「お前、胸焼けも胃もたれもしてないだろ」
昨日の試食(?)も俺の2倍は食べていたはずだが
どういう胃袋なんだか。
「ところで、クマちゃんって料理部だったわよね?」
「うん、日々美味しくて体にいい食事を研究してるよ」
「アタシも、料理部に入れてもらおうと思うんだけど……どうかしら?」
- 5 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:32:52 ID:dWJMLn5/0
- クマちゃんの顔がぱっと輝く。
「うん!食について真剣に考えてる川神さんなら、大歓迎だよ!」
そういえば、ただ食べ歩いてるだけじゃなくて
自分でも料理作るんだよな、クマちゃん。
ときどき試作品をもらうが、なかなかの腕前だった。
あれなら、ワン子の先生にはもってこいだろうが
「まゆっち先生はいいのか?」
「まゆっちにも教わるけど、友達作りで大変そうだし
あんまりアタシの相手ばかりさせるのも悪いかな、って」
「そっか。じゃあ、頑張ってみな」
しかし、料理の方面じゃあまり手助けはできないなぁ。
せいぜい出来た料理を試食するぐらいか。
まあ、その分俺は勉強の手伝いをしてやろう。
「じゃあ川神さん、今日はいちおう見学してもらうってことで
放課後、調理実習室に来てね」
「はーい!」
ふいに、ある懸念が頭に浮かび
ワン子に釘をさす。
「……頑張りすぎて、クマちゃんみたいに太るなよ」
「あはははは、大丈夫よー!」
- 6 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:36:01 ID:mpALZYKy0
- 支援
- 7 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:36:44 ID:dWJMLn5/0
- 大丈夫では、なかった。
ワン子が料理部に入って1週間。
授業が終わっても、なかなか教室を出ようとしない。
「おいワン子、部活はいいのか?」
「あ、うん……どうしようかな……」
「おいおい、入部してまだ1週間だろ?
もう挫折したのか」
「挫折というか……あのね(ゴニョゴニョ)」
「……なんと」
1週間で2キロ太るってのは、ワン子の身長を考えると
けっこうヤバイ太り方かもしれん。
このままいったら……本当にクマちゃんみたいに……
「?大和?なんか悲しそう……ゴメンね、太っちゃって」
あ、いかん、想像が想像だけに顔に出てしまった。
「クマちゃんがね、『作ったものは残さず食べなきゃダメ』ってキビシイの」
「そうか……あんまり太ったようには見えないけどな」
「目に見えて太っちゃったら、手遅れな気がする……」
そうかも。
- 8 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:40:52 ID:dWJMLn5/0
- 「太るのは、消費してるカロリーより
摂取してるカロリーが多いわけだな」
「そうね……正直、鍛錬は前に比べれば全然してないから……」
「それだな」
川神院師範代への道が閉ざされたため
ワン子の生活のほとんどを閉めていた修行の時間は
管理栄養士になるための勉強や
俺とすごす時間に変わっていた。
「食べる量、減ってないのか?」
「んー……ちょっとは、減ってるかな?」
「ちょっとかよ」
そりゃマズイな。
今まで食べてた量はハンパない。
かといって、今さら体を鍛えるのにそうそう時間はさけない。
「とりあえず、食いすぎないように気をつけながら
部活はもうちょっと続けてみろ」
「食べ過ぎないようにかー……難しいわ」
頑張り屋のワン子も
ダイエットは頑張りにくいようだった。
- 9 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:44:45 ID:dWJMLn5/0
- さらに1週間。
なんとか体重増加には歯止めがかかってきたらしい。
ちょっと安心したので、帰りに二人で秘密基地に寄ってみると
金曜でもないのに、皆揃っていた。
「あは、皆来てたんだ」
「ようワン子、聞いたぜー、お前、ちょっと太ってきたんでダイエット中だってな?」
「え、誰に聞いたの?」
「クマちゃん。なんか料理部のメシ、ワン子が喰いきらなくなったから
その分も自分が食べてるって話から」
ああ、そういえば別に口止めとかしなかったな。
まあ隠すようなことでもないし、いいだろうけど。
「う……もう、そんなに増えてないわよ」
「でも、見た感じは全然変わらない」
「そうだな……着るものとかキツクなってはいないのか、犬?」
「別に服は……あ」
「なんだ?」
「えっと……そういえば、ちょっと……ブラがきつくなった、かも」
一瞬、場が固まった。
- 10 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:49:31 ID:dWJMLn5/0
- 「大和ぉーッ!!」
「うおわっ!?」
いきなり飛んできた姉さんに、両手をガッシと握られる。
「この手かッ!この手がワン子をッ!あの、いたいけなワン子をッ!!」
「ちょ、いた、潰れる潰れるッ!何なの一体!?」
「アレなこととか!アレなこととかしたのか!姉である私をさしおいて!」
「別にそれは姉のすることではないと思う!」
「ほえー……そっか、大和のおかげだったのね……」
つまり……今までは修行のために運動量が多すぎて
いくら喰っても胸まで栄養がいってなかったのが
運動量が減って、なおかつエロいこともするようになったんで
急に胸に栄養が行き届き始めたわけか。
「じゃあ、お姉さまみたいにバイーンとなるのも夢じゃないかも!」
一つの夢が潰えたおかげで、別の夢がかないそうになるとは皮肉なものだ。
だが、それぐらいは夢がかなったっていいじゃないか。
今まで目一杯、頑張ってきたんだから。
「これはアレね、『でっかいメロンが二つもあるぜ』って言われるのも時間の問題だわ!
えっと……よろしくね、大和!」
「……夏みかん程度までにしておいてくれ」
- 11 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:54:27 ID:dWJMLn5/0
- 終了。タイトル考えてなかった……
- 12 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/14(月) 23:57:36 ID:mpALZYKy0
- 乙
ワンコがクマーンみたいになっちゃう話かと思ってハラハラしたw
- 13 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/15(火) 02:11:51 ID:54prFHHI0
- スレ立て乙&投下乙
- 14 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/15(火) 15:24:46 ID:ZuCZQgSu0
- クリスルートアフターっぽいもの投下
- 15 名前:二人の部屋・1[sage]投稿日:2009/09/15(火) 15:27:47 ID:ZuCZQgSu0
- 「短い間ではあったが、離れるとなると寂しいものだな」
「そうだな……二人が初めて同棲した部屋だもんな」
日曜日。
俺とクリスは親不幸通りの二人の部屋で
荷物の整理をしていた。
みんなのおかげもあって、俺とクリスの川神学院への復学は認められた。
川神学院の学生の身分に戻ったことで
二人ともまた島津寮に戻れる。
仕送りも再開されることだし
麗子さんもこころよく受け入れてくれたのだが
そうなると、二人で借りたこの親不幸通りの部屋は無駄になってしまう。
この部屋から二人で学院に通うのは
流石に認めてもらえそうにないし
クリスと話しあって、結局引き払うことに落ちついた。
「これは……リサイクルショップにでも引き取ってもらうか」
今日すぐに荷物を移動させるわけではないが
島津寮にもって戻るもの、秘密基地に運ぶもの、処分するもの、と
とりあえず部屋の中のものを行き先に応じて仕分けしていく。
「次は台所まわりだな」
「うん……」
台所に立ったクリスが、コンロの前で物思いにふけり始めた。
料理では、けっこう苦労していたからな。
その分、思い出でもあるんだろう。
- 16 名前:二人の部屋・2[sage]投稿日:2009/09/15(火) 15:30:56 ID:ZuCZQgSu0
- 「このガスコンロは、火力調節がなかなかうまくいかず、厄介だった」
「ずいぶん焦げたおかずを食わされたよな」
「おまけに、換気扇の調子も悪くて、しょっちゅう部屋中煙だらけになった」
「いや、そもそも焦がさなければ煙は出ないからな?」
「焦げついたフライパンの汚れを落とすのに、随分と苦労したものだ」
「いやだからそもそも焦がしてる時点で……」
「あーもう!だから、コンロの調子が悪かったと言っているではないか!」
「見ていた限り、コンロの調子というより、常に火力最大だったっぽいが」
「ぐ……き、騎士は常に全力なのだ!」
「そんなところで騎士道を持ちだされてもな」
「というか、気づいていたなら止めればよかっただろう!」
「だって『いいから私に任せておけ』とか言って何もさせなかったじゃん」
「う……とにかく、人がせっかく感傷に浸っているのに、いちいち茶々を入れるな!
まったく……こんな風に、ケンカもしたっけな……大和のせいで」
「俺はお前のヘマに突っ込んでたに過ぎない」
「だからそういう……!もう、知らん!」
相変わらずだった。
- 17 名前:二人の部屋・3[sage]投稿日:2009/09/15(火) 15:34:00 ID:ZuCZQgSu0
- 一段落ついたので、二人並んでベッドに座って休憩。
「卒業したら……」
ふいに、ポツリとクリスがささやく。
「うん?」
「川神学院を卒業したら、またここで暮らしたいな」
クリスは、俺が思っていたより、この部屋に愛着があるようだった。
「コンロのことはいいのか」
「だから、それはもう忘れろ!
まじめな話、卒業すれば島津寮を出て……その、また二人で暮らすのだろう?」
クリスは卒業まで、いや、その後もずっと
俺と一緒に日本で暮らす気でいる。まあ、もちろん俺もそうだが。
そして卒業というのも、そう遠い先、というわけでもない。
「でもな、それまでこの部屋が空いてるとは限らないぞ」
「それなら、父様に頼んで、ここの家賃も払いつづけてもらったらどうだろう?」
いまだに、時々お嬢様思考が出てくるなぁ。
「甘えすぎだろう。住んでもいない部屋の家賃とか無駄だし」
「む……確かにそうだな……」
クリスがちょっと肩を落とした。
- 18 名前:二人の部屋・4[sage]投稿日:2009/09/15(火) 15:37:05 ID:ZuCZQgSu0
- その肩を抱き寄せて、ささやく。
「俺は、お前さえ一緒にいてくれれば、どこでもいい」
俺だって、この部屋に名残惜しさは感じている。
けど、それは「クリスと二人で暮らした部屋」だからであって
それはこの先、クリスさえそばにいてくれるなら
どこでも同じように大事な場所になるはずだ。
「うん……そうだな。私も、大和がいてくれればどこでもいい」
二人の顔が近づく。
「……この部屋での最後のHでもしておくか」
「え?ちょ、待て、まだ真っ昼間だぞ?」
「かまうか。隣が留守なのは確認済みだ」
「私はかま、うむぅ!?」
うるさい口をキスで塞いだときだった。
ピンポーン
無粋なドアチャイムが鳴る。
「や、大和!誰か来たから!
……はーい、今あけまーす!」
パッと体を離し、クリスは立ち上がって玄関に行ってしまった。
せっかくいい雰囲気だったのに、誰だ、邪魔しやがって……
- 19 名前:二人の部屋・5[sage]投稿日:2009/09/15(火) 15:40:02 ID:ZuCZQgSu0
- 「あ……マルさん!」
「お久しぶりです、クリスお嬢様。
寮に寄ったところ、こちらだろうと聞いたものですから」
突然の来客はマルギッテだった。
クリスが嬉しそうに飛びついていく。
邪魔されても、これじゃ怒るに怒れないかな。
「いつまた日本に?やっぱり……中将さんの命令で?」
まあ、また無理やり連れ戻そうとか
そういうのではないだろう……な?
「そう身構えるのはやめなさい、直江大和。
中将殿は、もう二人のことはお認めになられている」
「では、今回の来日の目的は?」
「今回は、以前のような監視や報告の義務はない。
お嬢様と……直江大和、お前の二人を見守らせてもらう」
「え、俺も入ってるんだ?」
「無論だ。クリスお嬢様の大切な人物であれば
中将殿にとっても、私にとっても、大切な人だ」
そう言うマルギッテの顔が、ほんの少し赤いような気がする。
「そうか……父様、本当に認めてくれているんだな」
まあ、認めてもらえたほうが俺も嬉しいかな。
- 20 名前:二人の部屋・6[sage]投稿日:2009/09/15(火) 15:43:08 ID:ZuCZQgSu0
- 「……実を言えば、中将殿の落胆ぶりは目を覆うばかりでした」
「!……やっぱり、あんな別れ方だったから……」
「まあ、あの場合はああするしかなかったからなぁ
あの後、電話とかで連絡はとってないのか?」
「さすがに、気まずくてな……」
「中将殿のお傍にいるべきか、こちらに来るべきか迷ったのですが
『若い二人のそばにいてやってくれ』との中将殿の願いで
こうしてやってきたわけです」
「たまには、クリスをドイツに里帰りさせてやらないと悪い気がしてきた」
「うん……いずれおちついたら、そうしよう」
「ところで、これは引越しの準備ですか?」
部屋の中の荷造りされたダンボールを見て、マルギッテがきいてくる。
さしあたっての事情を説明してみた。
「なるほど……」
「まあ、ここにも愛着はあるんだが
寮に戻ればここは無駄になるからな。仕方がない」
マルギッテが腕を組んでちょっと考えこむ。
「……マルさん?」
「クリスお嬢様……私がここに住む、というのはどうでしょう?」
- 21 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/15(火) 15:44:38 ID:ZuCZQgSu0
- スンマセン、投下ちょっと中断します
- 22 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/15(火) 23:00:16 ID:EBQuVdIF0
- 続き投下します
- 23 名前:二人の部屋・7[sage]投稿日:2009/09/15(火) 23:03:34 ID:EBQuVdIF0
- 「あー……それ、いいかもしれんな」
「うん!ここなら寮もそう遠くないから
お互い行き来しやすいな」
今までは、日本にいるときは基地で生活してたんだよな。
マルギッテが寮に来ることはあっても
クリスが基地に遊びに行く、ということはなかったようだが
ここなら会いに来るのも問題なさそうだ。
「でも、家賃とかはどうするんだ?」
「それぐらいは、軍の経費でどうとでもなる」
意外に融通がきくようだった。
「では、二人に異論がないようなら
ここに住まわせてもらうことにしましょう」
「うん!家具や生活用品は揃ってるわけだから、いつでも大丈夫だな!」
「なんか悪いな、こっちの感傷につきあわせちゃって」
「問題ありません。この部屋に住むほうが互いに都合がいい。
それに、私にとってもこの部屋は……その、思い出の場所でもある」
マルギッテが顔を赤らめる。
それを見てクリスも顔を赤らめる。
「ん、マルギッテここで何かあったっけ?」
「!あ、あの夜のことを忘れたというのか!?」
- 24 名前:二人の部屋・8[sage]投稿日:2009/09/15(火) 23:13:47 ID:EBQuVdIF0
- 「いや、照れ隠しの冗談だから!ってか、いきなりトンファー出すなよ!」
忘れるわけがない。
酔った勢いとはいえ、ここで俺たち3Pしちゃったわけで。
マルギッテなんか処女だったし
にもかかわらず後ろまで一気に経験しちゃったわけで。
「……コイツはこういうヤツなんだ、マルさん。
まあ、私も思いだすとアレは相当恥ずかしい……」
「う……わかりました。とにかく、その……そういうわけだ」
「大和、マルさんの責任も取らなければな」
「え……?それって今後も3P公認んぐぅ!?(←蹴られた)」
「そ・ん・な・わ・け・な・い・だ・ろ!(ゲシゲシ)」
「いて、ちょ、やめ……マルギッテ、見てないで止めて!」
「身から出た錆と知りなさい」
「まあ、冗談はともかく……大和、マルさんのこともよろしくな」
冗談でボロボロにされちゃたまらんのだが。
「けど、責任とれって言われても俺にはクリスがいるわけだし」
「いや……でも、何かその……なぁ?」
「……クリスお嬢様、私のことならお気になさらずに。
あの夜のことは、いい経験だったと、そう思っています」
- 25 名前:二人の部屋・9[sage]投稿日:2009/09/15(火) 23:16:54 ID:EBQuVdIF0
- 「マルさん?」
「私は……軍人の家に生まれ、軍人になるべく育てられ
中将殿に見出され、予定通りに軍人となりました。
そのことに後悔はなく、軍人であることにも誇りを持っています」
「うん……私も、そうだった」
「ですが……直江大和。
貴方が私に、違う私を見せてくれた。違う可能性を見せてくれた。
そのことに、私は感謝している。責任など、問うつもりはありません」
そうだよな。軍の任務が、人生の全てってわけじゃない。
軍人だって、恋愛したっていい。別の自分があっていい。
あの夜のことで、マルギッテがそう思ってくれたなら嬉しい限りだ。
「うん、ベッドでのマルギッテはまるで別人だっぐはっ!?(←また蹴られた)」
「な・ん・で・そ・う・い・う・こ・と・言・う・か・な!(ゲシゲシゲシ)」
「これが恋人同士……恋愛というのは、奥が深いものですね」
「だから見てないで止めてくれマルギッテ!」
「いいえ、お二人の邪魔をするほど、私は野暮ではないつもりです」
クリスが俺に蹴りを飛ばし、俺は必死にそれを回避して
そしてマルギッテが優しい笑顔でそれを見守る。
若干納得できない部分もあるが
そんな感じに3人の関係は落ち着きそうだった。
- 26 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/09/15(火) 23:19:13 ID:EBQuVdIF0
- おしまい
- 27 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/16(水) 01:56:42 ID:cjZfAayiO
- 百代アフター頼むわ
嫉妬成分とかつゆだくな感じの
- 28 名前:名無しさん@初回限定[age]投稿日:2009/09/17(木) 09:59:54 ID:gF6zJNSNO
- age
- 29 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:07:00 ID:YmwFcJfc0
- まゆっち物投下
- 30 名前:Possession・1[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:10:31 ID:YmwFcJfc0
- 「大和さん、大和さん」
ヒマな日曜日、寮の居間でぼんやりTVを見ていたら
まゆっちに呼びかけられた。
「ん?」
「これを見てください」
「これ、って……松風じゃん」
まゆっちが嬉しそうにテーブルの上に置いたのは
いつものケータイストラップだった。
『いいからいいからー、ちょっとオラに熱視線送ってみー』
「……別に何も変わってないと思うが」
と思ったのもつかの間
コト……
「え……?」
松風が……動いた?目の錯覚か?
コト……コト…コトコトコトコトコトッ!
「うお!?」
松風がひとりでに疾走してる!?
- 31 名前:Possession・2[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:14:11 ID:YmwFcJfc0
- 『イェアー!オラは自由だー!』
「なんだコレ……ちょ、ちょっと触ってもいい?」
「はい、どうぞ」
『ヘンなとこ触るなよー。オラの操はまゆっちに捧げてるんだー』
別に糸とかは……ついてないな。
何か細工がしてあるようにも見えない。
その辺は俺も時々使う手だから、何かあればわかるはず……
「どういう手品だよ……」
『手品なんかじゃねー、オラだってどんどん進化してるんだぜー』
「ふふふ、さすがの大和さんもビックリですね」
まゆっちは得意げだ。が、待てよ……
「確かに驚いたけど、これ、見せるのは俺が初めて?」
「はい、そうですが?」
「じゃあ、あまり他の人には見せないほうがいいと思うぞ。
なんかオカルトっぽくて、下手すりゃドン引きされる」
「そ、そうでしょうか……」
『いつになったらオラの市民権は確立するんだー!』
「そんなものは永遠に確立しないからな」
- 32 名前:Possession・3[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:20:50 ID:YmwFcJfc0
- 「……ということが、昨日あったんだ」
「ふーん?どうでもいいけど、最近お前ら仲いいよな」
翌日、学院からの帰り道で姉さんと一緒になったので
多馬川沿いを歩きながら、ちょっとまゆっちのことを話してみた。
「あー……それはともかく
武道の達人になると、そんなことまでできるもんなの?」
「ああ、私はできるな。気を使って動かすんだ」
やっぱりそうか。
「ちょっとあそこに浮いてる空きビンを見てろ」
姉さんが遠くの水面に浮かぶ空きビンを指差すと
そのまま大きく息を吸い、そして
「はっ!」
ザバーン!
掛け声とともに、水面が爆発した。
「ほら、動いただろ?」
「動いたというか周りごと吹き飛んだというか……」
「細かいことはいいんだよ!」
あくまで豪快な姉さんだった。
- 33 名前:Possession・4[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:24:07 ID:YmwFcJfc0
- 「ま、原理は同じだ。いわゆる遠当てってやつだな。
まゆまゆは、たぶん送り出す気を絞りこみ
流れを微妙にコントロールしてたんだろう。
私はそういう細かいのは苦手なんだが、ジジイは得意らしい」
「へえ。やっぱすごいんだ、まゆっち」
「ああ、たいしたものだが……ちょっと気になるな」
「何が?」
「動かしてたのは、松風だろ?
ああいう愛着があるものとかは、操りやすい反面
あまりやりすぎると気が吸い取られる危険がある」
「?……吸い取られる?」
「そうだ……ほら、刀で『妖刀』ってのがあるだろ?
使うたびに、刀に力を吸い取られて衰弱していくっていう。あんな感じ」
「あ、なるほどよくわかった……ってヤバイじゃんソレ!」
「普通、こういう技はコツとか教えを受けないと覚えられなくて
教えを受けたときにそういう注意も受けるんだ。
黛十一段なら、たぶんこれぐらいは教えられるだろうが
最近、まゆまゆって実家に帰ったっけ?」
「いや……お盆に帰ったきりじゃないかな」
「だよな……だとすると、自分一人で覚えちゃったか……
それもまたすごいが、ちょっと注意しておいたほうがいいかもな」
- 34 名前:Possession・5[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:28:08 ID:YmwFcJfc0
- 「そういやまゆっち、今日は基地に寄ってから帰るって」
「まずいな。秘密基地にいれば、誰かしらやってくる。
そのたびに技を見せていたりすると……」
見せびらかしたがってたっぽいからなぁ。
「まあ、私たちも行くか。皆より先につけばいいわけだし」
そのうち、秘密基地の前まで到着。
「……んー?」
「どしたの?」
「いや……誰がいるかなーって気を探ってみたんだ。
まゆっちが一人でいるようなんだが、やたら気が弱い」
「寝てるとか?」
そのまま部屋に入ってみれば
まゆっちは、ソファにもたれて眠っていた。
「なんだ、やっぱり寝てただけか……」
「あー、見ただけだとそう見えるな……
ちょっと触って、体温とか確かめてみろ」
「え?体温って……う、冷たい!?」
「寝てるんじゃない。魂が飛んじゃってるんだ」
- 35 名前:Possession・6[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:32:16 ID:YmwFcJfc0
- 「魂が……?」
「よく幽体離脱ってあるだろ。アレに近い状態だな」
生気がほとんど感じられない。脈拍も呼吸も弱いし少なくなってる……
ふとテーブルの上に目をやると、ぽつんと松風が置かれていた。
「皆に見せるために、動かす練習でもしちゃったんだろうか」
「そんなとこだろうな……さて、えらいことになったなぁ、まゆまゆ」
姉さんがかがみこんで、なぜか松風に語りかけた。
『はいー……どうすればいいんでしょうか……』
え……なんだ空耳かな。
今、松風がしゃべったような。
本体であるまゆっちが気を失っているんだから
松風がしゃべるわけは……
『えっと……松風の中ですが、私です』
「うお!?」
しゃべるわけはないのにしゃべっていた。
おまけに、カタカタと揺れるように動き回っている。
「えーと……どういう状況なんだろう?」
「まゆまゆの本体から抜けた魂が、松風の中に入ってるんだ。
気で操ろうとして、勢い余って魂まるごと松風に込めちゃったんだな」
- 36 名前:Possession・7[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:36:20 ID:YmwFcJfc0
- 「だ……大丈夫なのかまゆっち!?」
『なんだか、頭の中まで木になったみたいですー。カチンカチーン!』
……意外に余裕だな。
このまま松風の中で生きていく……わけにもいかないか。
「仮にこのまま戻れなくなったりしたら
いろいろ困るんじゃないかな。体が動かないわけだし」
「そりゃ困るだろうが……
私も、こんな事態は初めてだから、どうすればいいのかわからん。
ジジイに電話できいてみるから、ちょっと待っててくれ」
『よろしくお願いしますー』
姉さんが部屋の隅でケータイで話し始める。
しかし……松風のボディの中にまゆっちがいるということは
まゆっちのもう一つの人格ともいえる、松風の精神はどうなっているのだろう?
「なあ、まゆっち。松風はどうしているんだ?」
『あ、一緒に入っていますよ』
『定員オーバーで、オラ今にもはじき出されそうだー』
口調を変えているあたり、芸が細かいというか……
「とりあえず、松風が代わりにまゆっちの体の中に入るとかできないかな」
『オラが人間に?いつかそういう日がくると信じてたんだー!』
「……やっぱそれナシ」
- 37 名前:Possession・8[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:40:34 ID:YmwFcJfc0
- 「……よし、わかったぞ。
まゆまゆ、松風を動かしたときと同じ要領で、自分の体を動かしてみろ」
「ああ、なるほど、逆にやればいいだけなんだ」
意外に対処法は簡単だった。
『う〜、重くて、動き・ま・せ・んっ!』
『重いっていっても、別にまゆっちが太ってるとかじゃねえんだからな』
だよなぁ。気で動かすったって
ケータイマスコットと人間一人じゃ重さが違いすぎる。
「実際に動かなくてもいいんだ。
動かそうと気を送り込み続けるのが大事らしいぞ」
『わかりました。んんんんんーっ!』
『オラまで息が詰まりそうダゾー』
……マジメにやってるのか遊んでるのかわからん。
まゆっちはしばらく悪戦苦闘していたが、元には戻らない。
「んー……こうなると、次の手かな」
「次はどうするの、姉さん?」
「本体の方に刺激を与える……こんな風に、な」
姉さんが意識のないまゆっちに寄り添うと
その体をエロい手つきで撫で回し始めた!
- 38 名前:Possession・9[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:45:04 ID:YmwFcJfc0
- 『はぁう!?』
『おおっとー、無防備なまゆっちのボディが蹂躙されていくぜー』
「……本当にソレ有効な手段なんですか?」
「モチロンだ。抜け出ているとはいえ、まだ肉体と魂は繋がってるからな。
だからこうして刺激を与えれば……フフフ……いい体だ、まゆまゆ……」
まゆっちの、制服の上からでもその豊かさがうかがえる乳房を
下からすくい上げるように揉みはじめる。
「……ゴクリ」
「……混ざるか?」
『だだだだ駄目です大和さんまだ早すぎます!』
『いきなり3Pとかパねぇー!』
「し、刺激を与えるために仕方がないのなら……」
「エロい舎弟だ……いいぞ、こっち来い」
姉さんと俺でまゆっちを挟むようにしてソファに座る。
『はわわわわ、や、大和さんまでっ!?』
『もうまゆっちはここで散るのかー!?』
ああ、でも。
せっかく俺に好意を持ち始めてくれたまゆっちの体に
意識を戻させるためやむをえないとはいえ
こんなイタズラまがいのことをするのは、男としてどうなんだ。
- 39 名前:Possession・10[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:49:08 ID:YmwFcJfc0
- 「……よく考えたら、エロい刺激じゃなくてもいいじゃん」
「ヌ?」
俺はまゆっちの耳元に顔を寄せた。
「まゆっち、起きろよー!」
「こらこら、そんなんで戻したって面白くないだろー!」
「姉さん、放っておくとどんどんエスカレートしそうだし」
「ほう……私を止めようってわけか……?
邪魔するなら、お前の意識もなくしちゃう、ぞっと!」
パシィッ!!
「……え?」
乾いた音がした。
俺の顔面に、目にも止まらぬ速さで繰り出されていた姉さんの拳。
そしてその拳を……まゆっちの掌が受け止めていた。
「……あらっ?……戻れ……た?」
「……うん、そのようだな。
大和のピンチとみて、必死になったおかげで魂が戻ったんだろう。
松風が一緒に出てくるあたり、なんかのん気だったから
ちょっと必死になってもらおうと思ったんだが」
なるほど。
半ば計略、半ばシュミといった作戦だったのか。
- 40 名前:Possession・11[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:53:20 ID:YmwFcJfc0
- 「しかし、大和のピンチで必死になるとか……
いやあ、愛されてるなぁ、舎弟……このぉ!」
「ぐはっ!?」
今度の姉さんのボディブローは、まゆっちは防いでくれなかった。
「あうあう……」
顔を真っ赤にして、それどころではないらしい。
「ま、私としては、戻れればよし
戻れなくてもまゆまゆの体を堪能できるってわけで
どっちでもよかったんだけどな」
「まあ……ゲホゲホ……戻れてよかったよ、まゆっち」
「あーあ、なーんか見せつけられたみたいで面白くなーい」
「オラは別に大和がイタズラするのはかまわなかったんだぜー」
「……まゆっち……今の、松風になってる」
「はぁう!?」
「本音か!それが本音か!この、エロ1年坊め!」
『おっと、オラの魂の一部がまゆっちに移っちまったようだぞ』
「め、珍しいこともあるものですねっ」
遅ぇよ。自制しろ、まゆっち……
- 41 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/17(木) 18:55:39 ID:YmwFcJfc0
- おしまい。
Possessionには「霊などが取り付く」という意味と
「自制」という意味があるって説明しないとわかりにくいオチでスマソ。
- 42 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/17(木) 21:11:32 ID:qPKtoQhx0
- 乙
タイトルの意味は確かに言われないとわからなかったが
なかなかよかった
- 43 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/17(木) 21:18:57 ID:35U+AGTm0
- 乙
ニヤニヤしちゃうなw
- 44 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/18(金) 00:42:50 ID:WGmLDtOf0
- 京アフターモノ投下
- 45 名前:射的でポン!・1[sage]投稿日:2009/09/18(金) 00:46:05 ID:WGmLDtOf0
- 「あ……ゴメンみんな、私、弓道部のほうに行かなくちゃ」
「あ、もうそんな時間なのね」
「任せろ京。客引きなら私がやっておく」
「ん、お願いクリス」
文化祭当日。我が2−Fの撫子喫茶の売り上げは順調だ。
客引き役の京が抜けても、まあ何とかなるだろ。
「おーい大和ー。お前もそろそろ休憩時間だぞー」
「おっと、そうだったな……じゃ、後は頼んだヨンパチ」
「任せとけ!」
マネージャーの俺も一息入れることにした。
2−Sはさっき視察したから、他のクラスや部活を見て廻るか。
えーと……まゆっちの1−Cは……なんだ「野球喫茶・七浜」って。
見てみたいようなビミョーなような。
まあ、時間があったら行くとして
まずは京が行った弓道部のほうに顔を出しておくか。
内容は弓道部らしく「射的」だったな。場所は当然、弓道場と。
しかし、素人じゃ弓って全然無理で
当たるどころかまっすぐ矢を飛ばすこともできないとか聞いたが。
まあ、文化祭のお遊びだから
そう真剣に考えなくてもいいか。
−−−そのときは、そんな風に考えていた−−−
- 46 名前:射的でポン!・2[sage]投稿日:2009/09/18(金) 00:50:17 ID:WGmLDtOf0
- 「ようこそで候」
「あ、こんちは……って何ですかその格好!?」
弓道部部長・矢場弓子先輩は何故か体操着にブルマ姿だった。
「一般人にも弓道に親しんでもらうため
親しみやすい服装を選んで候」
見れば、ほとんどが女子という弓道部員の全員が同じスタイルだった。
何という濃い空間。
「しかし、顧問の私までこの格好はどうかと思うぞ……」
「ウメ先生っ!?」
お……おおおお……28歳・独身女教師のブルマ……
ここにしかない、今だけしかないお宝だぜ……
「……こら、そんなに見るな、恥ずかしい……」
「いや、大丈夫ッス!まだ全然OKッスよ!」
「まだ、とは何だ、まだとは!」
ピシーッ!
「いてええぇぇぇっ!?って今どこからムチ出しました先生!?」
「黙れ、俗物!」
「ギャアアァァァ!」
- 47 名前:射的でポン!・3[sage]投稿日:2009/09/18(金) 00:54:28 ID:WGmLDtOf0
- ウメ先生はプリプリしながら奥に引っ込んでしまった。
「まあ射的で遊んでいくで候」
「あー、痛ぇ……っていうか、親しんでもらうなら候言葉はどうかと」
「あ、やっぱりー?」
いきなりキャラ変わった!?
「んー、でもねー、仲間内以外ではこれでキャラ立てしちゃってるし
今さら素に戻せないのよー」
「はあ……」
「あ、椎名センパイの彼氏!プッレーミアムな弓道部にようこそ!」
「え、ナニナニ、椎名センパイの?」「例の直江クン?」「どれどれ?」
急に周囲が騒がしくなってきた。
キャイキャイ騒ぐブルマ集団に取り囲まれる俺。
が、その中に京の姿はない。
「で、遊んでいくの、直江クン?」
「あ、はい……みや……椎名さんの様子を見にきたんですが」
「あー、椎名さんは的だから」
「……的?」
「見てもらうほうが早いね。的ー、出番だよー!」
- 48 名前:射的でポン!・4[sage]投稿日:2009/09/18(金) 00:58:38 ID:WGmLDtOf0
- 射場の奥から、皆と同じようにブルマ姿の京がトコトコと出てくる。
「はーい、的でーす……って、アレ、大和?」
「おう、様子見に来たんだけど……的ってなんだ?」
「ん。こうして……」
「うお!?」
いきなり京が体操着のすそを捲り上げる。
むき出しになったその白い腹に……
射的の的が、書かれていた。
「的でーす」
「なんっっっじゃそりゃああああぁぁぁぁっ!?」
「だから的だってば」
「はい直江クン、これが弓と矢ね。
10回射て、3回当てることが出来たら商品ゲットよ!」
オモチャの弓と、先が吸盤になった矢が渡される。
「的に当たっても、ちゃんとお腹に貼りつかないと無効だからねー」
誰が考えたんだ、こんなエロい趣向。
……京かなぁ、やっぱり。
「さあ大和……真剣で私に矢を射なさい!」
- 49 名前:射的でポン!・5[sage]投稿日:2009/09/18(金) 01:03:11 ID:WGmLDtOf0
- 的……というか、京までの距離は10メートルほど。
これぐらいなら、俺でも何とかなるかもしれない。
京は、弓で大切なのは集中力だと言っていた。
的に集中……集中……
「ねぇ……早くぅ……(クネクネ)」
集中……集中……集ちゅ
「早く、そのたくましいので、貫いて……(クネクネ)」
「こんな的で集中できるかー!ええい、こうなったらヤったるわーい!」
1射目。胸に当たった。
「アアンッ!」
2射目。股間に当たった。
「アフゥッ!」
「ちょ、椎名さん、彼氏だからってサービスし過ぎ!
直江クンも、ちゃんと的を狙って!」
「俺の的はアソコでいいんです!」
シュパッ
「アハァン!大和が、私を貫いていくぅっ!」
「……ダメだわこの二人……」
- 50 名前:射的でポン!・6[sage]投稿日:2009/09/18(金) 01:07:27 ID:WGmLDtOf0
- 結局、俺は5射目で矢場先輩に景品をもらって追い出され
京は的としては過激すぎるというので交代させられた。
「よかったね、大和」
「ああ、景品はともかく……京が他の男の的にならずにすんでよかった」
「大丈夫……どんなに他の男に狙われたって……」
京の手が、俺の手を胸に誘う。
「私のハートを射抜けるのは、大和だけ」
「京……」
「はい、そこ!それ以上ここでは禁止ー!」
「……チッ」
「じゃ、俺そろそろ戻るけど……帰ったら、続きな」
「ウン!」
しかし、この射的、前情報がほとんどなかったせいか、客が俺以外全然いない。
京が的じゃなくなったことだし、ガクトやヨンパチとかにも教えてやらなきゃな。
「……ところで、代わりの的は誰になったんだ?」
「なんか、ウメ先生らしいよ」
……絶対、教えてやろう。
- 51 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/18(金) 01:09:21 ID:WGmLDtOf0
- 終わり。ウメ先生が的役を引き受けそうにないけど、まあお祭りってことで。
- 52 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/18(金) 01:22:56 ID:hEdnYSQ7O
- 乙!
えぇのう
癒されるのぅ
FDに組み込んで貰いたいくらいだ
百代か小雪辺りどうでしょう
- 53 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/18(金) 01:29:12 ID:WzHxXy6l0
- 乙
バカップルっていうよりもはやバカだなこの二人はw
- 54 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/18(金) 02:18:18 ID:Qyg6lD750
- 乙
>お……おおおお……28歳・独身女教師のブルマ……
なん……だと……?
けしからん、実にけしからん!
- 55 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/09/18(金) 15:37:52 ID:/lZwSGC60
- 乙だな
が、勘違いすんな、別にてめえのために乙してるんじゃねえ
もっと投下が増えるように乙してるだけだ
- 56 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 00:36:59 ID:LP7m4gtp0
- 投下します
- 57 名前:夢の行方・1[sage]投稿日:2009/09/19(土) 00:40:01 ID:LP7m4gtp0
- 秘密基地。
姉さんと二人きりなので、ベタベタしてくるかと思いきや
今日はちょっと姉さんのテンションが低い。
ときどきため息とかついてるし……
「どうしたの姉さん。何か考えごと?」
「ん……いや、別に何でもない」
「彼氏の俺に隠し事はなしだぜ?」
「フッ……そうだな、悪かった。
実は……ワン子のことで、ちょっとな」
「ワン子に何かあったの?」
「……ワン子が川神院の師範代を目指してるのは、知ってるだろ」
「そりゃ、いつも口にしてるしね」
「ワン子は、ずっと厳しい鍛錬を続けてきた。
驚くほど強くなったよ。武道家として、それなりのレベルには達したと思う。
このまま鍛錬していけば、さらに強くなるだろう」
「いいことじゃん」
姉さんの顔が、悲しげにゆがみ
吐き出すように、こう言った。
「でもな……それでも、川神院の師範代になるには……及ばないんだ」
「え?」
- 58 名前:夢の行方・2[sage]投稿日:2009/09/19(土) 00:43:07 ID:LP7m4gtp0
- 「はっきり言って、そこまでの才能はワン子にはない。
ずっと見てきて、それはもうわかってるんだ……」
「でも、あんなに……あんなにずっと頑張ってきたのに!?」
「努力だけでは、届かない高さもあるんだ……
そのことをそれとなく知らせようと、私やジジイやルー師範代が
ときどき技を見せたりするんだ。ワン子では、たどりつけない高みってヤツをな。
でも……それでもワン子は、諦めない……諦めてくれないんだ……」
「そんな……!」
抗議しようとして、気づく。
あの姉さんが、今にも泣き出しそうだった。
「ダメだな、私も……ハッキリ言うべきところを、ズルズル引き伸ばしてしまった。
……ジジイやルー師範代と話し合ったんだけどな
今度、私とワン子で真剣勝負をして、そのうえで、申し渡すことになった。
それがちょっと、気が重くて、な」
「そっか……」
「……あはは、ごめんなー、湿っぽくなっちゃって」
「ううん、いいよ……その、俺に何かできることない?」
「うーん……私との勝負が終わって、ワン子が落ち込んでたら
その、それとなくでいいから、慰めてやってくれ」
「うん、わかった……そのときには、姉さんのほうも、ね」
「……ああ……そのときには、甘えさせてもらうさ……」
- 59 名前:夢の行方・3[sage]投稿日:2009/09/19(土) 00:46:17 ID:LP7m4gtp0
- その夜。布団の中で考える。
ワン子が目指している川神院師範代の座が、はるかな高みであるように
俺が目指している「国を動かす立場」も、きっとはるかな高みだろう。
でも、どれくらいなんだろう。
ワン子は姉さんやルー先生の技を見て
その高さを、自分との差を見てもなお
そこに登りつめることを諦めないという。
いや、その高みを見たからこそ
憧れるのかもしれない。
ただ己の可能性を信じて、頑張れるのかもしれない。
でも俺は、目指すものがどれくらいの高みにあるのか
見えていない。見当もつかない。
そもそも、周りにそんなもの見せてくれる人がいない。
マスコミがもたらす情報なんかじゃなく
実際にこの目で、俺の目指す場所を見ることが出来れば
また覚悟の程も違ってくるんだろうが……
翌日。
俺はある決心をして2−Sの教室の前にいた。
「ん?なんだ直江、この辺ウロウロしてると
またウチの連中に絡まれるぞ。それとも、何か用か?」
「ああ井上、悪いんだけど……九鬼英雄を呼んでくれないか?」
「英雄を?……何か、マジな話っぽいな。
いいぜ、ちょっと待ってな」
- 60 名前:夢の行方・4[sage]投稿日:2009/09/19(土) 00:49:21 ID:LP7m4gtp0
- 「フハハハハ、庶民の分際で我を呼び出すとは、図々しいヤツ!
だが我は寛大なので許す、用件を言え、直江大和」
「実は、折り入って頼みがある。
九鬼英雄、お前の一日の仕事振りを見学させてもらえないか?」
そう。俺と同い年でありながら、九鬼財閥の嫡男として
すでに日本はおろか、世界を相手に活動している英雄なら
俺の目指すものと同じではないにしても
近い世界を見せてくれる、そう考えたのだ。
「ほう……本来であれば、そのような願い、聞き入れてやる義理はないが
理由はなんだ?それによってはきいてやらんでもない」
「実は……俺には夢があるんだ」
「ふむ?」
こっちが勝手にお願いしてるわけだし
ワン子のことは伏せておくにしても
自分の事情は正直に話しておこう。
「……というわけなんだ」
「宰相を目指すとはな。庶民の分際で、大きく出たものよ……
俗に、3バンと言ってな。選挙では地盤・看板・鞄、この3つが必要と言われている。
直江大和、お前はそのうちの一つでも持っているか?」
「はっきり言って、一つもない。だが、そんなことの不利は覚悟の上だ」」
そんなことで諦めていたら、姉さんやワン子に申し訳ない。
そして誰より、あの日、夢を追いかけると誓った俺に申し訳が立たないじゃないか。
- 61 名前:夢の行方・5[sage]投稿日:2009/09/19(土) 00:52:24 ID:LP7m4gtp0
- 「……目を見るに、決意は固いようだな」
「ああ、マジだ。
……まあ、そっちからすれば笑っちゃうような話なんだろうけど」
「いや、笑わぬぞ。
途中で尻尾を巻いて逃げ帰るようであれば、笑いものにしてやるが
真剣に夢をかなえようと力を尽くすものを、なんで笑おう」
そうか……そういえば、コイツがワン子に惚れたのも
あのひたむきに努力する姿に魅せられたんだっけ。
「よかろう!貴様の頼み、聞き入れてやる。
次の土曜日、朝6時!学院の前で待っておれ!あずみ!」
「はい、英雄様!」
「こやつが供をできるよう、取りはからってやれ」
「了解しました!」
「ありがとう、九鬼。この礼はいずれ……」
「なに、貴様の心意気に、感じるものがあったまで。
礼を言うなら、多少なりとも夢をかなえてからにせよ。では、さらばだ!」
「くれぐれも、英雄様に迷惑をかけぬよう、お願いしますねっ!
……そういうときは、こっそり処分すっからな」
九鬼英雄はメイドを従えて、颯爽と教室に戻っていった。
思っていたより、いいやつかもしれない。
よし、土曜日の朝6時か。
- 62 名前:夢の行方・6[sage]投稿日:2009/09/19(土) 00:55:33 ID:LP7m4gtp0
- 「ほう、来ておったか」
土曜日、川神学院前。
朝の5時半に九鬼英雄はやってきた。
「6時と言われ、のこのこと6時に来ても、置いていったところだ」
ちなみに、俺は5時から待機している。
無論、時間は無駄にできないので、待機しながら勉強もしていた。
「まず心構えは合格というところですね。
それでは、こちらに着替えてくださいっ」
「これは……執事服ってやつ?」
「うむ、九鬼家従者の制服だ。今日だけ貸与してやろう。それを着て同行せよ」
「本来、その服を着るだけでも大変な名誉なんですよ、感謝してくださいね!
それと……これが英雄様の本日のスケジュールです。
今のうちにしっかり覚えてください!」
着替えながらスケジュールに目を通す。
すげえ……分刻みでびっしりだ。
書いてある予定も、各界の有名人や実力者との面会やら
九鬼財閥の色々な部門での会議やらで
とても同い年とは思えない。
「着替えたか……では、参るぞ!」
「まずは七浜で、久遠寺家主催の朝食会にご出席です!」
「うむ!フハハハハハ、遅れるなよ、直江!」
- 63 名前:夢の行方・7[sage]投稿日:2009/09/19(土) 00:58:44 ID:LP7m4gtp0
- 夜、11時。
九鬼英雄は今日の全ての予定を終え、再び川神学院前に戻ってきていた。
「さて、直江大和よ……我の仕事振りはどうであった?」
「正直、圧倒された……本当にすごいな、トップの仕事って」
ほんの一日、垣間見た世界は
まるで映画やテレビの中のような、高くて遠い場所だった。
「我とてもまだ修行中の身よ。まだまだ精進を積まねばならぬがな。
だが、貴様はどうだ?
今の貴様が、我のいる場所まで這い上がってこられるか?」
「今は、無理だ」
「では、諦めるか?分相応な仕事を見つけ、平凡に暮らすのが庶民には相応しいぞ?」
「いや……諦めるどころか、逆にやる気が出た!」
「フ……フハハハハハハ!ならば、せいぜい足掻いてみることだな。
貴様ならば、ひょっとしたら、何がしかモノになるかもしれん」
「ああ、やってみるさ。まずは3年になるとき、S組にチャレンジするつもりだ」
「ほう。いいだろう、今の貴様なら、歓迎しよう!楽しみにしているぞ!」
なぜか嬉しそうな英雄の背中を見送って、俺も寮に戻る。
「……お帰り、大和」
その帰り道に、姉さんが立っていた。
- 64 名前:夢の行方・8[sage]投稿日:2009/09/19(土) 01:03:41 ID:LP7m4gtp0
- 「九鬼英雄の仕事ぶり、見にいってたんだって?」
「うん。トップの世界がどんなものなのか、知っておきたくて」
「そっか。自分には無理だって、思ったか?
それとも、これならいける、とか思ったか?」
「今は無理だから、頑張らなきゃ、って思った。
頑張って届くのかはわからないけれど
頑張らなければ絶対に届かない。だから、これからも頑張るよ、姉さん」
確かに、今はとても届かない、はるかな高みだった。
でも、だからこそ登ってみたいという気持ちが強い。
「うん……いい目になって、帰ってきたな」
姉さんが、どこかスッキリした顔になった。
「私も、もう迷わないことにした。
ワン子が全力で向かってくるのなら、それに応えるまでだ。
たとえ、それでワン子の心が折れても……」
「折れないさ。ワン子も、俺も。
たとえ夢に届かなくても、折れたりはしない」
「そうか……そうだな。
きっと私は、お前やワン子のそういうところが、好きなんだな」
そう言って、姉さんがぎゅ、と俺を抱きしめた。
今は一歩一歩でいい。途中で転んでもいい。
ただ登っていこう、頂点を目指して。
それが姉さんと俺との約束だから……
- 65 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 01:04:39 ID:LP7m4gtp0
- おしまい。時系列的には百代アフター。エロ無しでスンマセン。
- 66 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 01:17:34 ID:c4EnK0Yf0
- 乙であった
- 67 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 01:44:40 ID:CcF7/u7B0
- 乙
なんかしんみりする話だ……
- 68 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 06:28:12 ID:TuRtzTJh0
- 乙
タカヒロ作品でもそうだけど、自分も頑張らんとなぁって思わされるねぇ
- 69 名前:しょーもない話1[sage]投稿日:2009/09/19(土) 17:36:50 ID:c4EnK0Yf0
- ───島津寮、大和の部屋。
「………………」
カリカリカリカリ。
「……………うー」
カキカキカキカキ。
「…………………うぅぅー」
「どないしたんや姉さん」
ノートから顔を上げると、テーブルの向かいで姉さんが可愛く唸っていた。
「…なんで私まで勉強させられてるんだ。納得の行く理由を教えろ」
「姉さんがまた赤点取ったからです」
先日行われた三年の物理の小テスト。
その試験で姉さんは見事に現在の気温よりもさらに低い点数を叩き出した。
ちなみに今はもう冬である。
「う…し、仕方ないだろ。 …大和のこと考えてたら全然出来なかったんだ」
「母さん言い訳なんか聞きたくないよ! 早くやりなさい!」
「うわ、彼氏が鬼畜だ」
想われているのは嬉しいが、それとこれとは話が別である。
ちゃんとやる時はやらねば。イチャイチャするのは終わるまで我慢だ。
…と考えてはいるものの、限界は近そうだ。早く終わらせたい。
- 70 名前:しょーもない話2[sage]投稿日:2009/09/19(土) 17:40:12 ID:c4EnK0Yf0
- 「なー大和ー。つまんないぞー」
「つまらなくてもいいじゃない、勉強だもの」
「全然分からんぞー」
「自分で考えなさい」
「…けち」
「けちでいいよ(苦笑)」
「…あー、きた。今カチンと来た。お仕置きだな、これは(大和の隣に移動)」
「いいのかい? ホイホイ隣に来ちまって。実はそれを待っていた」
「わーい」
「ワイはベッドヤクザや!」
「きゃー襲われるー」
……………………………
「む、あの二人はまたイチャつき始めたか。では私はここで全力をもって撤退するとしよう。
…勘違いするな、別に奴らの為ではない。私の最高級センサーが毒される、ただそれだけだ」
「ちっ…勘違いすんな。別にあいつらの為に部屋を出た訳じゃねぇ。
バカップルの声がうるさくて仕方ねぇからだ」
「……む?」
「……ん?」
「しょーもない…」
こうして夜は更けていく。
- 71 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 17:43:58 ID:c4EnK0Yf0
- 終了。もう少し修行して来るよ・・・(´・ω・`)
- 72 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 22:32:13 ID:7zSW/t2H0
- ぜんぜんしょーもなくないです。
こういうありふれた日常ネタは必要かと。
ゲンさんは分かるけど、クッキー2まで似たリアクションなのが面白かったです。
- 73 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 23:14:21 ID:TuRtzTJh0
- 乙
姉さんとのキャッキャウフフ物とか最高じゃないか
- 74 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 23:22:23 ID:LP7m4gtp0
- 乙、そして投下。
- 75 名前:遭遇・1[sage]投稿日:2009/09/19(土) 23:25:29 ID:LP7m4gtp0
- 「何か面白いことねーかなー」
板垣三姉妹が、今日はいつもたむろする親不幸通りではなく
川神駅前にでばっていた。
「この雰囲気は、アタシらには合わないねぇ。ま、気分転換にはなるけど」
「ふぁ……あ……多馬川のほうに行こうか〜」
「それ、辰姉ぇ寝るだけだろ。あーあ、ゲーセンでも行くかなー」
歩いていく姉妹のうち、長女の亜巳の足だけが不意にピタリと止まる。
「!……これは……」
「どしたの、亜巳姉ぇ?」
「いる……近くに、とんでもないヤツが……」
亜巳の真剣な表情に、辰子と天使も目を閉じて集中し、気を探る。
「……んー、何も感じねーよ?気のせいじゃね?」
「ZZZzzzz……」
「寝るなよ辰姉ぇ!」
「アンタたちにはわからないだろうね……
でも、アタシにはわかるのさ。
とんでもないヤツが、すぐそばに来てる……」
「ちょ、どこ行くんだよ亜巳姉ぇ!?」
- 76 名前:遭遇・2[sage]投稿日:2009/09/19(土) 23:28:33 ID:LP7m4gtp0
- 「久しぶりの休日だってのに、なんで女3人で遊ばなきゃならんのかねぇ」
「まあまあ、いいじゃないおケイ。
川神って隣街なのに3人で来たことなかったからさー」
「ま、そうだけどよ。
あーあ、どっかにいい男落ちてないかなー……
夢のとこのさ、上杉でも呼ぼうか?いちおう、男だろ?」
「レンくんは仕事があるから無理だよ。っていうか、一応、ってヒドイよね」
「ちぇ……卒業してからアイツの顔全然見てねーから
どうしてるかなー、とか思ったんだけどな。
……で、オマエは一人で悶々と何やってんだ、ミィ?」
「あ、ふ……っ……来る……来ちゃう、の、ぉっ!」
「ちょ、ミィ?大丈夫、前より激しくなってない?
ぐ、具合でも悪いの?」
「オイオイ、駅のそばなんだぜ。
こんな人目の多いところで勘弁してくれよ……」
「ハァ……近づいてる……こっち……」
「?何か……来てるの?」
「うん……私の、運命の人が、すぐそこに来てる」
「なんだよその、言葉だけならロマンチックな展開……
っておい、どこ行くんだミィ!?」
- 77 名前:遭遇・3[sage]投稿日:2009/09/19(土) 23:31:36 ID:LP7m4gtp0
- (……いる!この先にいる!)
亜巳の足取りが駆けだす一歩手前まで速くなる。
そして人ごみの中
同じようにこちらを目指して、早足で歩いてくる女の姿に目をとめた。
いた。間違いない。
亜巳が長年探しつづけた存在。
その姿を、まじまじと見つめた、次の瞬間。
「ア……ア、ア、ア……アハァアッ!!」
ミィが甲高い叫び声とともに、その場にへたりこんだ。
(!コイツ、アタシのSな視線だけでイきやがった!)
そういう亜巳も、愉悦に膝が笑っている。
「はぁ、はぁ、はぁ……あ……」
息を荒くしたまま、ミィが濡れた瞳で亜巳を見上げる。
(あ……ヤバ、こんな目で見られたら……ウソ、アタシ……イ、くぅ……!?)
ブルブルと体を震わせて、亜巳が軽い絶頂に達する。
立ったままなのは、Sであるがゆえか。
「ん……ふぅ……お……オマエ、名前は?」
「ミ……ミィとお呼びください、ご主人様……」
「よし……じゃあついといで、ミィ」
- 78 名前:遭遇・4[sage]投稿日:2009/09/19(土) 23:34:50 ID:LP7m4gtp0
- 二人の気配に気圧されたのか
遠巻きにしていた同行者たちが我にかえる。
「ちょ、ミィ?誰、その人?」「亜巳姉ぇ、どうしたんだよ!?」
「……ごめん、夢、ケイ……私、ご主人様と行くから……」
「なんでいきなり出あった人がご主人様になってんだよ!?」
「そういうことだ、辰、天……
しばらく帰らないかもしれないけど、後は頼んだよ」
「え……マズイって亜巳姉ぇ!今日は師匠が稽古つけてくれる日だぜ!?」
「まあ、上手く言っておいておくれ、じゃあね……ほら、行くよブタ!」
「ブヒィ!どこまでもお供いたしますー!」
あっけに取られる4人を残し
亜巳とミィがフラフラとしながら人ごみの中に消える。
「行っちゃったねー、あはははー」「私たちも帰ろっか、ケイ……」「なんなんだ、いったい……」
「辰姉ぇ、ヤバイって……師匠、稽古サボるとスゲェ怒るじゃん……」
「んー、アタシもさぼっちゃおうかなー。稽古とかめんどいしー」
「げ、冗談やめてくれー!とばっちりがウチ一人に来るやんか!」
「んー……天ちゃんもサボっちゃえばー?」
「うう……カーニバル近いってのに……雲がくれでもするしかねーかな、こりゃ」
- 79 名前:遭遇・5[sage]投稿日:2009/09/19(土) 23:38:07 ID:LP7m4gtp0
- 川神市街、廃工場後。ノートパソコンの画面に向かう男の姿があった。
『おや。今日は釈迦堂さんだけですか。他の人はどうしました?』
「いや、なんか行方不明になっちまって」
『……それは穏やかじゃないね。官憲に捕まったという情報はないが……』
「稽古にも顔ださねーわケータイも繋がらないわで、コッチもマジ困ってるんですわ」
『もうすぐカーニバルだというのに……』
「それなんすけどね、カーニバル、もうやめちゃいません?」
『は!?……いきなり何を言いだすかな』
「いやぁ、あいつらいねーと、あと雑魚ばっかりでしょ?
使える人手が足りねーと、いざってとき困りますんで」
『いやいや、人手ならこちらで何とかするって!』
「……なーんかねー、弟子どもは姿見せねーし
いつも行ってた梅屋は店閉めちゃうっていうしで、テンション下がりまくりなんですわ」
『いや、梅屋は関係ないでしょ!』
「んじゃそういうことで、失礼しますわ、大将。梅屋のない街には、未練もありやせんしね」
『どんだけ梅屋好きなんだよ!』
――こうして、運命の出あいのおかげで、川神の街は守られたのであった。
ありがとう、アナスタシア・ミスティーナ。ありがとう、ハードM――
- 80 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 23:40:09 ID:LP7m4gtp0
- 終わり。自分で書いてて
なにこの超展開、と思ったけど気にしない。
- 81 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/19(土) 23:52:57 ID:kONSE2/U0
- ツッコミ入れるマロードにワロタ
乙
- 82 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/20(日) 00:18:59 ID:3ML9nYhS0
- 乙
ベストカップルと言わざるを得ないw
- 83 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/20(日) 02:53:04 ID:pEkaQbSg0
- まゆっち物投下します
- 84 名前:バカップル 1[sage]投稿日:2009/09/20(日) 02:56:22 ID:pEkaQbSg0
- 「大和さんはなんと安らかに眠られてるんでしょう…」
ここは島津寮、大和の部屋。時刻はまだ朝も早く。
いつもなら京が色仕掛けで、大和をおこしに来ているところだが、京は実家に帰っている。というか寮の住人はここ数日各々の用事で出払っている。
それになにより、今日はデートだ。
「…しかし、ここは心を鬼にして起こさねばなりません」
早く起きられたほうが相手をおこす。前日にそう約束していた。
寮に誰もいないこともあり昨夜はお楽しみだったので、大和はいまだに布団のなかにいる。由紀江も、大和の部屋から鳴り響く目覚ましの音でようやく寝床から這い出してきたのだ。
「大和さーん。朝ですよ−」
身体をゆする。
かなり強くゆすっているので、首がガクン、ガクン、と揺れているが、いっこうに目覚める気配はない。
かといって、これ以上強く衝撃を与えることは由紀江にはばかられた。
「や、大和さーん、起きて下さいよぅ」
大和の首が心配になり、由紀江は手を止める。
「あぅぅ……」
「(…ふふふ)」
じつは、大和の目はとっくに覚めていたりする。
由紀江の困った顔が見たくて、寝たふりを続けていたのだ。
「(途方にくれる姿も可愛いぜ!! 由紀江!)」
- 85 名前:バカップル 2[sage]投稿日:2009/09/20(日) 03:00:07 ID:pEkaQbSg0
- 「えいっ!」
今度はくすぐりはじめる。
「(だが甘いぜっ。姉さんの過剰なスキンシップもといくすぐり責めで耐性ができている!)」
「や、大和さぁん」
心の中で、グッ、と親指を立てる。
「うぅぅ……」
「(流石に可哀想になってきたが、……だが、しかし、ここで撤退するわけにはいかないっ!)」
焦らせば焦らすほど、待てば待つほど、見返りというのは大きいものだ。
「すぅぅ。はぁっ」
呼吸を整える由紀江。
「…失礼します」
大和に馬乗りになる。
「(何だ?)」
由紀江の顔が近づいてきた。薄く開けていた目蓋を閉じる。
距離はほとんどないらしい。
鼻孔をくすぐる甘い吐息とかぐわしい匂い、それと人肌の暖かさを間近に感じる。緊張しているのか呼吸はわずかに荒い。
鼻が摘まれた。
「(鼻と口を塞ぐつもりか。なかなかクレバーな手だな)」
「んっ、大和さんっ……、はむっ、ちゅっ」
唇が触れた。
不意の口づけに、思わず目を開けてしまいそうになる。手の平で塞ぐとばかりに思っていた。
- 86 名前:バカップル 3[sage]投稿日:2009/09/20(日) 03:03:34 ID:pEkaQbSg0
- 舌が口蓋に伸びてくる。くすぐるように舌先で歯の裏側に沿わせる。大和の舌をぬめぬめと絡め取る。
苦しくなってきたのか、大和は、ほどなくして今まさに目が覚めたかのように目を開いた。
「ちゅぱっ、くちゅ、…ちゅっ、ちゅ」
「(やっぱりムッツリだなぁ)」
目を閉じている由紀江。行為に夢中になっているのか、大和に気づいた様子はない。
そろりそろりと、手をお尻に伸ばす。
「んぁッ」
びくりと体が震えた。
「おはよう」
由紀江はあわてて距離をとり正座をする。
「お、おはようございます」
恥ずかしかったのか、由紀江の顔にはほんのりと赤みがさしている。
「あ、あのデスネ。こ、これは…」
「分かってる。由紀江がエッチな娘だってことは」
「誤解ですっ。…や、大和さんがどうしても起きないので」
「ありがとう、おかげで最高の目覚めだよ。……ただ、これと由紀江がエッチな娘だってこととは別だよ」
「うぅ…、ですからっ」
「口だって、手のひらで塞げば良かったんだしね」
「は、はじめはそうでした!」
由紀江は相当恥ずかしいのか、すぐにばれるであろう嘘をつく。
- 87 名前:バカップル 4[sage]投稿日:2009/09/20(日) 03:06:20 ID:pEkaQbSg0
- 「嘘はよくないなぁ」
「嘘ではないです。それでも起きなかったんです」
「だって、俺、由紀江が部屋に入ってきたときから起きてたし」
「……はい?」
「だから起きてたんだって。部屋に入ってきたときには」
その瞬間、由紀江の動きが止まった。
由紀江はみるみるうちに由紀江の顔が真っ赤になっていく。
「さぁ。続きをしようか」
「……あっ……、えぇと……」
「もう我慢も限界だっ!」
「きゃっ」
あっというまに上下が逆転する。
「まっ、待って下さい。今日は出かけるって」
「時間のことを心配しているなら問題はない。まだ時間はある。流石にいつもみたいに何回戦とはやらないしね」
由紀江が止めるより速く、手を下着の中へと滑り込ませる。
「……それに由紀江だって興奮したんだろ?」
由紀江のソコは、確かにじんわりと湿っていて、指を沿わすと、くちゅり妖しげな音を立てた。
「んっ…ふぁっ……はぁっ」
「もう、こんなに濡れてる。……可愛いよ由紀江」
反論はキスで封じた。
- 88 名前:バカップル 5[sage]投稿日:2009/09/20(日) 03:09:48 ID:pEkaQbSg0
-
―――その後
確かに夜の回数に比べたら遥かに少ないが、元々回数の多い大和のこと。
二人が行為を終え出発の支度をするころには、当初の予定時刻を余裕で一時間以上オーバーしていた。
「やっぱり、遅れてしまいましたね。あ、いえ、大和さんを責めているというわけではないのですけど」
「大丈夫。安心してくれ。タイムロスはわずかだ」
「そうですよね。今日はまだ始まったばかりです」
「そういう意味じゃないんだな。これが。……テレビを着けてみようか」
「…これって」
「そうっ!!!」
ニュース番組の端にうつる時間表記は、居間や大和の時計と異なっていた。
「昨夜のうちに寮の中の時計を速めておいたのさ!」
携帯やテレビの時計で時間を確認した場合でも、目覚まし時計と携帯のアラームを部屋の外にまで届くようにセットしておけば、時間が早まっていようと、起こしにか、すくなくとも目覚ましを消しには来るだろう。
「そ、それは何故に」
「ふふふっ、きみぃ、言わずもがなだよぉ」
「へ、下手したら退学ものですよ」
「チッチッチッ、まゆっちは男の性欲がわかってないな。……男はなっ、上半身と下半身が別々の生き物なんだよッ!」
「男は狼なのですねっ!」
「そうだっ。だから、俺がふらふらと迷い込んできたウサギちゃんを食べてしまうのも仕方がないんだ」
「…大和さんにだったら食べられてもいいです」
「もー。可愛いなぁ! 由紀江は! (頭グリグリ)」
そんな感じでバカップルは今日もシアワセでした。
- 89 名前:aerowa[sage]投稿日:2009/09/20(日) 03:15:37 ID:pEkaQbSg0
- 以上です。
突っ込み所が多々ありますが、そこはご勘弁をw
まゆっち可愛いよ。まゆっち。
- 90 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/20(日) 03:20:44 ID:ZztbIK3u0
- 乙
俺もシアワセ
- 91 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/20(日) 04:58:46 ID:epQjGmP1O
- 読んでたら明日がつらい時間に…おやすみ
乙!
- 92 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/20(日) 11:30:58 ID:vr5ouZcA0
- 乙
寮に二人きりで前日の夜にお楽しみだったら
まゆっちそのまま朝まで布団の中にいそうだけどなw
- 93 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:04:26 ID:+Q03/7PB0
- >>25からの続編投下
- 94 名前:Returner・1[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:07:32 ID:+Q03/7PB0
- クリスの提案で、島津寮に風間ファミリーのメンバーを呼んで
再来日したマルギッテの歓迎会を開くことに。
始める前、マルギッテは
「クリスお嬢様はともかく、私がそう歓迎されるとは思えないのですが」
とか言っていたのだが
いざ宴会が始まればけっこう盛りあがっていた。
「ところでさー、マルって川神学院には戻らないの?」
宴もたけなわ、というところでワン子の質問。
「私もクリスお嬢様と一緒に退学届を出している。
復学はないと考えなさい」
「でも、自分も復学したんだから、マルさんも戻ってくれると嬉しいな」
「復学には、全校生徒の4分の3以上の署名が必要と聞いています。
私にそれほどの人望があるとは思えません」
「そんなもん、やってみなきゃわかんねえだろ!
可能性がゼロじゃねえなら、チャレンジあるのみ、だぜ」
「いや、まず大事なのはマルギッテの気持ちだ。
マルギッテ……川神学院に戻りたいか?」
皆の視線がマルギッテに集中する。
そんな中で、彼女は苦笑いを浮かべた。
「……おかしなものだな」
- 95 名前:Returner・2[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:10:41 ID:+Q03/7PB0
- 「一緒に過ごしたのは、日数にしてたった一月半ほどだ。
特に親しい者ができたわけでもない。
あの場所に戻る必要など何もない……」
「……マルさん……」
「それなのに……戻ってみたいという気になっている。
以前の私なら、そんな無駄なことは気にもかけなかっただろうにな」
「わかった。戻りたい、というなら手を貸すぜ」
「ですが、実際問題、署名のことを考えると復学は無理でしょう。
私のことは気にせず、二人で学園生活を楽しみなさい」
「いや、キャップじゃないが、やってみなきゃわからん。
実はな、マルギッテの場合
復学に全校生徒の4分の3の署名はいらないんだ」
「え、そーなの?」
「ああ、マルギッテ2ーSだったろ。
俺、2年に上がるときに、ちょっとSクラス入るか考えて
いろいろ調べたんよ」
「おいおいマジかよ。大和がSクラスとか行ってたら
俺様達エライ目にあわされてたかもな」
「まあ結局、向いてねーわ、ってんでやめたけどな。
で、話戻すけど、Sクラス生徒が一度退学して復学する場合
全校生徒4分の3の署名は必要ない」
「それでは、マルさんは無条件で戻れるのか?」
- 96 名前:Returner・3[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:13:47 ID:+Q03/7PB0
- 「いや。その代わりに、所属していたクラスの生徒
全員の承認が必要、ってことになってる」
「それは……条件としては、むしろキビシイ」
「京の言うとおりかもな。Sクラスは競争の激しいところだ。
一度いなくなったライバルが戻ってくるのを
そうやすやすと受け入れるかどうかはわからん」
「そこは軍師の腕の見せどころ、というわけだな、弟?」
「復学を希望する生徒が、クラスメートに陳情書を書いて
それを読んで生徒が投票する、ってスタイルなんで
そうそう小細工もきかないけどね」
「大事なのはマルギッテさん本人の誠意、ということですね」
「でも、文章一つで印象ってけっこう変わるよ。
僕たちもアドバイスしたほうがいいんじゃないかな」
「いい意見だモロ!じゃ今から陳情書の文章、アイデアだしていこうぜ!」
「ねえねえ京?チンジョーショ、って……なに?」
「『してください』っておねだりする手紙と思いなさい、ククク」
「?何をしてもらうのかわかんないけど、おねだりは得意よ!」
「まあ、そういうことであればお願いするが……
このメンバーのアドバイスを元にして大丈夫なのだろうか」
「うん、まあ……たぶん」
- 97 名前:Returner・4[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:16:58 ID:+Q03/7PB0
- いろいろなアドバイスが飛び交い
それをいちいち肯きながらマルギッテは聞いていた。
が、いざ陳情書を書くとなると
「すまないが、書くのは私一人で書きたい」
と言ってその場はお開きになった。
どんな陳情書になるかわからんが、とりあえず情報収集かな。
――そして翌、月曜日。
「お帰り大和。どうだった?」
俺とクリスの復学の手続きついでに、学院での情報収集。
寮に戻ったとたん、先に帰っていたクリスがいきなり尋ねてきた。
「ん……Sクラスなんであんまり情報も掴めなかったが
今のところ五分五分ってとこかなぁ」
「五分五分、か……」
「ああ。明確に反対の意思表示をするヤツはいないんだが
もろ手を上げて歓迎ってヤツもいない」
「そうか……陳情書次第というところだな」
「ところで、マルギッテはどうしてる?
もう陳情書は書き始めてるかな?」
「それが……昨晩は自分の部屋に泊まったんだが
まだ書いてはいないらしい。
なんでも『気持ちを見つめなおしたい』んだそうだ」
- 98 名前:Returner・5[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:20:02 ID:+Q03/7PB0
- 本人の納得のいくようにさせたい気もするが
時間もそう余裕があるわけじゃないしな。
「ちょっと様子みたいから、2階にあがらせてくれ」
「わかった、自分も行こう」
2階に上がり、クリスの部屋の前で聞き耳を立てる。
が、物音一つしない。
「マルさん、入るぞー?」「邪魔するよー」
「……どうぞ」
部屋の真中で、マルギッテは座禅を組んでいた。
「静かだと思ったら、瞑想中だったのか」
「ええ、川神百代に教わりました。
気持ちを整理するには、なかなかよいものですね」
「で、陳情書なんだけど……どう?書けそう?」
「はい。今からでも書き始めようと思います。
それで……申し訳ないのですが、また一人にしていただきたいのです。
書きあがったら、お呼びしますので」
「うん、マルさんの好きなようにしてくれ」
「ありがとうございます、クリスお嬢様」
最悪、俺が代筆することも考えてはいたが、これなら大丈夫、かな?
- 99 名前:Returner・6[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:23:05 ID:+Q03/7PB0
- 部屋を出て、クリスと廊下で顔を見合わせる。
「とりあえず、居間で待つことにするか」
「ん、そうだな」
階段を降りかけたところで
今出てきたばかりのクリスの部屋のドアが開く。
「ん?何、マルギッテ?足りないものでもあった?」
「いえ、もう書き終わりました」
「早っ!?」
1分もたってねーぞ!
「いや、あの、マルさん?……本当に、もう書き終わっちゃったのか?」
「ええ、気持ちの整理はついていましたから。
作戦が決まったなら行動は迅速に、です」
迅速にもほどがある。
というか……
「まさか、どうせ無理だろうと思って
いい加減な陳情書書いてないだろうね?」
「それでは、昨晩の皆の好意を裏切ることになる。
そんなことはしない」
「じゃ、ちょっと見せてくれる?」
- 100 名前:Returner・7[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:26:19 ID:+Q03/7PB0
- 「いや、それは……!その、勘弁してもらえないだろうか」
「なんでさ」
「色々と……恥ずかしい文章になってしまった……気がするのです」
うお、モジモジするマルギッテ。新鮮だ……とか喜んでもいられない。
「恥ずかしい、って、2−Sの皆が読むんだぞ。
ここで俺たち二人に読まれるぐらいを恥ずかしがってちゃ困る」
「う」
「いいじゃないか大和、自分はマルさんを信用してるぞ!
それじゃ、その陳情書は自分が預かろう。明日、学院に提出してくる」
「お願いします。それでは、私は自分の部屋に帰ります。
クリスお嬢様、直江大和……ありがとう」
颯爽と寮を後にするマルギッテ。
その顔は、どこか晴れやかだった。見送る俺。
そしてクリスは……陳情書の入った封筒を手に、そわそわしていた。
「落ちつけ。ここでお前がそわそわしてもしょうがないだろ」
「いや……これ、やっぱり読んだらマルさんに悪いかな?」
「騎士にあるまじき行為だぞ?」
「む……そ、そうだな、我慢しよう」
騎士とお嬢様の板ばさみになっていた。
- 101 名前:Returner・8[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:29:22 ID:+Q03/7PB0
- 火曜日に陳情書を提出。
翌日の水曜日のHRで承認の決を取るという
かなりスピーディな展開だった。
「裏掲示板でも、ほとんど話題になってないね」
「まあ2−Sの内輪だけの話みたいなところあるしな」
秘密基地のパソコンで、モロと情報の確認をしたが特に収穫はなし。
あとは……担任の宇佐美先生の結果報告待ちか。
ん……クリスからメール?
「お……なんかヒゲ先生、島津寮のほうに来るらしい」
「あれ、マルギッテの部屋じゃなくて?」
「麗子さんに身元引きうけ人になってもらってるからな」
「そっか……この際、また皆を集めようか?
島津寮なら大勢人が来ても平気でしょ」
「そうだな、気になってるだろうし、集めとくか」
二人で手分けして、召集のメールを送り、島津寮に急行。
玄関ではクリスが待っていた。
「おじゃましまーす」「ただいまー。クリス、宇佐美先生は?」
「4時頃にみえるそうだ」
そわそわしてるところを見ると
結果はまだ聞いていないようだな。
- 102 名前:Returner・9[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:33:14 ID:+Q03/7PB0
- 「肝心のマルギッテはどうしてるの?」
「居間で待機中だ。人事は尽くしたから天命を待つ、だそうだ」
「余裕というか、大人だなぁ」
そうこうするうちに風間ファミリー全員集合。
「テメェら、またここに勢ぞろいかよ……」
遅れて帰ってきたゲンさんが、俺達を見てげんなりしていた。
「まあまあ。ゲンさん、今日は仕事は?」
「親父がここに来るんだろ?そんで合流してからだ」
受け答えしながらテキパキと動いている。
「ほれ、茶菓子だ。マルギッテはいちおう客だろ、まったく。
ちったぁ気ぃ使えお前ら。あと、えーと……マルギッテ」
「何か、源」
「こんな風に集まられちゃ、うるさくてかなわねえ。
こういうのは、これからは学院でやってくれ」
「わかった……そうできれば、な。ありがとう、源」
「……礼なら、復学してからコイツらに言ってやれ」
ゲンさんも何気に応援してくれていた。
- 103 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/20(日) 23:37:32 ID:RPdvcBw60
- 支援
- 104 名前:Returner・10[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:00:43 ID:+Q03/7PB0
- やがて4時。
予定ピッタリに宇佐美先生はやってきた。
「いらっしゃい、宇佐美先生」「待ってました!」
「おー、すごい歓迎だな。自分のクラスでも、こんなに歓迎されたことねえぞ。
オジサン、ちょっと嬉しくなっちゃったよ」
「んなことより、親父、結果は?」「OKか?OKなんだろ?」
「……待ってたのは結果のほうね。ま、そうだよな……
よ、マルギッテ」
「お久しぶりです、宇佐美先生」
「それで、結果はどうだったんですか?」
「あせるなよ、直江。がっついてると、嫌われるぜ?
……ま、これを見てくれ」
バサバサッとテーブルの上に紙片がぶちまけられた。
「何ですかこれ?」
「投票用紙だ。わざわざ持ってきちゃったぜ。
そうだな、直江、ちょっと読んでみ」
「投票用紙って、無記名で承認か反対に○してあるだけじゃ?」
「本来はな。けど、けっこう余白に色々書いてある。ま、いいから読め」
「はい、じゃあ……読みますね」
- 105 名前:Returner・11[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:03:58 ID:ep7akMpb0
- 投票用紙を1枚手にとって広げてみる。
「えー……『承認。同じ匂いのするヤツが、もう一人ぐらいいてもいい』……同じ匂い?」
「それは……たぶん忍足あずみでしょう。意外です。彼女が受け入れるとは」
「次。『承認。美しい女性は多いほうが楽しいものです』。これは葵だな」
「彼らしい……」
「次。『承認。女性としての魅力はもう感じないが、仲間ならOKだ』。……井上か」
「次いくぞ。『承認。高貴なる心をもって、受け入れてやるのじゃ』。皆わかりやすいなオイ」
「皆、相変わらずのようですね」
読んでいく投票用紙、それぞれに一言一言が書き加えられ
そしてその全てがマルギッテの復学を承認していた。
「最後の1枚だ……」
「これが承認だったら……マルさんは復学できるんだな!」
「読むぞ……
『我は、もしお前がクリスのために復学したい、というのなら
承認しないつもりであった』……これは、九鬼か」
けっこう長いな。続けて読む。
「『だが、陳情書でお前の気持ちはよくわかった。
それとともに、我もクラスメートというものが何なのか
改めて考えさせられた』」
- 106 名前:Returner・12[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:07:21 ID:ep7akMpb0
- 「ね、ねえ、承認なの、反対なの、どっちなのよぅ!」
「待てって!えー……
『よって、我は汝マルギッテ・エーベルバッハを
再び迎えいれようと思う……承認』!」
一瞬の静寂。
そして
「やっ…たぁー!!」「やったぜ、マルー!」「おめでとうございますー!」
沸きあがる歓声。
「いやー、オジサンこれ読んで、いい年してちょっと感動しちゃったよ。
……ちょっと銀八先生みたいだよな?」
「ううん、全然」
「相変わらずキツイな椎名は……ま、いい。
マルギッテ、そういうわけだから
明日学院まで来て、手続きしろや」
「了解しました……その、ありがとうございました」
「礼なら明日、クラスで皆に言いな。
じゃ、オジサンはこれで……」
来たときと同じように、ひょうひょうと宇佐美先生は帰っていった。
「いやー、しっかし、あの2−Sが全員一致とかスゲーじゃん、マル!」
「そういやよ、結局、どんな陳情書だったんだ?」
- 107 名前:Returner・13[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:10:26 ID:ep7akMpb0
- 皆の視線がマルギッテに。
「マルさん、もう承認は得たんだし、教えてくれても」
「わ、わかりました。ちょっと照れますが……こう書きました。
『私は、お前たちが好きだ。そばにいたい』」
ざわっ……!
静まり返ったその場が、一瞬のうちに喧騒に包まれる。
「……なんという告白!」「ラ、ラブレター?」「こりゃ落ちるわ……」
「ま、まだ続きはある!
『また共に競い合い、共に戦い、共に笑おう』と」
「……おー」「うん、短いが、いい言葉だ」
なるほど、九鬼が納得するわけだ。
馴れあいではない、共に競いあうライバルではあるけれど
時には同じ目標を目指し、力を合わせて戦うこともあるだろう。
そしてその結果に、時には共に笑い、時には涙を流すこともあるだろう。
いかにも2−Sらしい仲間意識だった。
「いやあ、カッコイイな、マルギッテ」「うんうん、さすがはマルさんだ!」
「いえ……その、気持ちを素直に言葉にしただけですから」
(そして……これは……お前たちに向けた言葉でも、ある)
隣でつぶやくマルギッテの声が、かすかに耳に届いた。
うん、俺も……承認だ。
- 108 名前:Returner・14[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:13:27 ID:ep7akMpb0
- 翌朝。
登校前、親不幸通りのマルギッテの部屋に、クリスと共に向かう。
「マルさーん?起きてるー?」
ガチャリとドアが開き、いつもの軍服姿のマルギッテが姿をあらわす。
「おはようございます、クリスお嬢様、直江大和。
登校にはまだ早いと思いますが?」
「あー、やっぱり……
大和、ちょっと外で待っててくれ」
「いいけど?」
俺を置いて二人が部屋の中へ。
そして待つこと数分。
何か中でもめているようだが、よく聞こえない。
やがて再びドアが開き、今度はクリスだけが出てくる。
「あれ、マルギッテは?」
「今来る。ほら、マルさん!大和にも見せてやろう!」
「あ、あの…ちょ、これは、その……やはりですね、私には……」
「いいからいいから!ほら!」
「うお!?」
クリスに手を引っ張られて出てきたマルギッテは
なんと川神学院の制服姿だった。
- 109 名前:Returner・15[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:17:17 ID:ep7akMpb0
- 「これは……何というか」
「あ、あまりジロジロ見るな……
クリスお嬢様……こういう姿は、慣れていないし私には似あわない」
モジモジしながら力なく抗議する、その姿が可愛い。
「いや、いいよ、似あう似合う、すげえ可愛い!」
「うん!自分も、マルさんはこういう格好したら可愛いだろうな、と思っていたんだ!
せっかく心機一転して復学するんだから
着るものも変えたほうがいいと思って準備しておいたんだ」
「ナイスアイデアだ、クリス」
「か、からかわないでください!」
「からかってなんかいないぞ?
さあ、早く学院に行って皆にお披露目だ!」
「あ、ちょ……待って!……もう!
仕方がないですね……」
クリスが強引にマルギッテの手を引っ張って
朝の川神の街を走り出す。
「遅いぞ大和ー!」
やれやれ。元気あふれる騎士娘と、怒ると怖いその保護者。
ついていくのは大変だけど……ま、俺も走るか。3人一緒で。
- 110 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:18:30 ID:ep7akMpb0
- おしまい。途中で規制されて間隔があいた……
- 111 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:20:58 ID:TvRnjLZu0
- 乙。
俺もファイナルフュージョン承認
- 112 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:32:36 ID:LMlu5GcZ0
- 乙
川神学院制服のマルちゃんは確かに見てみたいな
そういやブルマ立ち絵ないんだよなマルちゃん
- 113 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/21(月) 00:59:46 ID:Qow4T66H0
- 乙
早く公式でマルさんルート出ないかなぁ・・・
- 114 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/21(月) 01:00:52 ID:TvRnjLZu0
- 心ルート希望
- 115 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/21(月) 01:40:07 ID:Qow4T66H0
- 58:名無しさん@弓兵:2009/05/21(日) 12:00:52 ID:miyaOiU90
軍師は俺の嫁
59:名無しさん@軍師:2009/05/21(日) 12:02:21 ID:yAmto32z0
よう、戦友
60:名無しさん@ナイスガイ:2009/05/21(日) 12:03:01 ID:gckt87590
軍師より俺様だろ、常識的に考えて
61:名無しさん@弓兵:2009/05/21(日) 12:05:12 ID:miyaOiU90
ナイスガイ(笑)
正直暑苦しいです
62:名無しさん@ナイスガイ:2009/05/21(日) 12:05:29 ID:gckt87590
やろーてめーぶっころす!
63:名無しさん@軍師:2009/05/21(日) 12:06:29 ID:yAmto32z0
汚いなさすがナイスガイきたない
64:名無しさん@弓兵:2009/05/21(日) 12:06:33 ID:miyaOiU90
ほう、意見が合ったな。婚約を結んでやろう
65:名無しさん@軍師:2009/05/21(日) 12:07:48 ID:yAmto32z0
お前反応早過ぎだろ…
婚姻届はマジでかなぐり捨てンぞ?
「…この3人は一体何やってんのさ…」(←モロ、裏掲示板で情報収集中)
翌日、何かの書類を必死で破り捨てる大和の姿があったとか、無かったとか。
- 116 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/21(月) 01:41:15 ID:Qow4T66H0
- おしまい。
お目汚し失礼した!
- 117 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/21(月) 08:01:16 ID:adWvfX5mO
- 115みたいな日常好きだよ(^ε^)♪
- 118 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/21(月) 23:30:48 ID:ep7akMpb0
- 投下します
- 119 名前:この指、とまれ・1[sage]投稿日:2009/09/21(月) 23:34:53 ID:ep7akMpb0
- 「いやあ、今日もモモ先輩、無敵だったよなー」
秘密基地で、今朝挑戦してきた武道家をあっさり返り討ちにした姉さんの話題。
「……思うのだが、モモ先輩ほどになると、もう怖いものとかはなくなるのだろうか?
……ちなみに、私は虫がちょっと苦手なんだが」
「私はこの先、友達が全然出来なかったらと思うと怖くて怖くて……」
「アタシはゴハンが食べられなくなるのが怖いワ……」
「大和がいなくなるのが一番怖い……」
皆がそれぞれに弱点を口にする中で、姉さんは悠然としていた。
「んー、まあ、私は怖いものはないなー」
「……あるでしょ、姉さん。一つだけ怖いものが」
「あー、あれは……怖いというより、苦手なだけだ」
「っていうか、大和……今日じゃね?3月14日だから」
「ああ、そういやそうだな……クリスたちに話してもいい、姉さん?」
「今さらだが……まあ、好きにするがいいさ」
それは、彼らからすれば昔の話
川神百代が風間ファミリーに入ったあと
そして椎名京がファミリーに入るよりちょっと前
それぐらいの、過去の話だった。
- 120 名前:この指、とまれ・2[sage]投稿日:2009/09/21(月) 23:38:57 ID:ep7akMpb0
- 「あれ?……おい、あそこで誰かこっち見てるぞ」
いつもように縄張りの原っぱで遊んでいるうちに
木の陰からこちらをうかがう、同い年ぐらいの女の子に気がついた。
「……見たことないやつだな」
「隣の学校のヤツかな……どうしたの、姉さん?」
「いや、おかしいだろ……あんな所に近寄られるまで
私が気づかなかったんだだぞ?」
「そういえばそうだね」
いつもは、この原っぱに近づく者がいれば
気づいて教えてくれるのだ。
「声かけてみるか」
「もうそろそろ夕方だよ?」
「いいじゃねえか、まだちょっとは遊べる」
「皆OK?じゃあ、リーダーの俺が行ってくる!」
「うん、お願い」
人見知りしないし、人にも警戒されにくいのか
こういう役にはうってつけだった。
走っていく姿を見て、女の子はさらに陰に隠れてしまったが
かといって、逃げ出す様子もなかった。
- 121 名前:この指、とまれ・3[sage]投稿日:2009/09/21(月) 23:43:00 ID:ep7akMpb0
- やがて、女の子を連れて戻ってきた。
連れてきた女の子は、痩せていて、着ている服もみすぼらしかったが
嬉しそうな笑顔はまぶしいほどに輝いていた。
「ホントに……ホントに遊んでくれるの?」
「ああ、特別にお客さんとして歓迎するぜ」
「この辺じゃ見ないけど、どこから来たの?」
「えっと……あっち」
女の子が指差したのは川の向こう。
「なんだ、東京側からかよ。そりゃ見たことねえはずだぜ。
俺らだいたい4年生だけど、何年?」
「あ、同じ!アタシも4年生なの」
「よーし、じゃあ改めて、よろしくな!えーと……オレ、風間翔一!
キャップって呼んでくれ!」
皆が自己紹介を始め、最後に残った女の子を見つめる。
「えっと……わたし、ラン!」
「よーし、それじゃ……缶蹴ーりすーるもーのこーのゆーびとーまれっ!」
「やるやるー!」「は、宇宙まで缶を蹴り飛ばしてやる!」「いや、それだと続かないから」
差し上げた指先に、わっ、と皆が殺到する。
少女もその真っ只中で、抱きつくように飛びついていた。
- 122 名前:この指、とまれ・4[sage]投稿日:2009/09/21(月) 23:47:01 ID:ep7akMpb0
- やがて、あっという間に日が暮れる。
「ハラも減ったし、そろそろ帰るかー」
「え……もう、帰っちゃうの?」
「そうだな……よお、橋の向こうまで送ってやるよ」
「やだ……もっと遊びたい……」
寂しそうにうつむく少女。慰めるように皆が近づきかける。
「おいおい、オマエが一番家が通そうなんだから……!?」
少女の雰囲気が一変した。
うつむいたまま、すっ、と手を掲げ
「……缶蹴ーりすーるもーのこーのゆーびとーまれ……」
「お、な、何だ!?足が……あれ、ちょ、どうなってんだ!?」
皆がフラフラと少女の方に集まっていく。
「……ぐ……なんだ、この力……!」
百代だけは、並外れた力と精神力で踏みとどまっていた。
「百代さんは、遊ばないの?
……一緒に、遊んでくれるって言ったのに……!!」
「ふざけるな!……気配とか、おかしいと思ったんだ……
オマエ、人間じゃないな!」
- 123 名前:この指、とまれ・5[sage]投稿日:2009/09/21(月) 23:51:05 ID:ep7akMpb0
- 百代がそう言った、その瞬間。
「う……うわあああぁぁぁっ!?」
少女が、影のように真っ黒な姿になった。
真っ黒な、人型の影。
だが、それはよく見れば影などではなく
炭のように真っ黒に焦げた人間の姿だった。
その焦げた人型が、もう一度言葉を発する。
「……缶蹴ーりすーるもーのこーのゆーびとーまれ……」
差し上げた指に、皆が吸い寄せられるように集まっていく。
心まで縛られてしまったのか、もはや目もうつろだ。
「ダメだ……!その指に触るな!!」
ただ一人踏みとどまった百代だが、踏みとどまるのが精一杯で
身動き一つできず、ただ必死に叫ぶ。
だが、その叫びも空しく
皆が手を伸ばし、指を掴もうとしたとき
チリン
鈴の音がした。
皆の動きが止まる。
少女も百代も、鈴の音のしたほうを見る。
赤い夕焼けを背にして
一つの小さな影が立っていた。
- 124 名前:この指、とまれ・6[sage]投稿日:2009/09/21(月) 23:55:37 ID:ep7akMpb0
- 「……無理やり一緒に遊ばせても、それで友達とは言えまいよ」
チリン
鈴の音をさせながら、人影が近づいてくる。
いわゆる巫女の衣装。銀色の短い髪。
身の丈は百代たちとそう変わらないが、子供ではないようだ。
手にした扇子につけられた鈴が、歩くたびにチリン、と鳴った。
「だって……!ずっと一人だったんだもん!寂しかったんだもん!
もっと遊んだっていいはずだわ!もっと一緒にいてくれていいはずだわ!」
「寂しいのなら、家に帰ればよかろう」
「……わかんないの……おウチが……皆がどこだか、わかんない……」
「家は、川の向こうであろう?ほれ、見てみるがよい」
チリン、と音をたてて扇子が指した向こう岸に、3つの人影があった。
「……ああ!ああ!父ちゃん!母ちゃん!兄ちゃんも!」
もう薄暗くて見えるはずもないのに
「手を振っておるぞ。早く帰っておいで、とな」
確かに、手を振っているのがわかる。
「でも……でも!どうやって帰ったらいいのか、わかんない!
何時の間にかここにいたから、帰り道がわかんない!」
「なに……橋を渡っていけばいい」
- 125 名前:この指、とまれ・7[sage]投稿日:2009/09/21(月) 23:59:41 ID:ep7akMpb0
- ここに橋なんてない。
その場の皆がそう思ったとき
巫女がゆっくりと動き出す。
百代には、すぐにそれが「舞い」だとわかった。
そしてそのすぐそばに、淡い光が集まり始める。
「我が送ってやろう……向こうへ、な」
集まった光が、舞いに合わせるように、向こう岸へと、長く長く伸びていく。
それは光のかけ橋だった。
「う……わあ……」「キレイ……」
皆が思わず見とれていた。
「これで……向こうに……」
「ああ、これこれ……
こんなに真っ黒では、父親も母親も、お前と見分けがつくまいぞ、ほれ」
舞い踊りながら、巫女が少女に近づいて
扇子の先で、つい、となでる。
チリン
鈴の音とともに、元の少女の姿になっていた。
「これでよし。女の子は、キレイにしておらねばな。
さあ、行くがよい」
「……うん!」
- 126 名前:この指、とまれ・8[sage]投稿日:2009/09/22(火) 00:03:44 ID:jVSr/ULC0
- 勢いこんだ少女が、橋を渡りはじめるそのとき
巫女がその背中に声をかける。
「友達に、『さようなら』は言わなくてもよいのか?」
「あ……」
その場でクルリと振りかえる。
もう金縛りがとけた皆が、光の橋のたもとに揃っていた。
「あの……ヒドイことして、ごめんなさい」
「いいさ。寂しかったんだろ」
「あの……アタシ、向こうに行くから……もう会えないかもしれないけど……」
「……会えなくなっても、友達だろ」
「!うんっ!じゃあ、さよならっ!」
「おう、じゃあな!」「た……楽しかったぞ!」「じゃーねー!元気でねー!」
少女が橋の上を走りだす。
見る間に小さくなっていくその姿が
いつしか小さな光の点になって
やがて向こう岸についたころ
ふっとかき消すように見えなくなった。
巫女の動きが止まった。
向こう岸を見つめながら、ぽつりとつぶやく。
「……昔、大きな戦争があったときのことであろうな」
- 127 名前:この指、とまれ・9[sage]投稿日:2009/09/22(火) 00:07:49 ID:jVSr/ULC0
- その言葉に、大和は気づく。
「そうか……!今日は、3月10日……だから、あんな黒焦げで……」
「ほう、知っておったか。よく勉強しているのだな」
「え……今日が3月10日だから、何なの?」
「……今日は、東京大空襲のあった日なんだよ」
「あ……」「アタシ、ばあちゃんに聞いたことある……」
「うむ。もう60年ほど前のことだ。
この街には爆弾は落ちなかったが、川の向こう、東京は火の海だったという。
炎に巻かれ、失われた命は数知れず、その亡骸は川から海にあふれたそうな。
波に運ばれ、上げ潮に乗って、このあたりにも亡骸が流れついたときく」
「じゃあ……アイツ……」
「誰知れずここに流れつき、そのまま埋もれてしまった亡骸の一つだったのやもしれぬな」
「かわいそう……」「もっと……遊んでやればよかったかな」
「なあ巫女さん……俺たち、アイツに何かしてやれないかな」
「あの子と遊んでやったのであろう?それで充分。
我が家族の元へ送ったのであるから、もうお前たちが心配することはない。
それより、もう日も暮れた。お前たちも、家に帰るがよかろう」
と、土手の斜面を人影が降りてくる。髪の長い、すらりとした大人の女性だった。
「終わりましたか、姉さん」
- 128 名前:この指、とまれ・10[sage]投稿日:2009/09/22(火) 00:11:51 ID:jVSr/ULC0
- 降りてきた女性に巫女が答える。
「うむ、待たせたな、かなめ……何とか……間に合ったよう、だ……」
答えながら、突然、巫女の体がグラリと揺らいだ。
「姉さん!?」
あっという間にかけ寄って、その肩を支えた百代が驚く。
先ほど舞いを舞っていたときには
あふれるほどに気力に満ちていたのに
今は気を失いかけないほどに消耗していた。
「はは……少し、張りきりすぎたようであるな……
よ、と……もう、大丈夫であるぞ。
なに、こんなのは、いつものことよ……だから、気に病むことはないぞ。
さあ、我らも帰ろうか、かなめ」
「本当に、大丈夫なんですか……?どこかで休んでいかれては」
「なに、家に帰って、皆の顔を見るのが何よりの薬というものよ。
……そうそう、何かできることはないか、と言ったな?」
「え?……うん……何かできるなら、してやりたい」
「ではな、『命を大切にする』、これを心がけるとよいぞ」
「それは大事なことだとは思うけど……なんで?」
「それは、いつかわかる……いつか、それが花開き、実を結ぶ……
そしてそれが、あの娘への供養となるであろう……」
- 129 名前:この指、とまれ・11[sage]投稿日:2009/09/22(火) 00:15:02 ID:jVSr/ULC0
- 「……というお話だったのさ」
秘密基地での話が終わると、皆がため息をついた。
体験していたメンバーは思いだしながら。
初めて聞いたメンバーは驚きながら。
「はぁ〜……何か、悲しいお話ですね……」
「……というわけで、別に幽霊が怖いわけじゃないが
何もできなかったのが悔しくてな。まあ、苦手ってヤツだ」
「ところで、自分は一つ気になったのだが」
「ん?何がだ、クリス?」
「女の子の名前は、『ラン』と言ったな?」
「ああ、そう言ってた」
「それで……その後、キャップたちはリュウゼツ『ラン』を見つけたわけか?」
「ん……確かに、そうだが……それは偶然の一致とかじゃないか?」
「あの……リュウゼツランが花開くのは、何十年もたってから、なんですよね?
逆に言えば、キャップさんたちが守ったリュウゼツランは
ちょうど戦争のころに生まれたという可能性が……」
「けど、子供を植えかえるんで掘り起こしたときには……何もなかったぜ?」
やがてキャップが口を開く。
「ちょっと見てくるか、リュウゼツラン」
- 130 名前:この指、とまれ・12[sage]投稿日:2009/09/22(火) 00:18:07 ID:jVSr/ULC0
- 「……これが、そうなのかなぁ?」
リュウゼツランを囲んで、首を傾げる。
「巫女さん、言ってたよね、命を大事にしろって。
その言葉が頭に残ってて、それでこれを守ったのかな、僕たち」
「さあ、どうだろな……」
と、キャップがまだ小さなリュウゼツランの
芽の先っぽの部分をそっと指でつまんだ。
「何してんだ?」
「アイツ、言ったろ?『缶蹴りするもの、この指とまれ』ってさ。
……あのとき、とまってやらなかったからな」
皆が顔を見合わせ、そして一つ、また一つと手が重ねられていく。
「よーし、じゃあ缶蹴り始めるぞ!」
「ええ!?もう外暗いよキャップ!?」
「いーじゃねーか!……あのときも、今ぐらいの時間だったぜ?」
「しょうがねーなキャップは……」
皆が原っぱ目指して走っていく。あの日の、子供だったときと同じように
「……よーし、次だ!『かーくれんぼすーるもーのこーのゆーびとーまれ!』」
あの日と同じように、掲げた指に重なる手のひらがあった……
- 131 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 00:21:34 ID:jVSr/ULC0
- 終わり。
ゲームではあまり生かされなかった百姉の苦手設定から。
1の「3月14日」は「10日」の間違い。
ホワイトデーだろそれは……
- 132 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 00:28:57 ID:VZUA7rzA0
- 乙だったな
クッキーが命じる!全力で休め!
- 133 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 00:33:46 ID:oiYfCzUwO
- フハハハハハハ!!!!大義であった庶民よ!!
この我が直々に乙してやろう!!
- 134 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 00:40:50 ID:ApDWLzWC0
- 乙
どう読んでもひなのんな巫女さんが超カッケー
- 135 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 01:50:50 ID:0WWU+DOUO
- お疲れ様
百代らしさが出て良かったよ
- 136 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 05:23:03 ID:95v8ONGy0
- 乙
っていうか、この風間ファミリーなら小雪も救えていたかもな…
- 137 名前:不死川大和の野望[sage]投稿日:2009/09/22(火) 09:36:24 ID:vUwFkUtW0
- 不死川ルート、捏造してみたので投下
- 138 名前:不死川の野望1[sage]投稿日:2009/09/22(火) 09:37:35 ID:vUwFkUtW0
- 「で、不死川家の執事服はコイツか?」
俺こと直江大和が夕暮れの川沿いでスカウトを受け、その足で着いてきた不死川宅。
仕事着や勤務形態の説明など先輩執事たちがするのかと思ったが、どうやらスカウトした張本人の不死川心が御自らして下さるらしい。
彼女も結構、舞い上がっているのかもしれない。
「うむ。日本の名家たる不死川の家では和装じゃ。
平服は袴、礼服は紋付袴を着用することとなっておるのじゃ」
「着付けに慣れるまで時間がかかるだろうから、暫くは先輩の手を借りることになるな。あと呼び方は心お嬢様でいいのかな?」
「…此方への呼び方か?まぁそれが妥当じゃろうな」
かくして不死川家執事としての新しい生活が始まったのだが、…仕事は正直、ヌルい位だった。
「大和〜!此方と遊ぶのじゃ!」
基本、心が起きている時は近くに侍っていれば良いだけであり、一緒に遊んで、一緒に勉強して、格闘訓練を受け、稀に不死川家の雑務を手伝う程度。
心は少々我儘な面もあるが、基本的に姉さんほどの無茶振りはしない。
そのため、空いた時間を自分の勉強の為に廻せることができた。
更に当主である心の父親にも目をかけて貰えたため、政界、財界の有力者達との会談の際に立ち会わせる機会さえ作って貰えた。
OJTで政治を学べたことは、俺にとって目的以上の大きな糧となった。
学校も、むしろ一緒に居られる時間が多く取れるという理由で通学を許可された。
彼女たっての希望でSクラスへの移籍するということ、また不死川家の慣習として袴着用(授業も勤務の一環と認めて貰えた)が条件ではあったが。
袴姿での登校は少し恥ずかしいものもあったが、こっちも馴れた。
…というか九鬼のタキシード姿とかあずみのメイド姿とかマルギッテの軍服姿を見慣れてしまったので、正直どうでもよくなった。
- 139 名前:不死川大和の野望2[sage]投稿日:2009/09/22(火) 09:38:53 ID:vUwFkUtW0
- 懸案事項だった金曜集会への出席だが、これは意外とすんなり解決した。
俺とまゆっちの友人ということで、風間ファミリーからも友好的に受け入れられており、オブザーバーとしての参加権が得られたことで。
お馬鹿で我儘なお嬢の加入は二人目だったため、仲間たちからの反発はそれほど無かった。
京の嫉妬交じりの粘りつく視線も、まぁ想定の範囲内だろう。
それ以上に、心が非常に喜んでいた事も意外だったが。
ただ、彼女にしてみれば、まゆっちに続く『友達』が出来たことが嬉しかったのだろう。
さらに風間ファミリーとの交流の影響で選民思考がかなり薄れたらしく、最近は機会があればFクラスに遊びに行きたがる様子すら見せている。
きっと『友達』の数はどんどん増えていっているのだろう。
.................................................................................................................
やがて数ヶ月が経過したある夜。
俺は膝の上に心を乗せて、一緒にDVDを見ている。ちなみに見ているDVDは大和丸夢日記。
今見ているストーリーは主人公が助けた町娘と恋に落ちる話であり、キスシーンの辺りからちらちらと心が俺の様子を伺っている。
自分で言うのもなんだが、凄い好感度だ…。
そのうちDVDは停止さえたものの、心は俺の膝から降りようとせず、彼女の手も俺の服の袖を掴んだままだ。
やがて口を開き、ぽつりぽつりと話し始める。
「此方はお前に感謝しておるぞ、大和。お前のお陰で世界を広げられた。友達の輪も広げられた。
…それから、父上から此方に話があったのじゃ。お前を不死川の婿養子とし、此方がお前に嫁ぐという話が。
これがお前に対する礼になるか判らぬが…此方もお前に全てを捧げたい」
彼女の瞳はまっすぐ俺を捕らえている。
自分を慕ってくれた弓使いの少女にも、負けないくらいの熱い情熱と信頼を秘めて。
「…心お嬢様…。俺は…。」
…折角のチャンスなのに、ここに来て迷いが出てしまった。多分、俺は彼女の事が好きになり始めている。
最初は彼女を利用することだけ考えていたのに、最近は損得勘定に躊躇いすら覚えている。
そんな俺の様子を見透かしたか、心は俺の頬に手を伸ばしてきた。
- 140 名前:不死川大和の野望3[sage]投稿日:2009/09/22(火) 10:21:19 ID:vUwFkUtW0
- 「此方は人を見る目はあるつもりじゃ。お前の目には隠しきれぬ野心が燃えておる。
…じゃが、その宿願を果たす為に不死川の力が欠かせぬのじゃろ?
此方もお前と共に歩んでやろう。…それが此方の、お前に対する愛じゃ」
その一言で吹っ切れた。ここまで感づかれているなら隠す必要もない。
しかもこれだけの覚悟を聞かされたなら、揺らいでいた決意も固まってしまう。
「心お嬢様…。いや、心…。俺と一緒に来てくれ」
俺の返事に満足したのか、心は満面の笑みを浮かべた後に眼を閉じて唇を軽く突き出してきた。
俺はその唇を奪い、そのまま彼女を抱き上げて寝室に向かう。
彼女の望みどおり、彼女を貰い受けるために。
.................................................................................................................
この数ヶ月で和装には慣れたつもりだったが、振袖の方は勝手が判らない。
「大和、お前は待っておればよいのじゃ。…というか恥ずかしいから脱がそうなどと考えるな」
個人的には脱がしてやりたいが、その為には振袖の脱がし方と畳み方も覚えないといけないな。
…こんなことを考えている傍で、衣ずれの音とともに、彼女の肢体が露わになっていく。
粉雪が降り積もったような、キメ細かくシミ一つない肌。
控えめな胸周り、茂みすらない秘部と小さく可愛らしいお尻。
ただ、脱いだまでは良いが、そのまま赤面して固まってしまった。
…男なら、ここでリードしなきゃ。
- 141 名前:不死川大和の野望4[sage]投稿日:2009/09/22(火) 10:24:22 ID:vUwFkUtW0
-
「おいで、心」
「う、うむ」
おずおずと、俺の腕の中に入ってくる心。
「ちゅ、むぅ」
再び口付けを交わす。
「心…。可愛いな」
「む〜。そんな事は当たり前なのじゃ」
照れながらも、上目遣いで見上げてくる。
さらに口付けを交わしつつ秘所に手を伸ばすと、十分に濡れていた。
.................................................................................................................
やがて情事の後…。
俺の腕枕で安らいだ表情を浮かべていた心が、
「そういえばお前の夢を聞いていなかったの。…不死川の力を使って何を目指すのじゃ?」
彼女は、俺のパートナーとして生きる決意を示してくれた。
俺も腹の内を曝け出さないと、アンフェアだろう。
「この国を変えたい」
俺の言葉に、彼女は顔を綻ばせた。
「なるほどの。確かにこれは不死川の力を持ってしても難題じゃの。
…じゃが此方も力を貸そう。ファースト・レディになるのも悪くないのじゃ」
満足気な微笑みはやがて眠たげな表情に変わり、やがて瞼が落ちて安定した寝息が聞こえてきた。
やがて彼女が眠りに落ちたのを確認した後、俺も眠りに落ちる。
あと数日後には、俺が不死川の次期当主として過ごす日々が始まる。
まだ自分の志には程遠いが、これから先、共に歩んでくれるパートナーが居る以上、きっと果たすことが出来るだろう。
<了>
- 142 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 12:00:12 ID:VZUA7rzA0
- 乙なのじゃ
- 143 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 12:53:40 ID:5mzlEMBR0
- 同じく乙なのじゃ
- 144 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/09/22(火) 16:15:46 ID:CaglcjxB0
- 乙です。大和さん、がんばって下さい。
- 145 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 18:22:41 ID:0WWU+DOUO
- 乙なのじゃ
- 146 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/22(火) 20:33:31 ID:f3vX5aLd0
- 乙
心ルート妄想も色々楽しそうだなあ
- 147 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/23(水) 00:54:18 ID:GEcX3FIQ0
- おお! いつのまにかSSスレがある!
どの作品も面白かったですはい。
- 148 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/23(水) 04:13:56 ID:NTM1A0mwO
- 恐らく複数名書き手がいるのに、どれも、ある程度読めてレベル高いよな
- 149 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/23(水) 10:59:32 ID:KFRCRENs0
- おお、結構書く人がいる!!
おもれーーー
- 150 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/23(水) 23:34:21 ID:Q2whoLKy0
- アフターリュウゼツランの辰子物を捏造したので投下
- 151 名前:ニンジンを巡る愛憎1[sage]投稿日:2009/09/23(水) 23:36:34 ID:Q2whoLKy0
- あのカーニバル騒動から4ヶ月…。冬の空気が漂い始めた昼下がり、俺は川神院に向かっていた。
「やっと来たか、舎弟」
「やっほー大和君」
道着に身を包んで一瞥をくれる姉さんと、ぼんやり手を振って俺を迎える辰子。
二人の中央に鉄心のジイさんが陣取り、周囲を取り囲むようにルー先生をはじめとする師範代連中が張り付いている。
きっと審判と、リングサイドを取り囲む結界役なのだろう。更にその外側に、観客の風間ファミリーと見学の修行僧たち。
ちなみに亜巳と天使はそれぞれバイトとゲーセンに行っているらしい。
暇と体力を持て余した姉さんが辰子との勝負をジイさんに直訴、現在の師であるルー先生と相談の上、本日手合わせを行うこととなった。
カーニバルの際に激闘を繰り広げた二人だが、今回も名勝負になるに違いない…。…そんな期待を胸に抱いてここまできた訳だが。
「おーい、板垣辰子ー。起きてるかー?」
「Zzzzzzzzz」
うん。片方のモチベーションが徹底的に低くて、まるでかみ合っていない。
「辰子よ、お主もう少しやる気をだしてくれんかの」
「えー。痛いのやだよー」
修行嫌い、組み手も嫌いなの相変わらずっぽい。戦えば強いのに、好戦的でもないのは本当に姉さんと対照的だ。
ただ鉄心さんは納得できなかったらしく、思わぬ解決策をぶちあげてきた。
「なら提案じゃ。勝者は観客に来ておる直江大和を、24時間好きにできる権利を授けよう。…こうでも言わんとやる気を出さんじゃろ」
「!!!!」
なんつー事仰るのだこのジジイ!!
「断るッ!!大和は私のモノーー!!」
京さん、なぜ貴女が返事してるのですか?ちなみに俺は京ルートにいってないので、貴女のモノではないです多分。
一方リング内では…
「大和君…。うん!やる!!」
凄い勢いでテンションが最高潮まで上がってる辰子と…
「アレは私のモノだが…。でも本気で戦えるなら…。それに勝てば何ら問題ないわけなんだし…。
よーし、良いだろうジジイ!!受けて立つ!!だが大和は私のモノだ!!」
どうのこうの言いつつ、やっぱり燃え上がる姉さん。
- 152 名前:ニンジンを巡る愛憎2[sage]投稿日:2009/09/23(水) 23:38:37 ID:Q2whoLKy0
- 二人を脇目に、取り合えず審判に異議申し立てを行っておく。
「えーと、俺に拒否権とかあります?」
「決闘後に勝者と交渉する権利なら与えよう。お主の武器は頭脳と弁舌じゃろ。これも川神魂じゃ」
「そう思うなら、なんで俺から目を逸らしてるんですか!?」
第一、言葉で物事が解決するなら食物連鎖なんて存在しないのですよ?
野獣じみた殺気と欲望を丸出しで対峙している二人をどうやって舌先だけで丸め込めと?
「ふふー。大和君とデートしてー大和君とご飯食べてー大和君とお風呂に入ってー大和君とエッチしてー大和君と添い寝するんだー」
「…ふふ。徹底的にパシらせるのも良いかもしれないし、財布が空になるまで奢らせるのも良いよなー。
あ、でも爛れた性活を送るのも悪くないなー。キャップもタッちゃんも排除しとけば問題ないし」
コレだけ聞いても止める気しないのか、ジジイ。
................................................................................................................
夕闇近づく頃、勝負の行方は下馬評を覆して板垣辰子が川神百代を打ち倒す結末となった。
解説のルー先生によると、辰子の格闘技術の急激な向上で効率的に戦えたことが勝因とのことだ。
カーニバルの際には姉さんと膂力だけで死闘を演じた彼女だが、効率的な攻撃と防御を覚えたことで大番狂わせに至ったのだと。
ともかく姉さんのガードを連続攻撃で崩し、最後には自慢の怪力でKO勝ちを収めたことは相当な衝撃だった。
かくして俺は辰子にドナドナされることとなった。
ハンカチ噛みしめて睨んでくる京、ハラハラした表情のまゆっち、何となく腹立ち気なクリスと、武士娘たちの視線が痛い。
ワン子?姉さんを解放しつつ辰子にガルルと威嚇してるさ。…俺込みで。あぁ24時間後に、家に帰るの怖いかも。
そんなこんなで、るんるんと鼻歌を歌っている辰子に手を引かれて着いた先は、工業地帯の中にある板垣家。
板垣姉妹は川神院に住み込みの生活を送っているが、周囲の住民が相変わらず支援する形でこの家の契約は続いているとのことだ。
- 153 名前:ニンジンを巡る愛憎3[sage]投稿日:2009/09/23(水) 23:40:29 ID:Q2whoLKy0
- 「あ〜。やっぱり自分の家って落ち着くよねー」
「確かにそうかも。…この家に来るの久し振りだな」
「夏に大和君が来てた時は、本当に楽しかったなー。皆居て、大和君も居て、のんびり過ごせてー。
今の川神院での生活も悪くないけど、またいつか、ここで皆と過ごしたいんだ。…大和君とも一緒に」
「辰子…」
「…うん。大和君も家族になる事を考えててくれたら嬉しいな。…お腹、空いたよね?今、ご飯を作るよ」
少し暗くなった空気を振り払うように、辰子は台所へ向かう。
やがて食卓に並んだ夕食。出汁の効いた味噌汁に、鶏の照り焼き、小松菜の御浸しに即席漬け。
相変わらず旨い料理を出して貰えて何よりだが、辰子の顔は曇ったままだ。
「…やっぱり寂しいよ、大和君。ここには私達しかいないよ」
心根は優しく、家族想いな彼女にとっては堪える状況ではあるだろう。思わず、彼女を抱き寄せていた。
「…でも、俺が居るだろ。亜巳や天使だって直ぐ近くにいるんだ。竜兵もそのうち帰ってくるさ。
何ならずっと抱きしめてやるさ。…24時間限定だが」
「あー。そのコースお願い。…ありがとね、大和君」
そのままキスを交わす。さっき食べた味がする辺りロマンの欠片もないが、それでも彼女の想いが伝わる情熱的なキスだった。
「じゃ、風呂でも沸かして一緒に入ろうか?」
「いいねー。でも前みたいに逃げちゃやだよー」
「あー。前みたいに辰子が意識飛ばすまで抱いてあげるつもりだけど、今度は逃げない。
腕枕とお目覚めのキスもコースに入ってるからな」
................................................................................................................
そして翌朝、身体と唇を包む柔らかい感触。目を開けると、辰子の笑顔があった。
「あー。大和君、おはよー」
「うん。おはよう」
穏やかにキスを交わした所で、辰子は朝食を作るため、台所に姿を消した。
結局、この日は一日ほとんど、彼女を抱きしめながらのんびりと過ごした。
- 154 名前:ニンジンを巡る愛憎4[sage]投稿日:2009/09/23(水) 23:42:25 ID:Q2whoLKy0
- やがて夕暮れ…。俺達は川神の市街地を歩いていた。それぞれの今の居場所に戻るために。
「これから辰子は川神院に戻るんだっけ?…また遊びにいくよ」
「うん、待ってるよー」
分かれてからも暫く手を振り続けてくれた辰子を背に、やがて帰り着いた我が島津寮。
「ただいまーと。っ!!?」
自室の扉に手をかけたところで強烈な悪寒が俺を包む。…中に、誰かが居る!?
思わず後ずさりした時に、何か柔らかいものにぶつかる感触。
ただしこの暖かさと、圧倒的なプレッシャーはただの物質からは放たれることはまず無い。
「おかえり。大和」
「タ、タダイマ ミヤコ」
すっと後ろから伸ばされた手に抱きしめられる。背中に顔を押し付けられ、匂いを嗅がれる。
「…あの女の臭いが付いてる。上書きしないとね。…あとモモ先輩も中で待ってるよ」
扉越しに感じる濃密な気魄。…ドドドドドドドドという擬音まで目に見えているのは気のせいだよな?
恐怖に竦む俺の身体を、京が部屋の中に押し込む。
…中にも飢えに飢えた獣が居た。前門の虎に後門の狼か…。
「おー帰ったな弟。ヤツには24時間取られてしまったから、私はそれ以上に犯ってやる。
というか他の女達に出せないくらい徹底的にしぼりとってやるー!」
…結局、俺が開放されたのは36時間後に迎えた朝の事。ここまでやって、ようやく敵勢力を沈黙(絶頂および失神)させるに至った。
冬休み期間中で本当に助かった…。
なお、姉さんの戦闘衝動を抑える事、さらに辰子の修行への都合が良いと判断した川神院上層部の判断というかジジイの独断によって、
姉さんと辰子との対戦は月一間隔で行われることになった。
その度に俺は生贄として召喚され、その度に勝者にドナドナされる事に…。
「あー大和君!今日も頑張るからねー」
「やらせん!舎弟は私のモノだ!!」
<了>
- 155 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/23(水) 23:49:27 ID:oxMZepER0
- 乙じゃ
- 156 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/23(水) 23:57:48 ID:kKlDYxzR0
- 乙である!
- 157 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:03:31 ID:zcDBd6Xy0
- ウメせんせー投下
- 158 名前:ウメ先生の憂鬱・1[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:06:34 ID:zcDBd6Xy0
- 「おや……」「む……?」
宵の口の川神駅前、商店街。珍しい組み合わせの二人が出会った。
「マルギッテ、珍しいな、こんなところで」
「小島先生こそ、このような場所で何を?」
「視察だ。夏だからといって、羽目を外しすぎた生徒がいないかどうかな」
「ご苦労ですね」
「マルギッテは、島津寮に行っていたのか?」
「ええ、クリスお嬢様に届けものをして、基地に戻るところです」
「そちらも、お目付け役ご苦労なことだな。
もっとも、クリスは真面目だから、お目付けが必要とも思えんが」
「ええ、お目付けというより、悪い虫がつかないように、という護衛のようなものです」
「悪い虫、か……つくだけマシな気もするが」
ため息をつくウメ先生28歳独身・彼氏いない歴=年齢。
「どうかしたのですか?……こう言ってはなんだが、貴方らしくない」
「ああ、うむ……こう、見まわっているとな、色々考えてしまうのだ」
「?何かあったようですね」
- 159 名前:ウメ先生の憂鬱・2[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:10:10 ID:zcDBd6Xy0
- 「お……なんだ珍しい組み合わせだな。何やってんだ?」
「ん?……おお、忍足か。いや、たまたまバッタリ会ってな」
TシャツにGパンというラフな格好の忍足あずみという、さらに珍しい顔が加わった。
「そちらこそ、英雄の供をしていないのは初めて見ます」
「うむ、メイド服以外の忍足は初めて見るな。休暇でももらったか?」
「ああ、英雄様は今日明日で、九鬼財閥の人間ドックに入られててな。
今は医療スタッフがつきっきりになってる。その間、専属のアタイは休みなんだが……」
「どうした、浮かぬ顔だな?」
「正直、休みをもらってもどうしていいかわからなくてな……
酒でも飲もうかと出てきたってわけだ」
苦笑いを浮かべるあずみ。
「酒か……忍足なら、飲酒もかまわんが……」
「あー、そうだ……どうせならウメちゃんとマルもつきあえよ」
「ウ、ウメちゃん!?おい忍足……!」
「あーいいだろ呼び方ぐらい、かてーコト言うなよ……マルは?」
「貴方にマルと呼ばれるのは釈然としないが……
小島先生とは話をしてみたいと思っていた。つきあおう」
「んじゃ決まりな。たまにはこういうのもいいだろ」
- 160 名前:ウメ先生の憂鬱・3[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:14:15 ID:zcDBd6Xy0
- こうして、妙齢の美女3人の突発飲み会スタート。
「……とはいったものの、この辺の飲み屋よく知らないんだよなアタイ」
「それなら、私に任せておけ……そうだな、和泉家あたりでいいか」
「意外です。詳しいのですね」
「まあな、けっこうこの辺は飲み歩いている」
「へえ……お堅いばかりかと思ってたぜ」
「私だって、生身の人間だ。酒を飲みたいときもあるのさ。
生徒たちには、そんな所は見せられんがな」
「いや、アタイらも生徒だけどな」
ウメ先生の引率で商店街を歩き出す3人。
「ここだ」
「……って焼き鳥屋かよ!」
「ん?焼き鳥は嫌いか?」
「いや、そういうわけじゃねーけど……
女3人なんだし、もうちょっと小洒落た店とか……まあ、いいか」
「これが日本のクナイペ(居酒屋)ですか……」
「ああ、私のお気に入りの店なんだ。
さ、入った入った」
- 161 名前:ウメ先生の憂鬱・4[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:18:11 ID:zcDBd6Xy0
- お気に入りと言うだけあって、暖簾をくぐって店に入ると
ウメ先生は手馴れた感じで注文していく。
「それでは……乾杯!」「カンパーイ!」「Prost!」
3人がビールの大ジョッキを、グイ、と一気に傾ける。
「んっ……はーーーっ!!」
「お、いい飲みっぷりだねー」
「ハハハ、これは変なところで誉められたな。
……おーい、生大、お代わりだー!」
「ペース早いなー。あ、梅サワーこっちー」
そうこうするうちに、3人とも次第に酔いが回り始める。
「……真面目に仕事一筋でやってきても!男には全然、ぜーんぜん評価されんのだ!
見回りで、学院生のカップルがやたら目について、もう……やってられんのだ!」
「ウメちゃんにはヒゲがアタックしてんだろー」
「いや、あれはない。あれはないわ……」
「ぜーたく言ってんなよー。アタックかけてくれるだけ、いーじゃんよー」
「……男がいない、というのが、そんなに寂しいものなのだろうか……?」
「マルはまだ若いからなー。まだ間に合うから、男作っとけー?」
「作っとけ、と言われても……正直、興味がありません」
- 162 名前:ウメ先生の憂鬱・5[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:21:17 ID:zcDBd6Xy0
- 「興味がないといっても、好みのタイプとかはあるだろう?」
「タイプ……ですか?」
首を傾げるマルギッテ。
「たとえば、年下がいいとか、オジサマ系がいいとか、だな」
「いや……よくわかりません」
「ホンットに、興味ねえのかよ……あ、お前ひょっとして……女のほうがいいとか!?」
そう言いながら、あずみがマルギッテから体を遠ざける。
「いえ、それはもっと理解できません。非生産的です」
「生産的とかいうほうがわかんねーよ!」
「何故です?優秀なオスから遺伝子を受け取り、子孫を作るのが目的なのでは?」
「……すごい考え方だな……まあ、確かにそういう面もある。
だが、伴侶を探すというのは、子孫を作るだけが目的ではないぞ」
「たとえばさー、マルはクリスと一緒にいると気持ちが和らぐだろ?」
「ええ。本当に可愛いらしい。妹のように思っています」
「そういう気持ちにさせてくれる男がいたらなぁ、ってことだよ」
「なるほど……少しわかったような気がしますね」
- 163 名前:ウメ先生の憂鬱・6[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:24:19 ID:zcDBd6Xy0
- 「まあ、マルギッテはまだ若いからな……これからだ、これから」
「後のないウメちゃんは、もうこの際ヒゲでいーんじゃねーの?」
「だから、あれはないと言っただろう!ていうか、後がないとはなんだー!!」
「じゃあー、どういうのがイイのよー、ウメちゃんとしてはー?」
言われてちょっと考えこむウメ先生。
「んー……どちらかというと、年下がいいな」
「おー、いいねー。やっぱ年下を愛でるのがいいよなー」
「うむ。あと、利発なほうがいいな!賢い子!」
「年下で賢い……葵冬馬とか、ですか?」
「あー、あれはダメだ。女性慣れしすぎだろあの若さで。
もっとこう……純情なのがいいな」
「だよなー。年上としては、こっちがリードしてーもんなー」
「それで、素直で控えめだったりすると、こう……可愛がりたくなるなぁ」
「いやー、控えめじゃなくてもいいだろー?ハッキリ自己主張するほうがアタイはいいなー」
「普段が控えめでも、やるときはやる、みたいな感じがいいんだ、私は」
「……総合すると、小島先生の好みは
年下で賢く素直、控えめだけどやるときはやる男の子、と。ふむ……」
- 164 名前:ウメ先生の憂鬱・7[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:27:23 ID:zcDBd6Xy0
- 「まあ、そんなのが都合よくいれば、苦労しないんだがな!おわり!ハハハハハ!」
「いえ、ピッタリなのがいると思いますが」
「ハハハハ……ハ?」
「直江大和が、先生の好みではありませんか?」
「な……!」
「あー、ウメちゃん今ビクッとしたー!図星?図星ー?」
「してない!ビクッとなんかしてない!だ、だいたい直江は私の生徒だぞ!?」
「障害があるほうが燃えるかもよー?」
「か、からかうな二人とも!……私が……直江と、だと……」
「まあ、彼は真面目一辺倒ではないようなので
小島先生には合わないかもしれませんね……小島先生?」
「マズイよな……でも……確かにいいよな、うん……」
ウメ先生は、顔を赤くして、うつむいたまブツブツと独り言を始めた。
「あーあ、ウメちゃんスイッチ入っちゃったぞ。どうすんだよ、マル」
「いいではないですか。具体的な目標があったほうが、張りあいが出るというものです」
「いやでも……年の差が……そりゃまだ自信はあるが……」
ウメ先生の独り言は、しばらく続いていた。
- 165 名前:ウメ先生の憂鬱・8[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:30:26 ID:zcDBd6Xy0
- 翌日。
(あ〜、直江の顔をまともに見られんなぁ……)
自分の教え子を、男として意識していたことを思い知らされ
朝のHRでは、大和の顔を見ないように、目線をあちこちに泳がせたりしていた。
昼休み、気分を落ちつけようと屋上に上がってみる。
(ん?あれは……マズイ、直江と川神百代か!)
「あー、ウメ先生……こんちゃーす」
百代は、気ですでに察知していた。
「あ……ああ、川神か。ちょっと気分転換に、外の空気を吸いに来ただけだ。邪魔したな」
そそくさと退散しようとして、そして思いなおす。
(今までも……こんな風に、逃げていたのだろうか、私は)
ちら、と二人の様子を見てみる。大和とじゃれあう百代。
自分にも、ああいう機会はあったのかもしれない。
ただ、自分はその機会に手を差しださなかった。この機会も、またそうやって逃すのか。
「……ウメ先生?」
年の差とか。立場とか。逃げ出したくなるものはいっぱいあるけれど。
「気が変わった……私も、そこ、いいかな?」
28歳だって、心は乙女。だから、今度は真剣で立ち向かってみる。
胸のときめきが、止められないのなら。
- 166 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:32:43 ID:zcDBd6Xy0
- フツーに恋愛するウメ先生ルートがあってもいいと思った
- 167 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:42:09 ID:Pe3/L8Yo0
- うむ!乙だ!
- 168 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 00:45:53 ID:5xhu+S+c0
- 乙
ラストがOPにかけてあるのがいいな
ババア結婚してくれ!
- 169 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 01:02:45 ID:lLzJPkY1O
- 時間かけてじっくり作ってるのかほんと外れがないな
2人とも乙なのじゃ
- 170 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 04:30:49 ID:STarLDvv0
- 乙や!
- 171 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 09:01:33 ID:syt1TC3fO
- フハハハハハ!!!!
この短期間で2本もSSを投下するとは、やるではないか庶民共!
この我が溢れんばかりの乙を送ってくれるわ!!
- 172 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 11:34:53 ID:la8hBlhp0
- 乙なのじゃ 。
此方も満足じゃ
- 173 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 15:06:24 ID:XACXf3Dc0
- 乙してあげます、誇りなさい。
……辰子かぁいぃよぉ〜梅てんてーかぁいいよぉ〜〜
- 174 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 22:40:00 ID:zcDBd6Xy0
- 釈迦堂さんで一本投下
- 175 名前:追加メニュー・1[sage]投稿日:2009/09/24(木) 22:43:01 ID:zcDBd6Xy0
- 「ビタミンDは……日光に当たらないと欠乏しやすい、か……」
多馬川沿いを歩くワン子。
歩きながら読んでいるのは、栄養学の本だ。
持ち前の集中力で本に没頭していた。
だから、その男がすぐそこに近づくまで気づかなかった。
「よう、久しぶり!……ってほどでもねえか?ハハハ、元気そうだな、一子」
「しゃ、釈迦堂さん!?」
元川神院師範代、釈迦堂刑部が、薄笑いを浮かべて立っていた。
その薄笑いが顔から消える。
「聞いたぜ……試験、ダメだったんだってな」
「は、はい……せっかく、アドバイスもいただいたのに、申し訳ありません」
「アドバイス?……俺、何か言ったっけ?」
「はい、アタシが島津寮で練習しているときに来ていただいて
『初撃に全てを賭けろ』『アギトを完成させてみろ』って……」
「あー、あれか……そんなたいしたこと言ったわけじゃねえよ。
で、師範代ダメになって、今どうしてんだ?」
「今は、管理栄養士になるための勉強をしています!」
勢いこむワン子の言葉に首を傾げる釈迦堂。
「かんり……えいようし?なんだ、メシの献立考える、アレか?」
- 176 名前:追加メニュー・2[sage]投稿日:2009/09/24(木) 22:46:05 ID:zcDBd6Xy0
- 「はい!川神院の食事の栄養バランスを考えて、
基礎体力の向上や、体調管理の面で貢献していこうと思っています」
「へえ……じゃあアレか、もっと野菜食え、とか言われるのか?」
「そうですね、今の川神院の食事は、ちょっと肉類に偏りすぎてるので
その辺も改善していきたいです」
「オイオイ、川神院で俺が気に入ってたのは、メシに肉が多いことだったのによ。
あーあ、これじゃあ、ますます帰りたくなくなっちまったなぁ」
「あ……で、でも……」
ワン子が困った表情になるのを見て、釈迦堂が慌てて言葉を打ち消す。
「ああ、おい、冗談だ。だいたい、破門になった身で、戻れるわきゃねーって。
しかし……そっか、別の道、見つけたんだな」
「はい!あのとき、釈迦堂さんは
『試験が駄目でも柔軟に考えろ』ともおっしゃってくれました。
時間はかかったけど……今は、新しい道に邁進してます!」
「へっ……俺なんかが言ったつまんねぇ事、よく覚えてたもんだ。
お前バカなんだからよ、そんな余計なこと覚えてねえで、なんだ、その……
栄養士の学問でも、頭につめこんどけ」
「はい!ありがとうございます!」
「ま、しょんぼりしてんじゃねえか、と見にきてみたが、これなら大丈夫だな。
あと……お前、男できたろ?」
「うえっ!?どどどどどうしてそんな!?」
- 177 名前:追加メニュー・3[sage]投稿日:2009/09/24(木) 22:50:00 ID:zcDBd6Xy0
- 顔を真っ赤にする一子を見て
かか、と笑い声をあげる釈迦堂はどこか嬉しそうだ。
「ハハハ、体つき見ただけでも、それぐらい、わかっちゃうんだぞー。
……相手はアレか、この間、俺に突っかかってきたニイチャンか?」
「あう……はい……」
「新しい道も見つかった、彼氏もできた。
よかったじゃねえか、なあ!モノは考えようってヤツだ。
さぁて、それじゃ俺ぁそろそろ行くが……達者でな、一子」
「は、はい……あの!」
「んー?」
「釈迦堂さんは、新しい道は、見つけられたんですか?」
「あー、俺ぁ駄目だ。強いヤツと戦ってりゃあ、それでいいってヤツでな。。
もうな、この生き方、この道しか俺にはねえんだよ。
……やり直すには、年食っちまったしな」
「そ、そんなことないです!釈迦堂さん、すごい人だと思います!
あの……もったいないです!釈迦堂さんが、教える側だったら……!」
「……お前だけだなぁ」
「え?」
思いだす。沖縄の頃。川神院に来たばかりの頃。
周囲はいつだって、自分を獣のように見て、恐れ、嫌っていた。
ただ一人、この少女を除いては。
- 178 名前:追加メニュー・4[sage]投稿日:2009/09/24(木) 22:53:05 ID:zcDBd6Xy0
- 川神院に来て、強さだけは認められたが
それは自分の中の獣が認められたにすぎなかった。
師範代になり、ルー・イーと対立したときも
自分と意見を同じくする者たちでさえ
遠巻きにして、近づこうとはしなかった。
そんな自分に進んで接してきたのは、同じように心に獣を宿した川神百代と
この川神一子だけだった。
自分の中の獣を恐れながら
自分と意見を違えながら
それでも、一子は自分に、他の人間と同じように接していた。
(コイツが俺の弟子だったら、違う今があったのかなぁ……)
「いや……何でもねえ。じゃ、あばよ」
「はいっ!……ありがとうございました!!」
背を向けた釈迦堂に、一子が深く頭を下げ礼をする。
振りかえらず、軽く片手をあげてそれに応え
釈迦堂形部はいずこともなく去っていった。
そして、数日後。
多馬川のほとりに、弟子たちに稽古をつける釈迦堂の姿があった。
「さぁて、そろそろメシにすっかぁ?」
「師匠ー、ウチの実戦訓練の相手って、アレどうなったん?」
「ああ、アレな……ちょっとな、予定変わっちまった。
お前にゃ別の相手探すことにしたから、もうちょっと待てや、な」
- 179 名前:追加メニュー・5[sage]投稿日:2009/09/24(木) 22:56:05 ID:zcDBd6Xy0
- 「えー!?なら、また実戦はお預けー!?」
「すねるな。スゲー強いヤツ探してやっから、それまで腕磨いとけ」
「……はーい」
「よぉし、んじゃメシ食いに行くか!」
釈迦堂を先頭に、ゾロゾロと商店街のほうに向かう。
「げ、また梅屋?」
「あ?なんだよ、梅屋サイコーだろ?」
やや不満顔の弟子たちを置いて、さっさと店に入ると食券の自動販売機に向かう。
「へっへっへ、豚丼、豚汁、単品とろろ、っと……
これ、セットメニューにしてくんねえかなー」
「……師匠、その組み合わせばっかりで飽きねーの?」
「んー?……そうだな、飽きはしねえが……」
ポチ
「あれ、師匠でもサラダなんて食うんだ」
「バカヤロ、人間はなぁ、肉ばっか食ってないで、野菜も食わなきゃ駄目なんだよ!
お前らも、サラダ食えよサラダ!」
こうして
釈迦堂刑部の梅屋オススメメニューに「サラダ」が加えられたのであった。
- 180 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 22:57:40 ID:zcDBd6Xy0
- 終わり。
釈迦堂さんもワン子の前ではちょっといい人。恐るべしワン子パワー。
- 181 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 23:06:35 ID:ixEbRKg40
- GJです。
釈迦堂さん、公式サイトで初めて見た時は声のせいかOOのサーシェスみたいな印象だったっけ。
ワン子の前ではちょっといい人なのが良い感じですね。
今からでも遅くない、川神院に戻れるって思えました。
- 182 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/24(木) 23:35:40 ID:LUMkmrav0
- 乙
KOSのときも倒れたワン子気遣ってたね
>恐るべしワン子パワー。
確かにw
- 183 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/09/25(金) 00:38:42 ID:d3l4GhPh0
- ワン子すげー、釈迦堂さんがいい人に見える。
別に悪人ってわけでもないけど。
- 184 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/25(金) 00:46:46 ID:/G16jtis0
- 乙
釈迦堂みて和むとは予想外
しかし執筆速度もクオリティも凄いな
- 185 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/25(金) 00:50:39 ID:dZx+niBw0
- 乙です
次はぜひルー先生の話を
- 186 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/25(金) 01:41:35 ID:RNjaWnLhO
- しゃかどう人間味溢れてるな
乙なのじゃ
- 187 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/25(金) 02:20:47 ID:aslMoQWC0
- 乙、つーかゆっくり休め系
- 188 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/25(金) 23:54:32 ID:lkwu06ZU0
- だが投下する。
- 189 名前:友情の花・1[sage]投稿日:2009/09/25(金) 23:56:35 ID:lkwu06ZU0
- 「あれ、まゆっちは?」
朝の島津寮前。ゲンさん以外は、だいたい皆揃って登校するのだが
今日はまゆっちの姿が見えない。
「まゆっちなら、今日は用事があるとかで早めに出ていったぞ。
……自分が声をかけたら、やけに慌てていた」
「日直だったのを忘れてた、とか?」
「……ならいいんだが」
「ずいぶん気にするではないか。何かあったのか?」
「ちょっと、な」
新しく友達になった大和田さんが
心ない中傷に傷ついていたので
その中傷を流していた中心人物の女の子と決闘をして
相手を瞬殺して病院送りにしたのが、つい先日のこと。
どうもそれから、少しまゆっちの様子がおかしいのだ。
なんというか、元気がない。
考えてみれば、まゆっちも武道四天王の一角。
それが、礼儀とはいえ全力で戦っては
相手は一たまりもなかったはず。
そんな姿を見せられては、周りも畏怖して当然だ。
一人の友達を救うため
他の人間には避けられる。難しいところだな。
まゆっちにも、姉さんみたいな、はっちゃけたところがあればいいんだが……
- 190 名前:友情の花・2[sage]投稿日:2009/09/25(金) 23:59:36 ID:lkwu06ZU0
- そして放課後。
皆ヒマなので秘密基地に集まっていた。
朝から気になっていたことを、フォローのつもりで
相変わらず元気がないまゆっちに尋ねてみる。
「あ、いえいえ、そういうことではないんです」
「あれ?」
「はい。最初は、ああこれでまた周囲から引かれちゃうな、と思いましたが
あれも私ですから……それを隠して受け入れられても、仕方がありません。
何より、今いる大切な友達を守れなくて
それ以上友達を増やせるわけがありませんから」
「おお……偉いぞ、まゆっち!」
「悩んでいたのは……それで、本当に伊予ちゃんと友達になれているのか
それが不安で、確かめていたんです」
「いや、確かめなくても充分に友達になってると思うけど」
「そうは思うんですが、何というか……具体的なものが欲しくてですね。
前にガクトさんに教えていただいたことを、実践してみたんです」
「俺様が?……何だっけ?」
「えっと……」
ゴソゴソとポケットから何か取りだすと、うつむいて顔に何やら手を当てた。
「これです」
- 191 名前:友情の花・3[sage]投稿日:2009/09/26(土) 00:02:42 ID:H+Cu6orx0
- 「ぶっ!?」「ちょ!?」「うお!?」
顔を上げたまゆっちに皆が驚愕。
それもそのはず、可愛らしいまゆっちの鼻から大量に鼻毛が出ていたのだ。
「……何のギャグ?」
手を伸ばして鼻の下に触れる。と、ポロリとその鼻毛が手の上に落ちた。
「あ……」
「え、これ……つけ鼻毛?なんでまたこんなものを」
「えっとですね、以前ガクトさんに、友達とはどういうものか教えていただいて
出ている鼻毛を無視するのが他人、指摘してくれるのが知りあいで
友達とは黙って相手の鼻毛を引っこ抜く、そういう関係だと」
「いやアレはたとえ話だ!わざわざそんなモノ作って実践すんなよ!」
「でも、大和さんは今、抜こうとしてくれましたよ?」
しまった、なんか余計なことをしてしまったっぽい。
「それで、伊予ちゃんがコレを見たら、抜いてくれるかと思い
朝早く学院に行って、見てもらったんですが…抜いてくれなくて……」
「それで、皆より一足先に寮を出ていたのか」
しかしまあ、こんなもの見せられても普通驚くだけだろう。
「なるほど、大和田さんがまゆっちの鼻毛を抜いてくれないんで
まだ友達になっていないんじゃないか、と気を落としていたわけか」
- 192 名前:友情の花・4[sage]投稿日:2009/09/26(土) 00:06:08 ID:H+Cu6orx0
- 「まゆっちは人のいうこと真に受けすぎ」
「いえ、そんな……今だって大和さん、抜こうとしてくれました。
私、伊予ちゃんが鼻毛を抜いてくれるまで、頑張ろうかと!」
そんな頑張り方はやめてほしい。
「……女の子同士だとさ、そういう身だしなみの部分って
親しくなっても遠慮とかあるんじゃないの?」
「いやモロロ、私はワン子が鼻毛出してたら抜くぞ」
「……姉さんはまた特殊だとおも痛たたたたたたっ!?」
瞬間でやってきた姉さんにこめかみをグリグリされる。
「誰が特殊だってー?んー?」
「と、特殊な美少女ということデス」
「そう!私は特殊な美少女!
だから妹の鼻毛だけじゃなくて、風呂で別な毛を抜いたりもするんだー!」
「あわわわ、お、お姉様っ……!」
特殊すぎる。ていうか、ワン子の毛とか抜いてどうしてるんだ。
「と、とにかく……あまり続けても、大和田さんが困るだけかもしれないよ?」
「そ、そうですね……」
とりあえず、あのつけ鼻毛を使うのだけはやめさせておくことにした。
- 193 名前:友情の花・5[sage]投稿日:2009/09/26(土) 00:09:12 ID:H+Cu6orx0
- 翌朝。今日はまゆっちも一緒に寮を出た。
もちろ鼻毛はつけていない。皆で多馬川沿いを歩いていると
「……まーゆっちー!」
遠くで自転車にまたがった女の子が手を振っている。
「あ……伊予ちゃーん!」
ああ、大和田さんか。まゆっちの奇行にもめげずに
声をかけてきてくれるあたり、なかなかタフというか。
そのまま自転車を走らせ近づいてくるが……
「ん?……何か顔違くね?」「何だ……アレ?」
走ってきた大和田さんの鼻の下には
昨日のまゆっちばりに黒々とした鼻毛が伸びていた。
もっとも、昨日まゆっちで経験したので皆さほど驚かない。呆れてはいるが。
「おはよー、まゆっち……あれ?
きょ、今日は……出てない、ね……?」
「はう……あ、あの……伊予、ちゃん……は、鼻が……」
「あ、アハハハハ……
いや、その……このところ、まゆっちが朝会う度に……
ほら、出てたから!なんか、指摘するばっかりでアレかな、とか!
で、その……私も、こ、こんなものつけてみちゃった」
どうやら、まゆっちのと同じようなつけ鼻毛らしい。
- 194 名前:友情の花・6[sage]投稿日:2009/09/26(土) 00:12:17 ID:H+Cu6orx0
- 「黙ってたほうがいいのかな、とか、注意したほうがいいのかな、とか
色々考えたんだけど、よくわかんなくて
もうこうなったら自分も同じになっちゃえ!って……アハハハ」
「伊予ちゃん……ご、ごめんなさいっ!」
「え……何で謝るの?」
友達が恥をかいているときに
その恥をすすごうとすることはできるだろうけれど
一緒に恥をかいてやろう、とはなかなか思わない。
疑うまでも、試すまでもなかったのだ。
大和田伊予は、間違いなく黛由起江の友達だ。大親友だ。
「……もう、必要ないので、とってくださいね」
「わ!?」
ひょい、とまゆっちが早業で大和田さんの鼻毛をとる。
「……これ、もらってもいいですか?」
「ええ!?そ、そんなもの……どうするの?」
「記念にします……ええ、宝物です」
「えー……うん、でもいいや、あげるね!ね、自転車、後ろに乗る?」
「はい!」
呆気に取られた俺たちをおいて
似たもの同士の親友二人は自転車で遠ざかっていったのだった。
- 195 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/26(土) 00:13:29 ID:H+Cu6orx0
- 終わり。
絵は想像しないほうが良いと思われ。
- 196 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/26(土) 00:37:34 ID:1ZwH7MeO0
- 激しく乙
>何より、今いる大切な友達を守れなくて
>それ以上友達を増やせるわけがありませんから
このセリフがよかった
まゆっちカッコイイよまゆっち
- 197 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/26(土) 01:00:29 ID:GeRF1KKR0
- 乙の雨降らせて気象庁ビビらせてみようか
- 198 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/26(土) 01:39:50 ID:IKeh2WAq0
- 乙です
投下量パねぇっす
- 199 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/26(土) 03:38:07 ID:nX4wdZ+f0
- >>195 想像したよっ! ちょっと笑ったよっ! つけ鼻毛ってなんだよw でも
乙してあげます、誇りなさい。
- 200 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/26(土) 18:39:26 ID:566AC3+/0
- 乙です。
まゆっちいい味出してる
- 201 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:25:02 ID:AAvm9tci0
- モロ投下
- 202 名前:モロ改造計画・1[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:28:13 ID:AAvm9tci0
- ユートピア騒動で慌ただしかった夏休みも終わって、新学期。
今日から進路相談が始まっていた。
担任教師との面談なのでけっこう緊張する。
「……師岡は、ゲーム製作会社への就職を第一志望か」
「は、はい……進学よりも、早く社会に出たほうがいいと思いました」
「うむ……ところで、相変わらず、相手の目を見て話せないようだな」
「う……」
「私の目を見ろ、師岡!」
「は、はい!……(チラッ)……(スッ)」
「やれやれ……まあ、こういうものは性分とはいえ
社会に出るなら、治しておかないとな……」
「す、すいません……どうしても、恥ずかしくて……」
「……よし、師岡。明日の放課後、弓道場まで来い」
「え?弓道場、ですか?」
「うむ。そこで、少し話をしよう」
「……(ああ、イヤだなぁ、弓道部って女子が多くて苦手だよ)……」
「返事はどうした!」
「わ、わかりました!」
- 203 名前:モロ改造計画・2[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:31:19 ID:AAvm9tci0
- 「……ってなわけで、明日は放課後、ウメ先生に呼びだされちゃったよ……」
「なんでそんなうらやましい状況になってんだよチクショウ!」
まあウメ先生の言うことはもっともだが
これがモロなんだから仕方がない、と思ってしまうのは
ファミリーだからという甘やかしなのだろうか。
「あーあ、代わってもらえるなら、代わってもらいたいよ」
「俺様だって代わりてえよ!……なあ大和、俺様、モロに変装できないかな?」
「モロがガクトに変装できる可能性と同じくらいの可能性だな」
「まあ、自分のことだし、我慢して説教されてくるよ……」
「ああ、気楽にいけ。話を聞いた限りじゃ、ウメ先生も怒ってるわけじゃなさそうだし」
むしろ、モロの将来を真剣に考えてくれているのだろう。
ここはウメ先生を信頼して、任せておくほうがよさそうだ。
「そうだ!……俺様が付き添うってのは、認められるかな?
言っておくが、決してウメ先生とお近づきになりたいとかそういうんじゃなく
モロが心配だから付き添いたい、とそういう建前で、だ」
「叩きだされるのがオチだからやめておけ」
「ガクトが付き添いだと、まとまる話も壊れるからやめてね」
「俺様のアツイ友情が理解されてねー!」
建前とか言ってる時点で友情でも何でもねーよ。
- 204 名前:モロ改造計画・3[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:34:20 ID:AAvm9tci0
- 翌日の放課後。
(弓道場なんて、あのとき以来だなぁ。京は……来てないのかな?)
弓道場の前で、入るきっかけがつかめずにウロウロするモロ。
弓道部員の京に付き添ってもらえばよかったと後悔したが、後の祭りである。
と、ちょうど良く女の子が一人出てきた。
意を決して声をかけてみる。
「……あのー……」
「あ……師岡、さん?プレミアムな弓道場にご用ですか?」
「え?あ、えっと……ウメ……小島先生に呼ばれて……」
(あれ?この子、なんで僕の名前知ってるんだろ?ウメ先生に聞いてたのかな?)
「小島先生なら、奥で指導中ですよ」
「そ、そう……」
さらにどうしようか迷っているモロに、奥から声がかけられた。
「お、来たか師岡。奥まで上がって来い」
「は、はい……じゃ、お邪魔します……」
「ここだ、師岡。ま、座れ」
道場にあがってみると、奥の一角、畳を敷き詰めた間に
ウメ先生はピシッと正座していた。
その向かいにモロも座る。それだけで、すでに緊張していた。
- 205 名前:モロ改造計画・4[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:37:24 ID:AAvm9tci0
- 「矢場!それと武蔵!ちょっと来てくれ」
「はい、今行きます」「ご用件を伺うで候」
ウメ先生が部員に声をかけると
すぐにはきはきとした返事が帰ってくる。
「あー……矢場は、普通に喋れ」
「えー?……あ、師岡君?今日は見学に来てくれたの?」
「いや、今日はちょっと話をするために、私が呼んだ」
(うわぁ、ウメ先生だけでも緊張してるのに、知らない女の子が二人も!?)
「さて師岡。この二人のこと、覚えているか?」
「え……?」
(そんなこと言われても、知らない……あれ?でもこの人も僕の名前……あ!)
「あの……カーニバルのときに、注意してください、ってお願いした……?」
「そうそう!あのときの」「あのときはいきなり声かけられて、プレミアムに驚きましたよー」
「矢場、武蔵。あのときの師岡、どう思った?」
「え……や、その……本人の前で、ですか?」
「本人にだからこそ、だ」
「やー、照れるなー……えっと……カッコ良かったよ、師岡君」
- 206 名前:モロ改造計画・5[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:40:25 ID:AAvm9tci0
- 「ええ!?僕が……?カッコイイ!?」
(そうか!ウメ先生が、僕に自信をつけさせようとして、こんなお芝居を……)
「……いやあ、お世辞でも嬉しいかな」
「あら、お世辞じゃないですよ?」
「ええ……あんなに真剣な目で見つめられたことって、そうそうないもの。
そうでなかったら、あの話を信じることができないで
結果、街を守れなかったかもしれないわ。
貴方の説得が、街を救ったのよ。これって、カッコイイじゃない?」
「ですよねー。あの目で見られたら、ああ、この人の話、真剣なんだなって思いますよー」
「う……あ、あの時は、その……何とかしなくちゃって、必死だったから……」
「そうだ師岡。あのときのお前は、必死だった」
ウメ先生が微笑みながらモロの肩を叩く。
「そして、あのときのお前の眼差しは、しっかりと私の目を捉えていた。
わかるか、師岡。やれば、お前はできる。できるのだ」
「僕が……やれば、できる?」
「そうだ。
やりたいことがあるのなら、なりたいものがあるのなら
あのときのように、必死になれ。真剣に立ち向かえ、師岡。
……私からは、以上だ。後は、お前次第だぞ」
「は……はい!ありがとうございました!矢場先輩、武蔵さん、ありがとう!」
- 207 名前:モロ改造計画・6[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:43:32 ID:AAvm9tci0
- 「ワン子、ナオっちおはよー」「おはよーチカリン!」「おはよう、小笠原さん」
翌朝。2−F教室。皆の朝の挨拶の声に混じって
「お……おはよう、小笠原さん!」
ひときわ大きな声でモロの挨拶が響いた。
「へっ?……あ、お、おはよう、師岡クン……?」
「委員長、おはよう!」「おはようございます、師岡ちゃん、元気な挨拶でいいですね!」
登校したときにはファミリーの面子だけだったから、いつも通りだと思っていたが
どうも今日のモロはどこか違うようだ。
「おいおい、どうしたモロ。昨日ウメ先生に改造でもされたか?」
「またガクトはそういうこと言う。ちょっと意識改革されただけだよ」
なるほどな。さすがはウメ先生ってとこか。
変わっていくものも、変わらないものもあるけれど
いい方に変わっていくのなら、喜んで受け入れよう。
「ガクトも、意識改革してもらうといいかも」
「マジか。俺様、モテモテになれるか?」
「ううん、女の子にがっつかなくなると思う」
「それじゃ意味ねーんだよ!」
これは……変わったほうがいいのかなぁ。
- 208 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:46:03 ID:AAvm9tci0
- 終わり。タイトルから女装モロを期待した人にはスマンカッタ。
- 209 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:46:56 ID:YGs4xKJo0
- 乙してやんよ
- 210 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/27(日) 00:47:08 ID:wROeRurQ0
- >>208
モロ乙
- 211 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/27(日) 01:38:22 ID:N1P209GF0
- 乙 うまいなー
しかしユミとモロがくっついてしまいそうな……
- 212 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/27(日) 02:36:13 ID:KnBDDVQG0
- 乙。
モロがちゃんと改造されてた。
次はガクトを改造して(笑
- 213 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/27(日) 09:56:11 ID:W+u3BjFf0
- 百代「よーし、では私が改造してやろう」
ゴキッ、ゴキキッ ゴキッ
直江「いや、姉さんのは改造じゃなくて分解だから」
岳人「わかってんなら止めてくれよ!!」
- 214 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/27(日) 15:48:27 ID:61dAYW3w0
- 乙
投下作品のレベルが高いのはいいが
それがハードルになってる気もするな
- 215 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/27(日) 16:39:47 ID:OZ1vKckjO
- プレミアに吹いたわ
qualityをとるか量をとるかってやつか
- 216 名前:九鬼家初めて物語[sage]投稿日:2009/09/28(月) 01:23:44 ID:RRg5B79l0
- ワン子ルートアフターで九鬼とあずみがくっ付いた話しを捏造したので投下
あと、あずみは非処女と想定して書いたので駄目な人、スルーよろ
- 217 名前:九鬼家初めて物語1[sage]投稿日:2009/09/28(月) 01:26:35 ID:RRg5B79l0
- 冬も近づいたある日の昼休み…。校舎屋上にて、俺は相当に珍しい光景を見てしまった。
普段なら傲岸不遜にハイテンション、周りの人間がドン引きするくらいの男が憂鬱な表情でため息をついていたのだから。
「お前、九鬼英雄…だよな」
「いきなりな物言いだな、直江大和よ。我を見忘れたか?」
「…あまりにテンション低いから、やる気のない影武者が来てるのかと思った」
「九鬼は影武者など使わぬわ。刺客が来ても正面から迎い撃てばよいだけだ」
言っている内容は普段と変らないが、やはり言葉に覇気が篭っていない。
「…今のお前に返り討ちにできる能力は無さそうだぞ。何をそんなに悩んでるんだ?」
この俺の発言に固まる九鬼。そして妙にテンパる九鬼。顔を真っ赤にして噛みまくってる。
「ななななな悩みなぞ我にある訳なかろう、ききき気のせいだぞっ!」
把握した。つまり何か悩んでる訳だな。
................................................................................................................
「その、な。…近頃あずみに…あずみに近づかれると何故か動悸が速くなってしまうのだ。今まではこんな事なかったのだが…」
へー。腹黒メイドよ、おめでとさん。お前の主がようやく意識しだしたらしいぞ。
「ふーん。で、それはいつからよ?」
「一子殿に告白した暫く後だ。我が物思いに耽っていたり、落ち込んでいたりすると抱きしめられることがあってな。
その時は心地よかったとしか思っていなかったのだが、最近は胸の鼓動が高鳴って仕方ない…。…何なのだ、これは?」
おー。もしかして、コイツ今頃、性の目覚めが来たのかよ。今の今までキャップ並みだった訳か。
まぁ一子相手のアプローチでも交換日記から交際を始めたいとか、要求してせいぜい抱擁程度だったしな。
「この件、お前の親友の葵冬馬に相談したのか?」
「押し倒してしまえば解決すると言っていた。だが、あずみほどの猛者からどうテイクダウンを奪うか、それが問題だ」
…コイツ、雄しべと雌しべの話し、判ってないのだろうか。
- 218 名前:九鬼家初めて物語2[sage]投稿日:2009/09/28(月) 01:28:28 ID:RRg5B79l0
- 「…とりあえず抱きしめてキスしてやれば、抵抗は弱くなるだろうな」
「…?どういう原理だ?我には判らぬ」
「彼女の事を大切に思っているなら、優しく包み込んでやれ。俺から出来る助言はこの程度かな」
「……わからぬ。だが、心遣いには感謝する」
うぬぅと唸りながら去っている九鬼を尻目に、とある携帯番号に電話をかける。
「忍足あずみだ。何の用だよガキ」
................................................................................................................
「…と、言うわけで、九鬼英雄はお前にときめいているらしい。…押し倒すなら今だぞ」
とりあえず屋上に呼び出したあずみに、事の詳細を話しておく。
「…………なん…だと?」
おぉ。これもまた珍しい。腹黒メイドさんが思春期の少女も真っ青な照れ照れ顔をなさってるからな。
「だってそんな…。そりゃ思わず英雄さまを抱きしめはしたが…。こんな…。…オイ…あんまニヤニヤしてると、殺るぞガキ!」
うん、顔を紅潮させた状態で凄まれても可愛いもんだ。
でも震える手で小太刀を構えるのは辞めて欲しい。刃先が喉元に時々当たってるし。
左右に少々ぶれる分には大丈夫だが、前後にずれたら頚動脈が切れかねないのでまず落ち着いて欲しい。
「…というかお前から押し倒さないと、話しが進みそうにないだろ?九鬼って一子に積極的にアプローチかけてた割には、初心っぽいし」
ここまで言ってようやく正気に戻ったか、ため息混じりにようやく小太刀を鞘に納める。
「確かに九鬼の男子は実技込みで性交渉を教わる教育がある。…だが英雄様は川神に執心だったから先延ばしになっててな」
それは確かに想像が付く。だからこそチャンスじゃないのか?
「…ああ、でもアタイなんかを抱いちゃいけないお方なんだよ、英雄さまは。
アタイは…もう綺麗な身体じゃないんだし、なにより血で汚れすぎてる。…そこまで歳ってわけじゃないけど、英雄さまほど若くもないし」
おおぅ。今度はコイツまで凹み始めた…。ああ判った。…お前も踏ん切りつかないなら、無理やり背中を押すことにしてやる。
最近知り合ったとある財閥のご令嬢。彼女に事情を話し、判断を仰ぐこという形で。
- 219 名前:九鬼家初めて物語3[sage]投稿日:2009/09/28(月) 01:31:38 ID:RRg5B79l0
- そして数時間後の九鬼邸にて…。
「帰ったか、英雄よ」
「姉上…。はい、英雄ただいま戻りました」
「そうか…。では九鬼家長子としてお前に命じる。寝間に行って童貞を捨てて来い」
「…は?」
「お前は想い人が居るという理由でこれまで見送ってきたが、既に振られているなら異議申し立ては聞かぬ。
次代当主たるものが女も知らないとは物笑いの種にされかねないぞ。いい加減、女の抱き方くらい知れ」
唐突な話しに若干の抵抗をするものの、世のヒエラルキーは姉>弟という摂理には勝てず…。
結局、揚羽の言に従い入浴の後に寝間までやって来た英雄。
戸を締め明かりをつけた先には、見慣れた人物が三つ指をついて待ち構えていた。
「…お待ちしておりました、英雄さま」
「そうか…。我の相手はお前か、あずみ」
「はい。不肖なれど、英雄さまのお相手勤めさせて頂きます」
そういいつつ、英雄が身を包んでいたバスローブを肌蹴させる。
「!ご立派に、ございます」
現れた英雄の分身。彼の一物を手に取り、恭しく口付ける。
「ぬ?何をしておるのだ、あずみ?」
「英雄さまの準備をさせて頂いております。今しばらくお待ち下さい」
「そうか。しかし、これは心地よい」
亀頭を咥えつつ、陰嚢を揉む、陰茎をさするといった愛撫のみでアッサリ怒張する英雄の分身。
「では、あずみの中に迎えさせて頂きます。英雄さま、横におなり下さい」
「ああ」
「では失礼します。」
横臥した英雄を跨ぐ形で、あずみが身を寄せる。
「この姿勢の何の意味が?む?」
あずみはおもむろに秘裂に指を伸ばす。クレバスを指で広げ、己の内を英雄の眼前に曝け出す。
「この奥に、子宮がございます。女と交わる際には、この穴に英雄様の男根を差し込んで下さい」
「この中にか。ぬぅ。柔らく、暖かいものだな」
- 220 名前:九鬼家初めて物語4[sage]投稿日:2009/09/28(月) 01:33:28 ID:RRg5B79l0
- あずみの胎内を掻き分け進むうち、やがて奥に届く感触。
「っ英雄さま…。あずみの中まで届いております。この中で精を放って頂くことで、完了にございます。
今回は、あずみに身を委ねて下さいませ…っ」
そう言いつつ、懸命に腰を動かし始めるあずみ。
「だが、あずみが苦しそうではないか?自重せよ」
「ふぅ。大丈夫でございます。はぁっ。」
正直、あまり大丈夫ではなかった。九鬼家に仕えて以来の性交。しかも相手は自分の想い人。
さらに人並み外れた男性器の持ち主でもあるため、精神的にも肉体的にも溶ける寸前。余裕なぞ全くない。
『熱い、大きい…。こんなの…、こんなの初めてだったら壊れてしまう…』
どうにか気をやってしまう前に、下腹部に感じる熱い感覚。射精も終わり、揚羽からの下命は果たした。
英雄から降り、再び着衣を整える。後は、決意した通り九鬼の家を去ることで、全てが終わる。
最後に主に別れの挨拶を述べるため、三つ指をついて頭を垂れる。
「お情けも頂けました。このような女を抱いて下さったこと、今生の宝物にございます。今まで、ありがとうございました」
『アタイの様な下賎な女を抱いたとなったら、英雄さまの経歴に傷つくかもしれない。
護衛なら傭兵上がりというのは箔になるが情婦となると…。もうアタイは九鬼に居てはいけない。
ステイシーも李も成長してる。アタイ不在の場合の指揮権継承も上手く行くだろうから、大丈夫だろう』
そして身を翻してこの場を去ろうとするあずみ。
ただしこの動きを封じる力強い手。導かれるままに、英雄の腕の中に引き込まれる。
「待て、あずみ。…勝手に九鬼の家を出るなどと言うなよ」
「英雄…さま…?っむぅ!?」
想像もしていなかった英雄からの抱擁に、口付け。
「我も決心がついた。まず、我の想いを聞いてからにしろ」
「…ですが、あずみは汚れた女にございます。傭兵に身をやつし、戦場の獣として生きてきました。
この様な下賤な者と情を交わしたとなれば、英雄さまの経歴に傷が!」
- 221 名前:九鬼家初めて物語5[sage]投稿日:2009/09/28(月) 01:35:17 ID:RRg5B79l0
- 激しく首を振りながら、必死に英雄を拒もうとするあずみ。…ここで拒みきれなかったら、もう自分は彼から離れられない。
しかし英雄はそれを押し込む形で力を込めて抱きしめる。
「だから何だ?我はかつてお前に命じただろう?死んでも我の傍を離れるなと。
あの時は主として命じたが、今は一人の男として命ずる。…ずっと我の傍に居ろ」
「…英雄さま!!お慕いしております!!ずっと、ずっとお傍に!!」
あずみの抵抗は収まったが、今度は泣かれてしまった。
『とりあえず、優しく抱きしめろ…だったか?力加減が拙いのか…?ぬぅ、これでも泣き止まぬ…』
とにかく優しくしろという助言を英雄は思い出し、頭を撫でたり背中をさすったりと悪戦苦闘しつつ宥める。
やがて想いの内をぶつけ合った男女は、夜を徹して交わりあった。
................................................................................................................
「へぇ。上手く行ったか」
「ああ!お前には感謝しているぞ、直江大和!!」
翌朝に会った九鬼英雄は、大層ご機嫌だった。…平常時から更にテンション7割り増しくらいで。
「だが我は思ったのだ!あずみのリードばかりを受けるだけでは男が廃る!! そこで頼みがあるのだが、何か良い策はないか!?」
仕方ない。秘密基地にある書籍をいくらか渡しすか。
「では秘蔵の軍略書を授けましょう。今宵25時に川原近くの廃ビル駐車場までお越し下さい」
「助かるぞ直江大和!!…だが何故、白羽扇なぞ持っておるのだ?」
この日以降、九鬼家主従は以前にも勝る親密さを周囲に示していた。
ただし時折、腰やお尻を気にしながら通学する忍足あずみの姿も目撃されたとか。
<了>
- 222 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 02:18:07 ID:mduXiyQ/0
- おお! 軍師大和が大活躍w
乙です
- 223 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 02:27:11 ID:Rvr/b11g0
- だが想定云々というかあずみは公式で処女なんだな…
- 224 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 02:54:39 ID:rfgEXtPh0
- ナイスガイが乙してやるぜ
- 225 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 09:54:50 ID:SlChvbkh0
- 英雄のワン子への惚れっぷりからすると
一生他の女を見ない気もするが乙
- 226 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 14:33:26 ID:665gDoolO
- 公式では絶対できない設定の話読めるのがいいな
- 227 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 19:32:59 ID:23qQtp1i0
- 乙なのじゃ。
次は此方に出番をよこすのじゃ
- 228 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 22:21:18 ID:Z2BzxtAl0
- 乙です
英雄は男性陣の中でも好きな方なので面白かったです
今更だが大和はハーレム状態になれば 新四天王の3人を調教するんだよな
戦力面で恐ろしいことになるな
- 229 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 22:41:23 ID:n+Bjzhf50
- >>228
まて
乙女さんはレオ
揚羽様はレンで決まっている
四天王は2人までだ
- 230 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 22:43:39 ID:mduXiyQ/0
- 新だから百辰まゆっちでっしゃろ
- 231 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 22:59:30 ID:n+Bjzhf50
- エッ…公式で辰子さん四天王入りしたっけ?
- 232 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 23:32:57 ID:mduXiyQ/0
- 2011年時には乙女さんと揚羽様は卒業していて辰子が入っている(マテブより)
- 233 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/28(月) 23:42:21 ID:rfgEXtPh0
- 「今日は……姉さん、君に決めた!」
「ナイスチョイスだな、弟…んーっ」
「あうあう…」
「zzz…」
こうですか分かりません!
- 234 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 00:23:53 ID:+9plQWO80
- 心ルートが存在しないのはきっとバグだ
- 235 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 00:53:50 ID:qtq5g6n70
- ラストストーリー後の小雪アフター投下
- 236 名前:一輪の花・1[sage]投稿日:2009/09/29(火) 00:56:53 ID:qtq5g6n70
- 「榊原小雪に元気がない?」
いきなり俺を呼びだした九鬼英雄の相談というのは
保護している榊原小雪のことだった。
「うむ。元気がないというより、抜け殻になっているというほうが正しいか。
今、あずみと同居させているのだが、休みの日など1日何もしていないらしい」
「あ、それで最近メイドが一緒じゃなかったのか」
「榊原小雪は、我がトーマから預かったようなもの。
何かあっては困るからな。我が一番信頼する、あずみをつけた」
ユートピア事件の責任をとって、刑に服している葵冬馬と井上準に代わり
今は九鬼家で榊原小雪の面倒を見ているとは聞いていた。
俺も、九鬼のところなら大丈夫だろうと安心していたのだが
彼女の心の傷は思ったよりも深かったようだ。
「しかし……何もしないでボーッとしてるぐらいは、あるんじゃないか、あの娘なら」
「何もしない、というのは言葉のあやではないのだ。
食事、睡眠、入浴などは、言われればするそうなのだが
それ以外の時間は、部屋の隅で膝を抱えて、じっと動かないらしい。
動かぬまま、何時間も、だぞ……おかしいであろう」
「そうか……そこまで、か」
「トーマは別れ際に、こう言った。
『知恵を借りたいときには直江大和を頼れ』とな。
それ故、こうして相談しているわけだ。どうだ、何かよい知恵はないか?」
「わかった……少し、考えさせてくれ」
- 237 名前:一輪の花・2[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:00:27 ID:qtq5g6n70
- 「……ってなことを相談されたんだ」
「ふーん……あれから3ヶ月もたって、今さらな気もするけど。大和は、あの子を助けたいの?」
放課後。帰りに京と秘密基地に寄りがてら
昼間受けた相談のことを話してみる。
「……ああ、できるものなら助けたい」
「九鬼くんに頼られたから助けたいの?
それとも、昔助けられなかったから、今、その罪滅ぼし?」
「それも、あるかもしれない。
ただ、九鬼に頼まれようと頼まれまいと、あのとき助けていようといまいと
今苦しんでいると知った以上、俺は手を差し伸べたい」
「……」
「手伝ってくれるか、京?」
「頼まれたからでも、罪滅ぼしでもなくて
大和自身がそれを望んでいるのなら
私は大和のために、何でもするよ」
「……ありがとうな」
「で、具体的にはどうすればいいの?」
「そこなんだよなぁ……」
いつも3人で行動していて、他人があまり入りこんでいない関係だったので
他の2−Sの連中も、よくは榊原小雪のことを知らないのだ。
- 238 名前:一輪の花・3[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:03:30 ID:qtq5g6n70
- 「何か思いつかないか、京?」
似た境遇を経験している京なら、何かわかるかもしれない、と思ったが
「わからないよ。大和がわからないのに、私がわかるわけない」
にべもなかった。
「大和だけじゃない、あの子のことは誰にもわからない。
……あの子のことがわかるのは、この世に二人しかいない」
「!……そうか、そうだよな。
何でこんな簡単なこと、思いつかなかったんだろうな、まったく。
……助かったぜ、京」
「どういたしまして。お礼は大和のホットミルクでいいよ」
「……そうと決まれば手配しなくちゃな」
「スルーしたけど否定しない……前進してる?」
カーニバル直前に板垣家を脱出したその夜
単なる友達の線を半分くらい越えちゃってから
どうも京には押され気味だ。
考えてみれば、あの日、椎名京の手をとった時点で
こういう関係になるのは当たり前だったのかもしれない。
あのときとった手を、今、急に誰かに無理やり解かれたら
京も榊原小雪のようになってしまうのだろうか。
ふと、そんなことを考えたら、何だか悲しくなった。
「……取りあえず、基地のパソコンでネット検索だな」
- 239 名前:一輪の花・4[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:06:32 ID:qtq5g6n70
- 「大和君が面会に来てくれるとは、嬉しい限りですね」
S県K市。収監されている少年刑務所で
俺は葵冬馬と面会していた。
「しかし、その表情を見るに
旧交を暖めに来てくれた、というわけではないようです。
……ユキに何かありましたか?」
さすがに話が早い。
「時間があまりないので用件だけ話そう。
榊原小雪が、精神的に追い詰められている。
どうにかしてやりたいが、何か方法はないか?」
「心配はしていましたが……今、どんな状態ですか?」
忍足あずみに聞いた状況を
細かいところまで冬馬に説明していく。
「……おそらくユキは、私や準のいない今の状況を、認めたくないのでしょう。
何もせずに殻に閉じこもって、私たちが帰ってくるのを待っている」
「……それで、お前たちが戻るまで、精神がもつと思うか?」
「……正直、わかりません。ですが、無理やり殻を壊してはいけない。
自分から、殻の外に出てきてくれなければ」
「どうすればいい?どうすれば榊原小雪は殻から出てくる?」
「一つだけ……効果がありそうなモノがあります」
- 240 名前:一輪の花・5[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:09:34 ID:qtq5g6n70
- 「フハハハハハ!なんだ、そんなものでよいのか!
では、我がいくらでも用意しようではないか!」
翌日、学院で九鬼英雄に面会の内容と
必要なものを伝えると、その場で豪快に笑い飛ばした。
確かに、コイツからすればどうということはないのだろうが
「……それだけでは、足りない気がするんだ」
「ヌ?」
「モノは確かに九鬼ならいくらでも用意できるだろうが
できれば……場所を選びたい」
「場所なら、我が家の庭でもよいではないか。充分広いぞ?」
「いやいや、広さとかじゃなく……この場所でやりたいんだ」
あらかじめプリントしておいた地図を見せる。
「ここは!……なるほどな。だが待て……周りはすぐに一般家屋ではないか。
このようなところでは無理だぞ」
「だから九鬼の力で何とかして欲しいんだよ」
「むう……周囲の土地を全て買収するのは時間がかかり過ぎるな。
補償金で何とかするしかないか?」
やはり金で解決するしかないか?
廊下の真中で、頭を突き合わせて話しこんでいると
「おーい、何やってんだ舎弟ー?」
- 241 名前:一輪の花・6[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:12:35 ID:qtq5g6n70
- 「あ、姉さん」
退屈そうな顔の姉さんに呼びかけられた。
「珍しいのと話しこんでるじゃないか。よ、英雄。揚羽さん元気か?」
「フハハハハハハ!我が姉であれば、無論のこと!」
「そりゃよかった。で……何の話だ?おーしーえーろーよー?」
「イテテテテ、そんなに絡まなくても教えるよ!」
事の始まりから今の問題点まで説明してみる。
「ふーん?」
「……何かいい考えでもない?」
「考え、っていうか……ソレ、私がやってやろうか?」
「……ゴメン、言ってる意味がわからない」
「だからー、本物だったら、そこじゃ無理かもしんないけど
私がやる分にはどこだって平気なんじゃないか?」
「あ!……確かに、姉さんなら……!」
「おい直江、我にもわかるように言え!
どういうことなのだ一体!」
「いや、つまりな……」
- 242 名前:一輪の花・7[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:15:38 ID:qtq5g6n70
- そして次の日曜日。
午後遅く、俺は京と一緒に、榊原小雪を連れて出かけた。
九鬼家を出て、電車に乗り、目的地につくまで
小雪は何も喋らない。ただ黙ってついてくる。
俺たちも、特に話しかけることもなく
そのまま目的地についた。
「ここが、絶好のポイントだ」
少し小高くなった丘にある、神社の境内に陣取った。
京は小雪の背中にぴったりついていた。
やがて日が暮れる。
当たりが薄暮に包まれ、そろそろ予定の時間だ。
「榊原……あっちを見てな」
特に反応はしない。
京が、小雪の向きを俺が示した方向に変える。
ただ、うつろな視線が宙をさまよう。
それを確認して、待機しているはずの姉さんにケータイで連絡する。
「姉さん、お願い」
『ああ!派手に行くぞ!』
そしてその直後
ヒュルルル
音をたてて、夜空を光の玉が駆け上がっていった。
- 243 名前:一輪の花・8[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:18:48 ID:qtq5g6n70
- ド、パーン!!
寒空にうちあがり、凛と咲く大きな花が一つ、俺たちの上に花開く。
「あ……」
小雪が、声をあげる。
それを掴もうとするように、ふらふらと手を差し伸ばす。
「見えるか……ユキ。花火だぞ……
お前と、冬馬と、準で、いつも一緒に見ていた、花火だ。
出会って最初に三人で遊びに行った日に見た
お前たちが大好きだった、花火だ!」
「あ、あ、あ……」
ド、パーン!!
姉さんが、次々と、気合を込めたエネルギー弾を夜空に打ち上げる。
それは空高くで弾け、花火と化していた。
民家が近い、この場所で、花火を打ち上げるための苦肉の策だった。
「あっちの建物にな、冬馬と準がいるんだ。
わかるか?今も、一緒に花火を見てるんだぞ!
お前と一緒に、花火を見てるぞ!!」
指し示した先には、二人のいる少年刑務所の建物。
ここでなら、同じ空の下、また三人一緒に花火を見られる。
ここでなければ、意味がないのだ。
「うぁ……ああ、あああああ!!
と…トーマァー!!……じゅんー、うぅ〜!!う、うああああああぁぁぁ!」
- 244 名前:一輪の花・9[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:21:53 ID:qtq5g6n70
- 殻が、破れた。
二人の名前を呼びながら、小雪は子供のように泣きじゃくる。
その瞳は打ちあがる花火を見逃すまいと
涙で溢れさせながらも見開いたまま。
「……冬馬と準から、伝言だ。
『私たちも頑張っています。だから、ユキも頑張ってください』」
「うあ、あああ……が、あ、……がんば、る……
ボ、ク…う…頑張るよー!トーマァー!!準ー!
ボクも、頑張るからーー!!」
届いた。届いてくれた。
京が顔を背ける。その頬が濡れて光っている。
自分とどこか似た娘が、辛いどん底から
必死に這いあがろうとする姿に涙をこぼしていた。
まだこれで終わったわけではないけれど
でも、これで始めることができる。
ケータイで、姉さんに付き添っているワン子を呼びだす。
「姉さんに伝えて。ありがとう、終わったって」
『了解!お姉様ー、大和がもういいってー!』
『よーし、それじゃ最後は特大で……はああああああああああっ!!』
ヒュルルルルル……ドッッ…パァーン!!
冬の花火が、ひときわ大きな花を夜空に開かせていた。
- 245 名前:一輪の花・10[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:25:03 ID:qtq5g6n70
- その後
少しずつ、榊原小雪は感情を取り戻していった。
最初は泣いてばかりではあったが
段々と、笑ったり、怒ったりするようになった。
あと、どういうわけか京と仲良くなったらしい。
「ボクが同じになったからねー」
相変わらず、言っていることはよくわからないが。
あと、俺にもなつきだした。
ときどき、京と張りあっている。
「これはもう私の!ユキはトーマと準が帰るの待ってなさい!」
あの花火を見ていたときに
一緒に涙を流していた京の姿はもうない。
あの姿に、ちょっと京を見直したのだが
そんなこと言うと押しきられそうなので黙っている。
「ケチー!」
「その前に、まだ京のものになったと決まったわけじゃないんだが」
「ほら見ろー!ほら見ろー!」
こうして騒がしくすごしているうちに、冬馬と準も帰ってくるだろう。
そうすれば、俺と京のお守り役もおしまいだ。
それはそれで、寂しいような気もするが
今はせめて、この時間も思い出の1ページになるようにと願う。
あの美しい、一輪の冬花火とともに。
- 246 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:26:52 ID:qtq5g6n70
- 終わり。
姉さんにエネルギー弾撃たせたのは
自分にとっても苦肉の策。
- 247 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:28:42 ID:a0i/ego30
- 全力で乙せよ!
- 248 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:50:57 ID:OkUw2rpl0
- 本スレでも難しいと散々言われていたテーマに
敢えて挑んだその姿勢、乙!!
出来も素晴らしかったぞい。
- 249 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:52:18 ID:qB/Q2Ec40
- SSに泣かされるとは・・・・゚・(つД`)・゚・ 乙
- 250 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:53:27 ID:Bv0Oj18Q0
- 乙だ!!
しかしほのぼのも素晴らしいが、切ないのもこれまた凄いとは
- 251 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 01:59:47 ID:3vOaGcIU0
- いいよいいよすばらしいよ乙です!
- 252 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 03:43:54 ID:uoQo9GjPO
- FDの簡易バレ見てるみたいで嬉しい
小雪の日常をもっとみてみたいなぁ
乙なのじゃ
- 253 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 08:59:53 ID:2joRTNs60
- 難題に対して改変も使わず乙といわざるを得ない
GJ!
- 254 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/09/29(火) 11:17:07 ID:WskLSf0c0
- 乙
全俺が泣いたぜ……
>寒空にうちあがり、凛と咲く大きな花が一つ、俺たちの上に花開く。
これ、EDの歌詞のもじりなんだな
芸が細かいぜ
- 255 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 16:59:43 ID:+9plQWO80
- 乙なのじゃ。
つ、次こそは此方に出番を
- 256 名前:不死川大和の外伝 心、ろくでなし達と交わるの巻[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:06:24 ID:Bv0Oj18Q0
- >>137の外伝的なものを捏造してみたので投下
時間軸としては大和が執事になりたてた位を想定
- 257 名前:不死川大和の外伝 心、ろくでなし達と交わるの巻1[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:07:35 ID:Bv0Oj18Q0
- 不死川家の執事を始めた初秋の、とある昼下がり…。2Fの教室にて俺は寛いでいた。
「やっぱ古巣の空気っていいな。重くなくて良い」
「確かにFクラスのヌルい雰囲気いいよなぁ。…いいんちょさん…はぁはぁ」
以前から癒しを求めて出入りしていた井上準と一緒に。
「いやだからその呼吸、犯罪者だって!!警察呼ぶよ!?」
今日もモロの突っ込みは冴えていた。
「えーと、117…と」
それは時報だ、ガクト。
そんな会話を交わしているうちに、ガクトがとあるものに気付いたらしい。
「なぁ大和…。アレ、何だ?」
俺の視界にもチラチラ映る桃色の何か。おそらく『お嬢様』が暇を持て余して付いてきたのだろう。
周囲を見渡しつつ、扉の隙間からこちらを覗き、また周囲を警戒している。…取って喰われたりせんから、安心して来れば良いのに。
「あぁ。彼女だろうな…。心お嬢様、遠慮してないでこっち来いよ」
「にょわっ!きゅ、急に話しかけるでないわ!というか遠慮なぞしておらぬ!」
激しく否定はするものの、妙におずおずと教室に入ってくる心。その姿に騒然となる2Fの面々。
「な、ナオっち?なんで不死川まで付いてきてるの?」
「そうだぜ!というか、なんでそんなに仲よさげなんだ!?」
「振袖美人なぞ、薙刀の使い手しか俺は認めん!!」
そりゃ反2Fの急先鋒だった人物だからな。でも一応主だし、フォローしとくか。
「あぁ俺、不死川家の執事やってるんだけど、部下の素行が気になって来たんじゃないかな?
あと心お嬢様とはこの夏に色々あってな、その結果スカウトされたとだけ言っとく」
ちなみにスグルは面倒臭いからスルーしておく。モロ、暇だったら付き合ってやれ。
- 258 名前:不死川大和の外伝 心、ろくでなし達と交わるの巻2[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:08:52 ID:Bv0Oj18Q0
-
「あー直江君、久し振り。元気してる?そういえば栗納豆の美味しいのがあったんだ。食べる?
あ、不死川さんも来てたんだ。お近づきの印にどうかな?」
蜂の巣を突いたような騒ぎの中、マイペースなのはクマちゃん。2S生徒を客としてもてなしてくれるのは、結構、稀有な存在だよな。
「栗納豆!?秋の和菓子の王様!!…じゅる」
「ほう、犬。美味しいのか?」
こらワン子。お前に出された食べ物じゃないので、横から狙ってはいけません。
あとクリ、共食いしちゃいけません。
一方面食らったのは心。人からあまり物を貰った事がないのか、これまたおずおずと受け取る。
「よ、良いのか?うむ。頂こう、むぐ。…おぉ、これは美味じゃ。どこの店のものかの?」
「商店街にある美濃屋さんだよ。栗金飩もあるけど、どう?」
追加の菓子を出しつつさり気なくお茶まで足している辺り、本当に気遣い上手だよなぁ。
「うむ!貰うのじゃ!…しかし良い味じゃ。これ、取り寄せるかの」
うん。見事に餌付けされてるな。
ただしこのお嬢、物を食べてるときは険の無い表情してるから、以前は嫌悪すらしていた人達すら寄ってきてるし。
普段丸出しの敵意が消えて、無防備な表情してるからな。黙ってれば日本人形っぽい可愛らしさもあるし。
「…ふーん?不死川さんって和菓子に興味あるの?これも食べてみない?」
「…こ、これは!?小笠原の芋ようかんじゃと!?」
あぁ。今の季節の限定所品だよな、アレ。
「お、ウチの商品知ってるんだー。お目が高いわね。ねぇ、興味あったらお店に遊びに来て見る?今、秋商品の試作とかもしてるんだ」
「なぬー!?ま、まことかー!?行く、此方はいくのじゃ!!」
おぉ、餌付け成功2件目。
はいはい主殿。私もお嬢様も、放課後は特に予定は入っておりませんので、問題ありませんよ…と。
- 259 名前:不死川大和の外伝 心、ろくでなし達と交わるの巻3[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:10:42 ID:Bv0Oj18Q0
- やがて昼休み終了を告げるチャイムが鳴る。
放課後に想いを巡らせていたのか鼻歌交じりに浮かれていた心だが、おもむろに振り返り、話しかけてきた。
「のう大和。此方は2Fなぞ山猿の集うサル山と侮っておったが…。侮れぬものじゃな」
「…ああ。学力ではSに勝ち目はないが、その分、一芸に秀でたヤツは多いぞ。今日は食べ物関係のエキスパートが揃ってたけど、結構凄いヤツ居るからな」
「そうか…。また遊びに行ってみようかの」
…と、折角いい感じで昼休みが終わっていたのに。
「ふぅ、すっきりした。さて教室に戻るか」
「お、昼休み終了系。でも次の授業はすっぽかして…合コンいくぜオラァ!」
なんとなく白けた空気に包まれてしまった。…いやコイツらも只者ではないが、ベクトルが駄目すぎる。
「…心お嬢様。世の中には例外というものが存在しますので…」
「…うむ。その事くらい、此方も心得ておる」
ただし、新作の和菓子を口に入れる頃には、お嬢様のご機嫌は治っていたことも言及しておく。
<了>
- 260 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:30:08 ID:qtq5g6n70
- ではまゆっちルートの心モノ投下
- 261 名前:春菊・1[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:33:09 ID:qtq5g6n70
- 朝の島津寮にいい匂いが立ちこめる。
いつものように、まゆっちが弁当を作っているようだ。
「や、おはよう、まゆっち」
「おはようございます、大和さん」
俺に挨拶を返しながらも、その手が休まることはない。
それどころか、いつも以上に忙しそうだ。
「……今日の弁当、何だか量が多いんじゃない?」
「はい、今日は不死川さんの分も作ってるんですよ」
「へえ」
不死川心も無事攻略したとは聞いていたが
さっそく弁当を作ってあげるあたり、マメだなぁ。
「俺の分まで作ってたら大変だろ?何なら俺のはいいよ?」
「いえいえ、二人分も三人分も、手間はそう変わらないですから」
「でも、持っていくのに荷物にはなりそうだし」
「あ、そうですね……じゃあ、大和さんの分だけ、ここでお渡ししてもいいですか?」
「ああ、構わないよ。しかし、不死川に弁当か……ひょっとして、一緒に食べるの?」
「はい、ご一緒させていただくんですよ」
友達と一緒にお昼ご飯か。まゆっちも成長したなぁ。
- 262 名前:春菊・2[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:36:14 ID:qtq5g6n70
- 「大和さんも、ご一緒にいかがですか?」
「え……あー、うん」
不死川の誘いを断ってしまった俺は、あれから顔を合わせるのが気まずくなっていた。
断ったときには、意外に大人の対応をしてくれたが
だからといって、気まずいのは向こうも同じだろう。
ここでまゆっちと二人でいるところを見せつけるのは、ちょっと酷だ。
「今日はちょっと用事があるから、二人で食べなよ」
「……そうですか……そのうち、イヨちゃんや不死川さん、大和さん
ファミリーの皆さん全員で、一緒のお昼とか食べたいですね」
野望はどんどんスケールが大きくなっているようだった。
「で、今日はどこで食べる予定?」
「はい、お天気がよかったら屋上で、ということに。
あの、やっぱり来ていただけるんですか?」
「ああ、うん、都合がついたら」
……ゴメン、まゆっち。その逆だ。
不死川とはち合わせしないように場所を確かめたのであって
むしろ絶対に屋上には行かない。
「よかったら是非!きっと不死川さんも喜びます!」
期待を込めた笑顔に胸が痛むが、これが皆のためだ。
まあ、顔を出したら出したで
不死川に「げぇっ!?直江!?」とか言われるだけだろうし。
- 263 名前:春菊・3[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:39:26 ID:qtq5g6n70
- 「げぇっ!?直江!?」
……言われた。
「あ、大和さん!やっぱり、来てくださったんですね!」
「……なんで中庭に?」
昼休み。
屋上を回避した俺は、どこで弁当を食おうか考え
たまには気分転換に、なんて考えて、中庭に来てみたのだった。
まさかまゆっちと不死川がいるとは思いもせずに。
「屋上には上がってみたんですけど、日差しが思ったより強かったので
不死川さんの提案で、木陰のあるこちらに変更したんですよ」
くそぅ、不死川の我がままと気まぐれを計算しておくべきだったか。
「でも、大和さん、よくここにいるってわかりましたね?」
「ああ、うん……屋上で、姉さんにきいた」
今日は屋上に姉さんもいるはず。とっさにでまかせを言ったが
「あら?私、モモ先輩に行き先を言った覚えは……」
「こ、此方が言ったのじゃ!
この山猿が、図々しくも追いかけてきたら伝えてくれるようにな」
思わぬ助け舟が出たのはいいが
何時の間にか扱いが山猿に戻っていた。まあ、いいけど。
- 264 名前:春菊・4[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:42:29 ID:qtq5g6n70
- とりあえず、不死川もまだそれほど険悪な雰囲気にはなっていない。
ちゃっちゃと食べてしまって退散しよう……
「あ、いけない!……あの、お茶を教室に忘れてきてしまったので
ちょっととってきますね!」
「え!?」「ま、黛!茶はなくてもよいから……!」
「すぐ戻りますからー!お弁当、先に召し上がっていてくださーい!」
たったかたー、とまゆっちは走って行ってしまう。
そして残される俺と不死川。
……何という最悪のケース。
ちら、と不死川の顔を見る。
「む……な、なんじゃ人の顔をジロジロと!」
向こうもちょうどこちらに目を向けたところだった。
「いや、その……まだ怒ってるのかな、と」
「……怒っておるわ」
「ソウデスカ」
「怒ってはおるが……怒ったところで、どうにもならぬのであろう?」
「まあそうなんだけど……
何時までも怒っていられると俺もやりにくいし
何より、まゆっちが板ばさみになったらかわいそうだ」
- 265 名前:春菊・5[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:45:53 ID:qtq5g6n70
- 「……そうよな。黛は、何も知らぬのだしな」
ふっ、と、不死川が、寂しそうに笑う。
ああ、コイツでも、こんな顔するんだ、と思ったら
何だか親しみが沸いてきた。
「それじゃ……怒りが収まったら、友達にはなってくれるかな?」
「……図に乗るな、この山猿が!……と、言いたいところじゃが
黛に免じて、認めてやってもよい。
ま、もうしばらくは、此方に怒らせておけ」
「……はいはい。じゃ、弁当いただくとするか」
「おいおい、黛が戻るまで待てぬのか!?これだから山猿は……」
「いいじゃん、食べててくれって言ったんだし。待ってるとかえって恐縮しちゃうぜ?」
「む……確かに、黛はそういうところがある……では、いただきます」
二人でゆっくりと弁当に箸を伸ばす。
が、ふと不死川の箸が止まった。
(……今、この時が……ずっと続けばのう……)
「んー?何か言ったかー?」
「な、何でもないわ!……春菊が、ちとほろ苦いと思ってな……」
「春菊が苦いぐらいで泣くなよ、いい年して」
「う、うるさいわー!この、鉄面皮の、女ったらしの、山猿がー!!」
- 266 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:47:33 ID:qtq5g6n70
- 終わり。ほぼツン、ちょっとだけンデな味付け。
- 267 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/29(火) 23:55:32 ID:anUUXXAm0
- 乙!
あああああ心可愛いよ可愛いよ心おおおおおお
- 268 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/30(水) 00:00:01 ID:l/jUgf540
- 乙です
やっぱまゆっち√の心様はいいよな〜 数少ない友人だし
まゆっち相手では引くという大人な対応を見せてくれるけどヘタレ顔で退散しちゃったし
やっぱまだ未練があるところが可愛いですね〜
- 269 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/30(水) 00:52:38 ID:VW7cUwOF0
- 見事な起承転結 乙じゃ!
- 270 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/30(水) 00:59:35 ID:nzuRigZF0
- 乙です。
デレタ心もみたいです
- 271 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/30(水) 01:06:12 ID:oH2YMxgP0
- 乙じゃい
- 272 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/30(水) 02:36:17 ID:Yavcz4m8O
- 乙なのじゃ
心様大人気だな
- 273 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/09/30(水) 06:38:03 ID:KLyu4ei30
- 萌えた
乙です。
- 274 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:16:30 ID:b5Bid83X0
- 投下します
- 275 名前:ロリが世界を救う・1[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:19:34 ID:b5Bid83X0
- 「おーい、何やってんだー?」
昼休み、メシを食い終わって
ヒマなので屋上にでも上がるかと教室を出たら
廊下で小笠原さんと2−Sの井上が何か話していた。
2−Sの中では井上準は2−Fに対して穏健派とはいえ
あまりに異質な組み合わせに、思わず声をかけていた。
「あ、ナオっち」
表情を見るに、どうも小笠原さんは困っている様子。
それに対し、井上のほうはやる気満々といった感じで……
普通なら、井上が小笠原さんをしつこく口説いていて
それに閉口しているといったところなのだろうが
天性のロリである井上に限ってそれはない。
と、すれば……
「お、ナオっち、お前からも頼んでくれよ」
「お前にナオっち呼ばわりされる覚えはないが、何をだよ」
「小笠原さんに、委員長との橋渡しを頼んでるんだけど
なかなかいい返事もらえなくてな」
ま、そんなところだろうな。
「だから、アタシそんな役目はゴメンだって言ってるのに……!」
「そう言わずに、頼む!委員長と、親友なんだろ?
小笠原さんは、セッティングさえしてくれればいいから!」
- 276 名前:ロリが世界を救う・2[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:22:37 ID:b5Bid83X0
- 普通に考えれば、そう悪い話ではない。
ハゲでロリだが、これでもエリートクラスの2−Sメンバー。
親は医者で大病院の副院長、本人も将来は医者志望という
小笠原さん風に言えば優良物件。ハゲでロリだが。
「合コンぐらいは、セッティングしてやってもいいんじゃないの?」
「ちょ、ナオっちまで!?」
「だろ?ちょっとぐらいは考えてくれても……」
「あーもうシツコイ!アタシ、教室戻るから!」
小笠原さんはパッと身を翻すと、教室に飛びこんでしまう。
追いすがる井上の目の前で、バン!とドアが閉められた。
「……なんだよ、そんなに怒らなくてもいいじゃねえか、なあ?」
「なんて言って説得したんだよ?」
「俺はただ、『お風呂で委員長の背中を流してあげたいから、温泉で合コンしないか』って」
「バカかお前は」
「何でだよ!俺はただ、一緒にお風呂に入りたいだけであって!決して
『お兄ちゃま、今度は前も洗ってください』とか
『タオル忘れちゃったから、お手々で洗ってあげますね』とか
言って欲しいわけではない!断じてなーい!!」
「……いいからそろそろ教室戻れよ」
井上も真剣なんだろうが、真剣なのも考えモノだな。
- 277 名前:ロリが世界を救う・3[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:25:39 ID:b5Bid83X0
- 井上がションボリ戻っていったので、俺も教室に戻ると
「ナオっち……次の授業終わったら、話あるから」
「え?ああ、うん……わかった」
小笠原さんは、怒っているようだった。
委員長は、たぶん何も聞いていないのだろう、なんだかわからないようで少し困っている。
「あ、あの、何かあったのでしょうか!?」
「ううん、ごめんね、マヨには関係ないの。だから気にしないで」
「そ、そうですか……何か困ったことがあったら、遠慮なく言ってくださいね!」
相変わらず仲がいい、微笑ましい二人だ。
ひょっとして、小笠原さんは嫉妬してるのだろうか?
実は二人は由里な関係で
小笠原さんは委員長に接近しようとするロリを警戒している……
さすがにそれはちょっと妄想が過ぎるか。
彼女は彼女で、彼氏探しに熱心だし。
まあとにかく、これだけ怒らせちゃったんだし
ここは素直に謝っておいたほうがよさそうだ。
そのうえで、井上のことも少しはアピールしておいてやるか。
イタイ発言が目立って敬遠されてるが
アレはアレで真剣なんだろう……たぶん。
方向性を修正してやれば、小笠原さんも納得するかも。
- 278 名前:ロリが世界を救う・4[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:29:02 ID:b5Bid83X0
- 「手短に言うわね。井上クンを、マヨに近づけないで」
目論見があっけなく崩れさるほど、小笠原さんは怒っていた。
いや……怒っているというより、悲しんでる?
とにかく、もう少し話を聞いておこう。
「そこまで嫌わなくてもいいんじゃないか?
あれはあれで、真剣に委員長が好きみたいだし」
「そうね。井上クンが真剣なのは、わかるわ。でも、彼ロリコンでしょ?」
「まあ……だからこそ委員長に惹かれてるというか……
相手がロリコンじゃ、マズイか?」
「だって、それってマヨの外見しか見てないんじゃない?
たとえば、マヨがアタシみたいな外見だったら
井上クンはマヨを好きになるの?」
「む……」
「マヨはね、ホントにいい子なの。それぐらい、ナオっちならもうわかってるでしょ?
それを、ちょっとした外見の特徴だけで好きになった男と、つきあわせたりはしたくない。
あの子の中身を見て欲しいのよ、アタシは」
「じゃあ、井上が委員長の内面を気に入ってるなら、問題ない?」
「それは、まあ……アタシだって、男の子好きになるきっかけは、まず見た目なわけだし。
でも、井上クンがマヨの内面を好きとは、ちょっと思えないのよね」
「……わかった。井上の気持ち、確かめてみるよ。その上で、考えてやってくれ」
「そうね……ナオっちなら頼れるかな。じゃあ、それで」
- 279 名前:ロリが世界を救う・5[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:32:04 ID:b5Bid83X0
- 「……というわけなんだが」
「わかってねえ!小笠原さんは、ロリというものをわかってねえ!!」
「いや、俺もわからんけどな」
放課後。今度は井上に事情を説明。
……何やってるんだろうな、俺。
「俺はなあ、幼い子供の、その無垢で純真な心を愛しているんだよ!
変にスレたガキとかには微塵も興味はないが
委員長は、幼い頃の純粋さを失わないまま育っている!
だからこそ俺は惹かれてるんだよ!ただ小さければいいってわけじゃねえんだよ!!」
「そんなデカイ声で力説されても困る。というか泣くなよ。
……まあ、お前が委員長の内面も好きだということはわかった」
「わかってくれたか……どうだ直江、お前もこっちの世界に来てみないか?」
「それは遠慮しよう。
それで、委員長がお前とつきあったとする。
お前、それで委員長が純粋さを失わないと思うか?」
「……うっ」
「お前は純粋か?無垢な子供の心のままか?幼い頃の心を持ちつづけているか?
『一緒にお風呂で合コンしたい』とかいうのは、純粋なのか?」
「お、俺は……俺は、確かに汚れているかもしれない!
だが、だからこそキレイな心で癒されたいんだ!!」
「だったら、お前もキレイな心になってから来いよ」
- 280 名前:ロリが世界を救う・6[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:35:12 ID:b5Bid83X0
- 「!……そうか……そう、だよな」
打ちひしがれ、肩を落とす井上。そこまで酷なことを言った覚えはないが。
「まあ、お前次第では俺も応援するからさ。
イタイ発言とかなくなりゃ、イけると思うぜ」
「ああ……ありがとよ。キレイに、か……やってみるか!」
どこか井上の表情が晴れやかになる。
胸を張って立ち去る前に、俺に振りかえった。
「知ってるか、直江?ロリへの愛は、世界を救うことだってあるんだぜ?」
何だか意味不明なセリフを残し、井上準は去っていった。
そして、数週間が過ぎた。
あれから、特に変わったこともなく、俺は夕食後のひとときをまったり過ごしていた。
「最近、ゲンさん夜は寮にいること増えたねー」
「ああ、夜回りの必要性が減ったからな」
「え、夜回りなんかしてたんだ?」
「ああ、街に変なクスリが出まわり始めてたんでな、それを警戒してたんだが……
最近、クスリの供給が止まった。どうも組織が解散したらしい」
「へー。組織が解散って、何かあったのかね」
「さあな。まあ、街がキレイになるのは、いいことだぜ……」
- 281 名前:ロリが世界を救う・エピローグ[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:38:32 ID:b5Bid83X0
- 「なあなあ、直江」
教室を出たら、また井上に声をかけられた。
「なんだ井上。今からC組に行くんで忙しいんだが」
「俺、家を出て、養子になろうかと思うんだ」
「はぁ?何だいきなり」
と、そこにトコトコと委員長登場。
「あ、委員長!おはよーございますっ!」
「あ、井上ちゃん、おはようございます!」
「委員長!実はボク、養子になろうと思ってるんです!」
「ええ!?どうして急にまた?」
「それで、『鬼井』って人のところに養子に行ったら
委員長は俺のこと『オニイチャン』って呼んでくれますか!?」
「だからそういうイタイ発言やめろって言っただろー!」
「鬼井、さん、ですか?変わった苗字の人ですね……
ちょっと呼びにくいので、そうなったら『準ちゃん』と呼ぶと思います」
「ぐはぁっ!?せ、せっかくキレイになったのにぃっ!
……でもそれはそれでっ!どうせなら『準にゃん』と!」
「……街はキレイになったけど、お前は全然キレイになってないよ」
- 282 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:39:52 ID:b5Bid83X0
- 終わり。ルート的には……どこに入れればいいんだコレ。
- 283 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/01(木) 23:52:45 ID:09Iu1jCS0
- ハゲの合コンプランにワロタ 乙!
だがあの杉田ボイスのハゲを
「準にゃん」と呼ぶのはちょっとどうかと思うw
- 284 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/02(金) 00:05:47 ID:YRrvGAe60
- ひたすら準の暴走に笑わせて頂きました。GJです。
準って、頭良いけどバカって言われるタイプだな…って思ってしまいました。
まぁ、世界は救われたんですけどね…。
- 285 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/02(金) 00:50:17 ID:9sFG36v20
- 乙
なんというか、スレを通して読むと
真面目な作品とギャグモノのギャップがw
まさにタカヒロテイスト
- 286 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/02(金) 01:15:33 ID:8htjgmmT0
- 乙しちゃうよーん
ハゲーハゲー!(バシバシ
- 287 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/02(金) 10:32:10 ID:nk/K5FZ90
- 確かに色々救ってるがwwwwwwww
ハゲワロスwwwwwwwww乙wwwwwwww
- 288 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/02(金) 13:18:42 ID:OQmqm2FTO
- コメディタッチでいいね
乙なのじゃ
- 289 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/02(金) 15:29:49 ID:OhHswIfr0
- やだなにこの良スレ
つかたまにタカヒロ本人?と思えるようなSSがあるな…
すげえわw
- 290 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/02(金) 15:32:58 ID:59oM0QMo0
- 愛に生きる・ハゲバージョンってとこだな 乙!
- 291 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/02(金) 23:25:37 ID:ZLdc94CG0
- 乙です。
次はトーマの話かな
- 292 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:20:38 ID:Z6N7E1fx0
- 作品別スレで、ワン子が人気投票で2位だった記念に
「ワン子が武道大会でクリスに勝って百代に挑むSS」
という話題が出たのでそんな感じのものを捏造
- 293 名前:誇りを胸に・1[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:25:12 ID:Z6N7E1fx0
- 「勝者、川神一子!」
高らかに勝者の名が告げられる中、ワン子はがっくりと膝を落とした。
クリスとの死闘を何とか制したものの、すでに満身創痍だ。
この後の2試合、可能なのか……?
いや、そもそも
優勝後の姉さんとの仕合で初手に使うまで
隠しておくはずだったアギトを勝つためとはいえ使ってしまったのだ。
仮にあと2試合を勝ち進み、優勝したとしても
すでに存在を知られてしまったアギトが果たして姉さんに有効なのか。
おそらく、アギトでは通じないだろう。
アギト、では。
……いかん、ここで俺が悩んでいても仕方がない。
どうするのか、それはワン子が決めること。
俺はとにかくサポートに徹しよう。
タオルを手に、今にも倒れそうなワン子に駆け寄った。
そして、準決勝、決勝。
とにかく体力を温存させるため、派手な動きを抑えたがために
本来ワン子が持つスピードという武器が使えなかったし
クリス戦のダメージも抜けていなかったため
どちらも、ギリギリの勝利だったが
とにもかくにも第一関門は突破した。
後は、姉さんとの仕合のみ。
俺の中では、何とかワン子を勝たせたいという気持ちと
無事に終わってほしいという気持ちが錯綜していた。
- 294 名前:誇りを胸に・2[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:28:16 ID:Z6N7E1fx0
- 「大和……今まで、ありがとうね」
仕合までのインターバル。控え室で怪我の応急処置を施す俺に
ワン子が微笑みながらそう言った。
「おいおい、何だ、コレでお別れみたいな。
姉さんに一太刀浴びせて、試験に合格して、川神院の師範代になって……
まだまだ先は長いんだろ。それまで、俺がサポートするさ」
「うん、ありがと。でもね、ひょっとすると……これで、最後になるから。
だから、言っておきたかった。ありがとう、大和」
「……使うのか」
「うん」
何のためらいもなく、ワン子はうなずいた。
やめろ、と言いたかった。
そこまでしなくても、と止めたかった。
この先もずっと、元気なワン子と一緒でいたかった。
でも、ワン子は選んだ。
だから、俺もそれに応える。
「よし、じゃ腕出せ。マッサージだ。
万全……とは言えないかもしれないが
イメージどおりに技が決まるように、できるだけはしよう」
「うん、お願い!」
差し出された両腕をマッサージしながら
俺はあの日に記憶を飛ばしていた。
- 295 名前:誇りを胸に・3[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:31:16 ID:Z6N7E1fx0
- 「おう、やってるな一子!」
「釈迦堂さん!?」
仕合に向けて山中で特訓中のワン子と俺の前に
また、いつぞやのオッサンがやってきた。
山篭りしてるのに、なんでこの場所がわかるんだ……
「そろそろアギトも完成だな……へへ、こりゃ百代との仕合も楽しみだ」
「ありがとうございます!」
「……わかってるとは思うが、大会ではアギトは使うなよ。
一度でも百代に見られたら、もう通じねえぞ」
「はい!」
「だが……もし、大会に強敵が現れて、どうしてもアギトを使わなきゃ勝てそうにねえ。
そんな状況になったら、お前どうする?」
「その時は、アギトを使ってでも勝ちます!
勝ち続けなければ、先に進めませんから!」
「そうだ!それでいい、負けちまったら元も子もねえんだからな。
で、その場合……百代との仕合はどうすんだ?」
「わ、私にはアギトしかないと思います。はじめの予定通り、アギトで姉様に挑みます!」
「はあ……お前らしいなぁ……一途というか、バカというか。
やっぱルーに似ちまったんだなぁ」
釈迦堂さんが、ため息をつきながらワン子に近づいていった。
- 296 名前:誇りを胸に・4[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:35:11 ID:Z6N7E1fx0
- 「薙刀、貸しな」
「は、はい……?どうぞ」
ワン子が差し出した薙刀を受け取り、釈迦堂さんが今度はスタスタと距離をとる。
「俺ぁもう師範代じゃねえ。破門になった身でお前に技を教えることはできねえ。
だからここで、ちょっとした技を見せる。見せるだけだ。いいな?」
「は……はいっ!」
「よし……技ってなぁ、一つ覚えてそれっきりじゃねえ。
一つ覚えて、その技が完成したなら、そっから応用させることだってできる。
これから見せるのは、アギトの応用技だ……いくぞ!」
釈迦堂さんが構えを取る。
「ふうううううううぅぅぅぅぅぅ……」
水面が波立つ。木々が震える。川原の石がカタカタと跳ねる。
緊迫した空気の中、震える小枝から一枚の木の葉が落ちた、その瞬間。
「はあっ!!」
ごぅん!!
……見えなかった。俺には見えなかった。
ただ、すさまじい轟音がして、釈迦堂さんは、薙刀を突き出した構えになっていて
そしてその突き出した薙刀の先の地面が一直線に
十数メートルに渡って抉り取られていた。
「見たか、一子ォッ!!」
- 297 名前:誇りを胸に・5[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:38:25 ID:Z6N7E1fx0
- 「す……すごい……これが、アギトの応用……」
「見えたのか、ワン子!?」
「うん……かろうじて、だけど切っ先の軌跡は追うことは出来たわ」
「お、てえしたもんだ……あたた、慣れない薙刀なんぞ振ったから腕が痛え痛え……
さて、今のが俺オリジナルのアギト応用技だ。
川神院を破門になってから編み出した技だから、ジジイもルーも百代も知らねえ。
コイツを使えば、まず間違いはねえだろ」
「あ……ありがとうございます!よーし、早速……!」
「あー、練習は、するな」
「……え?」
「言ったろ。俺でも一度使うとな、腕が痛んじまってしょうがねえぐらいなんだ。
ハッキリ言って、今のお前じゃ技の最後まで腕がもつかどうか、ってとこだ。
練習なんぞして、それで腕がオシャカになっちまったら仕方がねえ。
イメージだ。頭ン中でイメージだけを繰り返せ。ぶっつけ本番、一発勝負しかねえ」
「は、はい……わかりました」
「……もう一つ、言っとくぞ。
コイツは腕にかかる負荷がハンパねえ。お前じゃ最悪、両腕吹っ飛ぶかもしれねえ。
師範代になるどころか、その後の一生、腕をまともに使えなくなるかもしれねえ。
それでも、やるか?」
「ちょ……それじゃ意味ないじゃないですか!?」
「小僧は黙ってろ!!……どうだ、一子?その覚悟は、あるか?」
- 298 名前:誇りを胸に・6[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:41:34 ID:Z6N7E1fx0
- 一子は少しの間、うつむいて、黙って、考えていた。
やがて、顔を上げ、キッパリと答えた。
「やります。
腕が使えなくなって師範代になれなくても、それはそれまでのこと……
技を使わずに敗れ、悔いを残したまま師範代にもなれないよりは……!」
「一丁前のこと言うようになりやがったな、まったく。
……俺ぁな、お前が入門してえって言ったとき、反対したんだ。素質がねえってな。
でもな、今は、ありゃ間違いだったかもしんねえ、と思ってる。
俺に、悪かった、間違いでした、って言わせてみな」
「……師範代!ご指導ありがとうございました!!」
「師範代じゃねえっつってんだろ……
あー、そうそう忘れてた……『鵺』ってんだ、その技の名前。じゃあな」
釈迦堂さんが去っていく。
返された薙刀を見つめ、ワン子は動かない。
「……やるのか?両腕がダメになっても。師範代になれなくなっても」
「やるわ……だいたい、ダメになるって限ったわけじゃないでしょ?」
場を和ませようとワン子が笑う。その笑顔を、俺は抱きしめた。
「俺は……ずっと、お前の傍にいるからな。
何がどうなっても、この先ずっと傍にいるからな!」
大丈夫、きっと上手くいく。
ワン子は技を成功させ、試験に合格して、腕もダメにならず、師範代になって……
そう思っているのに、何故か涙が止まらなかった。
- 299 名前:誇りを胸に・7[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:44:34 ID:Z6N7E1fx0
- ―――― そして、今。
覚悟を決めたワン子が、試合場に立つ。
「東方、川神百代!」
「ああ!」
「西方、川神一子!」
「はい!」
対峙する両者の間に、雑念はない。
ただ、向き合い、闘志を秘めて見つめあう。
観衆が固唾を呑んで見守る中
「始め!」
幕が、開いた。
間合いはまだ遠い。
ただ両者の間の気のせめぎ合いが、ピリピリと見るものを刺激する。
ぶつかり合う気は周囲に漏れて弾け
耐えかねたかのように一枚の木の葉が、両者の間に舞い落ちる。
あの時のように。
そして、それを合図にしたかのように
「せやああああぁぁぁぁっ!!」
ワン子が、仕掛けた。
- 300 名前:誇りを胸に・8[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:48:15 ID:Z6N7E1fx0
- (……やはり、アギト!)
百代が一撃目を身を捻ってかわす。
(次に切り返しの打ち下ろし……速い!)
もし、あらかじめこの技があることを知らなければ
切り伏せられるとまではいかなくても、腕で防ぐしかなかったろう。
(一度私に見せていなければ……な!?)
打ち下ろしはかわした。そのかわしたはずの切っ先が横に滑っていく。
(払いに繋げるか!)
すんでのところで、これもかわす。かわして、やや体が泳いだ。そこに
(!?切り返し!?……上下左右、縦と横二連続のアギトか!くっ!)
ここまでが、ほんの一刹那。
その一刹那に、上下左右からの斬撃が迫る。
(!しまっ……!)
思わず、後に下がっていた。いや、下がらざるを得なかった。
だがそれは、薙刀という長柄の獲物を使う相手に対しては致命的なミス。
(チィッ!このままでは……!)
一子が、叫ぶ。
「吼えろ、鵺ーーーッ!!」
- 301 名前:誇りを胸に・9[sage]投稿日:2009/10/04(日) 01:52:30 ID:Z6N7E1fx0
- (突きが来る!)
後退を始めた体は、突きが来るとわかっていても
他の回避行動に繋げにくい。そのままでは、間合いの長い薙刀の餌食。
(ならば……!)
思い切って、薙刀の間合いの先まで大きく距離を取るまで。
ワン子が渾身の力を込めた突きの切っ先は、僅かに百代には届かない。
だが、百代は勘違いをしていた。
来るのはただの突きではない。
上下、左右とアギトが来たのなら
この突きもまた、アギトであってしかるべきであり
そしてアギトが一対の攻撃であるのなら
この突きもまた、一対の攻撃の一つであってしかるべき……!
ごぅん!
(!?)
突然、轟音とともに、百代は衝撃に身を揺さぶられた。
上下左右、二連続のアギトは、たとえかわされても空振りではない。
超高速で切り裂いた空間は、真空に近い状態になっていた。
そこに押し込まれる、突きの剣圧!
無理やり切り開かれ、それをまた無理やり押し戻された際の衝撃波。
それこそが、何種類もの動物の体が混じりあった「鵺」の吼え声。
複数の牙を持つ異形の、最後の咆哮だった。
「ぬ…ああああぁぁぁっ!?」
- 302 名前:誇りを胸に・10[sage]投稿日:2009/10/04(日) 02:05:43 ID:Z6N7E1fx0
- ワン子の「鵺」で発生した衝撃波を、川神院の修行僧が発した結界が吸収していく。
その衝撃波の走った道筋に
姉さんは顔の前で両腕を交差させた、防御姿勢で立っていた。
胴着はところどころ裂け、腕や足にも傷を負っている。
「……それまで!」
何が起きたのか、見るのが二度目の俺にもわからない。
だが、この状況を見る限り、やったのか?
確か、姉さんに一撃浴びせるか、防御をさせれば試験は合格。これならば……!
ガラン
……ああ、そんな。
ワン子が、握っていた薙刀を落とす。それが意味することはただ一つ。
会場のはるか後方から怒鳴り声が響いた。
「ジジイ、一子の腕を診てやれ!!」
「その声、釈迦堂か!?」
「俺のことより、一子を診てやれってんだよ!」
「どういうことじゃ、まったく……一子、腕がどうか……ッ!?」
ぐらり
ワン子の体が大きく揺らぎ、そしてそのまま倒れこみそうになる。
咄嗟に姉さんがその体を支え、抱きかかえた。
駆け寄って覗き込んだワン子の顔は
苦痛に気を失ったはずなのに、満足そうに笑っていた。
- 303 名前:誇りを胸に・11[sage]投稿日:2009/10/04(日) 02:09:44 ID:Z6N7E1fx0
- 手術は、5時間にも及んだ。
筋肉、腱、関節、血管、神経。
腕の組織のそこらじゅうが、ボロボロに千切れていたらしい。
手術は成功したが、それは切断せずにすんだ、というところで
「もう……元には、戻らないそうでス……」
ルー師範代がそう告げた後は、誰もが、押し黙っていた。
「俺は、後悔してねえぞ」
不意に、病院までついてきていた釈迦堂さんが口を開く。
「……え?」
「一子に『鵺』を見せたことを、俺は後悔してねえ。
アイツぁ見事にやってのけた。川神百代に、一太刀浴びせた。勝負に勝ったんだ!
……それで、いいじゃねえか」
「そうじゃの……褒めてやらねば、のう……
よう、ここまで……よう、ここまで……」
「じゃ、俺ぁもう行くぜ……えーと、兄ちゃん……大和っつったか?」
「はい。何か?」
「一子に言っておいてくれ。
釈迦堂が、「悪かった、間違いだった」って謝ってたってな」
「自分で直接、言ってやってくださいよ」
「やなこった。俺ぁな……湿っぽいのは、苦手なんだよ。じゃあな!」
- 304 名前:誇りを胸に・12[sage]投稿日:2009/10/04(日) 02:13:55 ID:Z6N7E1fx0
- 「あ、おはよー、大和」
「おう」
手術を終え、意識を取り戻したワン子は意外に元気だった。
両腕はギブスでグルグル巻きにされていて、不自由そうではあったが。
「ねー、このギブスいつ取れるのかしら?早くリハビリとか始めたいなー」
「ちゃんと先生の言うこと聞いてればすぐだろ」
結局、試験には合格だったが
両腕が元に戻らないとわかったワン子は、キッパリと師範代への道を諦めた。
もっと泣いたりするかとも思ってたのだが
「大丈夫よ。だって、あのお姉様に一太刀浴びせられたんだもん。
師範代にはなれなくても、この誇りを胸に生きていける。
アタシは、それで十分だわ……」
そう言って、笑った。
「それでね……アタシ、何か違うものにチャレンジしようと思うの。
まだ何をするかは思いつかないけどね。
……でも手が不自由なままだと、ちょっと困るかなー」
「もしそうなっちゃったら、俺がお前の手の代わりになってやるよ」
この手で薙刀を振ることはできないけれど
ワン子のために何か掴める物があるはずだから。
だから喜んでその代わりを務めようと思う。
「……うん。これからもお願いね、大和!」
- 305 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/04(日) 02:15:42 ID:Z6N7E1fx0
- 終わり。そして栄養士を目指す本筋に戻る。
なんで自分が書く釈迦堂さんはいい人になっちゃうんだろう。
- 306 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/04(日) 07:43:39 ID:DYk2Ep2g0
- 乙 心の汗が止まらない件について
- 307 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/04(日) 10:04:41 ID:0jg3g4XuO
- しゃかしゃか人間味があるな、厳しいけど。
乙なのじゃ
- 308 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/04(日) 10:07:41 ID:ZPDZtp1W0
- 乙です。
ぜひ、サンレッドと絡ませてほしい
- 309 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/04(日) 10:48:26 ID:oKKOhg8x0
- やべえ超乙だわ・・・
- 310 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/04(日) 18:52:17 ID:Gl+hrerV0
- マジ乙
釈迦堂さんがワン子と絡むとホント良い人になっちまうな……
- 311 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/04(日) 23:38:04 ID:0QodMB020
- ワン子の「鵺」が百代に決まった時、本当に燃えました…!
釈迦堂さん、良い人過ぎる…やはり川神院に戻るべき人だ。
- 312 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/05(月) 00:32:40 ID:E+j5Z5aG0
- 乙です。
ルー先生にはもっと活躍してほしい
- 313 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/05(月) 04:06:52 ID:+ds5YB4u0
- 乙ダヨ!
- 314 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/05(月) 23:54:58 ID:GUWzuath0
- ではルー先生で一本
- 315 名前:新必殺技開眼・1[sage]投稿日:2009/10/05(月) 23:58:02 ID:GUWzuath0
- 「ただいま戻りました」
「おかえりー。まゆっちー、実家から荷物が届いてたぞー」
まゆっちには実家から頻繁に荷物が届く。
今日も、土曜日なのに寮でゴロゴロしていたら
留守のまゆっちあてに大きな荷物が届いたのだ。
「あ、ありがとうございます大和さん」
「お邪魔するヨ」
「あれ、ルー先生も一緒?」
意外な人物が同伴していた。
「やあ、直江。ちょっと頼まれたからネ。
……それが、黛の言っていた食材だネ?」
「はい、おそらく。かなり量があるようですね」
「何かルー先生に頼んだの?」
「はい、今日送られてきた食材は、中華料理向きなのですが
下ごしらえなどの手順が今一つよくわからなかったので、ルー先生にお願いを」
「え、ルー先生って、料理できるの!?」
「ハハハハ、実は、料理は得意なんダ。川神院でも、たまに作っているヨ」
武道一筋、よく自分のことをそう言っているが、意外な趣味を持っていたようだ。
- 316 名前:新必殺技開眼・2[sage]投稿日:2009/10/06(火) 00:01:04 ID:GUWzuath0
- 「私も、ワン子さんに相談して、教えていただくまでは知りませんでした。
こう言っては失礼ですけど、ちょっとビックリですよね」
「料理が得意だなんて、あまり人には教えていないからネ。
知っているのは、川神院の人間ぐらいじゃないかな?」
「もったいないな、料理できるってアピールポイントですよ」
「ハハハ、そんなことをアピールしてもあまりメリットがないよ。
身内にときどき料理を振舞って喜ばれル、その程度でいいのサ。
さあ、話はこれぐらいにして、始めてしまおう」
「はい、そうですね!大和さん、今夜の夕食は、そんなわけで中華になりますよ」
「じゃあ、せめて荷物を運ぶぐらいはしようか」
思わぬところでご馳走になりそうだ。
大きなダンボールを抱えて、まゆっち、ルー先生と台所に向かう。
「……これで、何人前ぐらいできそうなの?」
台所で箱を開いて取りだしてみたが
いつものことながら食材はかなりの量があった。
中には、見ただけでは何だかわからないものも……
「そうですね……10人前ぐらいにはなりますか。どうですか、ルー先生?」
「そうだネ……少し食材を足せば、メニューも増えて15人前ぐらいはできるよ」
「なるほど……じゃあ、足りない分は俺が買ってきますから
皆を呼んで中華パーティにしたいんですが、どうでしょう?」
- 317 名前:新必殺技開眼・3[sage]投稿日:2009/10/06(火) 00:04:10 ID:GUWzuath0
- 「おー、イイネー!」「はい、せっかくですから賑やかにやりましょう」
「作る人は大変そうですが、じゃあお願いします」
「では、必要な食材をメモにするヨ。七浜の中華街で買ってくるとイイ。
あそこなら、たいがいのものは揃うからネ」
そんな感じで、急遽中華パーティが決定。
七浜へ電車で移動しつつ、皆に召集をかける。
メモには必要なものをどこの店で買うかまで指示されていたので
買いものはスムーズに終了。
島津寮に戻ると、すでに結構な人数が集まっていた。
「ルー師範代が中華を作ると聞いて飛んできたぞ!」「きたぞー!」
声をかけた川神姉妹は当然として
「ワシに声をかけんとは、どういうことじゃ直江!」
なんかジイサンまで来た。まあ、料理はたっぷりできそうだからいいか。
「ん、追加の食材か。ではその代金は、ワシが出しておいてやろうかの」
お、ラッキー。台所に食材を届けに行くと
「遅ぇぞ直江……ルー先生、これ、茹でればいいんだよな」
「あ、ゲンさん帰ってたんだ……手伝い?」
「いやぁ、源が手伝ってくれるのは助かるネー。それに手際もよくて、驚きだヨ」
「いや、まあ……たいしたことはしてねえっすから」
- 318 名前:新必殺技開眼・4[sage]投稿日:2009/10/06(火) 00:07:16 ID:Xumk+2WE0
- 「おーい、大和ちょっとそこどいてくれー」
「おっと、悪い……って、なんでテーブル運んでるんだガクト?」
「なんで、ってこんだけ人数がいたら台所じゃ無理だろ。
庭にテーブル出して、立食バイキングにしようってさ」
なるほど。ちょっと庭の様子も見ておくか……
「お嬢様、飲みものはこの辺りでよろしいですか?」
「うん。ケースで重ねておけば、邪魔にはならんだろう」
「クリス、マルギッテ呼んだのか」
「ああ、今日は買い物に付き合ってもらったからな。かまわんだろ?」
「私は、中華料理でも美味しくいただけます。カニ玉などには目がありません」
「そうですか」
「はーい、紙コップとお皿買ってきたよー……あ、大和おかえりー」
「お、お疲れモロ。そっか、庭で立食ならそういうもんも必要だよな」
「だねぇ。キャップと京はデザートを仕入れに行ってるよ」
なんかどんどん大掛かりになってきたな。
「ただいまー!前にバイトしてた店で、中華の点心仕入れてきたぜー!」
「ただいま大和。私は果物。よく熟れてるよ……思う存分食べてね」
- 319 名前:新必殺技開眼・5[sage]投稿日:2009/10/06(火) 00:12:05 ID:Xumk+2WE0
- こうして、準備は整っていく。それとともに、台所からいい匂いが漂ってきた。
「しかし、ルー先生が料理上手とは知らなかったぜ」
「ああ、俺も今日初めて聞いたよ。どんな料理が出てくるのか、楽しみだな」
「俺様、もう腹が減ってきたぜ……先にデザート食ってもいいかな?」
「デザートは食後に食うものだ。それ食ったらガクトはもう食い終わりってことだな」
皆がそれぞれに雑談をしていると
「さあ腹ペコども!まずは前菜盛り合わせからだー!」「からだー!」
姉さんとワン子が、大きな皿を両手にひょいひょいと歩いてくる。
「おおー!」「う…わー……」「スッゲー!こんなの料理屋でも見たことねーぜ!」
「直江、コップ回せ。まずは乾杯だろ」
何時の間にか台所からゲンさんとまゆっちも戻っている。
「ワシとルーはビールもらおうかの。未成年は、ウーロン茶じゃぞ」
「私はビールでも問題ありません」
「……いちおう、ウチの生徒じゃけど……まあ、今日はええわい。
それじゃ、乾杯を……」
「……いや、乾杯ちょっと待って。ルー先生は?まだ台所にいるのか?」
一番頑張った人が乾杯のときにいないんじゃ、あんまりだ。
- 320 名前:新必殺技開眼・6[sage]投稿日:2009/10/06(火) 00:17:01 ID:Xumk+2WE0
- と、台所からルー先生の声が。
「私にかまわず、どうぞ始めてくださーイ!」
「いや、ルー先生も来てくださいよー!」
「今、火加減の大事なところだから、手が離せないヨー!」
「……ああいうヤツなんじゃ。もうちょっと、我が強くてもええんじゃがのぅ」
うーん……これが人柄とはいえ、ルー先生をおいて勝手に始めちゃうのもな。
よし。声を潜めて、ルー先生には内緒の提案。
(皆、コップ持った?じゃ、皆で台所に行こう。そこで乾杯しようよ)
(うん、いいアイデアじゃの直江。では皆、台所に行くぞい)
皆がコップ片手にソロソロと台所へ。ルー先生は料理に集中しているのか気づかない。
「それでは!」
「おおっとぉ!?……アレアレ、いつの間に皆台所に!?」
「美味しい料理を作ってくれる、ルー・イーに感謝を込めて!乾杯!!」『カンパーイ!!』
皆がルー先生にグラスを差し上げる。
ルー先生も笑いながら、振るっている鍋を乾杯するかのように差し上げ……
「ホアッチャァ!?」
鍋の中身を、頭からかぶってしまった。
- 321 名前:新必殺技開眼・7[sage]投稿日:2009/10/06(火) 00:20:02 ID:Xumk+2WE0
- その後はてんやわんやの大騒ぎ。
幸い、ルー先生はたいした火傷もせず
その後は食事に加わったり料理に戻ったりで忙しそうだったが
終始にこやかに笑っていた。
やがて宴も終わり、一人また一人と場を去っていく中で
ルー先生はビール片手に庭で何事か考えているようだった。
「ルー先生?今日はごちそう様でした」
「おお、直江。いやいや、お粗末様でしタ……今日はネ、いい勉強になったヨ」
「……何がですか?」
「人のためになるコト、とても大事ネ。でも、それだけじゃダメ。
自分が幸せになっていなければ、かえって周りに気を使わせてしまう。
自分も、周りも、同じように幸せになる。コレが一番なんだとネ」
「そうですね……ルー先生、お嫁さんもらうとかどうですか?」
「それは飛躍しすぎだヨ。
……それよりもネ、今日、鍋の中身をかぶってしまったとき。
あの動きを、拳法の技に応用できそうだと思ったんダ!
これはスゴイ収穫だよ!新しい必殺技になるかもしれなイ!」
……お嫁さんは、無理かも。
でも、技の話をするルー先生の目はキラキラと輝いている。
これがルー先生の幸せなら
「良かったですね、技が完成したら、是非見せてください!」
応援しますよ、ルー先生。
- 322 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/06(火) 00:22:17 ID:Xumk+2WE0
- 終わり。ほのぼのルー先生。
鍋の中身をかぶってどんな技ができるのかはナゾ。
- 323 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/06(火) 00:23:32 ID:3wHSXUQA0
- 乙です。
そういえばでれた心がみたいな
- 324 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/06(火) 01:16:37 ID:Lncebdbt0
- 乙。ジジイがなかなかいい味。クッキーがいないのがちょっと寂しい・・・
- 325 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/06(火) 01:42:38 ID:iaT5ruvk0
- 乙。
ちなみにまゆっちはワン子を呼ぶときは一子さんだったような。
- 326 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/06(火) 02:28:41 ID:1pRfv67cO
- ルー先生は格闘技一筋だよね
ゲームで足りなかった日常をこうやって見れるのがかなり嬉しいわ
乙なのじゃ
- 327 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/06(火) 02:29:28 ID:1pRfv67cO
- たつねぇの姉っぷりがみたいなぁ
癒されたい
- 328 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/06(火) 04:48:57 ID:5pvWzuWZ0
- 乙だ
だが勘違いするな、てめぇの為に乙してるんじゃねぇ
- 329 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/06(火) 05:24:19 ID:7txBN7sj0
- ルー先生キテルー
和やかでいいね、乙で候!
ここのSSは全部FDに採用してくれていいレベル
- 330 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/07(水) 00:23:25 ID:x6RZf9RP0
- ルー先生、凄い特技ですね〜。
こういうイベントに鉄心やマルギッテが来るのって珍しいですね。
ルー先生なら素敵なお嫁さん貰えそうですけどね…本人が今のままで幸せなら、いいんでしょうかね。
一方、妄想スレはすっかり過疎ってますね…そろそろ、ここと合流した方が良いと思うのですが。
妄想がSSのネタになるかもしれませんし。
- 331 名前:不死川大和の調教[sage]投稿日:2009/10/07(水) 18:03:38 ID:0ZmJ0wek0
- >>137の後日談的なものを捏造してみたので投下
- 332 名前:不死川大和の調教1[sage]投稿日:2009/10/07(水) 18:05:30 ID:0ZmJ0wek0
- 直江姓を不死川に改め、さらに心と結納も交わして数日後…。
ちょっとした事件が起こっていた。
「大和!お前に問いたださねばならぬことがある!…何じゃこれは!!?」
俺の許婚となった不死川心が、俺の執務室の扉を蹴り破って飛び込んできた。
そして何かを持った手をぶんぶん振り回して抗議の意を示している。
「あーそれか。すまん、片付けるのを忘れてた」
『というか、意図的に片付けなかったのだがな…』
彼女が振り回しているのは、カバーを外したDVDケース。
中身は【メイド調教物語2007 …ご主人様、お許し下さい】と題された成人向け映像。
つまりアレなDVDである。主属性はメイド、副属性は調教物、従属性としてスパンキングとアナル責めといったお気に入りの一品。
「だだだ第一なぜこのような破廉恥な物を所持しておるのじゃ!?」
…やっぱり好奇心に負けて中身も確認されたご様子だ。
「だって心、こういった特殊なプレイしてくれないだろ?だからおかずにしていた」
「ふふふふ不潔じゃぞ!!第一お前に操を捧げた、此方の身体に不満があるのか!?」
一瞬で耳まで真っ赤になる心。怒りと羞恥が良い感じにブレンドされている。
「いや、心のことは好きだ。でも、こういう事やってくれないだろ?だから脳内で補完」
「うるさいうるさい!!この程度のこと此方にはたわいの無いことじゃ!!侮るでない!!」
「…そうか。やってくれるのか」
かかった。計画通り…。
準備された服をいそいそと着込む彼女を見て、口元が緩むことを防げなかった。
- 333 名前:不死川大和の調教2[sage]投稿日:2009/10/07(水) 18:07:17 ID:0ZmJ0wek0
- 「…で、なんじゃこの格好は!?」
「大正袴の女中服。あと俺が求めるシチュエーションも理解できるだろ?」
「判ったのじゃ…。ご主人様」
怒りと照れで真っ赤になりつつ、涙目かつ上目遣いで睨みつけてくる心。
もちろんこの動作は天然なのだろうが、うん、萌える。
そんな可愛い女中さんに命令を下すのは、主人として当然の勤めだろう。
「じゃ、早速だけど舐めて。そして口でして」
「なななな何じゃと!?…っくぅ、判ったのじゃご主人様」
ぶーたれながらも了承の意を示す。
「ちゅ…。ぺろぺろ……あむ」
俺の分身に唾を刷り込むように舌を這わせ、やがて口に含む心。
基本的に我儘な娘だが、根っこの部分は結構素直であることはここ最近の大発見だと思う、
ともかく、暖かい彼女の口内と纏わり付く舌の感触に、俺の方の準備は整う。
「次は、上に跨ってやってもらおうか。そうだな、10分以内にイかせてもらおう。
ただし俺は動かない。…できなかったらお仕置きだ」
「ぐぬぬぬ…。目に物見せてくれるのじゃ」
敬語の方は忘却されている感じだが、傅く態度は継続している点は十分に評価できる。
「あ、脱ぐのは下着だけでよろしく」
「注文の多い主人め…。んく」
心の方も奉仕している時にそれなりに感じていたらしく、適度に濡れた胎内に俺を迎え入れる。
「5分じゃ、5分でお前を昇天させてやる!!」
気を吐く心。うん、良い具合に燃えている。
しかし10分後…。見事に俺は耐え切っていた。
「な、なんでじゃ!?」
「功夫ガ足りないネ、心」
本当は我慢しなければ出てたかもしれない。十分に気持ちよかったし。
…でも今回はお仕置きしたいがためにがんばってみた。
普段はいちゃつくセックスばかりなので、たまには苛めてみたかったし。
- 334 名前:不死川大和の調教3[sage]投稿日:2009/10/07(水) 18:10:34 ID:0ZmJ0wek0
- 「さて、お仕置きTimeな」
彼女の中に入ったまま、気持ち力を込めて、彼女の尻を叩く。
「ひゃん!な、なにをするのじゃ!?」
「ご主人様の要求を達成できなかったから、当然のお仕置き」
「く、ぅ…。悔しいのじゃ…。なぜ…こんな恥辱を…」
「やれなかったからお仕置きしてるっていってるだろ。
…こんなに駄目駄目な心の事、嫌いになって別の女に乗り換えるかもな」
俺の言葉責めに驚愕したように、目を見開く心。
普段なら、こんなハッタリ信じたりしないだろう。ただし彼女は動揺したとき、著しく思考能力が低下する性質がある。
身を強張らせる心。それに伴って締め付けもキツクなる。…痛いくらいだ。
「や、大和…。…今のは、本気なのか?」
「だとしたら、どうする?」
そん訳ないがな。もう俺は彼女を手放すつもりは無い。
…だが、彼女は俺の言葉を正直に受け止めてしまったようだ。
「…い、嫌じゃ…」
マズイ!心の目尻に大粒の涙が浮かび上がる。
「う、ひっく…。うぇぇぇぇぇぇぇぇん!」
ついやりすぎたか…。あ〜。泣かせるまでいじめるつもりはなかったんだが…。
しゃくりあげながら、しかし彼女は、より強くしがみ付いてきた。
「ぐす…此方はこんな女じゃ。…黛のように男を立てる術も知らぬ。椎名のように男を喜ばせる術も知らぬ。
じゃから、従順な女が、色香のある女が欲しいなら、そのような愛人を作ったとて此方に咎める権利はない…。
…じゃが大和には嫌われたくないのじゃ!此方のことは嫌いにならないで欲しいのじゃ!」
…あれ?何か凄い事言われた。で、凄く俺の鼓動も高鳴ってる。
でもそれは男としての本能だけではなく、強烈な庇護欲も掻き立てられてくる。
心の腰を押さえつけていた腕を解き、彼女の背中に優しく廻す。
「ごめん。やっぱり、無茶振りしすぎた。それに今のままでもちゃんと可愛いし、お前だけをずっと大事にする」
「…やま…と?」
- 335 名前:不死川大和の調教4[sage]投稿日:2009/10/07(水) 18:12:42 ID:0ZmJ0wek0
- コイツはやっぱり笑っているシチュエーションが一番可愛いしな。
いつも通り、ちょっぴり自信過剰なくらいな笑顔が好きになったんだし。
…ちょっぴり弄って涙目になってる顔も愛らしいが、真剣泣きされると結構キツイしな。
「少し考えれば判ることだよな。心は誰よりも大事な娘なんだから大切にしないと。
ちょっと強く叩きすぎちゃったかな。ごめん」
でも空いた手は、頭ではなくお尻の方に伸びている辺り、自分のスケベ心も大したものだと思う。
さらに、ちょっぴり菊門周辺に指を伸ばしてしまうのも、やはり本能というか性癖なので仕方ない。
「っふぅ…尻よりも、頭の方を撫でてほしいのじゃ。このセクハラ魔人め」
甘い声を出しつつも、涙に濡れた目を吊り上げて抗議する心。
改めて頭の方に手を伸ばし、柔らかく艶やかな髪の撫で心地は秀逸だなと改めて感心。
「あふぅ…」
心地よさ気に目を細める彼女。
「やっぱり、可愛いよな」
「…当たり前じゃ。此方を誰じゃと思っておる」
長めのキスをしてやると、強張っていた彼女の身体から力が抜けた。
やっぱりこのお嬢様は優しく、甘やかしたセックスの方が向いているのだろう。
鎖骨の辺りに舌を這わした時には、彼女の身体が火照り、トップギアまで入ったようだ。
「今度は、優しく入れる」
「入れる穴を違えるでないぞ」
じっとりと睨まれた。でも5ラウンドこなして心の理性が飛び始めた時に、後ろを責めてみたのは内緒…だった。
ちなみに俺は知らなかった。この一部始終が不死川の家の者達に知られていた事に。
『聞いたか。執事から次期当主に成り上がった直江大和の話しだが…』
『ああ。平民上がりにも関わらず、あの心お嬢様に奉仕させ、挙句にはお仕置きで泣かせたとか…』
『それどころかアナル開発までしたらしいぞ…。あの無駄にプライドが高いお嬢様相手に』
『俺達に出来ないことを平然とやってのけるッ!そこに痺れる!憧れるゥ!』
あの後、俺が婿養子となって不死川の家督を継ぐことに反対していた勢力まで、妙に尊敬が篭った眼差しを向けてきた。
その結果として不死川家において地盤を固めることに成功したのであった。
<了>
- 336 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/07(水) 18:43:54 ID:nsfGTGzx0
- 乙です!
心がかわいすぎる!!!
- 337 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/07(水) 20:50:29 ID:AW1amCTi0
- 不死川家の家族構成ってどうなってんだろうな
- 338 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/07(水) 21:01:11 ID:khxvAeWQ0
- 乙です。
心がかわいすぎだ。
つよきすキャラとかも出てきてほしいな
- 339 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/07(水) 22:47:30 ID:JqKXIP/Q0
- 乙です。
心ルートが待ち遠しい!
- 340 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:22:15 ID:fUOkbRGm0
- よーし、オラも夜勤明けで眠い目こすりながら投下しちゃうぞー
- 341 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:22:49 ID:fUOkbRGm0
-
川神を震撼させた騒動から、いくつもの季節が廻り、何度目かの春が訪れた。
外は暖かな陽気、桜前線が、ここ川神にも到達した頃。
「うー、早く早くー!ボクは急いでるんだー!」
「るっせぇな、お前がいっつも財布だの何だの忘れ物すっから世話焼いてやってんだろーが!!」
「……ウィー」
九鬼家の屋敷は、今日も騒がしかった。
「ふはははは!!今日も騒々しいな!!」
「これは英雄様ッ、申し訳ありませんでした!!」
突如扉を開けて登場した主君を見て、忍足あずみは手に持っていたカバンを目の前の少女に手渡した。
「ユキ、ちょっと一人で支度していてくださいねっ☆」
「あいあいさー♪」
カバンを受け取った少女、榊原小雪は、ご機嫌に鼻歌を歌いながら支度を続ける。
荷物を無造作にカバンへ詰め込む姿が、支度をしているように見えるかは別として。
- 342 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:24:09 ID:fUOkbRGm0
- 「英雄様、お仕事の妨げてしまっていましたか?」
「なーに構わぬ、我もちょうど小休止しようと思っていたところだ!!」
「それでは、給仕にお茶を淹れさせますねっ☆」
「我が所望するは香り豊かなアールグレイよ!!それ以外は飲まぬぞ!!」
「仰せのままにッ!」
「うむ!……それにしても」
英雄の目線の先には、楽しげに荷物を選別する小雪の姿があった。
「この屋敷に来たときには、落ち込んでばかりだったというのにな」
「私たちが話しかけても、部屋の隅っこに座り込んでばっかりでしたからね」
「うむ。そしていつも泣いていた、何枚もの写真を眺めながらな」
「英雄様のお声に反応しないこともありました」
「しかし許そう、王は常に寛大であるからだ!!」
「さすがでございす英雄様ぁっ!!」
「ふははははははは!!王としては当然のことよ!!」
この二人の話が、10分に一度は脱線することも相変わらずである。
- 343 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:27:41 ID:SQB8GtWSO
- ヌ!
- 344 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:29:29 ID:SnCkmvX70
- 「これも貴様らの、そしてあ奴らの功績よ!!褒めてつかわすぞ!!」
「もったいないお言葉でございますぅっ!」
部屋中に響くほどの声で会話する二人に、小雪が駆け寄る。
「ねえねえヒデー!ヒデー!」
「こらこら、『様』をつけないとまた関節捻っちゃうぞっ☆」
「許す!!そしてなんだ、小雪!!」
「この服、どうかな?似合うかな?どうかな?」
「よく似合っているとも!!この我が断言してやる、自信を持つが良い!!」
「わーい、やったやったー!」
そして小雪は爛漫に笑いながら、服の裾をひらひらさせる。
あの頃の、あの二人の横にいた時のように。
「それにしても、見事なはしゃぎっぷりですね」
「せん無きことよ、何せ今日は待ちに待ち焦がれた日なのだからな!」
「そうですねっ☆」
- 345 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:31:33 ID:SnCkmvX70
- 「では我は仕事にもどる!!あずみッ!!」
「はいっ!!」
「小雪を見送ったら我の補佐に就け!!明日には大事な用が控えているのでな!!」
「了解しました、英雄様っ!!」
退室する英雄の、気迫に満ちた背中を見送る。
今までも、これからも、多くのものを背負う背中を。
「それじゃ、いってきまーっす!」
「オイだから財布忘れんなっつってんだろゴルァ!!」
同日、某所、某施設の前。
「あー、シャバの日差しが眩しいぜ……頭皮に染みる」
「今日もよく光を反射しています。絶好調ですね、準」
「これは健康のバロメーターじゃない、犬の鼻の湿り具合みたいに言わないでくれ」
「でも私は、準の頭を見れば健康具合が把握できます」
「そいつは驚きだ」
- 346 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:33:45 ID:SnCkmvX70
- 暖かな春の陽気の中。
葵冬馬と井上準は、舗装された人気の無い道路に立っていた。
「いやいや、お外はすっかり春だねぇ」
「ええ。やはり桜は、こうして見上げるのが一番美しいです」
「テレビじゃ映せない、ラジオでも流せない、か」
「おや準、あなたの出身は南国ではなかったはずですが」
いつも通りのとりとめの無い、つかみ所も無い会話。
胸中にある多くの感情を二人が共有している以上、それを口にする必要も無かったから。
「さて、そろそろでしょうか」
「こっちから行っちゃ駄目なのか?」
「迎えに行く、という話ですから。ここは素直に待ちましょう」
そうして、桜の花びらが散る道に立ち続け、数分後。
「っ……トーマー!!準ー!!」
- 347 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:35:56 ID:SnCkmvX70
-
「おや、来てくれましたね」
「おう、もう少しで桜の妖精さんと同化するところだったってウゴォ!?」
そのまま駆け寄り、二人へ飛びつく。その姿は、とても微笑ましかった。
ただ、微笑んで受け止めるには、小雪の脚力が強靭すぎたのだが。
「俺は今、すさまじい感動と衝撃を受けている……主に後者は物理的なあれだけどな」
「ねーねー、遊園地行こー!!」
「出てきて一番にそれかよ!」
「こーら、準」
「んん?」
たしなめる役の準がツッコミを入れ、甘やかす役の冬馬が小雪の頭を撫でる。
頭を撫でられているその肩が、小さく、震えていた。
「今日はユキのわがままを聞いてあげる日、ということでどうです?」
- 348 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:40:26 ID:SQB8GtWSO
- さる食らったorz
- 349 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:41:15 ID:n4+0gcgU0
- 「あー……参ったねこりゃどーも」
「ふふっ、私も少しぐっときてしまいました」
「おいおーい、本当に参ったね……それじゃ俺だけ泣けねぇじゃねーか」
「たまには良いではありませんか、三人一緒に」
そして、少しの間。
三人は、肩を寄せ合って、三者三様に、泣いた。
「いやー、なんか恥ずかしいなマジで」
「あのオジサンたちも、もらい泣きしてたよー!」
小雪の言葉に振り返って見れば、門の横に立つ看守二人。
バツの悪そうにそっぽを向きながら、目じりを手の甲で擦っていた。
そんな看守に、ぺこりと頭を下げて、三人は歩き始める。
「わーい!わーい!トーマー、準ー!!」
「……はい。ただいま、ユキ」
「おう。世間の厳しさ乗り越えて帰ってきたぜ」
- 350 名前:【桜と再会、再出発】[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:43:24 ID:n4+0gcgU0
- 「そういや、出迎えはユキだけかい」
「うん、ボクだけだよー!」
「そうか……まあ、それもしゃーねえか」
英雄に付き添われ、出頭する前。
あの場にいた、直江大和と風間翔一、椎名京とは、少し話すことはできたけれど。
それ以外の人々のことを考えて、準は小さく溜め息を吐いた。
「ぬ?どーしたのさ、準?毛髪のことで悩み?」
「いや毛髪ねーだろ!見ればわかるだろ!」
「ふふっ、大丈夫ですよ準」
そんな準の様子を見て、冬馬は笑いながら携帯の画面を見せる。
そこには、いつの日か、屋上で交換したメールアドレス。
送信者は、あの日自分たちを止めてくれた、男の名前だった。
「どうやら我々は、気を遣っていただいたようです」
- 351 名前:【桜と再会、再出発】[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:45:41 ID:n4+0gcgU0
- 「うん!明日、みんなで遊ぶんだよー!」
「……川神学園の正門前とは、あいつらも粋なことしやがるねぇ」
「英雄も、毎日激務があるというのに来てくれるそうです」
「今日中に一段落つけるんだー、って頑張ってた!」
「しかしユキが、俺たち以外の奴と遊ぶのが楽しみだとは意外だぜ」
「いつもなら、私たち三人だけで良いと言っていましたしね」
「うん?ボクも普通に遊ぶよー?」
「ほほう、そうなのか」
冬馬も、準も、知らなかった。
いつも、限られた少ない時間で話すことは、互いの体を気遣うことばかりだったから。
「うん!ボクが、今一番仲良しなのはミヤちゃんなんだー!」
「……みや、ちゃん?」
「あと、大和やワン子も、遊びに来てくれるんだよ!まゆまゆは、お土産持ってきてくれる!」
「彼らが、ですか」
「モモちゃんとクリちゃんは、あまり来られないんだけどー。あ、あとねー!」
- 352 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 09:52:13 ID:SQB8GtWSO
- ヌヌ
- 353 名前:【桜と再会、再出発】[sage]投稿日:2009/10/08(木) 10:00:16 ID:ZQ/v2hZ60
- 言葉が出なかった。
それは、救われた者の、救われなかった者に対する、負い目もあるのかもしれない。
救うことができなかったことへの、罪悪感もあるかもしれない。
それでも彼らは、自分たちを止めてくれただけではなく、
小雪に手を差し伸べ、支え、共に歩んでくれた。
「これは……まったく、感謝のしようがありませんね」
「恩を返し切ろうにも、その頃にはお爺ちゃんになってそうだぜ」
「少しずつでも返していきましょう。時間は、たくさんあるのですから」
「おう、ちげぇねぇ」
「みんなと遊ぶのは明日だから、今日は三人だけで遊ぶんだー!」
「ははっ、そいつは楽しみだ……あー、2-F委員長は来ねーのかな」
「本当に、準は相変わらずですね」
「これが偽らざる俺の姿だ。これだけは何があっても変わることはない」
「うー、全然かっこよくないよー」
小雪はそう言いながらも、脇に抱いた二人の腕をぐいぐいと引っ張る。
- 354 名前:【桜と再会、再出発】[sage]投稿日:2009/10/08(木) 10:03:35 ID:ZQ/v2hZ60
- 「それじゃ、遊園地に出発ー!」
「ちょっと待ってくれユキ。俺たち、ほとんど手ぶらなんだが」
「大丈夫だよー、準の通帳は持ってきてるから!」
「用意が良いね!っていうかなんで俺だけ!?」
「まあまあ、後で返しますから。今は三人で遊びましょう」
「そーだ!そーだ!」
結局、この二人がこう言っては、賛同するしかない。
まあ、準も何だかんだでノリ気ではあるのだが。
「あー、へいへいわかったよ……とことんお供するぜ、若」
「イェーイ!それじゃ、出発ー!」
「はい。それと準、出てくる前に言った言葉をもう忘れてしまったのですか?」
「ん?……ああ、すまん。どうも、まだ慣れなくてなぁ」
「いけませんよ。私たちは『親友』なのですから」
「トーマー、準ー!はーやーくー!」
先行く少女にぐいぐいと腕を引っ張られながら、満開の桜の下を三人は歩く。
- 355 名前:【桜と再会、再出発】[sage]投稿日:2009/10/08(木) 10:06:45 ID:ZQ/v2hZ60
- 「では行きますよ、準」
「ん……おう。行くか、冬馬」
これから先、きっと困難なことも多くあるだろうけれど。
今の自分には、この三人だけではなく、共に歩んでくれる多くの仲間がいるから。
恐れることなく、皆で、新たな出発を。
「勇往邁進、ですね」
「おーっ!」
「おう……ユキ、頭をバシバシ叩くのはやめてくれ」
彼らなりの、川神魂を胸に秘めて、歩き出す。
【終】
- 356 名前:【桜と再会、再出発】[sage]投稿日:2009/10/08(木) 10:10:39 ID:ZQ/v2hZ60
- 初投稿とはいえ、色々と見苦しい点ばっかりで申し訳ない。本当に申し訳ない
三人が再会するCGを見て、ふと妄想してしまったお話でした。
- 357 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 11:21:36 ID:jhM7+PWT0
- 乙です。
ユキが攻略できないのはバグですね
- 358 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 12:43:51 ID:aiegH4XmO
- qualityの高さは維持されてますよー
小雪もいいがやっぱり姉成分豊富な辰子ルートが…
- 359 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 15:57:59 ID:cZBwWgyX0
- 乙しちゃう系
モモ姉さんといちゃいちゃしたい
- 360 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 17:03:38 ID:IEC8gdCa0
- 姉さんと辰子の弟取り合いも面白そうだな
- 361 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/08(木) 18:43:19 ID:7r42Nirn0
- >>293
今更だが鵺の説明を読んで逆十字闘技思い出した
- 362 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/09(金) 00:06:13 ID:4i8dvWG00
- 乙です。
そろそろ乙女さんとかも登場してほしい
- 363 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/09(金) 13:28:25 ID:tBVIkexc0
- タカヒロ的にあの3人の関係はあくまで家族なんだろうな
マテブの冬馬の項目でも念を押してたし
- 364 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/09(金) 17:29:42 ID:HD7Q69Bk0
- 心かわいそすwww
- 365 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/09(金) 17:31:13 ID:HD7Q69Bk0
- うおっ リロードし忘れていた・・
しかし定期的に投下されてるのは嬉しい限りだな
- 366 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/09(金) 18:29:57 ID:MjLlBMKZO
- 本気で毎夜の楽しみだからな
- 367 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/10(土) 00:56:40 ID:A3Y8O2960
- 遅くなったけど辰子モノ投下
- 368 名前:これから・1[sage]投稿日:2009/10/10(土) 00:59:40 ID:A3Y8O2960
- 川神院。武道の鍛錬に励む多くの修行僧がこの寺で生活している。
最近、修行僧たちが寝泊まりする部屋とは別に
少し離れた場所に新たに一部屋が生活の場として設けられた。
ユートピア騒動後、川神院に引き取られた、板垣三姉妹の部屋である。
「は、あっぅ……やま、と、くぅん……う、ううん……」
深夜。その部屋から漏れる、吐息混じりの媚声。
「……あーもう!」
「わひゃあ!?……あ、あれ?……て、天ちゃん、起きてたー?」
「タツ姉に起こされたんだよ!部屋同じなんだから、一人エッチやめてくれよー!」
「……うるさいよ、二人とも!しっかり寝ときな!」
「う……ゴメン、アミ姉」「あ、あははは……ゴメンね……」
(やれやれ……しかし、タツのヤツは重症だねぇ。罪な男だ、直江大和……)
川神院の修行僧は、基本的に土日以外は外出できる自由時間がない。
板垣姉妹も当然同じ扱いになっていて
いくら辰子が大和に会いたいと思っていても、思うようにはならないのだった。
こっそり抜け出しても、辰子の大きな気を探りだされてすぐに見つかる。
それでは、と土日に島津寮に押しかけても
避けられているのか大和の気配すら感じられない。
(何とかしてやりたいが、さて……)
どうしたものか、と考えあぐねる亜巳だった。
- 369 名前:これから・2[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:02:41 ID:A3Y8O2960
- 「……そろそろ寝るか……おやすみ、ヤドン、カリン」
一通りの日課を終え、寝床の準備を始めたとき
コン、と何かが窓にぶつかった。
虫でも飛んできたか?と窓に目をやると
(ハァイ)
!板垣亜巳が、窓の外の暗がりで手を振っている。
目を凝らして周囲を確認……一人だけ、か。
今さら、襲ってきた、ということでもないだろう。
とりあえずちょっとだけ窓を開けると、小声で囁いた。
(何やってんすか!川神院で、修行中のはずでしょ!)
「おや、中にも入れてくれないのかい?つれないねぇ、あんなに可愛がってあげたのに」
(シーッ!クリスとかまゆっちとか、皆寮にいるんですよ!ここでもめごとは……!)
「もめる気はないさ。アンタが部屋の中に入れて、話をさせてくれるならね」
(わかりました、わかりました……しょうがないなぁ、もう)
窓を大きく開け、板垣亜巳を招きいれる。
こんなところ、京に見つかりでもしたらエライことになるぞ……
「どうやって抜け出してきたんすか?」
「アタシは気の操作が得意でね。気配を絶つこともできるのさ。
だから、今ここにいることを、他の連中に気取られる心配はないよ。
それで……ここまで来たのは、タツのことなんだけどね」
- 370 名前:これから・3[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:05:41 ID:A3Y8O2960
- やっぱり、その話か。
アジトを脱出するためとはいえ、俺に好意をもっていた彼女とエッチして
そのまま逃げ出してきた、いわばヤリ逃げ状態。
それでも辰子さんは俺に変わらず……いや、それ以上に好意を抱きつづけている。
このまま会っていれば、押しきられてしまう可能性もあると
京が板垣姉妹が出てきそうな土日になると
俺を朝から遠くまで引っ張り出しているので
このところは顔も見ていなかった。
「アンタ、土日になるとここにいないだろう?……タツから、逃げてるのかい?」
「いや、たまたま、このところ土日に色々あって」
「どうだかねぇ……タツも天もね、ああ見えても男にはウブなんだ。
そのバージン奪っておいて、後は知らん顔ってのはさ……
姉としちゃあ、許せないんだよ!」
「うっ……い、妹思いなんですね」
「茶化すんじゃないよ。さあ、どう責任取ってくれるんだい?」
「そ、それは……」
(お、困ってる困ってる、フフフ……ちょっとイイね、このボウヤ)
「アンタに惚れてるタツを、利用するだけ利用して
その気持ちを踏みにじった……男として、どうなのさ?」
「いや、アレはそっちの悪行を止めるために仕方なく……」
「仕方なくで、3Pで後ろまで決めちゃったわけかい」
- 371 名前:これから・4[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:08:44 ID:A3Y8O2960
- イカン、ヤっちゃった既成事実がある分コッチの分が悪い。
「そもそも、アンタ全然タツに気はないのかい?」
「……」
全然ない、と言ったらウソになる。
「とりあえず、次の土曜日、タツに会ってやっておくれ。
ここにいてくれれば、タツのほうをよこすからさ。
そのとき、ハッキリさせてやっておくれよ。ダメならダメでもいいからさ」
「わかった……その、全然ダメ、というわけじゃないんだ」
「ん?どういうことだい?」
「悪人だったけど、改心するために川神院にいるわけだし
だいたい辰子さんはそれほど悪って感じはなかった。
まっとうになってくれれば……その、考えてもいい……と、思う」
「まっとうに、ねえ……ソイツは、一番難しい注文かもしれない。
まあ、会ってくれるんなら、礼は言っておくよ。タツにはアタシから伝えておく。
……あの子のこと、頼んだよ」
珍しく穏やかな笑顔で、板垣亜巳は夜の闇の中に消えていった。
「……やれやれだな」
「ほんと、シツコイ姉妹だな、舎弟」
「困っちゃうよね……って、えええええ!?姉さん!?」
- 372 名前:これから・5[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:12:00 ID:A3Y8O2960
- 「よ。いやー、亜巳もまだまだ修行が足りないな。
気配探知されなくなるほどには、気を消しきれてはいなかったのさ。
抜け出した時すぐ気づいたんで、こうして尾けてきてみれば、ってわけだ」
「今までどこにいたのさ」
「ドアの外で聞き耳立ててた。ケシカランことを始めたら混ざろうと思って」
アンタがケシカランわ。ていうか、勝手に寮に侵入しないでほしい。
「で、聞いちゃったわけだが」
「何を?」
「何を、ってな……お前、辰子とヤっちゃったのか?」
……しまった!
あれはあの場限りのことで3人以外には秘密にしておきたいなー
と一応口止めはしておいたのに全く無駄に!
「どーなんだ大和?捕虜の分際で3Pとか後ろ決めたとかマジなのか?
そりゃあ辰子だってお前が恋しくなるだろうなぁ……この、エロ軍師め」
「いや、あれはさっき亜巳さんにも言ったけど脱出のためにやむをえず!」
「そこまでヤってるとなると、あの晩の上書きじゃ足りてないかなー」
「めめめめめめ、めっそうも」
「……とりあえず、京呼ぶか」
「それだけはご勘弁を!!」
- 373 名前:これから・6[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:15:02 ID:A3Y8O2960
- 「まあヤっちゃったものはしょうがないとして」
「……スイマセンデシタ」
さんざん俺をボテくりまわして少しは気がすんだのか
姉さんがどっかと腰を下ろす。
……這いつくばった俺の上に。
「真面目な話、辰子のことはどうする?会ってやるのか?」
「まあ、約束だし……確かに、このままじゃあんまりかな、とも思う」
「そっか……ケジメは、つけないとな。
とりあえず、今夜は帰る。上書きしちゃっても、いいんだけどな……」
「え」
それは、姉さんと俺が、姉と弟ではなくなるということで。
「それと、明日は、京には私がついていてやるから、その辺は心配するな」
本気かどうか確かめようとしたが、話題を切りかえられた。
「ありがと、姉さん」
ごまかされた気もするが、京のことが気がかりではあったので礼を言っておく。
「姉さん、か……そうだ、お前は、私の弟だ。私のものなんだ……
このまま、お前が辰子を選んだりしたら……私は、何をするかわからないぞ」
この人の場合、本当にやりそうで怖かった。
- 374 名前:これから・7[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:18:02 ID:A3Y8O2960
- 「やーまーとーくーん!遊びに来たよー!」
そして、翌日の土曜日。話通りに板垣辰子が島津寮にやってきた。
別に遊びに行くとは言わなかったはずだが
まあ、それはまだいい。許せる。
「ねえねえ、これからどこに行くー?」
「いや、今日はその……話がある……んだけど」
「どんな話する気なのかなー、ウチの弟は」「ね。大和のお手並み拝見だね」
……この辺がなんというか、よくわからない。
「なんで二人がここにいるのさ!?」
辰子さんに、姉さんと京がついてきていた。
「監視だ。弟が悪い女とこれ以上悪いことしないように」「もしくは一緒に悪いことするために。クク」
「姉さん……京についていてくれるって言ったじゃん!」
「ちゃんと一緒にいるじゃないか」「ねー?」
確かに姉さんは「京についている」けど、これじゃ意味がない。
かといって、この二人の追跡から逃れられるわけもない。
「アタシはべつに一緒でもいいよー」
悩んでいるうちに辰子さんがOKしてしまい
こうして、奇妙な四人組で出かけることになった。
- 375 名前:これから・8[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:21:07 ID:A3Y8O2960
- 柔らかな日差しの中、多馬川のほとりを4人で歩き出す。
「えへへー……えい!」
歩きながら、俺の右腕を辰子さんが抱える。
むに、っとボリュームのある胸が腕に押しつけられる……
「ムム」
すかさず、左腕を京が抱きかかえる。
「んん?」
さらに姉さんが、背後から抱きしめてくる。
…………
「歩きづらいわ!ちょっと全員離れて!」
傍目には、すげーうらやましいハーレム状態なんだろうが
こんな一触即発のハーレムはイヤだ。
巻きこまれたら、一般人の俺は命がいくつあっても足りやしない。
「この際だから言っておくけど、京」
「ん?」
「お友達のままで。で、姉さん」
「なんだ、弟?」
「姉貴分のままで。OK?」
- 376 名前:これから・9[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:24:07 ID:A3Y8O2960
- 「ずっと言われつづけてきたセリフなのに、これはすごいダメージ……」
がっくりとうなだれる京。
「すると何か、弟……私たちより、辰子を……」
そして殺気をみなぎらせる姉さん。
その矛先が俺に向けられたのは初めてだ。
さらに
「わーい!大和君、やっぱり私がいいんだよねー!」
俺に抱きついてはしゃぐ辰子さん。
あわてて次の言葉を繋ぐ。
「そして、辰子さんは友達ですらない」
「え……?」
一言で、場の空気が一変した。
よろめくように辰子さんが俺から離れる。
「あは、な、何か……聞き違いかな、だって……え、エッチだってしたし!」
「うん。辰子さんが、友達じゃなかったからあのときはできた。
あの家から逃げ出すために、利用するためにエッチした。
そんなこと、友達相手にはできない。
辰子さんが友達でも何でもなかったから、できたんだ」
こんなシチュエーションで言うつもりはなかったが、勢いで言ってしまった。
まだ肝心な部分は伝えていないけど。
だがその前に、今度は辰子さんがうなだれていた。
- 377 名前:これから・10[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:27:09 ID:A3Y8O2960
- 「そ……っか。私、騙されちゃったんだ……あは、は……」
辰子さんの雰囲気が変わる。暗く、凶々しく、獣のように。
「ヒドイなぁ、大和君……私、初めてだったんだよ……?
初めて男の子を好きになって
初めて一緒にいてくれる男の子が出来て
初めて女の子の幸せ教えてもらったのに……」
「悪事をやめさせるためとはいえ、確かにヒドイことをしたと思う。
責められても仕方がない。ごめん、辰子さん」
「全部、ウソだったんだ……?
アハハ、アタシ、バカだから、簡単に騙されちゃったよ。
あーあ……騙されてたってわかったのに……
まだ君のこと好きだなんて、ホント、アタシってバカだなぁ……」
危険を感じた姉さんの殺気が、その矛先を辰子さんに変える。
俺との間に割って入ろうとするが、それを手で止めた。
「どうせなら、ずっと騙しつづけてくれればよかったのに……
でも、もうオシマイなんだね」
「騙しつづけるなんてできないけど、終わりにする気もない。
だって、辰子さんには、友達になってほしいんだから」
「え……でも、友達じゃないって……」
「だから、これから。これから、友達にならない、俺たち?」
そう。俺たちには「これから」があるんだから。
- 378 名前:これから・11[sage]投稿日:2009/10/10(土) 01:30:16 ID:A3Y8O2960
- 「あのときは俺たち争ってたけど、今はもうすんだことだし
辰子さんだって色々やり直してるわけでしょ?
だから、これから友達になって、二人の関係もやりなおしたいんだ。
……まあ、辰子さんが許してくれれば、なんだけど」
「でも……アタシ、友達って、いたことない……
どうすればいいか、わからないよ」
板垣ファミリーは家族だけが大事な人間で
他はどうでもいいって人たちだったからなー。
「そんなに難しく考えないでいいと思うよ。
一緒に遊んだり、食事したり、おしゃべりしたり、そんな感じで。
それと、友達になるのなら
辰子さんには、普通に社会の中でやっていける人になってほしい」
「それももよくわかんないなー。
アタシは、自分と大和君さえよければ、後はどうでもいいし」
「たとえばね、辰子さんが好き放題に行動して、他の人に迷惑がかかる。
すると、辰子さんの友達である俺に、文句がくるようにもなるんだよ」
「そしたら、アタシが黙らせちゃう」
「黙らせたヤツの周りからまた文句がくる。キリがないよ?
力ずくじゃダメなんだ。周りとうまくやっていかなくちゃ」
この辺、姉さんや京も意識して言ってるが、通じているやらいないやら。
「うーん……めんどくさいけど
そうしないと大和君が友達になってくれないなら、頑張ってみる」
- 379 名前:これから・12[sage]投稿日:2009/10/10(土) 02:14:58 ID:A3Y8O2960
- 何とか、うまくまとめることができたと思う。
辰子さんとは友達……ちょっとだけそれ以上の関係で、やっていけそうだった。
「じゃあ、行こうか、辰子さん」
「……タツ、でいいよ、アタシのこと。友達って、そうなんでしょ?」
「ハハハ、確かにそうだね……でも何か呼びにくいなー。
やっぱり少しお姉さんなんだし……タツ姉、かな?」
「!……うんっ!じゃ……これからよろしくね、大和」
「……おーい、私らすっかりおいてきぼりなんだがー?」
おっと、姉さんと京のことを忘れてた。
「えーと、これから七浜に遊びに行こうと思ってたんだけど、一緒に行く?」
「決まっている。監視は続行だ!」「もちろん、お前のオゴリだからな!」
「アハハハ、何だか賑やかだねー」
まだトゲのあった二人だが、屈託のないタツ姉の笑顔に、毒気を抜かれたようだ。
「はぁ……何だか、嫉妬するのも疲れてきた」「ま、友達だっていうならいいけどな」
姉さんや京も、ただの友達以上、女性として意識もしてる、そんな友達。
「これから」どう変わっていくか、それは俺にもわからない。わかっているのは
「すっごく楽しそうだねー、大和!」
ってこと。
- 380 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/10(土) 02:16:14 ID:A3Y8O2960
- 終わり。プチハーレムの予感。
規制が入ってヤレヤレだぜー。
- 381 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/10(土) 02:25:38 ID:b5R2E91d0
- >>380
乙でした
初期ハンドリングを間違えるとBAD逝き…
だが軍師なら…アナル軍師ならヤってくれる…
- 382 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/10(土) 02:29:21 ID:26wbTceA0
- 乙
しかし辰子と百代と京の組み合わせ、色んな意味で(性的含む)混ぜるな危険だな
- 383 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/10(土) 02:35:41 ID:mg5HASJG0
- しかし、絶倫軍師に不可能はない……ヤってくれるさ(性的な意味で)
- 384 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/10(土) 02:39:14 ID:mg5HASJG0
- あ、天使のフォローは?
- 385 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/10(土) 03:09:09 ID:ax3MYP9I0
- 乙
亜巳姉のちょっと妹思いなところが良かった
- 386 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/10(土) 04:22:03 ID:4Ix4FEHI0
- 流石、軍師w
並みの主人公じゃBADENDだったな。
- 387 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/10(土) 15:10:25 ID:xeqEWQ1O0
- 乙です。
次は天使をお願いします
- 388 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/10(土) 16:54:07 ID:/yd1KvJlO
- この超絶癒し系姉成分最高だ
海おねーちゃんを彷彿とさせる
癒やされるー(*u_u)
- 389 名前:不死川大和の決戦[sage]投稿日:2009/10/10(土) 23:17:55 ID:26wbTceA0
- >>332の後日談的なモノを捏造してみたので投下
- 390 名前:不死川大和の決戦1[sage]投稿日:2009/10/10(土) 23:19:41 ID:26wbTceA0
- 「…ただいま、心」
「…随分と遅かったのう」
心と式を挙げてから数年後のとある夜…。自宅の玄関を上がったところで嫁のジト目に迎えられた。
そりゃ、日付を跨いでからの帰宅となると、ご機嫌でいる訳がないよな。
「さて…遅くなった申し開きでも聞こうかの」
そう言いつつ、俺の胸元を軽く押す心。マズイ!これ、『崩し』じゃないか!?
頭では理解しているものの、重心を思わず前にかけ直す。…その瞬間右腕を掴まれ、次の瞬間には床に転がっていた。
うん。見事な一本背負いだ。…でも、重心を立て直さなかったら、足技で刈られていたな。
「こんな時間まで何をしておった!?しかも酒の匂いだけでなく、女物の香水の臭いがするとはどういうことじゃ!?」
まずいな…大変にご立腹だ…。投げる瞬間に袖を引いてくれて余りダメージはないが、きっちり残心も取っている。
説得に失敗したら、腕ひしぎのコンボに繋がるな、コレ…。
「勘弁してくれよ…。経産副大臣と会談するって伝えてただろ?」
「で、キャバクラなどに行ったと申すなよ?支払いは問題ない手法は当然とったのじゃろうな?
政党助成金で奢られたなどとあっては、末代までの恥じゃぞ」
「一応、ちゃんとした店の座敷に上げて貰ったし、こっちの飲み代は自腹切らせてもらった。
そりゃお酌の女性が付く店ではあったけど、心のお酌で飲む酒が一番旨い」
「…それならばよいのじゃ」
照れたのか、視線をずらしながら赤面する彼女。残心を解いて貰ったところ、彼女はすかさず正座し三つ指を突く。
「お帰りなさいませ…なのじゃ」
「ああ、改めてただいま。…ん」
二人して立ち上がり、帰宅のキスをする。
スーツを脱がせ、ネクタイを外してくれる辺り、彼女も素敵な奥さんになっているのは密かな俺の自慢だったりする。
「軽く何か食べるか?それとも風呂にするか?」
機嫌が回復したようなので、調子に乗って口説いてみる。
「あえてここは心一択で…」
「もう一度、投げられたいか?腹が減っていないなら、莫迦なことを言っておらず、風呂に入ってくるのじゃ!」
調子に乗ってたら怒られた。
「…全く、他の女の臭いを振りまきながら口説きにかかるなぞ、何を考えておるのじゃ」
- 391 名前:不死川大和の決戦2[sage]投稿日:2009/10/10(土) 23:21:40 ID:26wbTceA0
- ................................................................................................................
さて、心の言葉に従い浴室へ向かう。かけ湯の後に浴槽に浸かって寛いでいた頃、扉が開き、見慣れた人影が入ってきた。
「背中を流しに来たのじゃ、大和」
一糸纏わぬ姿に手拭いのみ持ってきた心。何と言うか、ほんと良い奥さんですよ、彼女。
................................................................................................................
強すぎず弱すぎない適当な加減で背中を擦ってくれるこの一時は、至福の時間だよな。
…一度、男の浪漫たる泡踊りをリクエストした事があったのだが、彼女の身体では無理があったことは内緒だが。
「…声に出ておるぞ、大和。何と不埒なことを申しておるのじゃ!?」
ごめんなさい。ここで投げられたら本気で洒落にならないので、勘弁して下さい。
................................................................................................................
「で、当初の予定どおり、あの男の下に馳せ参ずるのか?」
浴槽に身を沈める俺の膝の上で、寛いだ様子ながらも割と重要な話題を振ってきた。
ちなみにあの男呼ばわりされている人物、KOSの際には現役総理として名を馳せた国会議員のあの御仁である。
「ああ。勝ち馬に乗った方が楽かもしれないが、政策面では元与党の方が賛同できるしな。
…何よりあのオッサンは俺達にとって大事な友達だろ?」
解散総選挙が迫りつつある現在、不死川の当主となった俺の元に与野党問わず出馬要請が来ていた。
以前より政治に興味がある旨を現与党幹部の蘇我氏にも、野党幹部の元総理にも伝えてあったことが功を奏したのだろう。
もっとも、俺の腹も既に決まっていた。
「俺の目指す国政は、侍の魂を取り戻すことだ。友の為に立つことも、義として大切な行いだろ」
「しかし、意外じゃな。お前は理念よりも勝敗を優先すると思っておったが」
まじまじと俺の顔を覗き込んでるくる心の頬を撫でる。…吸い付くようなすべすべの肌って撫で心地いいよな。
- 392 名前:不死川大和の決戦3[sage]投稿日:2009/10/10(土) 23:22:58 ID:26wbTceA0
- 「別に負けるためだけに立つ訳じゃないさ。…九鬼や葵たちにも協力を取り付けた。
信義のために立ち上がる人間という筋書きで宣伝してもらう予定だな」
もちろん俺個人だけでなく、参加予定の政党にも支援をしてもらえる予定である。
「政策だけでなポピュリズムを煽る策も取るか…。大方のメディアを傘下にした九鬼まで取り込んでみせるとは…喰えぬ男じゃの」
驚いたのか呆れたのか、ため息混じりにぼやく心。
「政策勝負だって負けるつもりもないさ。俺や俺が合流する政党の政策を下策とみれば、むしろ切ってくれと頼んでもいる。
それに議席を取ることが勝利条件じゃない。この国を変えることが勝利条件だからな」
「…ややこしいヤツじゃの。まぁ良い。お前が当選しようがしまいが、此方はお前と共に歩むだけじゃ」
ニヤリと、勝気な笑みを心が浮かべる。
「お前は俺の勝利の女神になってくれると信じてるよ。さて政治の話の続きだが、不死川家も少子化対策を始めようか」
そう言いながら、彼女を抱き上げる。うん、小柄で華奢だから運びやすくて助かる。
「にょわ!?きききき急に何をするのじゃ!?」
「寝室に連れて行く。そしてナニをする」
じたばた暴れていた心も観念したか、再びため息交じりにぼやく。
「全く…。我ながらとんでもない男を婿にしてしまったのじゃ」
その後、心のため息が嬌声に変るまで、それほどの時間はかからなかった。
そして彼女が俺の子供を身篭る頃には、俺の胸には議員バッジが着けられていたことも追記しておく。
<完>
- 393 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/11(日) 00:08:29 ID:5oMXKXb+0
- 乙だバッキャロ!
- 394 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/11(日) 01:05:03 ID:QCyTymGz0
- 俺様が乙してやるぜ。
次こそはナイスガイが活躍する話を待ってるぜ
- 395 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/11(日) 02:22:44 ID:lgmd4OIX0
- ただひたすらに乙!
心が普通にいい奥さん……嫁に欲しいです!!!
- 396 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/11(日) 08:52:01 ID:UbnRs0w0O
- 乙なのじゃ
心スキーと辰子スキー百代スキーがいるな
- 397 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/11(日) 23:40:00 ID:1ADfLgFI0
- では天使を投下
- 398 名前:天使のスイング・1[sage]投稿日:2009/10/11(日) 23:43:01 ID:1ADfLgFI0
- 「よ、こんちはー」
最近、俺は土曜日になると川神院に足を運んでいる。
ランニングから帰ってきたらしい川神姉妹が
門のところで一息ついていたので声をかける。
「あ、大和ー!」「おー、どうした舎弟」
「いや、タツ姉にちょっとね」
ついこの間、改めて友達関係を築いたタツ姉こと板垣辰子に会いに来たわけだが
「チッ、またアイツにか」「なーんか最近の大和、辰子にベッタリよねー」
いきなり二人の視線が冷たくなる。
……この二人に声をかけたのはまずかったか。
だが無視して通りすぎるわけにもいかなかったろうし、仕方がない。
「そんなことはないぞ?ただ、土日ぐらいしか会えないから
せめてその時ぐらいは会いに来てあげようかと」
「ふーん……辰子なら厨房じゃないかな?お料理得意だから、手伝ってもらってるの。
……アタシも行くから、大和一緒に来れば?」
「お、そっか、サンキュ」
そういえば、家事スキルは高い人だった。
ワン子と一緒に寺の奥のでかい厨房に向かうが
「あ、テメーよくもノコノコと!今こそケツの恨み晴らしてやらぁ!」
いきなり後から罵声が飛んできた。
- 399 名前:天使のスイング・2[sage]投稿日:2009/10/11(日) 23:46:01 ID:1ADfLgFI0
- 振り返って声のするほうを見るまでもない。
タツ姉の妹、板垣天使だ。
「ちょっと天!ここじゃ大和はお客なんだからね?
失礼があったら、ルー師範代に言いつけるわよ!てか、ケツの恨みって何よ!?」
「ケッ、またチクりかよ。ケツはケツに決まってんだろ!文句あんなら、直で言えやぁ!」
……ケツの話題はやめてくれないかなぁ。
好戦的な二人が火花を散らすが、心配するヒマもなくルー先生が飛んできた。
「こらこら、またケンカかネ?
いきさつがいきさつだけニ、別に仲良くしろとまでは言わないが
もうちょっと穏便にしてもらいたいネ」
「あ……すいません、ルー師範代」
ワン子がすぐにルー先生に謝るのに対し
「う……うるせーな……」
トーンダウンしながらも、天使は反抗的姿勢を崩さない。
「わかったのカネ、天?」
「う、は、はい……わかりました」
さすがの天使も、自分たちの師匠である釈迦堂刑部を倒したということで
ルー先生には頭が上がらないようだ。
「それと……まだゴルフクラブを持ち歩いてるのかイ?」
- 400 名前:天使のスイング・3[sage]投稿日:2009/10/11(日) 23:49:03 ID:1ADfLgFI0
- 言われてみれば、天使はゴルフクラブを脇に抱えている。
「これはもうウチのクセみたいなもんなんで……」
「でも、川神院には相応しくない武器だヨ。
似たような武器なら、槌とか、狼牙棒とかあるだろウ?」
「ウ、ウチはこれがいいんです!これだけは、勘弁してください!」
「まあ、どうしてもダメ、というわけではないが……」
「……失礼しまっす!」
「あ、ちょっと待ちなさイ!……やれやれ、我の強い娘だ。
私のことを認めてはくれたガ、なかかか心を開いてはくれなイ。困ったものだ」
「なんでゴルフクラブなんですかね。愛着があるとか、かな」
「でも、アタシと戦ったとき、アタシあの子のクラブ折ったわよ?
あれはまた別のみたいだから、愛着とかじゃないんじゃない?」
「ふむ……直江。君になら、彼女も心を開きそうに思うんダ。
いろいろ聞きだしてみてもらえないかナ?」
「俺っすか」
心を開くどころか、アナルを開いてしまったおかげで恨まれているのだが。
さっきだって、いきなり襲われそうになったし。
とはいえ、気になるといえば気にはなる。
「わかりました、心がけてみます」
- 401 名前:天使のスイング・4[sage]投稿日:2009/10/11(日) 23:52:03 ID:1ADfLgFI0
- 「……大和もお人よしよねー。
まあ、ルー師範代の頼みじゃ、断れないって気もするけど」
「しかし、なんでゴルフクラブなんだろうな?
そんなに武器として優秀なのか、アレ?」
ルー先生と別れて、厨房に向かいながらワン子と話す。
「うーん……あれは攻撃用っていうより
相手の攻撃を受けたり流したりする、防御的な意味合いが強いのよね。
ただ、そのわりには構造が弱いのが欠点かなー。
アタシも、あれにこだわる理由はわかんない」
「ふむ……これは、姉妹であるタツ姉に聞いたほうがいいかな」
「そうね、辰子なら知ってるかも。なんたって、姉妹なんだもんね」
そんなわけで、厨房でタツ姉に聞いてみたのだが
「ううん、知らないー」
……この人のノンビリさは俺の想像の斜め上だった。
「だいたいでいいけど、何時頃からゴルフクラブ使ってたのかしら?」
「んー……天ちゃん、何時の間にかあれ使ってたよー。
けっこう前から、あれ持ち歩いてたような……
そんなことよりー、遊びに行こうよー、大和ー」
最初は俺もタツ姉と遊びに行くつもりだったのだが
気になってることが解決しないとなあ。
- 402 名前:天使のスイング・5[sage]投稿日:2009/10/11(日) 23:55:36 ID:1ADfLgFI0
- 「タツにそういうこと聞いても、ハッキリするわけないだろう」
「うひゃあおあ!?」「うわ、何よ!?」
いきなり、後ろから耳元に囁かれた。亜巳さんだ。
「あー、いい反応だねぇ。なんていうか……くすぐられるねえ」
俺の中の何が亜巳さんをくすぐるのだろうか。
……いや、知りたいわけではないが。
「はいよタツ、頼まれてた調味料、ここに置くからね」
「あ、そうだった……ありがとアミ姉ー」
タツ姉は亜巳さんが持ってきたスーパーの袋を持って、厨房奥へ。
「辰子ー、ちゃんとしまう場所わかってるのー?」
ワン子もそれについていってしまい、俺と亜巳さんが残された。
「……で、大和が気にしてるのは、天のゴルフクラブのことだっけ?」
「ええ、まあ。何だか、ゴルフクラブにこだわりがあるみたいなんだけど
亜巳さんは、その理由に心当たりあります?」
「……たぶん、思い出の品ってヤツなんだろうさ」
「思い出……ひょっとして、両親がプレゼントしたとか?」
「まさか。そんな親じゃなかったし、顔もろくに覚えてやしないよ。
あれはね、あの子が初めて、自分で手に入れた物なのさ」
- 403 名前:天使のスイング・6[sage]投稿日:2009/10/11(日) 23:59:14 ID:1ADfLgFI0
- 「自分で手に入れた?」
「まだガキの時分さ。あの子が小学校で4年のときだっけかねぇ。
アタシらは、もうその頃にはワルで通ってて、色々やらかしたもんさ。
でも、天はすばしっこいだけでまだ小さかった。
だから、アタシらにくっついてるだけだったのさ」
仲のいい姉、兄にくっついている末の妹か。
どこか微笑ましい気もするが
「ある日、天のヤツが一人でどこかに行って、ゴルフクラブをもってきた。
おおかた、河川敷で練習してるヤツから盗んできたんだろうね」
盗んで手に入れてたあたり、やはり微笑ましくはなかった。
「そんな金にもならないもの盗んできて、って
竜兵なんかはずいぶんバカにしたけど、あの子は手放そうとはしなかった。
一人の力で手に入れた、初めての獲物だったからだろうね」
……まあ、俺にも似たような思い出はある。
初めてバイトで稼いだ金で買ったヤドカリ水槽は、今でも使ってる宝物だ。
「その頃、アタシらはちょいと街のチンピラ集団ともめててね。
ある日、不意討ち食らって大勢に取り囲まれちまい、竜兵がヤバそうになったんだ」
「あの竜兵が?」
「アタシや竜兵が強いっていったって、所詮ガキだったからね。
ところがその時、それまで喧嘩のときには隠れてた天が
ゴルフクラブ振りまわして飛びこんできたのさ。デビュー戦ってわけ。
おかげで形勢は逆転して、チンピラどもを撃退することができたんだよ」
- 404 名前:天使のスイング・7[sage]投稿日:2009/10/12(月) 00:02:42 ID:1ADfLgFI0
- 「なるほど……ゴルフクラブにこだわる気持ち、わかった気がする」
「強くなければ生きていけない、そんな毎日だったからね。
ゴルフクラブは、そんな暮らしの中で
天が自分で見つけた、自分の強さの象徴なのさ」
「……今、天がどこにいるかわかる?」
「気を探ってみようか……道場の裏手にいるようだね」
「わかった、ありがと」
立ち去りかけたところで、亜巳さんに呼びとめられる。
「待ちな。アタシもアンタにききたいことがある」
「なに?」
「ついこの間まで敵だったアタシらに、なんでそうまで関わろうとする?」
「さあ……なんでかな。理由なんてわからないよ。
強いて言えば……放っておけないから、かな?」
「おかしなボウヤだね。でも……気に入ったよ。
コイツは……タツと天の面倒をみてくれる、礼、だ……」
「んんぅ!?」
ぐい、と体を引き寄せられ、あっという間に唇を奪われていた。
「ん…ごちそうさま……たまには、アタシとも遊んでおくれ。じゃあね」
- 405 名前:天使のスイング・8[sage]投稿日:2009/10/12(月) 00:05:59 ID:1ADfLgFI0
- 亜巳さんの言った通り、天はゴルフクラブを抱えて
道場裏の木の下に座りこんでいた。
「よう」
「……気安く話しかけんなボケ」
「そうツンツンすんなよ」
「どーせ師範代に言われて、ウチからこれ取り上げようとしてんだろ?」
ビシ、とゴルフクラブを俺に突きつける。
「最初はそのつもりだったけどな。でも、亜巳さんから話を聞いて気が変わった。
俺からも、ルー先生に頼んでみるよ。天には、これが必要なんだってな」
「な、なんだよ、物わかりのいいふりしやがって……騙されねーからな」
「別に騙そうとか思ってないぞ」
「どうだか……それよりオマエ、タツ姉と友達になったんだってな」
「ああ、まあな」
「……別にウチは、友達なんかいらねー」
「そうか。まあ、無理に友達にならなくてもいいよ」
「だったら、さっさとタツ姉と遊びに行けばいいだろ」
「ああ、今からそうするつもりだけど……一緒に来ないか?」
- 406 名前:天使のスイング・9[sage]投稿日:2009/10/12(月) 00:09:01 ID:DR953o+C0
- 怒っているのか照れているのかわからないが、天の顔が真っ赤になる。
「!だ、だから友達なんていらねーって……!」
「タツ姉が友達で、オマエはその妹。それで、誘う理由としちゃ充分だろ?」
「……ったく、気ィきかせて二人きりにしてやろうと思ってたのによ。
ひょっとしてアレか、二人きりでデートだとキンチョーしちゃうってか?」
「まあ、そういうこともあるかな」
「しょうがねー、ついてってやるから、感謝しろよ」
「そりゃどーも。そういや、ゲーム好きだったよな?
駅前のゲーセン、新台入ったぜ」
「マジか!?行く行く!
いやー、ここに押し込められてからゲームとか全然やってなくてさー。
もう退屈で退屈でしょうがなかったんだよなー。
なあなあ、新台って何?獣拳?」
はしゃぎながら飛びついてきて、俺の腕を取る。
こうしていれば、ちょっと元気なフツーの女の子に見えるかもしれない。
だが、半ば俺に抱きついているような自分の姿勢に気づいたのか
また顔を赤くしてパッと離れた。
(……ケツの恨みは、もういいや)
「んー?何か言ったか?」
「何でもねーよ!今度は、痛くならねーようにってだけ!」
- 407 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 00:10:31 ID:DR953o+C0
- 終わり。>>379からの続きってことで。
亜巳姉さんはどうしよう……
- 408 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 00:14:37 ID:tmTYq2Xz0
- 乙だ!
流れ的に姉さんも希望
というか是非!
- 409 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 00:37:14 ID:2iNxCpBk0
- 乙
なんだよこの天使、可愛すぎるだろ……
- 410 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 01:21:02 ID:R7A9LAqsO
- 乙
アナルを開くで吹いた
- 411 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 02:23:57 ID:8UgypUot0
- 乙!
ラストの天使がやたら可愛いw
亜巳姉さんの続きが期待できそうな行動がイカス
- 412 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 02:54:29 ID:Yiq1dfcT0
- 乙だバッキャロ!
天ちゃん可愛いな
やきもち妬くモモ先輩も見たいぞ
- 413 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 05:03:39 ID:vlQ2RpHi0
- おお、天さんもええのうええのう
しかし大和君はモテすぎだな
うらやましいヤツめ…!
- 414 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 10:02:01 ID:xBzDDHvg0
- 乙です
つよきすやきみあるよりもハーレム√捏造しやすい気がしてきた
- 415 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 14:11:35 ID:msN+pvi20
- 大和は女性陣に押し切られているようでしっかりイニシアチブは握ってるからな
あとはみんな距離が近い
個別ルートに進むまでもなく、またはヒロイン同士でも
- 416 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/12(月) 21:06:58 ID:XgCHYQHG0
- つよきすのなごみでないかな?
- 417 名前:Tricks for maid[sage]投稿日:2009/10/13(火) 00:35:27 ID:HXlIYi6B0
- なんとなく、あずみルートを捏造してみたので、投下
全く有り得なさそうだが
- 418 名前:Tricks for maid1[sage]投稿日:2009/10/13(火) 00:37:43 ID:HXlIYi6B0
- 6月を過ぎた頃、俺はある人物の事を思い浮かべていた。
忍足あずみ。九鬼英雄に使える腹黒メイド。
彼女にとって、英雄とそれ以外の人間の間には越えられない壁があると同クラスの井上準は語っていた。
ただし、逆に言えば強烈な忠誠心と、献身的な愛があってこその所業。
俺は心の底から思った。彼女を自分のものにしたいと。…しかしどうやって。
…簡単なことじゃないか。障害を取り除いて、彼女の心を取り込んでしまえば良い。
障害とは九鬼英雄に対するあずみの想いだろう。この想いを切り捨てざるをえない状況にしてやれば良いだけのこと。
…九鬼がワン子とくっつけば、外堀くらい埋める効果があるな。
なら、やりようがあるか…。
................................................................................................................
幸いにも、数日後に校舎屋上にて接触する機会が得られた。当然の様に、忍足あずみも近くに控えている。
「直江大和!珍しいな、貴様が我に謁見を求めてくるなど」
「まぁ、な。だが、その前に人払いを…」
当然、護衛に付くつもりでいるあずみの眉間に縦皺が走る。しかし反論する暇を与えず、九鬼からの指示が下る。
「よかろう。あずみ!しばらく下がっておれ!!」
「…了解です、英雄さま」
あずみが離れた事を確認して九鬼に耳打ちをする。
…彼女にもいずれ知られることだが、今邪魔をされると都合が悪い。
「お前、ワン子に気があるんだろ?アイツを大事にすると約束できるなら、俺もお前の恋路を手伝ってやろうと思ってな」
「何だと!!我は貴様の事を見直したぞ、直江大和!!」
…声でかいって。顔を顰める俺の様子を気にした様子もなく、喜色満面に俺の手を取り、ぶんぶん振り回す九鬼。
多分、この性格が引かれてる原因だよな。
- 419 名前:Tricks for maid2[sage]投稿日:2009/10/13(火) 00:39:43 ID:HXlIYi6B0
- 「…九鬼。ワン子を狙うなら、少し声のトーンを落とすことを勧める。アイツ、どうもお前のテンションが苦手らしい。
…逆に言えば、この点を改善すれば攻略できる可能性が高まるだろう。あとアイツは無類の鍛錬好きという事は知っているよな?
お前もスケジュールが合うようなら、見てるだけでなくて一緒に走りこんであれば、おそらく喜ぶぞ」
「なんと!これは貴重な情報、感謝するぞ!!」
こんな事を九鬼に吹き込んでいる俺を、遠くから冷ややかに射抜いている眼差し。当然、忍足あずみ本人である。
軽く前傾姿勢をとり、腕を身体の後ろに廻している辺りから、俺が九鬼に何かすれば抜刀しつつ飛び込んでくるつもりだろうな。
そんな彼女を尻目にいくつかの情報(ワン子の嗜好や性格面)を纏めたメモを渡してやる。
「フハハハハ!!感謝するぞ、直江大和!!!」
高笑いと共に去っていく九鬼と、それに付き従うあずみ。
…今は九鬼の従者で結構だが、いつか俺とともに歩ませてやるさ。
................................................................................................................
やがて夕暮れの河川敷。走り込みに専念しているワン子と、彼女の背中を追いかけている九鬼。
どうやら、俺の授けた策を実行しているようなだ。さらに、その姿を眺めているあずみの姿もその場にあった。
「おいガキ。一体、何を企んでいる?」
改めて敵意丸出しで睨みつけてくる。そりゃ、敵対関係のあるクラスの人間が接近してきたら怪しむだろう。
それ以上に、一介の平民が取り入ろうとしている…とも受けとられているかもしれないがな。
「九鬼に対して、お節介でも焼いてやろうと思ってな」
俺の一言に、驚きの表情を見せるあずみ。そりゃ驚くだろ。…俺もこんな日が来るなんて考えた事なかったし。
- 420 名前:Tricks for maid3[sage]投稿日:2009/10/13(火) 00:43:31 ID:HXlIYi6B0
- 俺の言葉にイラついたのか、屋上の時にも増してキツい視線を寄こしてくるあずみ。
まぁ勝手に自分の内心に土足で踏み込まれ、挙句、自分の恋路を邪魔するとまで言われてしまえば聖人君子でも腹を立てるだろう。
「…ガキが。何勝手に決め込んでやがる。しかも仲間まで売るなんざ男の風上にも置けないぞ」
「ガキで結構。惚れた女を手に入れるために、色々考えているものでね。
ただ、アンタを自分のモノにするために、ベストと思われる手段を試させてもらったさ」
ただしもっとえげつない手が考え付かない訳でもない。親父がお袋を落とした時は、こんな生易しい策ではなかったし。
「あと別にワン子にしても、アイツが誰と付き合うか決めるのは彼女自身の問題だ。
俺は助言こそするが、ワン子を口説き落とせるかは結局は九鬼次第だしな。…個人的には良いヤツだから報われて欲しいが」
これも本心だ。九鬼のヤツ、少々鼻につくが一本気で誇り高く、何より高貴なる者の義務を理解している男だからな。
そこまで言って、ようやくあずみから放たれていた殺気が収まった。主の想いと自分の想いを天秤にかけ、更に現状を整理しなおすことに集中することに決めたようだ。
「ま、アンタがアタイの事を冗談で口説いている訳じゃないってことは理解した。
英雄様が幸せになられるならお前の申し出も悪くはないかもしれないが…。…そこまで上手く事が進むかな?」
この返事だと保留ってことか?まぁ第一段階としては上等だろう。
…さて、あずみの視線を追って河川敷に目を移す。先頭を走るワン子に追いかける九鬼。更に併走する…源さん…!?
「なん…だと…」
何で源さんまで一緒になって走ってるんだよ?…まさか!?
「あのワン公、モテモテみたいだな…。ま、お前の策が成功するようなら、申し出も考えるくらいはしてやるさ」
手をひらひらを振りながら去っていくあずみ。
その後姿と、ワン子を追ってダッシュしている野郎二人の姿を見て、俺は頭を抱えざるを得なかった。あの漢が相手だと、九鬼といえど苦戦するぞ…。
結局、ワン子へ告白する権利を賭けて九鬼と源さんがミニ川神戦役で決闘、その陰でキャップが大儲け etc.。
片手で数え切れない位の騒動こそあったが、紆余曲折の末に、どうにかあずみと結ばれたことは追記しておく。
<了>
- 421 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 01:43:30 ID:MeWGe4V40
- 乙
なんていうか、色々とありえない気がするが
大和があずみに惚れる理由が書かれてないのがなんとも
- 422 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 15:36:21 ID:JjU4NLXP0
- 乙です。
ありえないというよりも、√の方向性だけで一番期待しているところが書かれていないのが残念。
>片手で数え切れないくらいの騒動
>紆余曲折の末にどうにかあずみと結ばれた
……いや、綺麗事はともかく、デレた?あずみを所望するw
- 423 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 15:45:30 ID:v5d4jy1r0
- なんか評論厨臭い流れになって来たぞ
- 424 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 15:45:56 ID:DJR59xh40
- いや、どっちかというと要望厨だな
- 425 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 16:45:19 ID:JjU4NLXP0
- 厨といわれるほど押しつけがましく書いたつもりはなかったのだけれど、
流れをぶったぎってしまって申し訳ない。スルーしてくれ
- 426 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 17:44:16 ID:yu1bctml0
- 乙です。
次はアゲハさんかな
- 427 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 17:56:04 ID:fDjtLukm0
- エロパロ板から流れてきました。
ここはSSの多い学校裏掲示板ですね><
しかし微妙な生殺しなのが多いですな。
- 428 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 22:13:21 ID:YDiOdMbJ0
- アゲハさんは見たくないな
やっぱり彼女はレンか小十郎とがいい
- 429 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 22:45:52 ID:f8jky3c30
- 小十郎が揚羽様を落とす可能性は
モロが京を落とす可能性ぐらいしか無いけどな
- 430 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 23:01:11 ID:tJltrhOk0
- 揚羽様と小十郎の関係は、レオと乙女さん的な流れになってほしいカモ…
>>417
乙です
- 431 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 23:03:24 ID:/d3gLhegO
- ここで姫のSSを熱く希望する
あずみルート気軽に読めて好きです。
乙なのじゃ
- 432 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 23:53:55 ID:ilVKnlAY0
- 書く人が書きたいの書いてくれたらそれでいんじゃがなあ
なんでもカムカムだぜ
- 433 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/13(火) 23:54:51 ID:2grqNJFOO
- >>429
圧倒的にモロの方の可能性が低いような
- 434 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/14(水) 02:57:38 ID:yqbNCGcb0
- 揚羽様√やると小十郎の可能性の無さがひどすぎて笑える
- 435 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/14(水) 03:00:36 ID:NztN4e3+0
- 京はどのルートの後日談でも辛抱強く大和空き待ちだからなw
- 436 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/14(水) 10:43:21 ID:e3qj5Ckl0
- 愛は!!馴れアイ!!
- 437 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/14(水) 11:31:42 ID:oF8WsC9UO
- 脇役の野郎達との会話が見たいってばよ!
- 438 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/14(水) 20:52:00 ID:hTKc/tHD0
- >>437
主が書けばいいんだってばよ!
- 439 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 00:12:08 ID:XQnxWhLA0
- 次は乙女さんとかも出てきてほしいな
- 440 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 01:25:13 ID:808H/MRz0
- だがマジ恋投下
- 441 名前:ハーレム・1[sage]投稿日:2009/10/15(木) 01:28:19 ID:808H/MRz0
- 「なー大和ー」
「んー?なに姉さん」
秘密基地でダラダラと時間を過ごす俺と姉さん。
最近は、こんな平和な時間が続いていた。
この質問が飛んでくるまでは。
「ハーレムって、どうやって作ればいいかなー」
「ぶほぁ!?」
コーヒー吹いた。
「あーあ、きったないなー、ちゃんと拭いとけよ」
「ゴ、ゴメン……って、いきなりなんなの一体!」
「だからー、ハーレム作りたいんだ私はー」
「はぁ……もう似たような空間は形成されてるじゃん。昼休みの屋上とか」
「アレはアレでいいんだが、ちょっと健全なんだよな。
もっとこう、ねーちゃんたちとエロいことしまくる、本格的なのを作りたいんだよ」
壊れてるなぁ、いろいろと。
最近は武道の対戦相手が現れなくて、欲求不満なんだろうが
そんな欲望の解消法は舎弟としては困る。
「とりあえず、俺をイジって気を紛らわせるがいいさ」
「ほーう。いいのかー?好き放題イジっちゃうぞー?」
- 442 名前:ハーレム・2[sage]投稿日:2009/10/15(木) 01:31:20 ID:808H/MRz0
- む、今日の姉さんはちょいテンパってるか?
姉さんが指をワキワキさせながら近づいてくる。
が、その指が俺に触れるか触れないかのところで
バン!と音を立ててドアが開いた。
「ストーップ!それ以上は独占禁止法違反ッ!」
訳のわからんセリフとともに京、登場。
姉さんは動じる様子を見せないが
たぶん気で京が来るのがわかってたので
止められるのを承知の上であんな行動をとったんだろう。
と思ったら。
「おーす京ー。一緒に大和イジろうぜー」
「了解!」
「ちょ、さっきは止めたじゃん!」
「独占じゃなければおk」
なにそれ。ワキワキと迫る指が二組に増えた。
「……これ、俺がハーレムなんじゃね?」
「む?」
姉さんのワキワキがとまる。
「だって、俺が両手に花なわけじゃん?これじゃ俺がメインのハーレムでしょ」
- 443 名前:ハーレム・3[sage]投稿日:2009/10/15(木) 01:38:06 ID:808H/MRz0
- 「むむ……じゃあ、私は大和をイジりつつ京もイジる。
ふふん、これで私のハーレムだなっ!」
変に対抗意識を刺激してしまったかもしれない。
「私は大和がイジれればそれだけでハーレムだよ」
なんか変形三すくみだ。というか、俺イジられるだけか?
それは男としてどうなのよ。
「お、俺だって姉さんや京イジっちゃうもんね!」
俺も指をワキワキさせてみる。3人でワキワキ。
はたから見たら、ただの変な人たちだ。
「お、な、生意気だぞ弟のくせに!」
ややたじろぐ姉さん。ワキワキは効果があったようだ。
「イジってイジってー!」
だが京には逆効果だった。ずずい、と迫ってきて……
むにゅ。
「おおう!?」「あふぅ」
ワキワキさせ続けていた俺の指が、京の胸をわしづかみに。
あー、いつも押しつけられたりしてるけど
こうして揉んでみるとやっぱり胸あるな京は。
うむ、これはいいものだー……ってそうじゃねえ!
- 444 名前:ハーレム・4[sage]投稿日:2009/10/15(木) 01:42:20 ID:808H/MRz0
- 「ちょ、こら離れ……て……?」
むにむにむにむにむに
京の指が俺の股間でワキワキしていた。
何時の間に!?
「ハァハァ……ここか?ここがええのんか!?」
「それオッサンとかが言うセリフだから!」
京の胸から手を離し、俺の股間をさする京の手を押さえる。
するとその手を掴み返され、胸に誘導される。
「ハイここ」
「ここ、じゃねえっての!」
それからは京と、まるで拳法の組み手のように
手を取ったり取られたり揉んだり揉まれたり。
が、川神院でも修行をしているという京が相手では分が悪い。
「むむむむむ……」
「姉さん、うなってないで京止めて!」
「うるさい、京ばっか触ってるくせに!」
「……は?」
「私のこともイジる、とか言ったくせに、全然何もしないじゃないか!ツマラン!」
- 445 名前:ハーレム・5[sage]投稿日:2009/10/15(木) 01:45:22 ID:808H/MRz0
- ……これもジェラシーなのか
それともハブられてすねてるだけなのか
どっちかわからんが、どっちにしてもキケンっぽい。
「せっかくハーレムへの第一歩を踏みだしたと思ったのに!
ただ見せつけられてるだけじゃないかコレ!」
「……だったら、モモ先輩も大和をイジればいい」
「や……やってやるさー!イェー!」
「いや待て。待ちなさい。落ちついて……!」
「もう遅い!川神流奥義!痺れ河豚!」
「なんだその必殺わばばばばばばばばばば!?」
ガッシと俺の股間を掴んだ姉さんの手からなんかビリビリががががが!?
「教えてやろう!気の力を電気エネルギーに変え
掴んだ相手を痺れさせる、川神院の奥義の一つだ!」
「あばばばばばかなぁっ!?」「モモモモモ先輩、わわわわ私まで痺れてるるるるるるるぅぅ!」
「どーだ、指でワキワキするより痺れるだろう!」
「こここここうなったら!」「ははははは反撃っ!」
俺と京が、全身の痺れに耐えながら姉さんに手を伸ばす。
「なに……ちょ、触るなあああああああああああ!?」
- 446 名前:ハーレム・6[sage]投稿日:2009/10/15(木) 01:49:25 ID:808H/MRz0
- 気がついたら、3人ともソファでぐったり。
「……この奥義、いまいち使えないな。自分にも電気が来ちゃうとは思わなかった」
使える使えない以前に、あのネーミングはどうかと思う。
「で……これ、どうするのさ」
3人で顔を見合わせる。
「……誰か来る前に何とかしたいね」
「……すまん、ちょっと遅かったようだ。ワン子が、ここに向かってきてる」
「えー!?」
「しょうがない、適当にごまかそう」
とか言ってるうちに、ワン子登場。
「やほー!……って、ええええええ!?
な……なんで皆パーマかけてるの!?」
まあ、普通驚くわな。いきなり3人ともアフロへアーになってたら。
「……これからな、アフロが流行るらしいんで、ちょっと試してみた」
電気のせいで縮れたアフロ頭が、3つ並んで苦笑い。
「そ、そーなんだー……なんか、ハーレムの黒人みたいね!」
『ハーレムはもういいよ!』
- 447 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 01:51:39 ID:808H/MRz0
- 終わり。絵は想像しない方がいいシリーズその2。
書きながら、俺ってバカだなぁと思った。
- 448 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 02:36:51 ID:rabUNFeJ0
- 乙!
エロい話なのかと思ったのにバカ過ぎだw
- 449 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 03:06:15 ID:zeM4l+jm0
- 乙
バカスww
俺の期待をかえs・・・ゲフンゲフン
- 450 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 08:01:52 ID:hSjUIPvFO
- ファミリーの日常が良い感じに出てて面白い(*^-^)
乙なのじゃ
- 451 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 08:02:43 ID:Uq7/UgjuO
- >>438
主(笑)
モバゲー(笑)に帰れカス
- 452 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 08:09:01 ID:Uq7/UgjuO
- よく考えたら、この場合の主はモバゲ厨の使う主じゃない気がして来た。
条件反射で叩いてすまんこ……。
- 453 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 09:55:19 ID:+Qp7hEx50
- 乙
京のヘンタイさとかちょっとジェラってる姉さんとか
いい馬鹿っぷりだ
- 454 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 13:39:59 ID:/KUwM56I0
- よく考えたら、リュウゼツランルートのアフターは、姉さん、京、辰姉、天とナチュラルにハーレムがありうるんだな。
まるでギャルゲーじゃないか
- 455 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/15(木) 14:20:49 ID:TsovAcbi0
- もしも大和達が英雄を倒すのがもう少し長引いていたら、というIFで一つ投稿します。
- 456 名前:ヒート! ジョーカ−![]投稿日:2009/10/15(木) 14:23:02 ID:TsovAcbi0
- 『力を貸してください』
対馬家を訪ねてきた直江大和という少年はそう切り出した。
話を聞けば、姉貴分を学校公認の合戦で負かせたいのだと。
その為には、どうしても自分の力が必要だと判断したらしい。
姉貴分の名は川神百代。
会った事はまだないが、その存在は十分すぎるほど知っていた。
自分と同じ日本を代表する武道四天王の一人にして、川神院の総代最有力候補。
一説では、四天王最強という触れ込みも出回っている。
現に、橘天衣と九鬼揚羽が敗れたのは紛れもない事実だ。
竜鳴館以上に武闘派として名高い川神学院の学生達といえど手に余り過ぎる相手だろう。
話を全て聞き、しばらく考えてから承諾した。
歪み始めた後輩を叩き直すのは先輩の義務。
それに、絶対に姉を負かせてみせると語る直江の瞳は燃えていたから。
決意と志、そして情熱の炎で。
まるで、あの時のレオのように。
だからこそ、信頼に値すると思った。
力になりたいと思った。
だが、それが――――。
(これほどの激戦になるとはな!)
百代の猛攻により、目前で九鬼揚羽と新たな四天王を襲名した黛由紀江の二人は次々と脱落していった。
残されたのは、自分一人だけ。
ならば、全身全霊で立ち向かうだけだ。
「さて、最後の一人だな! メインディッシュだ!」
- 457 名前:ヒート! ジョーカ−!A[]投稿日:2009/10/15(木) 14:25:36 ID:TsovAcbi0
- 百代が超スピードで突進してくる。
乙女は真与を軽く突き放し、安全圏に退避させてから迎え撃った。
拳と拳がぶつかりあい、大気が震動する。
まともに衝撃で押し切られる前に、乙女は自身の勢いを蹴りに転化させた。
「制裁――――」
「――――されるつもりはない!!」
死角からの蹴りを見もせずに腕で受け止め、正拳突きで繰り出す。
それを乙女は受け流すと同時に反転させ、百代の背に回り込んで腕や足を完全にロックする。
全身の動きを封じる鉄流の関節技。
倒す事が不可能なら動きを完全に止めればいい、という発想だった。
少なくても、直江大和達が相手の大将を討ち取るまで。
「自爆技を使われようと、何度でも耐え抜いてみせる!」
「アジだなぁ、乙女さん!」
「戦いが終わるまで、私と我慢比べをして貰うぞ!」
「生憎、それほど気長じゃないんだよ。うおおああああああああおおおおおおっ!!」
百代が吼えた。
強引に、極めて無茶苦茶に振りほどこうとする。
全身から骨が軋んで関節筋が千切れる音が聞こえ始めた。
人間としての活動限界を容易く超える動作だった。
嫌な音が鳴り響いたのも束の間、無理矢理振りほどいた腕で百代はそのまま殴ってくる。
その打撃に、もう自らの体を砕いた形跡は見受けられない。
(やはり瞬時に回復するか!)
咄嗟に腕を交差させ、衝撃吸収に最も適した防御をする。
しかし、拳が生み出した振動波にガードを貫通された乙女の体はあっけなく吹っ飛ばされた。
- 458 名前:ヒート! ジョーカ−!B[]投稿日:2009/10/15(木) 15:01:44 ID:TsovAcbi0
- 「ぐあああああああああああっ!!」
河原を何度も横転し、ようやく乙女の体は停止する。
彼女の体が転がった跡は、砂利が抉れ茶黒い土が剥き出しになっていた。
「どうした? もう反撃して来ないのか? それでは晩節が汚れるぞ? 鉄乙女ぇぇぇっ」
立ち上がろうとした瞬間、接近した百代に容赦なく蹴り飛ばされた。
またしても乙女は宙を舞い、今度は距離を置いた筈の真与の手前まで転がる形になる。
真与に激突しなかったのは乙女の執念だった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「……心配するな…お前は私が守り抜く」
しかし、明白な事実は認めざるをえない。
川神百代は『力』では自分達を遙かに凌駕している。
噂に違わず、四天王最強だ。
(だが、それでも……)
たとえ、力で劣ろうと。
その差が明白であろうと。
(魂だけは、負けていない!!)
裂帛の気合いを込めて、再び立ち上がる。
ぐらつく足に力を込める都度、ある記憶が甦った。
- 459 名前:ヒート! ジョーカ−!C[]投稿日:2009/10/15(木) 15:06:26 ID:TsovAcbi0
- 「おいおいおいおい、これヤバいんじゃねーか!?」
対馬家の居間。
ポップコーンをあちこちに食い散らかしながら蟹沢きぬが声を上げた。
雪広アナウンサーによって実況中継される川神大戦。
橘館長以外に負ける所など想像すらできなかった風紀委員が一方的に蹂躙されている。
鉄乙女を知る者にとって、これほどショッキングな映像があろうだろうか。
「あわわわ…乙女さんがズタボロだなんて……あんな恐ろしい女がこの世に存在したのか…
アレに比べりゃ俺のねーちゃんなんてフカみてぇなもんだぜ……嗚呼、でも結局どっちも同じくらい怖ぇーっ」
「バーカ、俺達が信じないでどうするんだよ?」
わななく鮫氷新一に伊達スバルが落ち着いて言う。
もっとも、その視線はこの場の誰よりも画面に釘付けになっている対馬レオに注がれていた。
「…大丈夫だろ、レオ。乙女さんなら、きっと何とかする。そうだろう?」
「いや、俺は信じちゃいない」
「ボウズ?」
レオは今朝を思い出す。
『じきに大学も卒業。教師になる以上、この戦いが最後の死合いになるかもしれない。だからこそ、必ず勝って帰ってくるぞ』
そう笑って勇ましく出陣していった、最愛の人。
彼女がそう断言した以上、きっとそうなるに違いない。
「疑わないだけだ。俺の恋人(あね)は無敵なんだから」
- 460 名前:ヒート! ジョーカ−!D[]投稿日:2009/10/15(木) 15:11:11 ID:TsovAcbi0
- 数年前の体育武道祭。
自分よりも力量が上の相手に果敢に立ち向かった最愛の恋人(おとうと)。
満身創痍になって何度倒れても決して心は折らず、そして最後の最後に勝利を成し遂げた。
あの日の瞬間は、今でも脳裏に焼きついている。
自分が彼を愛し始めた頃の、煌めく思い出なのだから。
そして今、自分があの時の弟とほぼ同じ状況に立たされている。
(今度は…私の番だな)
弟は立派に戦い抜いた。
ならば、姉が倒れる訳にはいかない。
倒れる事は許されない。何よりも自分が許しはしない。
(まだ勝機はある!)
技の修練を積んできた自信と幾多の戦いをくぐり抜けてきた経験が、乙女にこの状況を打ち破る策を閃かせた。
たった一つだけある。
川神百代という驚異の存在を戦闘不能にする手段が、思いつく限りたった一つだけ。
九鬼揚羽と黛由紀江――――彼女達のおかげで。
いや、彼女達だけじゃない。
何よりも、自分を奮い立たせてくれるレオのおかげで。
「甘粕…というらしいな。お前に弟はいるか?」
「は、はい。います」
「そうか」
優しく微笑んで、そっと頭を撫でる。
「大事にしてやれ」
きっと、とてつもない力を与えてくれるから――――。
- 461 名前:ヒート! ジョーカ−!E[]投稿日:2009/10/15(木) 15:16:53 ID:TsovAcbi0
- 「行くぞ、川神百代!!」
(護衛対象から離れて、向かってくる?)
この状況で大将をノーガードにするのは相当に分の悪い賭けだった。
今のところ気配は感じられないが、もしも交戦中に他の敵兵が攻めてきたら打つ手がない。
しかし、このまま護衛重視の戦い方をしていても絶望的な結末しか待ち受けていない。
この決死の判断でさえ、百代にとっては涎が出るような展開だったが。
「完全決着を望むか? いいだろう! 大将はデザートだ! 貴方を完膚無きまでに叩きのめしてから、美味しく頂く!!」
「はああああっ!!」
拳の一斉掃射の弾幕に乙女は真っ向から飛び込んだ。
被弾しながら、何故か乙女は少し笑っていた。
(本当にお前の時と同じだな、レオ!)
レベルはまるで別次元だが、百代の連続攻撃が村田のガトリングガンと重なる。
懐かしい奇妙な感覚が胸を駆け抜け、不思議と笑みが滲み出る事を堪えきれなかった。
「蛮勇か。もっとも、そういうのは嫌いじゃない!! 餌食になるからな! かーわーかーみー波ーっ!!」
弾幕を突破した瞬間、強烈な閃光が乙女を捉えた。
「ぐ……おおおっ」
じりじりと押されながらも、ひるまず止まらず猛然と駆ける。
川神波の閃光でさえ、接近する為の布石として利用した。
放出が終わった百代の目に、突如乙女の姿が飛び込んでくる。
間髪入れず、強靱な腰を回転させ力を注がれた攻撃が放たれた。
「きりもみ乙女パンチ!!」
- 462 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 15:24:07 ID:3RwlMs0F0
- 支援
- 463 名前:ヒート! ジョーカ−!F[]投稿日:2009/10/15(木) 15:24:12 ID:TsovAcbi0
- 大地に放てば螺旋状のクレーターが誕生するほどの衝撃が百代の顎を射貫く。
並の人間なら、確実に首から上がねじ切られていただろう。
だが、百代相手ではせいぜい意識を刈り取る程度でしかない。
加えて、意識が完全にブラックアウトする寸前に念じてさえおけば瞬間回復によって意識もダメージも即座に回復する。
それ故か、昏倒しながらも百代は笑っていた。
(たかが一瞬だ……)
(一瞬で十分だ!!)
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
百代の動きが完全に停止した一瞬の隙をついて、気をまとった乙女が体ごと突進する。
二人の体は組み合いながら、再び天空へ上昇していった。
その最中、復活した百代の腕が乙女を力強く掴む。
「かかったな、鉄乙女!!」
互いに回避不可能な至近距離。
「終わりだ! 吹っ飛べ!! 川神流・人間爆弾っ!!」
一瞬の静寂の後、一筋の光が横一線に迸る。
直後、爆炎と爆音が同時に産声をあげ、青空を黄金色に照らした。
黒煙がたなびき粉塵が舞い散る中、百代は確かに乙女の体が自分から離れるのを感じていた。
(勝った!)
早く煙が晴れて乙女が落下する様を見届けたい。
はやる心のせいか、時の流れが止まったように感じられ、笑う事さえもどかしかった。
だが――――煙の隙間から自分を見つめている瞳に気づき、その心境は変化した。
(何故まだそこにいるっ!?)
- 464 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 15:26:04 ID:3RwlMs0F0
- 支援したがいいのかな…?
- 465 名前:ヒート! ジョーカ−!G[]投稿日:2009/10/15(木) 15:29:57 ID:TsovAcbi0
- 全てがスローモーションになっている二人だけの世界。
拳一つ分の間隔が開いた至近距離で、乙女が構えている。
全身に夥しいダメージを負いながら、彼女の眼差しから闘志は消えていなかった。
むしろ、より一層烈しく燃えたぎっていた――――。
(耐えきっただと!? 何故だ!?)
(気合いだああああああああっ!!)
前言通りに乙女が人間爆弾を耐え切れたのは、持ち前の根性の賜物である。
しかし、それ以上に揚羽へ使用していた事を見ていたのが大きい。
威力、そして自ら負ったダメージから回復する所要時間も全て乙女は見ていた。
同じ技は二度と通じない、とまではいかないが後のない最後の賭けに出るにはこれで十分過ぎる。
(見切るのが得意なのは、お前だけじゃない!)
(だが、どんな攻撃を受けようと所詮は一瞬のみよ!)
それさえ耐えきれば――――勝ちだ。
百代はそう確信していた。
確かに、それは事実に違いなかっただろう。
乙女の攻撃次第では。
(!?)
百代は思わず目を見開く。
未だ黒煙にその身の大半を包まれている乙女の拳が宿しているのは極寒の冷気。
まさしく――――川神流・雪達磨。
- 466 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 15:32:20 ID:oWwrc/8J0
- >>464
他の作品を見てみると支援されてるから問題ないんじゃ?
ということで自分も支援
- 467 名前:ヒート! ジョーカ−!H[]投稿日:2009/10/15(木) 15:33:52 ID:TsovAcbi0
- (無断コピー…著作権違反だ!)
(はああああああああああああっ!!)
残された全ての力を結集させた渾身の一撃が百代を打ち貫いた。
常人の目には映らないほどのスピードで、百代は川へ落下していく。
拳を叩きつけた反動を利用して、乙女は後方へ跳躍した。
(治れ! 早く!! まだか!?)
百代にとって、瞬間回復の速度が遅いと思ったのはこれが人生で初めてだった。
これは刹那の攻防。
百代の傷ついた体も失われた力も、細胞が未だ回復を開始してはいない。
その状態で、動く事もままならず百代は水に叩きつけられた。
同時に、轟音と共に巨大な水柱が水面から迫り上がる
百代を飲み込んだまま、水柱は瞬時に凍結した。
(これが……狙いか!?)
百代とて、あらゆる攻撃を受けても無傷で済んでいるのではない。
突き詰めれば、あくまで負ったダメージと疲労が回復するスピードが神速的なだけだ。
では、仮にダメージを回復するよりも前に、完全に『時』を止める事ができたならどうか。
回復しきれていない状態で、氷漬けにする事ができたならどうか。
(これで終わったと思うなよ、いずれ第二第三の……)
時間さえも凍りついたかのような氷柱の中。
悪の大王めいた台詞を思いながら、百代の意識は急速に薄れていった。
- 468 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 15:35:55 ID:3RwlMs0F0
- しつこく支援です
- 469 名前:ヒート! ジョーカ−!I[]投稿日:2009/10/15(木) 15:39:20 ID:TsovAcbi0
- 人間爆弾を使わせて自分も大ダメージを負った百代を、雪達磨で川ごと凍らせる。
それが川神百代を封じ込めるべく乙女が思いついた、口にする容易さと難解さが壮大に反比例する策だった。
一か八かの傾向が非常に強かったが、勝算がなかった訳でもない。
そうするように仕向けていた事もあるが、百代ほどの強者ならあの状況下で人間爆弾を使う事も経験によって読んでいた。
見よう見まねを決着の切り札として使う気になれたのは、ひとえに人生で技の修練を積み重ねてきた事への自信。
それらの土台である乙女の精神力が物を言う形となった。
しかし、もちろん彼女一人で獲得した勝利ではない。
揚羽への人間爆弾。
由紀江への雪達磨。
彼女達ほどの実力者がいなくては百代があれらの技を使ったとは言い切れず、違った結末が待っていた筈だ。
そうした意味で、最大の功労者はあの二人だった。
「先輩、大丈夫なのでしょうか?」
ずっと静観していた真与がとことこと寄ってくる。
「これしきで命を落とすようなら、武道四天王の一角は担っていないさ」
通常の百代なら内側から氷を破壊して難なく脱出できるだろう。
しかし、今の状態ならどうか。
自らが爆弾と化す自爆技を使う上での代償として当然な傷が癒えぬまま、氷の中で身動きできず封印されているのだ。
脱出するとしても、かなりの時間を要する事は確実だった。
「そのまましばらく休んでいて貰うぞ。力と瞬間回復に頼り切るとこうなる……慢心が過ぎたのが敗因だな。精神も鍛錬しておけ」
先輩としての忠告。
そして、持論。
「最後に頼れるのは能力じゃない。気合いだ」
- 470 名前:ヒート! ジョーカ−!J[]投稿日:2009/10/15(木) 15:45:02 ID:TsovAcbi0
- 百代が眠っている氷柱を見つめた後、乙女は真与へと踵を返す。
途端に、体のバランスが崩れた。
「わわっ!」
真与が慌てて支えようとする。
それを、乙女は制止した。
「いや、いい。倒れたりはしないさ」
ゆっくりと――――しかし、しっかりと大地に足を踏みしめる。
朗らかな笑顔で、遠くにいる最愛の恋人(おとうと)に言い聞かせるように。
「私は……乙女だからな」
帰ったら、胸を張って伝えよう。
『勝ったぞ』と。
そして抱きしめてやろう。
お前がいてくれたから、勝てたのだと――――。
そして、まもなく。
F軍の勝利を告げる花火が天空に咲いた。
- 471 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/15(木) 16:01:47 ID:TsovAcbi0
- おしまいです。
規制を喰らってしまった時には焦ったぁ…。
乙女さんならきっとあのまま戦っても何とかしたに違いない、と確信する同志達へ特に捧ぐ。
タイトルはWからの引用&「熱血する切り札(乙女さん)」という意味合いですが、題名とは裏腹に決め手は『氷』だったり(笑)
- 472 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 16:17:46 ID:oWwrc/8J0
- 乙です
初めてリアルタイムで投稿をみたwww
GJ
- 473 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 18:24:43 ID:9O5rXi3j0
- 乙女勝利に持ってきたか
百代だとあぶり肉とか使って
なんか普通に出てきそうだがw
- 474 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/15(木) 22:52:51 ID:3RwlMs0F0
- だが、これでいい
- 475 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/16(金) 00:40:00 ID:Ly7XlHBK0
- ではあずみで一本投下。
- 476 名前:一つの恋がかなうとき・1[sage]投稿日:2009/10/16(金) 00:43:00 ID:Ly7XlHBK0
- 「はーい、そこの庶民の方、道をあけてくださーい!」
学院からの帰り道。
ガラガラと騒々しい音を立てて、九鬼英雄の人力車が近づいてくる。
授業が終われば財閥の仕事か。いつものことながら、お忙しいことだ。
が、いつものように猛スピードで通りすぎるかと思いきや
何故か5メートルほど手前で急停止。
「……曲者ッ!」
「……え?」
振り向いた俺に、おつきのメイド、忍足あずみが
自慢のニ刀を抜いて飛びかかってくる……!?
理由もわからず、身動き一つできない俺。
その目の前の草むらから、もう一つ、影が踊り出た。
ギィン!ガキン!
金属音とともに、二つの影が空中で激突した。
一つの影が俺の横に降り立つ。あずみだった。
「邪魔だ、どいてろボケ!」
言うが早いか、再び飛びかかってくる影を迎え撃つ。
見れば、袖口から赤いものが流れ落ちていた。
「おい!血……!血ぃ出てんぞ!」
だが、あずみはひるむこともなく、襲撃者をなんとか防いでいた。
- 477 名前:一つの恋がかなうとき・2[sage]投稿日:2009/10/16(金) 00:47:02 ID:Ly7XlHBK0
- 「……ということがあってさ。いやー、驚いたのなんの」
秘密基地で、さっきの出来事を姉さんに話す。
「まあ、結局あずみが防戦してる間に、他の従者たちが駆けつけたんで
刺客は逃げちゃったけどね。しかし刺客とは穏やかじゃないなぁ」
「危ないところだったな……あのメイドに、借りができたか」
「?狙われたのは、九鬼英雄でしょ?」
「もし護衛のメイドがやられれば、九鬼を始末したあと
目撃者のお前も殺されていただろう」
「!……確かに、その通りだね。
メイド、けっこう重症っぽかったなぁ。
俺が邪魔で、思うように戦えなかったんだとしたら……」
思いだしてみると、メイドは九鬼だけでなく
俺も守るように立ちまわっていたような気もする。
「気にするな。様々な状況に即座に対応して対象を守る。それが、護衛というものだ。
とはいえ、結果的にお前も助けられたわけだし
見舞いに行くぐらいはしておけよ」
「そうだね。明日、九鬼に入院先とか聞いてみるよ」
「私はジジイに報告してくる。学院の生徒が狙われてるとなると
場合によってはウチの沽券にも関わるからな。
メイドがそんな状態なら、川神院が護衛をしてやらないとならんかもしれん」
「川神院が護衛につくなら安心だね。最強の護衛だ」
- 478 名前:一つの恋がかなうとき・3[sage]投稿日:2009/10/16(金) 00:50:00 ID:Ly7XlHBK0
- だが、翌朝、最強の護衛を見ることはなかった。
「おはようございまっす!」
通学路で、忍足あずみがいつものように
ガラガラと九鬼の乗った人力車を引いていた。
「お、おい!昨日の怪我は大丈夫なのか!?」
走りつづける人力車に話しかけるため、俺も仕方なく走る。
「……大丈夫なわけがなかろう。
直江、お前からもあずみに言ってやってくれ。無理はするな、と」
車上の九鬼も困り顔だった。
「大丈夫です、英雄様!九鬼家の医療技術は最新にして最高水準!
あの程度の負傷は、一晩で回復いたします!」
「嘘つけ!普段だったら、俺が追いつけないようなスピードで走ってるだろうが!」
それに、見るからに顔色が悪い。
「これは再度の襲撃を警戒しているために速度を落としてるだけで
ご心配には及びませんっ!」
「やはり、言わねばならんか……あずみ、車を止めよ!」
「かしこまりました、英雄様!」
人力車から九鬼英雄が降りて、あずみの前に立った。
- 479 名前:一つの恋がかなうとき・4[sage]投稿日:2009/10/16(金) 00:53:02 ID:Ly7XlHBK0
- 「あずみ。今のお前では、護衛の任務は無理だ」
「!……そ、そんなことは!」
「再度、あの刺客が襲ってくる可能性も高い。
あのときでさえ手傷を負わされたうえ、今その状態では
もはやあの刺客は防ぎきれまい。今、トレイシーと李を呼ぶ。
お前は帰って、養生するがよい」
「わ、私はまだ!」
「これは命令だ!……我の、命令だ。よいな?」
やがて音もなく現れた新しい従者二人とともに
九鬼英雄は学院へと向かった。
うつむいてその場に立ち尽くすあずみに、何と声をかけてやればいいかわからずに
俺もまたその場に立ち尽くしていた。
「……おい。授業に遅れる。お前もさっさと行った方がいいぞ」
あずみがうつむいたままボソボソと喋る。
「あー……もうこんな時間じゃ、どうせ遅刻だ。
ちゃんと帰れるように、俺がついててやるよ」
「余計なお世話だ。一人で帰れる」
「んなこと言って、どうせ学院まで英雄を追いかける気だろ。
英雄に言われたこと、ちゃんと守るか見張ってないとな」
「チッ……お節介なヤローだ、まったく」
- 480 名前:一つの恋がかなうとき・5[sage]投稿日:2009/10/16(金) 00:56:02 ID:Ly7XlHBK0
- フラフラと逆方向に歩き出すあずみについて
俺もその後ろを歩き出す。
「なあ、ホント大丈夫か?肩貸そうか?」
「いいって言ってんだろ……」
緊張の糸が切れてしまったのか、あずみの容態がさらに悪くなっている気がする。
「……なんでそこまでできるんだよ」
「……あ?」
「いかに主人のためとはいえ、傷を負い
その怪我をおしてまでさらに仕えようとする。普通じゃねえよ、こんなの」
「お前からすりゃ、そうかもな……」
「……英雄のこと、好きなのか?」
「ハ!……お前ら、すぐ……そういう考えになるな……
好き、というのとはちょっと、違う……主君に忠誠を誓う……ってヤツさ」
だんだんと、足取りがおぼつかなくなってくる。喋るのも辛そうだ。
「そうか。でも、このままじゃ忠誠も尽くせないぞ。タクシーを呼ぶ。いいな?」
「勝手に……しろ……」
そう言った途端、あずみがフラッと倒れそうになる。
慌てて支えたその体は、驚くほどに軽かった。
- 481 名前:一つの恋がかなうとき・6[sage]投稿日:2009/10/16(金) 00:59:09 ID:Ly7XlHBK0
- 「ん……」
「あー、目ぇ覚めたか」
「?……なお、え……」
「ああ、直江大和だ。悪いな、お前運ぶついでで、上がらせてもらってるぞ」
俺は九鬼家屋敷内の、あずみの部屋まで上がりこんでいた。
「え……?あ、ちょ、お前勝手に……痛ッ!?」
「こら、動くな。ドクターが言ってたぞ、勝手に動き回ったから傷が炎症起こしてるとさ。
2〜3日は、絶対安静にしてろって」
「……どうやって、ここまで上がりこんだ?部外者が簡単に入りこめる所じゃない」
「門のところで事情を説明してたら、英雄の姉さんって人が来てな。
こころよく迎えいれてくれたよ。お前のことも、ヨロシク頼むってさ」
「揚羽様も、甘いというか……
で、何もしてないだろうな、アタイの部屋で!?」
「いや、何も。見るだけで充分お前のことが理解できるし」
そう言って見まわす部屋の中は
九鬼英雄の写真が所狭しと貼られていた。
「言うなよ!誰にも言うなよ!英雄様にもだ、いいな!?」
「はいはい、わかってます……やっぱ好きなんじゃん、英雄のこと」
- 482 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/16(金) 01:03:21 ID:yqhUlCRu0
- C?
- 483 名前:一つの恋がかなうとき・7[sage]投稿日:2009/10/16(金) 01:03:41 ID:Ly7XlHBK0
- あずみは、一瞬顔を真っ赤にしたが、すぐに元の顔色に戻った。
「だから、忠誠心と恋愛感情は違うんだよ……」
「お前にその気があるんなら、応援するぞ。
こんなに頑張ってるのに報われないんじゃ……」
「もう、報われてるんだよ、アタイは。
英雄様のお役に立てれば、それだけで充分幸せなのさ。
……もっとも、今のアタイは、役立たずだけどな」
「一方通行、か。そういう愛情のあり方って、わかんねえな俺には」
「愛、か……確かにアタイは、主としての英雄様を愛してるのかもな」
「……でも、お前は女で、英雄は男なんだぜ?」
「シツコイなお前も……
まあ、そういう夢を全然見ないってわけでもない。
それこそ、アタイだって女だしな。でも……それは、やっぱり夢だ。
それも、かなえちゃいけない夢さ」
身分の違いとか、あずみの過去とか、年齢差とか、そういうことだろうか。
それぐらいは、何とか出来そうな気もする。いや、何とかしてやりたい。
「英雄様の夢は、デカイ。デカイだけに、苦労も並みたいていじゃない。
その足をちょっとでも引っ張るような真似は、死んでもできない。
だから、アタイの夢は夢のままでいい……夢でいいのさ」
かなわない、と諦めるのではなく
かなえてはいけないと戒める。
そんな悲しい夢を口にして、忍足あずみは微笑んだ。
- 484 名前:一つの恋がかなうとき・8[sage]投稿日:2009/10/16(金) 01:06:43 ID:Ly7XlHBK0
- 「はぁ……喋りすぎた。ドクターに変なクスリでも盛られたかな?
アタイは寝る。お前も、もう帰りな」
「そっか。じゃ、俺はこれで。お大事に、な」
目を閉じたあずみをベッドに残し、部屋のドアに向かう。
「なあ……直江」
部屋を出るところで、あずみに呼びとめられた。
「ありがと、な」
「は?」
忍足あずみが、俺に礼を言う?
驚いてベッドに振りかえるが
あずみは布団をひっかぶってしまって顔を見せない。
この照れ屋さんめ。
「……英雄の夢がかなったら、それからお前の夢をかなえよう。
それなら、いいだろ?」
布団の山が、物言わぬままピクリと動く。
「それまでは、地道にイメージアップでもしてようぜ。じゃな!」
もぞもぞと動く布団の山を残して、俺は部屋を後にした。
(……そんなヒマあんなら、テメエの彼女でも作ってろっつーの。
まったく……おかしなヤローだ……直江大和、か……)
- 485 名前:一つの恋がかなうとき・9[sage]投稿日:2009/10/16(金) 01:09:43 ID:Ly7XlHBK0
- たった数日休んだだけで、あずみは復帰してきた。
「おはようございまっす!」
「ホントに治ったのかよ……」
「うむ、ドクターに我も確認をとったが、もう問題ないそうだ。
でなければ、休ませておくのだがな」
では、イメージアップ作戦、開始。
「そっかー。いやー、さすが忍足だなー。並みの人間とは出来が違うわ」
「フハハハハ、我の配下なれば、当然よ!」
「いやいや、これほどの人はそうはいないよ。英雄がウラヤマシイなー」
と、あずみがチョイチョイと袖を引っ張る。
(なあ……その、あんまりアピールされても、その……照れる)
(いいじゃん、実際、あずみがそばにずっといてくれるなんてうらやましいし)
(!バ、バカ言ってんじゃねえ!)
(俺に照れてどうする。そういう顔は、英雄に見せとけ)
(もういいから!放っとけっての!)
やっぱり照れ屋なメイドさんだった。可愛いとこ、あるよな。
- 486 名前:一つの恋がかなうとき・10[sage]投稿日:2009/10/16(金) 01:12:44 ID:Ly7XlHBK0
- そして帰り道。
「直江。なぜ我についてくる?」
俺は九鬼の人力車と並んで走っていた。走りでは無理なのでチャリだが。
「いや、病みあがりのメイドの働きぶりを見ておこうかと」
「英雄様、邪魔なので轢いてしまってもよろしいでしょうか?」
「車が汚れる。やめておけ」
……大丈夫なようだ。
と、人力車が急停車。
「!」
反射的に、チャリをUターンさせて人力車から離れる。
その背中から
「曲者ッ!」
あずみの声が響く。
やっぱり刺客は諦めてはいなかったようだ。
再び襲ってくるのは想定内だったので
俺も機敏に対応することができた。
といっても、邪魔にならないよう遠ざかっただけだが
前回、俺が邪魔で思うように戦えなかったのだとしたら
これで少しはあずみが有利になるはず……!
振りかえれば、今まさに、跳躍した二つの影が激突するところだった。
- 487 名前:一つの恋がかなうとき・11[sage]投稿日:2009/10/16(金) 01:15:59 ID:Ly7XlHBK0
- ギィン!ガキン!ガッ!
金属音が響く。
一つの影が地に叩き落とされた。
そして黒ずくめの人物が、地面に横たわっている。
キレイに着地して、すっくと立ちあがるメイド服。
「うむ!見事だ、あずみ!」
やはり前回の不覚は、俺のせいだったのか。
「ありがとうございます、英雄様!!」
満面に笑みを浮かべるあずみ。
その笑顔は、惚れぼれするほどに輝いて……
ダメだ。
俺は、あずみの恋路を応援しようとしてたんじゃないか。
俺が彼女に惹かれてどうする。静まれよ、俺の胸。
「どうですか、直江さん!
貴方が見張ってなくても、私、英雄様のお役に立ってますよ!」
「やったな、メイド。その調子で頑張れよ」
裏方の、さらに裏方だっていい。
あの、晴れやかな笑顔が見られるのなら。
かなえてはいけない恋だってある。それが、今はわかる。あずみが、そう教えてくれたから。
- 488 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/16(金) 01:19:46 ID:Ly7XlHBK0
- 終わり。
ッ後日談として、英雄の護衛をしようとメイド服まで用意した百代姉さんが
着る機会がなくなって大和に八つ当たりしたとかそんな話もあったりなかったり。
- 489 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/16(金) 01:32:43 ID:tHZjXCt20
- 乙乙!
照れるあずみ、可愛いじゃねえか!
でもちょっと切ないな
- 490 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/16(金) 02:12:58 ID:4Vw2C2Qr0
- 乙
あずみが大和に礼を言ったあと、照れて布団かぶってるところとかサイコーだったが
なぜメイド服姉さんを書かないのか!
- 491 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/16(金) 02:20:04 ID:4l9D+UcN0
- ( ;∀;) イイハナシダナー
メイド姉さんの八つ当たり(返り討ち)で癒されるんだ大和!w
- 492 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/16(金) 02:20:28 ID:n3P5xML50
- ああ、借金に縛られてメイド服で奉仕させられる百代姉さんの姿が見たい気がする・・・
「ちっ!!なぜこの私がこんな服で弟に奉仕せんとならんのだ!!」
「・・・姉さん借金即金で返せる?」
「く・・・資本主義の豚め・・・、金貸しはこうまで恐ろしいものなのか・・・」みたいな。
しかし鬼畜軍師ならばかなえてはいけない恋だってかなえてしまうと思うなあ。
一晩かけて肉体言語で語り合えばさ。>>488
- 493 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/16(金) 02:48:19 ID:phECkgmc0
- うおおおおお
あずみルート アリだと思います…!
メイド姉さんも併せてもうちょっと続きを見てみたくなった作品でした
GJ!
- 494 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/16(金) 10:06:11 ID:nKj9jeI00
- 乙
頑張ってる女の子を応援してる間に
その子を好きになってしまうってのがワン子ルートだったが
これはまたさらにひねってるね
ここからもっと書けそうな感じ
- 495 名前:龍虎乱舞[sage]投稿日:2009/10/17(土) 01:16:18 ID:ZV95YCN30
- >>151の続きを捏造してみた
百代と辰子、強敵と書いて友と読む位に仲良くなったと勝手に想定
- 496 名前:龍虎乱舞1[sage]投稿日:2009/10/17(土) 01:18:19 ID:ZV95YCN30
- カーニバルの騒動から随分経ったある夜。
とある少年院で面会を終えた男が、己の住まいに歩を進めていた。
「『私達が娑婆に出ている頃には、少しでも良い世界にしている事を期待しています』か…。
…これは九鬼にも負けてられないよな」
かつての志を取り戻した少年の名は、直江大和。自身の夢と野望を胸に、勉学に鍛錬に打ち込む日々を過ごしていた。
今日も充実した一日を過ごせた…。そう思い返しながら部屋に戻ると、なぜか剣歯虎が居た。
「なんでさー!?」
なんかゴロゴロしてたので、見なかった事にして回れ右した。いやこれは疲れ目だ。アントシアニンが足りてない。
ドアノブを静かに閉め、玄関までの障害部を目視確認する。よし、全力疾走開始!!
「待て舎弟。姉をスルーするとは、反抗期なのかな〜?」
しかし回り込まれた。そして姉さんの攻撃。
柔らかく姉さんに抱き止められる感覚の直後、まさに空を飛ぶ感覚を味わった。
「あっはっはっは〜。ほ〜ら、フロントスープレックスだぞ〜!玄関方向に行きたかったんだろ?」
ちょ、コレ洒落にならないって!辛うじて身体を反転させ、背中から受身をとることでどうにかダメージ軽減成功。
「…ぐはっ」
でも、やっぱり痛いものは痛い。床をのた打ち回っていると、姉さんにマウントをとられた。
腰を腹の辺りに擦りつけ、武道家とは思えない細く白い指が、俺の胸元を撫でる。
「なぁ大和〜。最近退屈で仕方ないんだ。ということで、今度の日曜、どこかに遊びに行こう!」
あ〜、最近、自分の事ばかりで姉さんたちと遊べてなかったかも。
でも、その日も用事で埋ってるし…。全く姉さん向けの用事じゃないから、一緒に行っても楽しくないだろうし。
「…ゴメン、姉さん。大事な用事があるんだ」
実際、某政党幹部が参加予定のタウンミーティングが七浜の会場で予定されている。
閣僚経験のある大物だけに、以前から彼の話は聞いておきたかったし。
「…そっか。なら仕方ないな」
こういう時の姉さんは、結構聞き分けが良い。それでも、どことなく、姉さんはしょんぼりと帰っていった。
…その内、埋め合わせしないとな。
- 497 名前:龍虎乱舞2[sage]投稿日:2009/10/17(土) 01:21:10 ID:ZV95YCN30
- その人物とは、川神駅でばったり出会った。
「あー大和君ー!久し振りー!」
穏やかなな笑みを浮かべつつ激しく手を振るという中々器用な挨拶を寄こして来る美女。
「おー。辰子、久し振り」
現在、川神院で修行の板垣辰子であった。
「うん。お散歩と食材の買出しー。あ、大和君も一緒に行くー?」
行くー?と形こそ疑問系だが、彼女の腕は既に俺の既に絡まっており、豊満な胸もしっかり押し付けられている。
…でも悲しいけど、これから用事なのよね。
「…ゴメン、悪いけど」
姉さんの誘いを断ってまでの、社会勉強なのだ。
「…そっかー。なら仕方ないよね」
最初に挨拶してた時の2割程度のテンションまで落ち込んでしまった。
あまり川神院に顔出してなかったし、彼女にも、また会いにいかないとな…。
................................................................................................................
直江大和が講演に耳を傾けているその頃…、ため息をつきつつ川神の街を徘徊する、自称一人の美少女。
「あ〜暇だ〜。最近、大和の付き合い悪いし。…そりゃアイツの目が力強くなっているのは良いことだが…。
…でも舎弟の癖に、私より遠く先しか見てないなんて…。…生意気だぞ。…ハァ」
割とテンション低めなせいか、似たような様子の人物の様子に気付いていない。
「あー大和君大和君大和君……はぁ」
武道の達人同士には珍しく、衝突直前にお互いの姿を視認しあった。
「ぬ?…辰子か」
「あー…百代さん?」
互いに視線を交わすものの、漏れるものは闘志ではなくため息。
「…なんか元気なさそうだねー百代さん」
「…ハァ。まぁ色々あってな」
「それならお茶でも奢るよー。川神院からお給料貰ってるし」
「すまないな。…はぁ」
- 498 名前:龍虎乱舞3[sage]投稿日:2009/10/17(土) 01:23:27 ID:ZV95YCN30
- 憂いを帯びた少女二人。甘味処で甘いものでも食べて気を紛らわす事にした。
「ここの豆大福も悪くないけどねー。…はぁ」
「旨い…が、気分が乗らないと今一つだな」
「…甘酒も美味しいって話だから、飲んでみるー?」
酒粕を使わず、麹から作られた優しい甘さの甘酒。
しかし、多くの参拝者たちの喉と心を潤わせてきたでも、二人のテンションを回復させることはできなかった。
そして本格的な酩酊が必要と判断した彼女達は川神水をオーダー。
数分後、憂いを帯びた美少女達はどこかに吹っ飛んでいた。
「しっかし大和のやつけしからんな!」
「そーだよー。大和君、けしからないよー」
「全くなんだアイツ生意気だぞ!美少女の私が誘ってるんだぞ!!」
空いていく空瓶は一本、二本からダース単位、やがてケース単位に以降するまで、大した時間は必要なかった。
その頃には、美少女達は姿を消し、二人の酔っ払いが管を巻いていた。
「百代さーん。…いっそ大和君、襲っちゃおうかー」
「乗った!くくく。犯っちまおう。啼かねば犯せ、ホトトギス…だな」
やがて酔っ払いは、獲物を狙う二匹の捕食者(プレデター)に進化していた。
酔っていた瞳は、煌々とした鋭い光を宿らせている。
................................................................................................................
今日の講演は、収穫が大きかったと正直思う。
国を動かす為には、政治家か高級官僚、もしくは財閥トップの地位を得なければ大した影響力を持てない。
地盤、看板、鞄も無く、財閥の地位は九鬼が固めていくだろう。
ならば俺は、霞ヶ関から人脈を作って行き、国政を目指していくのも悪くない。
そうなると来年の大学受験、更には公務員試験と挑戦するべき目標も見えてきた。
- 499 名前:龍虎乱舞4[sage]投稿日:2009/10/17(土) 01:27:14 ID:ZV95YCN30
- そんなことを考えながら部屋に戻ると、剣歯虎と龍が居た。
…これはキツイぞ。某ギャルゲーに例えると爆弾でも爆発したか?…しかも二人セットで。
静粛に、かつ可及的速やかにこの場を離れなければ…。
今度はドアを閉め施錠して回れ右をして、全力で玄関目掛けてダッシュする。
…しかし、やっぱり回り込まれた。
「大和ぉ。最近お前、冷たいぞぉ。んちゅ」
「そーだぞ大和君ー。ぺろぺろ。んー大和君分補給ー」
正面から拘束してくる姉さんと、後ろを固める辰子。
両サイドからの柔らかい感触と唇を重ねられる感触、さらに耳裏を舐められる感触に、変な気分になりそうだった。
「…大和。今日はお前を抱きに来た」
「寂しかったんだぞー。…今夜くらい、一緒に過ごしてよ」
俺の中で何かが切れる音。多分、理性とかその類義語あたり。
正面に陣取っている姉さんを右手で抱きしめながら押し倒し、左手で辰子も一緒に巻き込む。
彼女達は全く抵抗しなかった。
それから数時間後…。俺の部屋は雌の匂いで充満していた。
5回ほどイカせた辰子は布団の上で必死に息を整えており、今、俺の相手をしているのは百代。
「や、大和ぉ!!…お前に、一つ、約束してほしっ…い!」
「何だ?…っ姉さん」
姉さんの乳首を責めつつ胎内を掻き回しているとき、喘ぎ声交じりに姉さんが声をかけてくる。
…真剣味を帯びた声。ただの睦言ではないのだろう。
「お前が、…高みを目指してっ…歩き出したことは、理解している。んっ!進む先は、きっと私達よりも、高くて遠い場所っ」
「…ああ!百代と、出会った頃の、約束!俺は、取り戻した!だから!俺は進む道を、もう迷わない!!」
腰の動きを加速させ、姉さんを絶頂に導く。
「ぅぁあああああ!!!」
獣じみた嬌声を上げながら、姉さんの身体は痙攣し、やがて弛緩してゆく。
「……それでも、それでも…ずっと一緒…だぞ」
祈るように呟きながら、さっきまで辰子が横たわっていた場所に吸い込まれるように倒れこむ。
- 500 名前:龍虎乱舞5[sage]投稿日:2009/10/17(土) 01:31:42 ID:ZV95YCN30
- どうやら辰子が復活して、スペースが空いたらしい。
「大和君…。君がどんな未来を選ぶとしても、私達は川神で待ってるから」
横から優しく抱きしめてくれている辰子に向き直り、深く口付けを交わす。
しっとりと潤っている秘所を弄り、漏れる喘ぎ声をより強いキスで押し殺す。
「ん”〜〜〜〜〜」
おもむろに唇を離し、彼女の決意に俺の信念を返す。
「俺の生きる場所はこの国、そしてこの街だ…。
暫くこの街を出ることがあるかもしれないが、俺は必ずここに帰ってくる」
街をでる…。この言葉に少し悲しそうな、でも柔らか微笑みを浮かべる辰子。
そんな表情もやがて恍惚に蕩けてゆく。
................................................................................................................
やがて朝日が差し込む頃…。姉さんと辰子は俺の腕を枕に眠りに落ちている。
俺もまどろみに身を委ねようとした時、静かにドアが開く音。
…施錠してたハズなのに。
「大和、朝……だ、…よ?…げぇっ!モモ先輩!!」
猛禽類の幼馴染というヤツは怖い。奇襲をかけるつもりだったかノックなしかつ控えめな声で入ってきた京。
しかし、そのうろたえ具合は伏兵に出くわした魏の丞相そのもの。
されど次の瞬間には闘志溢れるサージェントに変貌していた。…よく訓練されている。
「作戦変更!!潜入上陸作戦に失敗したならば、強襲上陸作戦に挑むまで!!ガンホー!!」
く、当方には迎撃の用意なし…。
跳躍しつつ脱衣‐いわゆるルパンダイブ‐を披露しながら飛翔してくる京に対し、俺は、なす術が無かった。
そして結局、姉さんと辰子が目を覚まし、4Pが始まるのも時間の問題だった。
<了>
- 501 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 06:04:19 ID:vfVUcyyC0
- 超乙!
こういうの見てるとハーレムルートもアリかも…と思えてくるな
- 502 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 07:41:42 ID:4e+1a8Iu0
- 乙ん
京レーダーが作動してないw
- 503 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 12:33:29 ID:pafRa2Kn0
- 乙
姉さんと辰子が仲良くなっていく
その過程が読みたいんだぜ
- 504 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 19:43:40 ID:1xUPk+i80
- キレた京はホントにルパンダイブしそうだw
- 505 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 21:59:03 ID:Ue/h7TZv0
- ここでまさかの羽黒ルート投下
- 506 名前:フラッグ![sage]投稿日:2009/10/17(土) 22:02:06 ID:Ue/h7TZv0
- ひるがえるF軍の旗の下、川神大戦の祝勝会は賑やかに進んでいく。
戦功談義もたけなわといったところで、モロが俺に近づいてきた。
「皆の動きがそれぞれ素晴らしいのは大前提として」
「ん?」
「大和は、その中でも特に誰を評価してる?」
「そうだなぁ。あえて選ぶとしたら……」
皆、本当によくやってくれた。全員の働きがあって、この勝利があった。
だから、誰か一人、というのは選びにくいが、あえて、一人の名をあげた。
「個人的には……羽黒黒子の働きに、もっとも感銘を受けた」
その場が、静まりかえる。
無理もない。
本陣に詰めていただけ、敵兵を一人でも倒したわけでもなく
彼女がこの戦いでしたことはただ一つ。
旗を見上げ、その真下に立つ。
「彼女が、この旗を守ってくれた」
皆がざわめき始める。
一部の人間しか知らなかったことだから無理もない。
「この旗が倒されようと、燃やされようと、俺たちは勝ったかもしれない。
だが、この旗の下、俺たちは戦った。俺たちのシンボルだった。
それを、彼女は敵の奇襲部隊から守りぬいたんだ」
- 507 名前:フラッグ!・2[sage]投稿日:2009/10/17(土) 22:05:08 ID:Ue/h7TZv0
- 「ちょ、よせよ直江、改まってそんなこと言われても照れる系ー」
「照れることないだろ。ちょっとコッチ来な」
珍しく照れる羽黒を、皆の真中に引っ張り出す。
「俺は皆に色々指示を出した。そして皆は指示以上に働いてくれた。
でも、俺は羽黒に『旗を守れ』なんて指示はしてない。
彼女が自分の意思で、この旗を守った。皆の心を、守ってくれたんだ。
俺はそれを評価したい。どうだろう、皆」
ざわめいていた連中から、声があがり始める。
「いいぞー、羽黒ー!」「よくやったー!」「ありがとー!」
「やーめーろーって!そんなたいそうなことしてねえっての!
……だいたい、直江だって
旗がどうなっても勝敗に関係なかったって言ってたジャン。
アタイってば無駄に頑張っちゃった系?」
「……無駄じゃ、ありませんよ」
大将である委員長が、俺と同じように旗を見上げながらそれを否定する。
「もしこの旗が倒されてしまったり、燃やされてしまったりするのを見たら
戦っている皆さんは、きっと頑張れなかったでしょう。
ここに、この旗があった。この旗が、ずっと立っていた。
それは、とても大事なことだと思います。だから、無駄ではありませんでした」
「……ハハハ、こーんなに皆に誉められるなんて……
生まれて……初めて系……」
- 508 名前:フラッグ!・3[sage]投稿日:2009/10/17(土) 22:08:09 ID:Ue/h7TZv0
- 「ちょ、羽黒……!泣くとメイクが……!」
小笠原さんが慌てて駆けよりハンカチを差しだす。
「うお!?ヤッベ、ちょいメイク直してくる系ー!」
ハンカチで顔を隠すと、そのまま走り去ってしまった。
「……別にいいのにな、スッピンぐらい」
「羽黒は羽黒なりに、メイクにはこだわってるのよ」
そういうもんか。
しかし、スッピンの羽黒か……
ネタ的には、メイクを落としたら実は美人とか……ねえか。
むしろ、メイクを落としてもやっぱり羽黒は羽黒でした、というほうが。
どっちにしても、ちょっと興味が。
悪いとは思いつつ、その場をこっそり抜け出して
俺は羽黒が走り去った方に向かった。
しばらく歩くと、川岸のほうからバシャバシャと水音がする。
ぼんやりと明かりも見えて、どうもアレらしい。
洗ってメイクを落としているのだろうか。
コッソリ後ろに忍び寄って……
「よ、羽黒!」
「直江!?ちょ、見るな、見るなよー!」
「いーじゃんか、減るもんじゃなし…………あれ?」
- 509 名前:フラッグ!・4[sage]投稿日:2009/10/17(土) 22:11:13 ID:Ue/h7TZv0
- 何と言うか……メイクを落とした羽黒は……
美人ではなかった。
かといって、不細工というわけでもない。
「……フツーだな」
そう、化粧を落とした羽黒黒子は
ちょっと色黒というぐらいで、いたって普通の女の子だった。
「あー、やっぱり言われた……だーから見られたくなかったっての」
「ああ、ゴメンゴメン……でも、別に気にしなくていいじゃん、普通なら」
「その『普通』ってのが、アタイはイヤなんだって」
「なんでさ?」
「……アタイの父ちゃんがプロレスラーなの、知ってんだろ?」
「ああ、悪役レスラーだけど、派手なパフォーマンスで人気だな」
「ま、あんなんでも、アタイにとっちゃ自慢の父ちゃんなわけだ。
けど、アタイが生まれたとき
自分が悪役だから将来イジメられんじゃねーかって
スゲー気にしたらしい」
ふむ。そういうの、悪役専門の俳優の人とかでもあるらしいな。
「で、イジメにあわないようにどうするか考えて
目立たなきゃ平気だろう、っていうんで
『黒子』なんて名前つけやがったのさ」
- 510 名前:フラッグ!・5[sage]投稿日:2009/10/17(土) 22:14:50 ID:Ue/h7TZv0
- 「……黒子って、黒い子供ってわけじゃなかったのか」
「当たり前だろ。何だよ黒い子供って。生まれたときから悪役かよ」
歌舞伎で介添えをしたりするほうの意味だったわけだ。
確かに、目立たないようにって意味にはなるかも。
「冗談じゃねえよなー。コッチは父ちゃん誇りに思ってんのにさ。
コソコソしてなさい、みたいな名前つけてんじゃねえっての。
だからアタイは目立ちてーんだよ。
目立って、父ちゃんの娘だってこと誇りてーんだよ」
……意外、というか。羽黒黒子は、父親思いのいいやつだった。
「けどま、ご覧の通り、スゲー美人ってわけでもねーし
頭は悪いし、特技っていやプロレス技かじってるぐれーだし。
そんなアタイが目立つためにやってるのが、このメイクなんだよ。
だから、スッピンの話はすんなよな」
「わかったわかった……除き見して、悪かったな。
メイク終わったら、戻ってこいよ。
なんせ今日の第一功労者なんだから、目立ちまくりだぜ?」
「あったり前だっての!でも……ありがとな、直江。
ちゃんと見ててくれて、アタイ嬉しかったぜ……
ちょっと、こっち来いヨ、いいコトしてやっからよ」
羽黒が俺の手を取る。あれ?なんか変なフラグ立てちゃった俺?
「ホラ、遠慮すんなよ!同じ旗の下戦った仲間だろ?
任せときな、何たって、竿おっ立てるのは得意だからさ!ギャハハハハ!」
- 511 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 22:17:07 ID:Ue/h7TZv0
- 終わり。「黒子」なんて名前を親がつけるとしたら
どんな理由だよ、みたいなところから。
大和が逃げ出せたかどうかはわからない。
- 512 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 22:33:52 ID:UTzaeoxD0
- 乙
初めて羽黒がかわいく思えた
- 513 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 22:35:52 ID:qXP7KS8+0
- 乙
ちょっといい話っぽかったのに最後でブチ壊しだ!
まあ羽黒らしいけどw
- 514 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 23:37:12 ID:ZV95YCN30
- 乙だ!
しかしグッと来た胸の高鳴りは返して欲しいwww
- 515 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/17(土) 23:37:17 ID:w2hUlxyA0
- 乙
確かに「まさか」のルートw
てか、大和逃げてー!w
- 516 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/18(日) 03:50:05 ID:BYoBudw20
- ちょっと
最後の一行wwww
- 517 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/18(日) 08:26:45 ID:QtjsNErf0
- 乙
自然というかなんというか、フツーにありそうだからコワイw
タカヒロがネタで羽黒EDをあそこの選択肢にいれてたら
こんな感じなのかもな
- 518 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/19(月) 05:21:24 ID:Cgfuvkgk0
- いくら顔がマシと言ってもあの声で喘がれたら・・・ゴクリ
- 519 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/19(月) 10:08:16 ID:noHvzJ6c0
- ちょっとしんみりする(?)ワン子の話を投稿します。
- 520 名前:木枯らし@[]投稿日:2009/10/19(月) 10:13:55 ID:noHvzJ6c0
- 「お風呂でたよー」
未だ湯気が立ち上る髪をタオルで拭きながら、幼い一子は居間で大和丸シリーズを見ている老婆の横にちょこんと座り、一緒になってテレビを覗き込む。
『愚かな母だとも思う。息子を人でなしにした』
『無礼なっ』
『だがそんな貴女が…私はいじらしい、愛しい。私は母を知らないから』
一方の老婆は登場人物達の台詞になにかしらの懸念材料を感じたのか、そっと一子を見る。
「ねー、まだ戦わないの?」
彼女は重厚なドラマパートを理解しているとは言い難く、最初からクライマックスの殺陣シーン目当てで見ているクチだった。
老婆は安堵したように笑って、多分まだだと言った。
「ここはつまんなくないけど、よくわかんないわ。おばーちゃんは面白い?」
子供らしい感想を含んだその問いに、老婆は微笑んで静かに頷く。
「じゃあ、そのまま見ててね。肩たたきするから」
立ち上がると老婆の背に回り込み、軽く拳を握って振り下ろす。
拙いけれど非常に優しい、老婆の疲れが取れる事を最優先に願っている手つきだった。
「どう? どう?」
老婆の反応に嬉々とした表情を浮かべると、そのまま後ろから抱きついて。
「今日も一緒に寝ていい? アタシは湯たんぽみたいにあったかいから、おばーちゃん風邪ひかないよ」
窓ガラスの向こうで、冷えきった風が吹き荒れる。
老婆の温もりをより一層感じられるから、一子はこの寒さも嫌いではなかった。
- 521 名前:木枯らしA[]投稿日:2009/10/19(月) 10:18:33 ID:noHvzJ6c0
- 川神市内・某所。
一子最後の戦いとなったあの灼熱の日から既に数ヶ月。
秋も半ばに差し掛かり、平均気温も日中でさえ涼しすぎるくらいに低下していた。
「初めてだよね、ここにアタシ達二人だけで来るの」
「ああ、いつもキャップ達が一緒だったからな。特に、俺とお前の組み合わせは斬新だろう」
水を汲んだ桶と供え用の花束を手に、俺と一子は石造りの階段を上がっていく。
登り切った先に広がるのは、十人十色な墓が立ち並ぶ閑散とした敷地。
その隅に、目的地はあった。
「久しぶりね、おばーちゃん」
「ご無沙汰してました」
『岡本』の文字が刻まれたささやかな墓石。
以前来た際に俺達が供えた花は既に枯れ果てていて、今年の全盛期は過ぎ去ったとはいえ地面に雑草は生え放題。
それらは、ここを訪れる者が俺達の他に存在しない事を示していた。
「それじゃあ、俺は花瓶をやる。一子、お前は石を頼む」
「うん、任せといて!」
作法については特に指示しなかった。
本来、墓石のてっぺんから水をかけるのは頭から水を浴びせる事にあたって失礼だという言い伝えもあるらしい。
しかし、この際は気持ちの問題だから形式は度外視した。
どんな掃除の仕方であれ、本当に想いを込めてするのだったら故人が怒る事もないだろう。
そう解釈するのは都合がいいかもしれないが、一子にはその点について太鼓判を押すしかない。
- 522 名前:木枯らしB[]投稿日:2009/10/19(月) 10:24:49 ID:noHvzJ6c0
- 回収した花の残骸と新しく持ってきた花束を入れ替え、墓石の掃除を終えた一子と草むしりを共同作業でこなす。
30分ほど経つと、墓は前に俺達が来て手入れをした時とほぼ同じ状態に戻っていた。
「ねぇ――――」
「駄目だ。終わってからだぞ」
「まだ何も何も言ってないのに〜っ!」
目を輝かせて涎を垂らしそうな一子を制止しながら、小笠原さんの店で購入した和菓子を皿に乗せて墓前に添える。
続けて100円ライターで線香を焚き、二人でそれを供えて手を合わせた。
「……大和と付き合う事になったよ。驚いたかなぁ?」
それは間違いなく。
ワン子呼ばわりしていた頃からずっと一緒に過ごしてきた俺も全く想像していなかった未来図だし。
もし過去に遡る事ができて幼少時の俺に会い、俺が未来から来たという確たる証拠を突きつけた上で教えても絶対に信じないだろう。
でも、もしかしたら。
(万に一つでも、予想してました?)
今となっては確かめる術はないけど、そんな気がしないでもなかった。
「それとね、ずっとずっと絶対に師範代になるって言ってきたけど………あれ、駄目だった。ごめんね…いつも言ってたのに」
墓参りに来る度、どれくらい強くなったか誇らしげに報告していた一子の姿。
師範代に届くにはまだまだ足りないけど、いつか必ず――――そう宣誓していた一子の姿。
『なれたら真っ先に教えに来るね』と、笑顔で語っていた一子の姿。
異性として意識するよりも先に、夢に燃える姿を応援したくなったのさえ最近だった筈なのに鮮明に憶えている。
多分、夢を捨てかかっていた当時の俺にも心のどこかで眩しく見えていたからだろうか。
「でもね…別の夢は……見つけたわ」
もっとも、夢が潰えた事を自ら告げる一子の表情にもう曇りはない。
- 523 名前:木枯らしC[]投稿日:2009/10/19(月) 11:00:18 ID:noHvzJ6c0
- 「大和が支えてくれたから。お姉様が愛してくれたから。キャップとガクトとモロと京、おばーちゃんは知らない新しい仲間、
あとは強敵(とも)がいてくれたから。他にも沢山の人達がアタシを大切に想ってくれたから。だから、見つけられたの。
確かに、アタシは武道の――――川神院師範代に上り詰められるほどの才能はなかったけど。それでも良い人に巡り逢える才能には恵まれてたみたい」
「勘違いするなよ。お前にそんな才能はない」
「えーっ!!」
横から思い切り否定してやった。
それは才能なんかじゃない。
天なんかから――――他の誰かから与えられたものじゃないんだ。
「ゲンさんが『お前が笑うと…嫌な気分が失せていった』。そう言ったの、憶えてるよな?」
「……うん」
確かに一子は物覚えがいい方ではないけど、あの真剣な告白を忘れるような奴じゃない。
「あれが全部表してるよ」
姉さんも、ファミリーのみんなも。
ゲンさんと九鬼も。
学長やルー先生も、川神院の修行僧達も。
話を聞く限りじゃ、いつぞや会った釈迦堂ってオッサンだって。
そして、きっとおばあさんも。
何よりも俺が――――。
(いつだってお前の笑顔に幸せにされてた)
それを才能だというなら、間違いなく超天才だろう。
少なくとも、そう感じる奴が良い人間と言うなら集ってくるのは当然だ。
一子の笑顔はカリスマの類とは異なる引力を備えている、と確信している。
- 524 名前:木枯らしD[]投稿日:2009/10/19(月) 11:06:13 ID:noHvzJ6c0
- 「人を幸せにする事についてお前の右に出る奴はいない。俺を筆頭に、お前を大事に思ってる奴全員が保証してやる。
でも、お前にばかり幸せにされっぱなしなのも立つ瀬がないから…お前は俺が最高に幸せにするぞ」
「大和っ」
「――――って訳で、一子を貰います」
視線をくるりと墓石に戻して、そう告げた。
既に心身ともに結ばれてる以上、厳密に言えば『貰いました』かもしれなかったが。
それを堂々と言う気になれずオブラードに包んでおき、故人が天から全てを見通してない事を少しばかり願ってみた。
「あはは! なんかそのセリフだと、『お父さん。娘さんを僕にください』って奴みたい。ドラマとかで、結婚する時によくやるような」
「……違う意味がいいのか?」
笑っていた一子の顔が急速に変化し、意味を理解しようと懸命に頭脳をフル回転させ始めた。
その反応には苦笑しかできない。
わかりきってはいたが、こいつに回りくどい言い方はまるで通用しないか。
(察しろよな。男としてはこのセリフ、割と勇気がいるんだぞ)
あくまでも、いつか必ず――――そういう意味合いではあったけど。
それでも、恋人の家族にそう宣誓するのは緊張した。
有史以来、数えきれない男達がこの緊張感を味わってきたのだと実感する。
たとえ、今はもう別の世界にいる人相手であってもそれは変わらない。
だが、今回これだけは言っておきたかった言葉であった。
「おい、一子」
未だ思考中だった彼女の髪をくしゃりと撫で、現実に引き戻す。
「帰るか」
「うん!」
- 525 名前:木枯らしE[]投稿日:2009/10/19(月) 11:13:00 ID:noHvzJ6c0
- 全ての片付けを終えて、墓所を後にする。
「また来るね、おばーちゃん。今度はみんなと一緒に」
去り際、一子はそう告げた。
新しい仲間にも会って欲しいし、と付け加えて。
「ねぇねぇ、早くどこかでお菓子食べよ! 公園とかで」
「ああ、でも急かすなよ。そんでもって、帰ったら一緒に勉強な」
「いちいち言わなくても、そんなのわかってるわよぅ…でも、甘い物食べた方が脳の疲れが取れるわー」
再び石造りの階段を降りていき、その中盤に差し掛かった時だった。
二人の間を、一陣の突風が駆け抜ける。
吹く季節を完全に早まった、せっかちな極寒の北風が――――。
「うおっ!」
「ひぎゃーっ!! 寒いわ! 大和、くっつこ! 寒い!!」
言うや否や、震えながら一子が大和に飛びつく。
「お、おい! 階段で飛びかかるなっ」
「ぶるぶるぶるぶる〜っ」
一子は自称『湯たんぽみたい』かつ雪が降っても喜んで庭を駆け回るタイプだが、さすがにこの不意打ちに等しい寒さには耐えられなかったらしい。
最初の風を皮切りに、冷たい風がなおも激しく次々と吹きすさんでいく。
まるで嵐のようだった。
「木枯らし…もう冬到来か」
「モンジローだか何だか知んないけど、早く帰ろ! 寒すぎるわーっ」
寒風は一向に収まる様子はない。
それどころか、ますます勢いと冷たさに磨きがかかっていく。
- 526 名前:木枯らしF[]投稿日:2009/10/19(月) 11:40:05 ID:noHvzJ6c0
- 一際甲高い風の唸り声が響き渡った時だった。
大和にしがみついて震えていたのも束の間、一子が突如ハッと空を仰ぐ。
『幸せに』
耳を澄ませても、聞こえるのは大和の息づかいを除くと強烈な風の音色ばかりだったけど。
そんな轟きが、一子には何故かそう聞こえてならなかった。
「……おばーちゃん………?」
「え?」
その呟きには大和以外に誰も応える事はない。
一子は大和に密着したまま、そっと無言で彼の肩に頭を預けた。
「いきなりどうした?」
「大和、もう少しこのままでいさせて。この方がアタシも大和も、二人揃ってあったかいから」
「いいけど…お前、涙目になってるぞ」
「うん、そうかもしんない」
「ゴミでも入ったのか? 診てやる」
しかし、一子はゆっくりと首を振った。
瞳を滲ませたまま、いつも以上に微笑んで。
「何だかよくわかんないけど……嬉しくって泣きそうなのよぅ」
もっと二人で寄り添い合うように。
もっと二人で温もりを分かち合うように。
ずっとあなた達が幸せでいますように。
まるで、そんな優しい願いが込められているかのような凍える風だったから――――。
- 527 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/19(月) 11:44:35 ID:noHvzJ6c0
- おしまい。
ワンちゃんの才能は何かを考えた時、努力の才能よりも確かなものだと思ったので。
しかし、釈迦堂さんの名前まであったのは……ひとえにここの小説による印象が大きいか。
因みに冒頭の劇中劇シーンは実際に大和丸シリーズのモチーフ後期から拝借しました。
- 528 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/19(月) 18:58:45 ID:HJqf8CVv0
- 乙
ワン子の可愛さは才能なのか才能じゃないのかどっちなんだw
- 529 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/19(月) 19:14:15 ID:0hbhZNI80
- 誰とでも仲良くなれるワン子の天真爛漫さは、一種の才能とも言えるな。
本当の「無敵」とは強いのではなく、敵を作らずに仲間にする事が出来るから。
ってのが、ボンボンのスパイダーマンJって漫画にあった。
実際、主人公のスパイダーマンJは沢山のヒーローと出会って仲間になってた。
- 530 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/19(月) 19:40:30 ID:ulOvMSd90
- >>529
あぁ、あのファンタスティック4とか、ブレイドとか洋画ヒーローとなぜか競演してたトンデモマンガな。
- 531 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/19(月) 21:00:56 ID:/LdRs4gs0
- >>529
すっげぇ懐かしいなスパイダーマンJ
- 532 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/10/19(月) 21:27:41 ID:4UertJEq0
- >>520
乙です
一瞬、タイトルを出涸らしと読んでしまったwww
- 533 名前:529[sage]投稿日:2009/10/19(月) 23:49:46 ID:0hbhZNI80
- >>530-531
スパイダーマンJ、分かる人がいて嬉しい。
あれはマーベルと契約切れたのが原因で終わったらしいのが残念だった…。
ワン子の誰とでも仲良くなれる性格見て思い出したもので。
能力や戦闘経験ならJより強い奴等の心開かせてた所がワン子と似てるなって。
そういう意味ではワン子は「無敵」だと思う。
- 534 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:19:16 ID:F4UWLcaQ0
- 梅子アフター後妄想投下します。
- 535 名前:策士策に溺れる1[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:22:35 ID:F4UWLcaQ0
- 大和が梅子となかば強引に付き合いだしてから、夏休みが過ぎ二学期になった。
休みということもあって口実をつくっては頻繁に会い、調教していた甲斐もあり、また梅子の素質もあってか、一月、二月だというのに梅子は大和の半ばいいなりになっていた。
例えば呼び名である。大和は名前のほうで呼ぶように言い、名字で呼べば、おしおきをした。
学校であっても、である。
「いいか、お前達には可能性があるんだ。それをないがしろにしてはいかん。これから呼ぶ者は再提出だ」
その日は進路調査の話があった。数名の名前が呼ばれた後、
「大和っ! ……阿呆か、お、お前は後で職員室へ来いっ! ふざけすぎだっ!」
なるべく態度にはあらわさないようにしていたが、目ざとい女子たちの中には気づきはじめる者もいる。
「あのさ、聞きたいことあるんだけどいい?」
千花や羽黒もその一人であった。
「なんだ? 進路の話なら言わないぜ」
「ううん、そうじゃないの。……あのさ、」
声を潜め、顔を近づける。
「最近、梅子先生といい感じじゃない?」
大和の顔色をうかがう。
「そう見えるかな?」
表情をかえることなく、返答した。
呼び方のことなど、いくつか軽い質問をぶつけた後、
「…直江さ、夏休みに梅先生とヤッたべ?」
羽黒が切り込んできた。
「ちょっ、羽黒、そのままズバっと言い過ぎ。……そこまではいってないだろうけど、絶対なにかあったでしょ?」
ニヤニヤと笑う千花とニタニタと笑う羽黒。
- 536 名前:策士策に溺れる2[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:25:31 ID:F4UWLcaQ0
- 「それに雰囲気もなんか変わったし」
「なくはなかったとだけ言っておこうかな」
「ヒュー。やっるー。直江君勇気あるねぇ。梅先生狙いだなんて」
「落としかたの相談ならのるぜぃ。プロであるアタイにまかせておきな」
「先生を物陰に連れ込んで押し倒すなんてことは俺の武力じゃむりだからな?」
生徒と教師の間柄であるから、ひいきをしている、などという不平が起こるところであるが、そこは相手が相手だ。気づいていても応援をしてくれた。
―――放課後。
面接用の部屋で二人は机をはさんで差し向かいに座って、進路について話していた。
[直江、私は真面目に話をしているんだぞ!」
「だから俺も真面目だって。それに直江じゃなくて、やーまーと、だろ梅子?」
身をのりだし顔を梅子の耳に近づける。
「しかし、それでは噂が…」
吐息を耳に吹きかける。梅子の体が震えた。
「わかった、や、大和。真面目に話をしよう」
専業主夫。まんざら嘘ではないが、やはり問題はある。
進路調査書の内容について叱責するが、そのたびに大和はのらりくらいかわす。
「じゃあ、梅子は俺が嫌い?」
「進路調査書の話が、どうして好き嫌いに繋がる」
にらめっこのように視線を合わせ続ける。
- 537 名前:策士策に溺れる3[]投稿日:2009/10/20(火) 21:28:41 ID:F4UWLcaQ0
- 「…嫌っているわけではない」
やがて叱られた子供のように、しゅんと目をそらす。
「俺は梅子を愛してるよ」
梅子の顔が一瞬のうちに耳まで真っ赤になった。
「ぞ、俗物め。よ、よくもまあぬけぬけと、そんな恥ずかしい言葉を言えるものだな。…大人をからかうな」
「だって本気だし」
反論しようとする。けれど、言葉は出てこない。
「まあ、それはおいといて。進学はするつもりだよ」
「そ、そうか、お前の頭なら進学しないというのは勿体ないからな。具体的にはどこらへんの大学だ」
大和が口にした大学を聞いて、顔をしかめる。よくも悪くも中堅所だ。
「まあいい。最近抜けているようだから、気を入れ替えろよ」
二学期になってからというもの、どうも成績がよくない。最低限の点数はとっているものの、あくまで最低限であった。
大和が出て行った後も梅子は部屋に残っていた。
梅子は書類のはしを指でいじり、折り曲げしている。目を落としているが、文字は頭のなかには入ってこない。
「(……卒業したら結婚だと。い、いったい何を考えている)」
立ち上がり窓際による。
- 538 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:29:26 ID:xDr1FBCS0
- 紫煙
- 539 名前:策士策に溺れる4[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:32:01 ID:F4UWLcaQ0
- 「(本気なんだろうか)」
ガラスに指をつけ外を見ると、帰路につく生徒たちが校舎から吐き出されていた。
ふと大和の姿を探している自分に気づき、梅子は苦笑しながら首を振った。
「(私も毒されているな)」
ふいに表情が苦くなる。
「(しかし……、この成績は問題がある。……ここのところやる気もないようだ)」
ため息をついた。
「(やはり、教師と生徒では問題がある……か)」
――――――朝。通学路。
この頃になると、梅子と毎日と言っていいほど遭遇するようになっていた。
「おはようございます」
最初に気づいた由紀江が挨拶をし、それにあわせて銘々挨拶をする。
「おはよう皆、っ……、おい、大和……」
大和に近寄る梅子。それを阻むように不敵な笑みを浮かべた百代が二人の間にずいと出た。
「おはようございます、先生」
「うむ、おはよう」
視線を外さずに返事をする。
「おい、襟」
大和の襟を直し、背中をばしんとはたき、くるりと向き直る。
- 540 名前:策士策に溺れる5[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:36:03 ID:F4UWLcaQ0
- 「……それで、先生。いかがしました?」
梅子から大和を隠すかのように、一歩を踏み出す。
「……いや、なんでもない」
空咳を一つついて、
「それでは皆、遅れぬようにな」
先に歩きだす。
と、数歩先で、ちらりと振り返り、何か言う素振りを見せる。
しかし、結局何も言わずに遠ざかっていった。
「そうとう躾けたんだね」
京が耳元で囁く。
「うらやましいなぁ」
「大和の癖に生意気だぞ!」
京に返事をする前に、百代が首に腕をまわし、締め付けた。
手加減はしているのだろうが、それでも相当な力が込もっていて、もちろん脈は押さえつけられている。
それでも、大和はこんなことには慣れっこだ。
百代のうさ晴らしのために、大和は大げさに体をゆすり回されている腕を叩く。限界まで粘ってそれから、するりと腕から抜け出した。
「っ、! 死ぬって! 死ぬから!」
もちろん大げさに咳きをすることも忘れない。
「大丈夫だ。加減は分かる。気絶したらやめる」
「そしてなぜ京は手をワキワキとさせている」
「気絶したら大和を目くるめく桃色吐息の世界に連れ出そうと思って」
- 541 名前:策士策に溺れる6[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:39:30 ID:F4UWLcaQ0
- 「それ犯罪ですから!」
「だいたいお前は私の物なのに、あいつが盗もうとするからいけないんだ」
「姉さん、先生に向かってあいつはよくないよ」
小さい子供をたしなめるような口調。
「盗人はあいつでいいんだもーん」
「もーんじゃありません!」
「大和が怒ったー。まゆっちー」
「あぅあぅ」
まゆっちの後ろに隠れているつもりなのだろうが、百代のほうが一回り大きいので、盾にしているようにしか見えない。
そしてしっかりと手は由紀江の胸部をもみほぐしている。
「まゆっちも嫌なら、嫌って言っていいんだよ?」
「……最近になって一段とかしましくなったな。……いや、別に嫌いというわけではないのだが」
「クリスも食べる?」
一子は口からキャンディーの棒を伸している。
「ありがたく頂こう」
「ところで、最近、先生と会う率高くねぇか?」
クリスが何事かいう。
口に物をふくんでいるせいで言葉にならないが、
「そうだな。これが縁というものか」
といいたいらしい。
モロと京、それと直接教えたので百代は知っていたが、風間グループのそれ以外は、まだ気づいていなかった。
- 542 名前:策士策に溺れる7[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:43:23 ID:F4UWLcaQ0
- 梅子をおとすと心に誓ってほどなく、大和は京にはきっぱりと、もう好意にこたえることはできないと伝えた。
彼女の思いが本物であるから返事も出来ないほどにきっぱりと言い切った。
「いいよ。私は大和が振り向いてくれるまで待ってる」
けれど、京はそう返す。
「今は俺しか見えないのかもしれないけど……、それでも、京には幸せになって欲しいからさ。……、世界って広いぜ?」
「大和の癖にクサイセリフを言うね」
抱きしめたくなるような笑みを浮かべる。
けれど、大和は近寄りはしなかった。
しばらくの間、気持ちを利用しもしたし、幼い好意でもあるが、百代にも伝えることは伝えた。
「風が気持ちいいな」
すがすがしい風が吹きぬけていく、秋のある一日。
百代と大和は屋上にいた。最後の授業が終わるやいないや、百代に引きずられるようにして連れてこられたのだ。
大和は百代のふとももに頭をあずけ、空をぼんやりと眺めている。
と、扉がきしむ音がした。しかし人が出てくる様子はない。
しばらくしてから、またわずかに隙間が広がった。
「どうしました? 先生」
気配で梅子と察知したのだろう。百代が声をかけた。
「いや、特に用事というわけではない。……気分を変えるためにきただけだ」
ばつがわるそうに、梅子は出てくる。
「ひどいな先生。約束してたじゃないか」
- 543 名前:策士策に溺れる8[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:46:01 ID:F4UWLcaQ0
- 頭をまわす大和。
確かに約束はしていた。調教の約束だ。言いつけを守って探しにきたのだ。
「…その、用件はどうするんだ?」
百代の顔を、ちらちらと見やる。
「それなんですが、大和はこれから用事があるので無理です」
「そうなのか? 大和」
「まあ、そうなりますかね。先生には悪いんですが、また後日ということで」
「……わかった。それで何時になる」
大和は調教の成果に内心ほくそ笑む。
「そんな急いで決めなきゃいけないことでもないでしょう。またメールしますよ」
「まだ何か?」
なかなか立ち去ろうとしない梅子に、声をかける。
「……ああ。それじゃあ」
「いやぁ。年上の女性がしょんぼりとする姿は、ぐっとくるね」
梅子の姿が見えなくなってから、大和がつぶやく。
「私の膝の感触よりそっちのほうが良かったか? ん?」
表情は仏のように柔和だが有無をもいわさぬ迫力がある。
「そうだね」
「……そうか」
一瞬寂しげな笑みを浮かべたが、それはすぐに消え去る。
それっきり二人の会話は途絶える。
とたんに風は肌寒くなり、互いの距離の隔たりを、二人ともが感じるようになる。
- 544 名前:策士策に溺れる9[sage]投稿日:2009/10/20(火) 21:49:56 ID:F4UWLcaQ0
- 「姉さん」
「ん? 何だ?」
あきらめにも似た表情が浮かぶ。
「俺は先生が好きだよ」
「……ああ」
「だから姉さんの気持ちには答えられない」
「なんだ。私がお前に恋してるとでもいうのか?」
デコピンをする。音は大きいが痛みはそれほどでもない。
「お前は私の物なんだ。……だいたい私がお前を好きなんて思い上がりも甚だしいぞ」
調教は生来才能があったのか順調に進んでいたが、いくら軍師と称している大和であっても、こと恋いのかけひきという分野になると不安はある。
なのでこの手のことに長けている友人に頼ることは多かった。
「あー大和っち−? 最近メスはどんな調子よー?」
「おかげで順調だよこっちは」
話半分に聞くことも多かったが、は実体験に基づいていた話が、ためになることも少なくはなかった。
自分の思いを伝えるなど押すだけではなく、ときには引くことも必要。そのアドバイスを受けて、ここのところ大和は梅子に素っ気なくあたっていた。
「おーいい感じじゃん」
「だろう? 下北沢君のおかげだよ」
「じゃあ今度俺のセフレ含めて4pやらない?」
「んー。考えておくよ」
だが効果はありすぎたのか、
「……大和、話があるのだが」
- 545 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:00:36 ID:S4URvgf9O
- バイバイサルさん引っ掛かった(´・ω・
解除され次第続き投下します。残り半分程です
- 546 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:01:26 ID:o5W3Jv3cO
- 私怨
- 547 名前:策士策に溺れる10[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:29:31 ID:F4UWLcaQ0
- ちょうど帰宅しようとしていた時のことだった。
「ん……わかった。時間は?」
思い詰めた様子の梅子に、内容を聞きはしない。
「いまだ。ついてきて欲しい」
校舎裏まで連れ出される。あたりに人気はない。
「大和!」
「何?」
「お前は本当に私のことを……、その……、思っているのか!?」
「なにをあたりまえのことを」
「思い返してみろ。ここ最近は私を放っておきっぱなしで、あげく川神や椎名と仲良くして」
「友達なんだから仲良くするのは当たり前だろ?」
「ええい、誤魔化すな。あれは友人としてではないだろう」
「先生」
「う……な、なんだ」
「俺が本当に心のそこから好きなのは先生一人だけだよ。……先生がそんなに寂しがっていたなんて分からなかった。気づけなくてごめん」
ぎゅっと抱きしめる。
「な、直江。ここは学校だぞ」
「そんなの関係ないよ」
「直江……」
有無を言わさぬまま口づけをした。
- 548 名前:策士策に溺れる11[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:32:48 ID:F4UWLcaQ0
- 不安を感じるほど何事もうまくいっていた。
京が沈みがちなのは気に掛かったが、それ以外に特におおきな出来事はなく、秋は過ぎ去り、冬になり、そして冬休みも終わりに近づき。
そんなときのことだった。
「直江。夕飯は何が食べたい?」
梅子の自宅。台所のほうから梅子の声がとんでくる。
「先生が作るものだったらなんでもいいよ」
「それが一番困るのだが……文句を言うなよ」
やがて包丁の規則正しい音が流れはじめる。その心地よい音に耳をかたむけうとうとしかけていた。
とつぜん、うっ、といううめき声が聞こえ、梅子はどたどたとトイレに駆けこむ。
あわててこたつを抜け出し駆け寄る。吐瀉物の酸っぱさが鼻をついた。
吐き気はおさまらないのか、まだ戻そうとしている。大和は落ち着くまで背中をさすっていた。
「すまない。……最近どうも調子が悪くてな」
落ち着いてきたらしい。大和はコップを差し出し窓を開ける。
「こういうことよくあるの?」
「よくというほどではないが、ときどき戻してしまうんだ」
口をゆすいで、空になったコップを受け取る。
「戻す?」
「ああ。急に吐き気に襲われることがあってな」
「食欲は?」
「あまり無いな。体が弱っているせいか、最近臭いがどうも気になってな」
臭いが鼻につく。その言葉が耳に残った。
「しっかり食べなきゃ。体力をつければ病気なんて逃げてくよ」
「ああ。恥ずかしい限りだ」
- 549 名前:策士策に溺れる12[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:36:36 ID:F4UWLcaQ0
- 「もしかして酸っぱいものとか好きになったりする?」
かりにも28歳の女性であるし、調べてはいるのだろう。大和は冗談口調で訪ねる。
「……そういえばそうだな」
子供が表面上の意味だけをとって頷くように、素朴にそう返した。
「ははは」
一応避妊はしていたが、心あたりがないわけではない。
「? おい、どうした?」
「ま、またまたからかわないでくださいよ。悪い冗談だなぁ」
「なにがだ?」
梅子は訝しげな目で大和を見ている。
「……あのさ」
「うむ」
「……検査した?」
「何のだ? 別に休んでいれば良くなると思って、病院にはいってないが」
「ははは」
「おいおい、どうした」
つられて梅子も笑い出した。
「まさかそんなわけないよねー」
「はっきり言ってくれないとわからないだろう」
「それに教師なんだから教えることもあるしー」
「いい加減に教えてくれ」
「いやいや、……まさかないよ」
青ざめた顔をして、買ってくるものがあるし一人で考えたいことがあるから。そう言って一人出て行った。
大和は、一時間ほどたって近くの薬屋のビニール袋をぶらさげて戻ってきた。
いったい何を買ってきたんだ、そう梅子が訪ねると、
- 550 名前:策士策に溺れる13[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:41:29 ID:F4UWLcaQ0
- 「妊娠検査薬」
乾いた笑みを浮かべながら、絞り出すように言葉を吐く。
梅子の顔色が変わる。言葉少なにわかったと頷き、説明書きを読む。
後ろに回り、大和も一文逃さず読み下す。
梅子はむくっと立ち上がり黙ってトイレに入った。
大和もじっと扉の前で待つ。
扉が開き、思い詰めた顔をした梅子が出てくる。
ひったくるように検査紙を取った。
判定窓の色が変わっている。
陽性反応だ。
「せ、先生。お、落ち着いて! 大丈夫、大丈夫だから。……いいかよく考えるんだ。そう! えらい人もいっていた。こういうときは素数を数えるんだ! いや、まて、病院か? 病院へ行ったほうがいいのか?」
うろうろと歩き回る。
「落ち着くのはお前だ」
自分以上にうろたえている大和の姿をみて、落ち着きを取り戻す。
「病院を調べる。……待ってろ」
「待って、知り合いに聞いて評判のいい病院を探してみるよ! ……いやでも急ぐよな。急ぐんだよな? それに誰だ。誰に聞く?」
「落ち着け。近々出産する友人がいる。今、電話する」
結婚はしているか、そちらの方が旦那か、同居はしているのか、そういった事柄を聞いたあと、
「懐妊なさってます」
ちらりと大和の顔を見てから、医師は告げた。
帰りのタクシーの中では二人とも一言も喋らず、部屋に戻ってきてからもしばらく黙っていた。
「熱っ」
ホットミルクを差し出す。
「ほら、大和」
「ありがとう、先生」
「うーめーこ、だろう?」
「……そうだね梅子」
- 551 名前:策士策に溺れる9[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:47:40 ID:F4UWLcaQ0
- 「男と女が付き合っていれば自然の成り行きだ。誰が悪いという話しではないし、本来喜ぶことべきことだ。……お前にはまだ荷が重いかも知れないがな」
じっと耳を傾けている。
「私は堕ろすつもりはない。天からの授かりものであるし、生まれてくる命を奪うということは、私には出来ない」
「お前に無理をさせるつもりはない。お前はまだ学生で、私は社会人だ。それに私のほうがよっぽど人生経験豊富だしな。……なに大船に乗ったつもりで任せておけ」
「……責任はとるよ」
カップを置く。
「……大和」
「梅子のことは好きだけど、……まさかこんなに早く子供ができるなんて、考えてもいなかった。それで少し狼狽えただけだよ。……我ながら情けないけど」
「確かに早すぎたな」
ぽつぽつと二人は言葉を交わしだす。この先のことを、話し合う。
学校をやめなくていいのか。やめはせずとも進学せずに就職したほうがいいのではないかという話にもなった。
それには、梅子が反対した。
「私のせいで、お前の将来を潰すことはしたくない。なに、貯蓄はある。……子供が心配なら、私が職を辞すから問題ない」
「俺だって梅子にそんなことはしてほしくない。働くことは嫌いじゃないし、教師っていう職業は好きなんだろ?」
籍は卒業後にいれることにした。いずれ分かることであるし、産休も取らねばならない。学校には早いうちに伝えることになった。
「それと、話は変わるんだけど。……Sクラスに行きたいんだ。なんとかならないかな」
三年もFクラスでいい。
理由を訪ねはしない。梅子にはわかりきっている。
「無理ではない。前回が悪すぎたので次のテストで相当な点数を取らねばならないがな」
「覚悟はしてる。それに梅子に比べたらなんでもないよ」
梅子は、笑みをこぼし、くしゃくしゃと頭を撫でた。
言葉通り大和は三年時にはSクラスに進学した。
梅子はどのクラスの担任もしていない。新学年にあがる前に学校側には伝えておいたからだ。
相手が大和であることももちろん伝えた。
- 552 名前:策士策に溺れる15[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:51:16 ID:F4UWLcaQ0
- 何らかのペナルティーがあるかと思われたが、実際には相手が大和であることを極力公言しないことを上限に一切ペナルティーはなかった。
会議が開かれ、なかには声を大にして退学、せめて停学やSクラス取り消しを唱える教師もいた。
いることにはいたが、それは学長である川神鉄心の、我が校の方針は生徒の自主性を重んじることである、という鶴の一声で取り消しになった。自主性にも程がある。
川神院の育児の支援も得られた。
育児支援は鉄心ではなく、百代と一子が言い出したことである。
会議が開かれた数日後の金曜集会でのこと。
「えー……みんなに知らせがある」
ふらりと旅に出たキャップをのぞいて、メンツは全員揃っている。
「実は梅子先生と付き合ってるんだ」
半数から驚きの声があがり、残りは百代を除いて、訳知り顔でニヤニヤとしている。何故かガクトは後者の組である。百代だけが腕組みをして一人沈んだ顔をしていた。
「それでここからが重要なんだけど。……妊娠させてしまったんだ」
場の空気が固まった。
クリスはせんべいを加えたまま微動だにせず回りの様子をうかがうように眼球だけ動かしている、一子は反すうするように眉の辺りにしわを寄せている。
由紀江はあぅあぅと口を動かし続けていて、モロはあっけにとられたように口を開け放っている。そして、クッキーまでもがボディの光彩の点滅を止めている。
「おいおい冗談はよせよ。全員ではめようったって、いくら俺様でもそんな嘘にはだまされねーぞ」
口とは裏腹にガクトの頬は引きつっている。
「いや本当なんだ」
「嘘つくなよ。 女教師を妊娠させるなんてな、漫画だけの話だぜ!」
「……大和のいったことは本当だ」
気だるそうに立ち上がり、窓辺からテーブルへと近づく。
「……わかってはいたんだ。……本当だって。いたんだよ! しかし認められない。何だ。何が俺とお前を分けた。慢心か! 環境の差か!」
「お前は少し黙っていろ」
空気をよめというサインを放つモロに気づかず、哀れガクトは百代のボディーブローの前に体を沈める。
- 553 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:53:41 ID:o5W3Jv3cO
- 支援
- 554 名前:策士策に溺れる16[sage]投稿日:2009/10/20(火) 22:55:34 ID:F4UWLcaQ0
- 冷静にこれまでの事態を説明する。
間に口を挟むものはいない。皆聞き入っている。
「俺の話は以上だ。なんていうか、若気の至りとしかいいようがない。みんなにも迷惑をかけるかもしれない。もしかしたら協力を頼むかもしれない。そんなときはたすけてくれ」
ひざまずきこうべを垂れ、土下座をする。
「このとおりだ」
「頭をあげろ。そうやって土下座までしないと手助けしてくれないと連中とでも、お前は思ってるのか」
百代は、膝をかかえ、顔をさげ覗き込む。
「だとしたら心外だがな。……こいつらはお前が何もいわなくても助けてくれるんだ。だろう?」
振り向き同意を求める。もちろん異論を挟む者は一人もいない。
当たり前だろう。全員がそんな風に返す。
「ほら、立ち上がれ。シャキっとしろ。シャキっと。妻を娶る男がそんなんじゃいかん」
手を貸し、起き上がらせる。
「姉さん。……なんかおっさん臭いぜ」
「一言多いんだお前は」
お腹が大きくなる前に、梅子の実家へ訪れ両親へ挨拶をした。
いくら男気がなく、嫁の貰い手が見つかりそうにない娘とはいっても、相手はまだ学生である。当初ははっきりと難色を示した。
しかしそこは大和である。事前に情報は調査済みである。手土産から相手の気に入りそうな態度、性質、話題、全て周到なぐらい準備はしてある。結果最後には嫁に貰ってくれとまで泣きつかれる始末であった。
出産も無事に済んだ。
初産だし長いこととったらという周囲の言葉にも関わらず、早くに梅子は学校に復帰した。
―――そして、月日は流れ卒業式。
スーツ姿のガクトとモロは校庭にいた。最後の思い出にとぶらぶらと校舎内をうろついているのだ。
「高校生活なんてあっというまだったな」
「そうだね。このまえ入学したと思ったらもう卒業だもんね」
- 555 名前:策士策に溺れる17[sage]投稿日:2009/10/20(火) 23:02:11 ID:F4UWLcaQ0
- 「結局俺達彼女できなかったな」
「まぁしょうがないと言えばしょうがないけど」
「あいつは勇者になったっていうのにな」
「大和は、キャップをある意味越えちゃったもんねぇ」
モロとガクトの目線の先には、駆け寄っていく大和の姿がある。先には京と百代。そして、百代の腕のなかの赤ん坊。
「ごめん。遅くなっちゃって」
「気にするな。お前は私の所有物なんだ。ということはお前の子供も私の物だ。私の物を私が面倒をみるのは当然だろう?」
一足先に卒業した百代は、わりと暇しているらしく、最近では率先して赤子の面倒をみている。
「おかあさんでちゅよー」
「こらこらこら。……洗脳するのはよしなさい」
「大和のこどもということは私のこどもも同然だもん。ということは私はこの子の母親も同然」
「いかなくていいのか?」
大時計に目をやる百代。
卒業式が終わったら流れで、婚姻届を役所に出す手はずになっているのだ。
「そうだね。……悪いけどまた面倒見ててもらえる?」
「当たり前だ。ほら、行ってこい!」
校舎内に駆け戻る。
「先生」
教員室に入る。他の教師は出払っている。梅子は机で書き物をしていた。
けじめをつける意味で、学校内での呼び方は直した。
「大和か、待ってろ、もう少しで終わる」
しんとした部屋に、校庭のほうからの生徒たちの声と書き物の音が鳴る。
「……よし。行くか」
手を握りあいながら廊下を進む。残っている生徒の姿は見受けられない。
「……あっという間だったな」
- 556 名前:策士策に溺れる18[sage]投稿日:2009/10/20(火) 23:05:43 ID:F4UWLcaQ0
- 「そうだね」
二人の足音が廊下の隅にまで響き渡る。
「お前のクラスを持ったときには、こんなことになるなんて思いもしなかった」
「俺もだよ」
「ふふっ」
吐息をこぼす。
「この一年頑張ったな」
大和は第一志望の大学に合格していた。もちろん努力のかいあって、である。
キャンパスは遠くはないが、子供も生まれたので二人は春からは新居にうつる。
「当たりまえだろ。俺は梅子を守るって誓ったんだから」
「一丁前のことを言いおって」
門の近く、一台のセダンが止まっていて、そばには忠勝が立っている。
「勘違いするんじゃねーぞ。この後仕事があるから、ついでだ。ついで」
後部のドアを開け二人を乗せてから、運転席に乗り込む。
「ありがとゲンさん」
「ふん」
免許を取ってから月日は浅いが仕事柄運転することが多いので、運転は手慣れたものだ。
「ゲンさんにもいつかお礼をするよ」
「馬鹿いってんじゃねぇ。……お礼なんていい。……家族を守れるようになれ」
どこか遠くのほうを見つめながら、つぶやくようにそう言った。
「わかってる」
手続きはつつがなく終わり、役所から出てくるときには、二人は晴れて夫婦となっていた。
「これでもう直江梅子なんだね」
「まだ違和感があるな」
「そうだね。少し経てば慣れるんだろうけど」
そのままとある場所へと向かいたかったが、卒業謝恩会という名目の宴会が控えていた。
大和と忠勝は終わり次第抜け出し、梅子が待っている喫茶店へと足を進める。一子や京、それと巨人も着いてきた。
- 557 名前:策士策に溺れる19[sage]投稿日:2009/10/20(火) 23:09:22 ID:F4UWLcaQ0
- 途中、忠勝は車を取りに別れる。もちろん忠勝は酒を一滴も飲んでいない。
悪いからタクシーで行く。だから飲め、そう幾度となく進めたが最後まで忠勝は断ったのだ。
大和たちの姿に気づき、梅子は店を出た。
「おめでとうございます」
「ああ。ありがとう」
「先生、こいつに愛想がつきたらいつでも俺のところに駆け込んできてくださっていいんで」
「安心して下さい。そんな日は訪れませんから」
笑顔でばっさりと切り捨てる。
「ははは。そうですか。何よりです」
そのまま梅子は一子たちと話し始める。
「……なぁ……俺とお前いったいなにが違ったんだ」
肘で大和をつく。
「……大分前にもそれ言いましたよね」
「いっとくがなぁ! これからが地獄だぞ! 甘ったれ根性は捨てろよ!」
「覚悟はしてますよ」
「……だよなぁ。お前この一年頑張ったもんなぁ」
「当然のことです」
「……選別だよ。とっとけ」
のしがついた封筒が渡される。
「ありがと」
「なあに、お前にじゃない。一度は惚れた女に向けてさ」
二人は車に乗り込み、七浜の港が一望できる公園に向かった。
夜景が美しい定番のスポットである。
梅子の手を引き高台へと向かう。
ビル街にはネオンのきらめきが、海のほうには灯台の輝きが揺らめく。遠くのほうで船舶だろう灯りがゆらめきながら、動いていく。
深い藍色をした海はゆったりと波をたたえている。空には半月が浮かんでいて淡い輝きを放っている。星は見えない。都市が明るすぎるのだ。
けれど、海にはそれら全ての光りが映し出されている。
「梅子」
「なんだ」
「色々順番が入れ替わっちゃって、すまないことをしたと思ってる。こんなことはじめに言うべきだった」
- 558 名前:策士策に溺れる20[sage]投稿日:2009/10/20(火) 23:13:30 ID:F4UWLcaQ0
- 優しく大和を見つめる。
「一生大切にします。……俺についてきて下さい」
懐から箱を取り出す。中には指輪が入っている。
「一生なんて大言していいんだな」
「あたりまえだろ」
じらすように間をおき、
「……私は一生大和についていきます」
指輪に指を通した。
――――――――その後
生徒が女教師とつきあい始め孕ませ結婚したという話題は川神学院では一種の伝説となり、数十年後の生徒にまで語り継がれることになる。
同窓会が何回重ねられようが、この話題にはいつも花が咲き、大和と梅子はからかわれたという。
大和は卒業後、一流企業に就職。後に子供のためになる世の中を、と議員に転職。幾度か当選を重ねた後、これからは子供世代の時代だ、と突如として引退。余生をすごす。
梅子はあれから二人子供をもうけた後、教師を辞め家庭に入り、夫に尽くしたという。
夫婦は最後の時までいつまでも仲良くくらしたとさ。
- 559 名前:aerowa[sage]投稿日:2009/10/20(火) 23:20:16 ID:F4UWLcaQ0
- 以上です。無駄に長くてすみません。
>>535-537,>>539-544,>>547-552,>>554-558
レス番は以上です。
- 560 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/20(火) 23:23:01 ID:ae8/FBn+0
- 乙で候。
- 561 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/20(火) 23:24:26 ID:X2M+WPSP0
- 乙ですわ
- 562 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/20(火) 23:25:17 ID:xDr1FBCS0
- 乙でした
よくもまあ巨人がこうも大人しくしてたもんだ
- 563 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/20(火) 23:46:33 ID:HdbCOV5K0
- 乙
三分の一ぐらいにまとめるとなお乙
- 564 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/21(水) 06:35:04 ID:/FsSwHWN0
- 乙
途中誰のセリフがわからなくなる所があったです
ゲームだと声と絵があるからいいけど
文章だけだとその辺難しそうだなあ
- 565 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/21(水) 12:22:24 ID:89/tw4Cf0
- 乙乙
調教師さすがwwww
- 566 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/21(水) 19:54:16 ID:vUpZmZes0
- >>562
大人な対応をしたという後付言い訳をしてみる。
巨人、最後のほうまですっかり忘れてましたw
>>563
ですね。…修行します
>>564
うわ、まじっすか…反省です。
ちなみに手数でなければどのへんか教えて頂けますか?
- 567 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/21(水) 21:38:17 ID:/FsSwHWN0
- んんn
人数多い時にちらほら。〜はひとりごちた、とか
動作を挟んだりすると良かったのかなあと思ったりとか
…なんか偉そうでゴメンね
- 568 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/21(水) 22:27:58 ID:vUpZmZes0
- >>567
いえいえ勉強になります。ありです
- 569 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/22(木) 22:14:00 ID:HROqbcJK0
- チカリンで1本投下
- 570 名前:欲張っていこう・1[sage]投稿日:2009/10/22(木) 22:17:00 ID:HROqbcJK0
- 「キャップ、何かいいバイトない?多少キツくてもいいから、短期で金になるヤツ」
朝、学院へ向かう途中で、眠そうなキャップに相談。
「ああ、キツくてもいいってんなら大丈夫だけど
この間紹介した建設現場はどうしたんだ?」
「無事に終了したよ。もうちょっと続けたかったな。
まあ、いい稼ぎにはなったけどね。あんな感じで何かないかな?」
「任せとけ、心当たりにきいておくぜ」
「なーんだ大和、やたら銭稼ぎに走るじゃねーか」
ガクトが会話に絡んでくる。
「まあな。色々と、出費がかさむのよ」
「あー……くっそー、チカリンかー」
色恋がからむと鋭くなるなガクト。
そう。チカリンこと小笠原千花とつきあうようになってから
何かと出費が増えているのだ。
「やっぱり女の子とつきあうってお金かかるんだね……
僕には色々とハードルが高いや」
「そっかー、大和もチカリンに貢いだりしてるのか……だが俺様同情はしねえ!」
「いいなー、俺も大和に貢いでもらいたいなー」
「キャップに貢いでどうするんだよ!てか、別にそんなんじゃないって」
- 571 名前:欲張っていこう・2[sage]投稿日:2009/10/22(木) 22:20:02 ID:HROqbcJK0
- 「じゃあ、何がそんなにお金かかるのさ?」
前を見る。女子連中は、ちょっと前を離れて歩いている。これなら、いいか。
「……まあ、ぶっちゃけると、ラブホテルの料金が痛いんだ」
「ブッ!?」「うわ、そうなんだ」
「ラブホテルかー、何か面白い設備とかあるんだろ?俺も行ってみてーなー」
ガクトとモロが一瞬驚いて、その後妬ましげな視線を送ってくる。
キャップの好奇心は、何か違う方向に向かっているようだ。
「大和、今度いっしょに行こうぜ!案内してくれよ!」
「……男二人はお断りってところもあるぞ。モロと行けよ、女装させて」
「何でそこで僕の名前が出てくるんですかね!?」
「そっか……なあ、モロ、俺とラブホテル行こうぜ!」
「キャップも本気に取らないでよ!」
「……聞いたぞ聞いたぞー」
「おおう!?」
いつの間にか、ずっと前を歩いていたはずの姉さんがすぐそばまで来ていた。
「ラブホテルという単語が聞こえたので飛んできた。
……キャップ、童貞卒業おめでとう。そしてモロロ、処女卒業おめでとう!」
- 572 名前:欲張っていこう・3[sage]投稿日:2009/10/22(木) 22:23:02 ID:HROqbcJK0
- 「どうしたんだモモ先輩、急に引きかえしたりして?」
騒ぎを聞きつけて、他の女子連中まで集まってきてしまった。
「皆、祝ってやろう!キャップとモロロは、このたび、めでたくカップルになった!」
「な、なんと!?」「ギョエ!?男同士なのに!?」「「あうあうあう……」「あ……ガクトじゃないんだ」
約1名をのぞいて、驚愕していた。
「?なんで俺とモロがカップルなんだよ?俺はただ……」
「キャップそれ以上喋らないほうが!」
「モロに、一緒にラブホテルに行こうって誘っただけだぜ?」
モロの制止はちょっと遅かった。ざわめく女子部。
仕方がない、軍師として事態を収拾し、誤解を解かねば。
「……待て、皆落ちつくんだ。キャップだぞ?
女の子に全く興味を示さないキャップが、変な意味でラブホテルになど……」
「そうか……女子に無関心だったのは、男のほうがよかったからだったとは」
「はいクリス間違った解釈しない!」
それから、キャップが純粋にラブホテルの部屋に興味があるだけと
女性陣に説明したわけだが、すると今度は
「……そもそも、何でラブホテルの話なんかしてたんだ?
ふ、ふしだらなのは、いけないんだぞ!」
- 573 名前:欲張っていこう・4[sage]投稿日:2009/10/22(木) 22:26:20 ID:HROqbcJK0
- ああ、やっぱりそこに話が行ってしまったか。
男連中にアイコンタクトを送るが
「なんか、大和が、小笠原さんとつきあいだしたら
ラブホテルの料金が大変だからバイト紹介してくれって話からこうなった」
「なるほど、そういうことか……このエロ軍師が!」
またしてもキャップが!
「ああ、どうせ俺はエロですよ!しょうがないだろ、島津寮じゃ無理だし!
千花の家だって家族いるし!ラブホ使うしかないじゃん!」
「そ、そんなにお金に困るほど……ご利用になっているのですか?」
「いや、まあ週に2回程度なんだけども……」
いや待て、俺。これって「週に何回ヤってます」って言ってるようなもんじゃん!
くっそ、まゆっちにハメられるとは!
「意外に淡白。もう飽きたとか?ククク」
「そんなことはない!ラブホ行けば少なくとも10回はしてるし!
おかげでゴム代もバカにならないぐらいだ!……って何言わせるんじゃー!!」
……ダメだ、千花のことになると熱くなってしまう。
「っと、噂をすれば影だよ、大和」
「ん?……げ!?」
モロの指差した方に目をやれば、今まさに千花がやってくるところだった。
- 574 名前:D[]投稿日:2009/10/22(木) 22:28:02 ID:BVFobrst0
- 初リアルタイム!
支援
- 575 名前:欲張っていこう・5[sage]投稿日:2009/10/22(木) 22:30:20 ID:HROqbcJK0
- 「おはよー大和君!皆もおはよー」
「あ、ああ……おはよう、千花」
それまで騒がしかったファミリーの仲間が、急に会話を止めてしまう。
そりゃ、エロい話題の登場人物だったわけだから仕方がない。
「……あ、あれ?何か、急に皆、黙っちゃった?」
「いや、別にそんなことはない。話の切れ目というか、ね」
「ふーん……ねえワン子、何の話してたの?」
千花が、この中では一番声をかけやすいワン子に話しかけるが
「え?い、いや、あの……た、たいした話じゃないのよ!?」
「そう?……何か、楽しそうだったけど……」
話題が話題だっただけに、ワン子では答えられない。
普段エロい話題では全開になる姉さんも
相手が千花ではどこまで突っ込んでいいのかわからないので黙っている。
姉さんでそれだから、他のメンバーが口を開くこともなかった。
千花は千花で、自分が現れたことで場の空気を悪くしてしまったと思ったのか
やはりそれ以上は話しかけようとはしない。
何となく気まずい雰囲気のまま、皆黙って歩いていく。
このままじゃ、マズイな。
千花の手を取って、ファミリーメンバーから少し離れる。
とたん、千花が大きくため息をついた。
- 576 名前:欲張っていこう・6[sage]投稿日:2009/10/22(木) 22:33:21 ID:HROqbcJK0
- 「……やっぱり、アタシってあのメンバーからは受け入れられないのかなぁ」
「気にしてたのか」
「そりゃあね。彼氏の友達に、よく思われてないってのは気にはなるわよ」
「そこまでじゃないよ……何て言うかな、戸惑ってるんだと思う」
「戸惑う?」
「ああ。俺たち、ずっとつるんできて
仲間の外に彼女とかできたの、俺が初めてだからさ。
どう接していけばいいのか、わかんないんだと思う。そのうち慣れるよ」
そうなったらなったで、遠慮がなくなりそうで怖い気もするが。
「おーい、二人だけで内緒話なんてズルイぞー、コッチ来いよー!」
「ノンビリしてると、授業遅れちゃうわよー?」
ファミリーの仲間が大切なことには変わりないけれど
ファミリー以外に、大切な人ができる。
いつか、皆にもそんな人が現れるのだろうか。
「ああ、悪ぃ悪ぃー!今行くー!……行こうか、千花」
「……うん!」
その時には、惜しみなく祝福を。
仲間とは、変わらぬ友情を。
どちらか一つ、ではなくどちらも頑張る。
二つとも大事なものだから、欲張っていこう!
- 577 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/22(木) 22:37:15 ID:HROqbcJK0
- 終わり。この後
「……で、結局のところ、何の話してたの?」
「いや、週に何回ぐらいラブホテル使ってるか、とかそんな話」
「!ちょ、なんでそんなコトまで言っちゃうのよー!?」
「い、いや成り行きでやむを得ずだな……」
「信じらんない!もうちょっとプライバシーとか考えてよー!
あー、ワン子とかが黙っちゃったのわかるわ……」
「……コッチが慣れる必要もあるよな」
とかいうやり取りがあったような、そんな風景。
- 578 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/22(木) 23:01:49 ID:wHwoICSs0
- 乙!
前半のキャップのKYっぷりがw
実際、チカリンも最初は風間ファミリーとはギクシャクするんだろうな
頑張れ大和!
- 579 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/22(木) 23:53:04 ID:NPD7tCSe0
- 乙
うまく話を持っていくなー
しかし、自分が顔出した途端に場が静まりかえるとかキツイよね……
- 580 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/23(金) 00:52:53 ID:rmbL6OzQ0
- 乙
キャップにワロタ
前半が賑やかだっただけに
後半のシリアス目がきいてくるなぁ
- 581 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/23(金) 12:34:19 ID:LuoKQD1a0
- 乙
風間ファミリーマジ閉鎖的
外部に彼女とかできると変わるのかねぇ
- 582 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/23(金) 13:46:33 ID:aSutDPJl0
- タカヒロ自身が語ってるじゃないか。風間ファミリーは若者にありがちな閉鎖的なグループだって
- 583 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/23(金) 17:02:27 ID:j6fIixze0
- 新入りあっさり受け入れられるのが、スカウトするキャップだけだしなぁ…クリスとまゆっち仲間に誘ったのもキャップだし。
閉鎖的ってのは京とモロが目立つが、意外に他メンバーもそうなんだよなぁ。
- 584 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/24(土) 04:11:59 ID:Vxj3tYoM0
- 公式の人気投票でいつの間にか大和一位でワロタ
きっと近い内に軍師が大活躍するナニかが投下されるに違いない
- 585 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/24(土) 04:19:56 ID:lDJFPOPW0
- 京極高すぎだろw
SSスレ的に京極堂パロ希望という無茶振りをしてみる
- 586 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/24(土) 12:55:38 ID:LlLToy0S0
- さすが僕らの変態鬼畜軍師
- 587 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/24(土) 23:21:36 ID:jcxpg85D0
- 乙さすがわれらの軍師すげーぜ
- 588 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 02:26:10 ID:CtVXu/SeO
- クリスに告白するときのCGの軍師が可愛いかったから票入れちまったぜ
- 589 名前:秘伝の行(ぎょう)と金剛の拳[sage]投稿日:2009/10/25(日) 02:52:45 ID:Fltp//5H0
- >>151の続きで>>496の前くらいを捏造してみた
>>496での百代と辰子、強敵と書いて友と読むようになった理由を勝手に設定付け
- 590 名前:秘伝の行(ぎょう)と金剛の拳1[sage]投稿日:2009/10/25(日) 02:54:45 ID:Fltp//5H0
- 「百代に辰子。お主らに精神修行の特訓を申し付ける」
夕暮れの河川敷を一人、自分の将来やこの国の行く末に思いを巡らせつつ歩いているといきなり拉致された、俺こと直江大和。
攫った張本人は我が義姉、川神百代と同じく川神院門弟の板垣辰子。
あっという間に川神院本堂で彼女らと並んで正座をさせられ、厳かな川神院総代の申しつけを聞く羽目になった。
……なんで彼女達の修行方針指示に、俺が居る必要があるのだろうか?
「やだぞー。そんなかったるい修行。拳を交してる方が楽しいぞ」
「んー。組み手よりは好きかも。何だか気持ち良く寝れるし」
勝手な事を仰っている川神百代に板垣辰子のお二方。
それ以上に、俺を拉致することには何の疑問も持たなかったのだろうか?
「第一、なんで急に精神修行なんてしなきゃいけないんだ?面倒臭いしやだぞー」
「zzzzzzzzzzz」
……部外者の俺が神妙に正座しているのも馬鹿馬鹿しいほどのグダグだっぷりである。
だが、そんな彼女達をスルーして、厳かに言葉を続けるジジイも伊達ではない。
「お主らの気は大きいものの、まだ形がないからじゃ。椎名は不動明王、黛は阿修羅が見えるじゃろ。
これはお主らよりも心の鍛錬が進んでおる証拠じゃ。
さらに磨けばワシの奥義、顕現のように具現化させ、攻撃を行うこともできる。
つまり、お主らの技の幅が広がるわけじゃから、悪い話ではないじゃろ?」
新しい奥義修得の可能性…。これを聞いても姉さんの食いつきは悪かった。
「…あ〜。言いたいことは判った。だが、私、向いてないと思うぞ。
ジジイの使う毘沙門天なんて、10日間、飲まず喰わず瞬きさえせず、北極星を凝視し続ける修行をやってようやく修得だろ?」
やっぱり組み手以外の修行は嫌いらしい。というか、普通はやりたがらないだろうな、そんな特訓。
「ボーっとしてるだけなら良いんだけどねー。眼を閉じちゃ駄目って、辛いよねー」
一方、辰子の方は本気でどうでも良さそうだった。
そんな二人を見ても、不敵に笑うジジイ。
……何を考えているのか俺には判らないが、何となくロクな事を言わないであろう予感がビンビンにしてくる。
- 591 名前:秘伝の行(ぎょう)と金剛の拳2[sage]投稿日:2009/10/25(日) 03:00:37 ID:Fltp//5H0
- 「あれは三昧という行(ぎょう)の一環じゃ。別に座禅でも読経でも峰行でも構わぬ。
徹底的に精神の集中ができれば何でも良いのじゃ。剣禅一如というヤツもあるしの。
…じゃが、拳を交える行は却下じゃ。お主らの強さでは周囲への影響が大きすぎる。
それに、川神院にはお主ら向けの行も伝わっておる。愛染明王の曼荼羅を描き、その上で3日3晩、交わう行がな。
お主らが煩悩即菩提の悟りに近づけば、心を磨くこともできる」
このセリフを聞いてキュピンと煌く両者の瞳。
そしてこのセリフを聞いて、ようやく拉致された理由を把握できた俺。
「おぉ〜〜。…良いかも、それ」
「…でも、一人ずつでは駄目なんですかー?むしろどうせなら、独占したいなー」
そう言いつつ、一瞬で間合いを詰めて俺に引っ付く辰子。
にへらーと蕩けた表情を見せる彼女と対照的に、殺気が瞳に篭り始めた姉さん。
…サバンナで深手をおったシマウマってこんな気分なんだろうな。
ライオンとチーターが睨みを効かせていて、今この場に居ないハゲタカからも襲撃される恐れがある。
俺を凝視している京の姿が脳裏を過ぎるが、胃が痛くなってきたので、頭を振って振り払う。
………居ないよな?絶対、この近くに居ないよな!?
ちなみに捕食者達は獲物を挟んで睨みあっているだけだが、刺激を与えようものなら、龍虎相打つ闘いの始まり始まり。
「じゃから行じゃと言っておるじゃろう?不眠不休で愛を交し続けて成功なのじゃ。
絶頂に達しても気絶すること罷りならぬ。じゃからぱーてぃーを組んで挑むことを推奨する」
猛獣使いのジョブレベルが上がったのか、簡単にこの場を収めるジジイ。
「…確かに大和の絶倫振りには呆れるものがあるな。…まさか逝かされて返り討ちに遭うとは」
「あははー。カーニバルはそれで負けちゃったからねー。椎名っちも呼んどく?」
やめてー!それだけはやめてー!!ワタシ、ヒカカラビテシマイマスヨ!?
しかし、物騒な辰子の意見には待ったが掛かる。
「これも却下じゃ。アヤツは愛欲によって強くなるコツを掴んでおる。じゃから、この行は既に意味が無い。
それよりも特に【心技体】の心のレベルが低いお主らにこそ、課した修行じゃしの」
- 592 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 03:02:25 ID:Fltp//5H0
- ……カーニバルの後、小雪から『キミのミルクを飲めば、強くなれるって本当?』など聞いてきたことを思い出した。
京の事は変態だとは思っていたが、ここまで斜め上な発言をされると驚くことすらままならない。
しかしトンでもない事態になったものだと改めて感心してしまう。いやエロいことしてくれる事は健全な男として吝かではございませんが。
だが行とまで称されるような過酷なエロとなると、それもそれで…。聞き届けて貰えるとは思わないが、とりあえず異議申し立てはしておく。
「……俺の体力はご考慮頂けませんでしょうか?」
「我が弟子の舎弟ならば、我が弟子同然じゃ。そして弟子は師に逆らわぬものじゃ」
「うわ、何ですその聖闘士理論…」
「万が一の時には、我が川神院で盛大に弔ってやるわい」
「……嫌過ぎる…。十代の若者が、腹上死なんて本気で嫌過ぎる…」
「じゃったら生きて帰るがよい。これも川神魂じゃ」
うん。死んで堪るか。というか死ねるか!!
................................................................................................................
やがて姉さん、辰子との三人で押し込まれた修練堂の床には梵字を用いた曼荼羅が書かれており、その真ん中には布団が敷かれていた。
ちなみに窓も締め切られ、明かりは蝋燭の灯火のみという中々にロマンティックというよりシュールと言うかむしろミステリアスな光景。
仏様方の前でセックスというのもやっぱりどうかと思うが、まぁ行だから仕方ない。
さらに外から閂が掛けられた辺り、やっぱり三日三晩が冗談でないあたりに軽く絶望を感じるが、これも抗いようがない。
寺のお堂に敷かれた布団、そこに三人の男女。
しかも女二人は視線だけで攻防を繰り広げており、取り残された俺にできることは、ご本尊の尊顔を拝むことと、天井の染みを数えるくらい。
だから、二人の間にこんな会話が交されていたことなど、全く知る由も無かった。
- 593 名前:秘伝の行(ぎょう)と金剛の拳4[sage]投稿日:2009/10/25(日) 03:04:44 ID:Fltp//5H0
- 『私は、お前の事が正直気に入らない。大和は私の舎弟(おとうと)だぞ』
『アタシだってそうだよ〜。大和君はアタシのとっても大切な人。家族にも負けない程。…いっそ力づくで奪っちゃいたいくらい』
『望むところだ…と言いたい所だが、この場では大和も巻き込む』
『む〜。大和君に怪我させちゃいけないもんね〜。…なら』
『ああ。大和を逝かせた回数で勝負するか』
「覚悟しろ、大和!」
「行くよ!大和君!!」
天井の染みの数を64個カウントしたあたりで、急に姉さんと辰子が飛びかかってきた。
ただしこの動きは連携が取れていない。…まずは姉さんをいなしながら、辰子から責めるか…。
................................................................................................................
「く、うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
アナルを責めて姉さんを絶頂に導き、意識を飛ばしかけたところで辰子が再び迫ってくる。
「大和君!大和君!!」
猛烈な口付けには舌の動きで返し、動きが止まった彼女の陰核を責める。
空いた手で強めに乳首を摘む。
「ぁんんんんんんんんんんん」
この頃には姉さんが回復してきているが、俺だって姉さんの性感帯は把握している。
二人の体力は規格外だが、別個に向かってこられる分には何とか対応できる。
基本戦術は先手必勝、とにかく逝かされる前にイカせていかなければ俺の体力が保たなくなる。
今のところ俺の射精回数は3回。対して姉さんと辰子はそれぞれ8回と10回イカせた。
しかしこれが三日三晩続くとなると、本気で大変なことになるな。
................................................................................................................
姉さんを20回ほど逝かせたところで、妙な違和感を感じた。
なぜだろう?事が始まってからまるで目線を交えようとしなかった二人が、アイコンタクトを交わす回数が増えている気がする。
- 594 名前:秘伝の行(ぎょう)と金剛の拳5[sage]投稿日:2009/10/25(日) 03:07:42 ID:Fltp//5H0
- 『百代さん…。5分休んだら戻るから…』
『ああ、暫く休め。…反撃はそこからだ』
『……何となく、アタシが百代さんの事が嫌いだった理由が判った気がする』
『そうだな。私達は似ていた。そして同じものを求めて戦った。…私がお前の立場だったなら、同じ選択肢を選んだかもしれない』
『今も同じものを求めている事には変らない。アタシは大和君が欲しい!!」
『アレは私のモノだ!…だが気力が戻ったなら上等だ。いくぞ、合わせろ!』
感じていた違和感…。行を始めた当初はそれぞれ勝手に動いていた二人が、次第に調子を合わせ始めた。
姉さんが俺の鎖骨を舐める時には、辰子の唇が臍の周りをなぞる。
「ぺろ…。二人で同時に掛かれば、ベッドヤクザのお前といえど抵抗もできまい」
「ちゅ。百代さんと一緒に気持ちよくしてあげるよ、大和君」
辰子が俺の腰の上に跨った時には、姉さんが俺の顔に腰を乗せる。
挙句、辰子を逝かせる瞬間に姉さんも絶頂に達する挙動を見せるが、辰子も姉さんも一瞬で息を吹き返す。
まるで二人がシンクロしていくように…。常に対を成す護法の守護神の様に。
一糸乱れぬ動きで徹底的に攻めてくる二人に、俺は必死に意識を保つことしかできなかった。
…まるで護法神に踏みつけられる悪鬼の様に蹂躙され、度を過ぎた快楽も地獄の責め苦となった。
................................................................................................................
やがて四日目の朝を迎え、目的の刻限を超えた頃に久し振りに服を着る。
二人とも身なりを整えた頃、閂が外され、開いた扉から朝日とともに一人の老人が入ってきた。
「ふむ、無事に行はこなせたようじゃの。さて百代に辰子よ、お主らが体得した気の形をみせてみよ」
この事件の黒幕、本人の登場である。
そして登場するなりの振りに、難色を示す辰子。
「え〜。疲れるからやだよ〜」
一方、姉さんの方は、ちょっぴり乗り気だった。
「諦めろよ辰子…。ジジイ、しっかり見届けろ。はぁっ!!」
気合と共に立ち上った二柱のオーラに、川神院総代は目を細め唸る。
「むぅ…。お主らが身に付けた気の形は金剛力士か。百代が阿形、辰子が吽形。
最も堅く強い武器ヴァジュラが源流となる仏ならば、お主らにふさわしいかも知れぬな」
- 595 名前:秘伝の行(ぎょう)と金剛の拳6[sage]投稿日:2009/10/25(日) 03:10:48 ID:Fltp//5H0
- 満足気に弟子達の成長を認めたジジイだったが、軽く俺に視線を移した瞬間、妙に凝視された。
「ぬぅ…。お主に菩薩の相が出ておる…。衆生を救うべく力を求め、己を磨くか。
直江よ。武に身を置かぬ者も川神院は門戸を開いておる。いつでもここに来るが良いぞ。心身を鍛錬する場も、人も貸そう。
…どうやらお互いに利益があるようじゃからの」
菩薩…。悟りを得るべく苦難に挑み、後に如来となる行者。
…だが、この苦難は俺の夢の現実的な障害か、それともさっきまでの行の様な女難を指すのか全く判らず、戦慄するしかなかった。
ただ、慄いているだけなのも癪なので、とりあえず釘を刺しておく。
「俺の精神修行は、座禅でいいです」
返事だけはしておいて、そのまま敷かれた布団に倒れこむ。
だから、なんじゃつまらん…などと舌打ち交じりの声が聞こえたことなどきっと気のせいだ。
姉さんと辰子も折り重なるように圧し掛かってくるが、もうどうする事も出来ない。
…ともかく寝たい。少しでも体力を回復させたい。
どうせ今頃、俺の部屋には不動明王のオーラを立ち上らせた少女が待ち構えているに違いないんだから。
<了>
- 596 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 03:24:39 ID:CReQdyFr0
- 乙
絶倫だなさすが軍師ぜつりん
- 597 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 03:28:36 ID:XbqwsnTq0
- 乙なのじゃ
寝る前にいいもん見せてもらったよ
- 598 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 03:45:01 ID:hS4DAv6M0
- いやっほう辰子ネタ投下嬉しいぜ
乙乙
- 599 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 05:26:18 ID:W9LvCHTd0
- 乙。オチが良かったw
やはり京はラスボスw
- 600 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 09:56:24 ID:OdF/EZQZO
- 菩薩っていうか賢者モードじゃね?w
しかし乙。面白かった!
- 601 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 11:03:02 ID:qTorLk+u0
- 思いっきり笑った。乙
3日も放置された京としては川神院を出た瞬間に拉致ろうとしてるとしか思えない。
- 602 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 13:38:34 ID:G++bQ1qh0
- いがみ合ってた2人が実はお互い似た者同士だと認識し、
共通の目的を見つけ、
力を合わせて試練に挑み、強敵と書いて友と呼べる間柄になる。
こう書くと少年漫画の王道展開みたいですが、笑わせて頂きました。
全てがジジイの手の平の上って感じですな……特に大和は振り回されっぱなしだし。
百代と辰子相手に3日3晩って、流石の絶倫軍師もこれはキツかっただろうな…。
しかも、3日放置されてた京はある意味百代&辰子より恐ろしいと思う……生きろ、大和。
- 603 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 17:24:51 ID:/nknNHV40
- 乙
次は京にスポットライトを
- 604 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/25(日) 18:24:32 ID:a1huwJyD0
- おいジジィ、そいつら自分のとこの学生だっての忘れてないかwww
三日間も監禁して何させてるwwwwwwww
- 605 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 01:32:48 ID:fAW+TBMKO
- 何って、ナニに決まってんべ
- 606 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 08:09:45 ID:LE7Egx8X0
- 時期外れも甚だしいバレンタイン物投下
誰得! 京得!
- 607 名前:ゲンさんと大和とチョコレート1[sage]投稿日:2009/10/26(月) 08:12:03 ID:LE7Egx8X0
- バレンタイン。
ごく一部の勝ち組にこれまたごく一部の負け組が、己のふがいなさ欠点には目をやらずひがみそねみねたみ怨嗟の声をあびせ呪詛を吐くイベントである。
もちろん大多数の一般人にとっては何ら一般行事と変わらないが。
そして彼女持ちの大和は当然勝ち組グループに所属していた。
義理チョコもほどよく貰い、彼女である由紀江からはお手製の本命チョコをもらい。
京からは、今にも九十九神に化してしまいそうなほど念のこもったチョコを貰い。
意外なところでは忠勝からも貰っていたりした。しかもお手製である。
それは巨人から頼まれた話で、
「付き合いだ、職場で配るぞ。なにバイト代は払う」
職場というのが巨人が密かに支援している孤児施設であることは、忠勝も承知しているので、バイト代は貰わず引き受けたのだ。
人に配るのであれば納得のいくものを作られねばならない。
忠勝はそういう男である。
料理は得意であるが、菓子作りとなると何度も試行錯誤をかさねた。
そしてもうほぼ完成品となった物を大和に味見させたのだ。
「な、なんなんだ。……この口に入れた瞬間に広がる華やかで豊かな風味と蕩けるような舌触りは! チョコとも思えぬ芳醇な香り。甘ったるいだけではなく、それを引き立てる苦みも最後には広がる。……まるで朝霧につつまれた森を散歩してる気分や!」
その甲斐あってか完成品は大和のテンションが少し変になるくらいのクオリティーで。
「あんたは天才や! 菓子作り界の神の子や!」
「勘違いするなよ。別にてめぇのために作ったんじゃねぇんだからな。……茶はいるか?」
「おねがい」
「……紅茶がいいか。砂糖は控えめにしとくぞ」
バレンタインの後にはホワイトデーが控えている。
恐怖の三倍返しデーである。
しかし三倍返しが基本とはいっても、十円チョコを渡された相手に実直に十円チョコを三つ渡して返すことは許されない。言語道断である。
チョコを出した瞬間に冷ややかな目線が浴びせられることは間違いなく、口ではありがとうなどとのたまいながらも腹の中では所詮この程度かという失望がうず巻いていて、七十五日間もの間陰口の種を提供することになりかねないからだ。
- 608 名前:ゲンさんと大和とチョコレート2[sage]投稿日:2009/10/26(月) 08:14:27 ID:LE7Egx8X0
- かといって渡さなければ渡さないで好感度減少は免れない。
まさに外道イベントなのである。
今年も大和は頭を悩ませていた。
「(ツテを頼ればチョコは手に入るが……ちょっとばかり痛い出費だな……)」
金銭に困窮しているわけではないが、余裕があるわけでもない。出費はできるだけ抑えたい。
頭に浮かんだのが、手作りチョコである。
男からの返しが手作りチョコというのもあれな気がしなくもないが、市販の箱やラッピングをすればなんとかなるだろう。
「ゲンさん。今いい?」
忠勝の部屋をノックする。
「ちっ、……こっちも暇じゃねぇんだよ」
がらりと扉が開く。
「用件は長くなんのか? ……茶菓子を持ってくるから待ってろ」
菓子作りは下手だから由紀江に聞け。そういう忠勝をなだめつつ、チョコ作りの質問をする。
口数は少ないものの、はっきりとわかりやすく忠勝も説明する。
店で買うよりは安くあがるが、味や見た目は腕次第だとのこと。
「菓子作りをなめんじゃねえ。…痛い目にあうぞ」
「ゲンさんほどのクオリティーは求めてないから。市販品と同じようなのができればオッケーだよ」
「…好きにすればいい」
菓子作りを甘くみていたことには、大和もすぐに気がついた。
基本が分かっていれば本も役には立つ。が、門外漢の大和に効果があるかは疑わしく、レシピ通りにやっても再現にはほど遠く、そもそもレシピに書かれている言葉の意味をいちいち調べる必要もあった。
暇つぶしも兼ねてと合間合間に作っていたのだが、ホワイトデーが間近に近づいても出来あがらず、最初のうちは静観していた忠勝もじれったくなったのか、見かねて口を出し始める。
「なってねえな。…かしてみな。……勘違いするなよ。てめえに台所を占拠されると迷惑だからだ」
決して自分が作るわけではない。あくまでやり方を見せるだけだ。
違いはすぐに出た。
「…美味くはねぇな」
- 609 名前:ゲンさんと大和とチョコレート3[sage]投稿日:2009/10/26(月) 08:50:41 ID:LE7Egx8X0
- それから幾度か試作を重ねただけで、
「だが不味くもねぇ。これくらいなら人様に渡せるんじゃねえか」
忠勝から直接手ほどきを受けたこともあり、味見た目共に、市販品と遜色はない。
評判も上々だった。
試作段階で失敗作を重ねたので、当初より出費はかさんだが、それでも購入するよりは安かった。
「まったくゲンさんのおかげで無事に済んだよ。ありがとう」
「俺はただ教えただけだ。…あれはお前が作り上げたものだろう。感謝される義理はねえ」
「いやいやゲンさんがいなけりゃ作れたなかったもん。これは俺からの感謝の気持ちです」
ラッピングされた包みを二つのばす。
忠勝はしかめつらを崩さないまま見つめている。
「余計なことしやがって。気にするなったら気にしないでいいんだよ」
「そんな大層なものじゃないから。…お茶入れるね」
自ら茶を入れようとする忠勝を押しとどめる。
つつみのひとつはお礼に、と買ってきたクッキーである。
「どこの店だ?」
そこまで有名な店ではないが、名前を聞いただけで忠勝にはすぐにわかったらしい。
忠勝は眉間にしわを寄せたまま、注意深くクッキーを眺めにおいを嗅ぐ。
「アレルギーでもあったっけ?」
「いや、そうじゃねえ」
クッキーを歯先で半分ほどかじり口に含む。舌の上や、舌先で破片をキャンディーのように弄ぶ。
それからお茶を一気に飲み干し、腕組みをしたま黙り込んだ。
忠勝がクッキーを目前に難しい顔をして考え込む。
妙に緊張感がある空気も合って、なんだかとてもシュールな光景だった。
だんだんとおかしさがこみ上げてくる。けれどそのあまりにも真面目な顔に、大和は耐えを耐え、忍びを忍ぶ。
- 610 名前:ゲンさんと大和とチョコレート4[sage]投稿日:2009/10/26(月) 09:11:05 ID:LE7Egx8X0
- ふいに忠勝は軽く舌打ちをして、
「…うめぇ」
呟くようにもらした。
大和は噴き出す。
「何がおかしい」
怯んで怖じ気づきそうなほどのするどい眼光で睨み付ける。
けれど、今の大和には逆効果で、笑いは止みそうにない。
忠勝はもう一度舌打ちをして、そっぽをむいた。
「いやぁ…悪くはないよ。…なんていうかゲンさんらしいと思って」
「そうかよ」
「それで、もう一つの袋なんだけど、チョコです」
ホワイトデーに作ったチョコだ。
「そこまでの味じゃないんで、気持ち程度に」
「謙遜するな」
「料理は味よりも気持ちが大事なんだ。…腹が減ってればなんだって美味いだろう。それと一緒だ。気持ちがこもっているってことが一番の美味しさなんだよ」
「いやそれ不味いっていってるようなものだから」
「だから、不味くはないって言ってるだろ。……うめぇよ」
なんていうか、胸キュンを感じた。
これまでに感じたことのない胸のときめきを感じた。
大和の心に、情欲の炎がめらめらと燃え上がり広がっていく。
「げ、ゲンさんっ!」
「っッ!」
忠勝を押し倒す。不意を突かれた忠勝は抵抗できずに、床に打ち付けられる。大和は強引に押さえつけ馬乗りになった。
忠勝も抵抗し藻掻くが、腕を足で押さえつけられているので、はねのけられない。
「抵抗しないのかな?」
歯をくいしばる忠勝の頬を手の甲で撫でる。
- 611 名前:ゲンさんと大和とチョコレート5[sage]投稿日:2009/10/26(月) 09:15:27 ID:LE7Egx8X0
- 緊張して身体を硬くするのが大和にも分かった。
「てめぇ。……混ぜ物しやがったな」
忠勝は末端に広がる痺れを感じていた。
本来であれば、大和が忠勝の動きを封じることはできない。
薬を盛られたのである。
なんともご都合主義である。
「当たりだよ」
ベルトをするりと抜き取り、忠勝の腕に回す。
その隙をついて、大和の体を押し飛ばし距離をとった。
壁を背にし睨み付けるが、顔をしかめたかと思うと、そのままずるりとしゃがみ込んでしまう。
忠勝の息は荒く頭は揺れている。意識を失ってもおかしくはないが、気力でなんとか保っていた。
「ふふっ」
なんとも妖艶な笑みを浮かべつつ一歩また一歩と近づく大和。
我らが鬼畜軍師は男だってほいほいと喰っちまう奴なのだ。
忠勝の目前でしゃがみこみ、だらりと垂れ下がった腕の手首を背中で縛った。
もはや力が入らないらしく抵抗はなく緊張して硬くなっていた身体も弛緩しはじめている。
しかし開、けているのもやっとという様子の半目から放たれている光は凄まじくいころされてしまいそうなほどだ。
だが大和にそれを気にした風はない。
鼻歌を歌いながら、白シャツのボタンを一つずつ外していく。
忠勝が体をゆすり横向けに倒れる。
みだれた衣服の隙間から、鍛えられて引き締まっている筋肉質な肉体がのぞいている。
「抵抗するのは諦めたのかな?」
大和は手を滑り込ませる。胸のあたりに手を触れると、温かさと、心臓の鼓動が伝わってきた。
「…本気なんだな」
「冗談でここまでやらないさ」
親指を唇に触れさす。柔らかな弾力をもったそこを指先でそっとつまむと白い歯先が見えた。
顔を近づける大和に身を固くする。
- 612 名前:ゲンさんと大和とチョコレート6[sage]投稿日:2009/10/26(月) 09:19:29 ID:LE7Egx8X0
-
「ストーップ! ストッープ!」
朝。通学中。京と由紀江の話に、大和は割ってはいる。
「ん? 何?」
満面の笑みを浮かべる京。
「アウトー! アウトー!」
何のことかわからないや、と素知らぬ顔で話を続けようとする京。
「脚色しすぎだから。余裕でアウトだから!」
いやいや、と手を振る大和。
ホワイトデーの翌日、由紀江と京にもお返しを、とチョコを渡した大和は、話の流れで忠勝に渡したくだりを話していたのだが、途中からモロたちとの話に引き込まれ、続きを京が話していた。
漏れてくる会話の断片が、ヘタレ攻めやら誘い受けやらリバ可やらなにやら怪しいワードばかりなのが気にはなったが、由紀江が真剣な顔をして聞いているので放っておいたのだ。
そして放っておいたら話が触れたくもないほどのカオスっぷりになったのだ。実写版ドラゴンボールもびっくりの出来である。
ちなみに実際は、お茶を入れていたところに京があらわれ三人してまったりお茶をしたという、至極平和平凡であった。
「大丈夫、そこは15禁レベルの描写しかしないから。…それにこのぐらいの話なら普通の本屋で売られているよ?」
男にとっては秘境である、書店の少女漫画のコーナーを大和は思い浮かべる。
独特の雰囲気をもったそこは通り過ぎることさえ躊躇させ、あまつさえ本を探そうなどという気を起こしてその地帯に侵入すれば最後、女性下着コーナーに負けず劣らずの恥辱感を味あわせられるトラップゾーン。
そしてそのダンジョンの最奥にはやはり主が潜み迷い込んだ村人たちの気力をことごとく奪い尽くすという。
- 613 名前:ゲンさんと大和とチョコレート7[sage]投稿日:2009/10/26(月) 09:30:12 ID:LE7Egx8X0
- 「突っ込むところはそこじゃない。……まゆっちも、信じてないとは思うけど、京の話は半分嘘だからね?」
悪ノリしている京を放っておいて、大和は彼女である由紀江の方に振り向く。
「あの……どこまでが本当なんですか?」
由紀江の言葉は、おずおずとした口調だったけれど、はっきりと頭に届いた。
「え?」
届いたけれど、理解することを体が生理的に拒む。
由紀江の目の中をぐるぐると渦が巻いている。
そして、彼氏を妄想の材料に使われある意味とられたなんてことではなくて、もっと別の、なんていうか大和が受け入れたくないような事柄にたいする好奇心で満ちている。
「ど こ ま で が 本 当 な ん で す か?」
ブルータス、お前もか……
そう心の中で呟きながら、大和はくずれ落ちた。
「ククッ。……甘い物は別腹なんだよ」
素晴らしい妄想の堪能と、由紀江を別の道へと誘導するということに成功した京は満足げで。
「性的な意味で!」
にやりと邪悪な笑みを浮かべながら高らかにそう宣言した。
性的な意味でという言葉に反応して近づいてくる百代を視界の端にとらえながら、大和は静かに目を閉じた。
- 614 名前:なんていうか……スレ汚しすみません[sage]投稿日:2009/10/26(月) 09:34:45 ID:LE7Egx8X0
- 以上です。
ついカッとなってやった。反省はしてない(キリッ
- 615 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 09:39:54 ID:GW9H+m0u0
- 乙
長すぎる行がときどきあったので
読みやすいように適度に改行するとなお乙
- 616 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 15:37:56 ID:ZL0TjLnp0
- ウホッ
- 617 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 22:14:18 ID:+zp2kJsy0
- これは酷いwww
主に京の性癖的な意味でwww
乙だ!!
- 618 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 22:31:23 ID:XyC0G4IxO
- ウホッウホッホ
これはひどいなwいい意味でw
- 619 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:17:05 ID:GW9H+m0u0
- ゲンさんで一本投下
- 620 名前:君の名は・1[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:20:07 ID:GW9H+m0u0
- ユートピア騒動が終わって、風間ファミリーで何が変わったかといえば
やはりゲンさんが正式にファミリーの一員になったことが一番だろう。
それまでも、メンバーの多くと同じ島津寮の住人ということで
それなりに接点は多いほうだったが
一緒に行動する仲間になった、となるとまたちょっと違ってくる。
「おはよう、ゲンさん。いつも早いね」「おはよー」
「テメェらが遅ぇんだよ。直江と椎名なんかまだいいほうだが
風間やクリスときたら……ちったぁ1年坊を見習えってんだ。なあ、黛?」
「わ、私はまだまだ年下ですから、皆さんより早く起きるのは当然です」
「黛……まだまだ、って、いつまでたっても年下は年下だぞ」
「はうっ!?」
こんな感じで、会話も進むようになったのだが……
「んー」
「なんだ直江。言いたいことがあるなら言えよ」
「いや、ゲンさんの俺たちの呼び方がね……何ていうの、堅い。堅いよゲンさん」
直江。椎名。風間。黛。
外人のクリスは別として、基本ゲンさんは苗字で呼び捨てだ。
それはファミリーに入ってから、仲間を呼ぶときにも変わっていない。
「仲間なんだからさー、もうちょっとフレンドリーに呼んでほしいわけ」
- 621 名前:君の名は・2[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:23:08 ID:GW9H+m0u0
- 「フレンドリー?……朝っぱらから、やたら高ぇハードル出してきやがったな……」
「そんなに難しく考えないでいいよ、源君」
「京も、『源君』じゃなくて、フレンドリーで」
「おおう……じゃあ私も『ゲンさん』で。私のことは「京』でいいよ」
「わかった……大和、京……へっ、なんか今さらって気もするがな」
「そんなことない。呼び方は大事。ね、ダーリン?」
「クッキー、呼ばれてるぞ」
「またそうやって大和は意地悪なこと言う。僕のことは、クッキーでいいからね、ゲンさん」
「あいよ……ん、ようやく来やがったな。遅ぇぞ……キャップ」
「あれ……何か俺まだ夢見てる?ゲンさんが俺のこと……」
「夢じゃねーよ。大和が、もうちょっと、フ、フレンドリーに仲間を呼べってぇからよ」
うわー。ゲンさん顔赤いよ。
「ゲ……ゲンさーん!!やったー、何か俺スゲー嬉しいー!」
「うお!?てめ何しやがる!?朝っぱらから抱きつこうとかするんじゃねえ!」
朝じゃなきゃいいらしい。覚えておこう。
- 622 名前:君の名は・3[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:26:10 ID:GW9H+m0u0
- 「おはよう、皆。すまない、遅れてしまった」
最後のクリスがやってきて、朝食が始まる。
「源殿、すまないがソースをとってくれ」
「ん……ほらよ」
クリスは元からクリスと呼ばれていたので、ゲンさんのほうは問題ないが
「クリス、さっき話してたんだけど
もうちょっとゲンさんとフレンドリーに会話しようってことで
まず呼び方から改めることにしたから」
「おお、それはいい考えだな!源殿、私は今まで通り、クリスでかまわないぞ」
「問題なのはお前だクリス」
「ん?何か問題あるのか?」
「いや……その、源殿ってのは、さすがに俺も堅苦しいと前から思ってた」
「お、そ、そうか……確かに、そうだったかもしれん。
すまない、気配りが足りなかったな。では……ゲ、ゲン殿」
「違ーよ!取れって言ってんだよ!!」
「む、殿だけでいいのか?……それでは殿、これからヨロシクな。
ハハハ、何だかドラマの殿様と家来みたいだな。
ム?しかしそれでは私が家来……?」
「……仲間になって、初めてわかることってあるもんだな」
- 623 名前:君の名は・4[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:29:39 ID:GW9H+m0u0
- とりあえず、クリスには強制的に「ゲンさん」と呼ばせることにした。
「わ、私は下級生ですから、『源さん』でいいですよね?」
食後のお茶をいれながら、まゆっちがゲンさんに確認する。
「お、おお……いいんじゃねえか?」
「そ、それで私のことはですね……」
ちょっとまゆっちの方に助け舟出してやるか。
「『まゆっち』でいいよね?皆も『まゆっち』って呼んでるし」
「わかった………………ま、まゆ…………まゆ……」
まゆ、まで言って先に進めないゲンさん。
確かに、フレンドリーな感じ満載の呼び名。
このハードルは、今のゲンさんにはまだ高すぎたようだ。
「くっ……ダメだ、言えねえ!俺にはそんな呼び方……すまねえ、黛!」
どんだけシャイなんだよ。
ガックリと肩を落とすゲンさんの手に、まゆっちがそっと手を添える。
「源さんは、頑張りましたよ!私はそれだけでもう……ううっ!」
「いい話しダナー。オラも思わずもらい泣きだぜー」
ゲンさんはわりとマトモな人だと思っていたが
確かに、仲間になって初めてわかることってあるんだなぁ。
- 624 名前:君の名は・5[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:32:41 ID:GW9H+m0u0
- 呼称・まゆっちはゲンさんの今後の課題として、皆で登校。
「ウーッス!」
すぐにガクトが合流。ガクトは元々「ゲン」って呼んでたし
ゲンさんのほうも、すんなり「ガクト」と呼んで無事解決。
「おはよー」
多馬川べりでモロが合流。これも「ゲンさん」「モロ」で問題なし。
「よー、皆揃ってるなー」
姉さんが合流。ゲンさんは「モモ先輩」と呼ぶことにしたようだ。
「ふーん。じゃあ私は『ゲンちゃん』と呼ぼう。なー、ゲンちゃん?」
「……その呼び方ではあまり呼ばれたくねえな……」
ゲンさんは少し困っていた。
「じゃあ、『ゲンゲン』で」
「可愛い系はやめてくれ……」
もっと困っていた。ていうか、可愛いか、それ?
「これは慣れてもらうしかないよ。姉さんのワガママは止めようがない」
「意外に厳しいファミリーだな……」
- 625 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:33:26 ID:jNbB7/wFO
- しえん
- 626 名前:君の名は・6[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:35:43 ID:GW9H+m0u0
- やがて遠くから走ってくる体操服。
「おっはよー、皆ー!」
「ようワン子」「おはよーワン子」
皆が「ワン子」と呼ぶ中で
「うす、一子」
ゲンさんだけが「一子」と呼んだ。
そういえば、ほとんどの人間を苗字で呼ぶのに
ワン子のことだけは前から名前で呼んでたな。
昔からのつきあいで、やっぱりワン子は特別なんだろうけど
関係も変わったことだし、呼び方を変えるのもいいかもしれない。
「ゲンさんも、この際『ワン子』って呼んだら?」
「別にいいだろ……京のことだって名前で呼んでるんだし」
「そうよね。それに、タッちゃんに『ワン子』って言われても、反応できないかも」
「あれー?なんで私の『ゲンちゃん』は嫌がって
ワン子の『タッちゃん』はスルーなんだー?」
「じゃあ、俺たちも『タッちゃん』って呼ぼうか」
「 ダ メ だ ! 」
急にゲンさんが声を荒げた。
皆驚いて足を止めてしまう。
- 627 名前:君の名は・7[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:38:45 ID:GW9H+m0u0
- 「あ、いや……すまねえ、つい。
その、ガキの頃の呼び名だからよ……
同じ釜の飯食ったヤツら以外に、その呼び方されるのは、ちょっとな」
たまに俺やキャップがふざけて「タッちゃん」って呼ぶと怒ってたけど
同じ苦労をした、また別の仲間の特別な呼び名ということか。
「まあ、嫌がる呼び方で無理に呼ぶこともないだろ。
しかし、ゲンちゃんもいろいろ複雑なんだなー」
「いや、その呼び方も嫌なんスけど」
「じゃあ、ミニャモト?」
「……もう何でもいいッス」
「なるほど……『ミニャモトさん』というのも、悪くありませんね、松風?」
「オラは『もっさん』とかいいと思うんだけどナー」
「悪ぃよ!ざけんなまゆっち!…………あ」
「今ゲンさん『まゆっち』って言ったー!」「おめでとう、初『まゆっち』!」「イェアー!」
「い、言ってねえよ!ついウッカリしただけだ!」
はしゃぎながら歩く男女十人。
こうして過ごす時間を積み重ねていけば、少しずつ距離も詰まっていくんだろう。
「ファイトだ、ゲンちゃん」
「だからその呼び方はやめろー!!」
- 628 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:40:41 ID:GW9H+m0u0
- 終わり。この後ゲンさんは犬笛をもらってちょっと嬉しそうだったりする。
全キャラSS制覇は遠いなー……
- 629 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:53:57 ID:rj1ZHUZp0
- 人気投票で源さんに投票した俺、歓喜!
源さんの王道ツンデレは最高っす!
- 630 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/26(月) 23:54:14 ID:V8obZeL40
- 乙
ゲンさんが風間ファミリーに染まっていくw
>全キャラSS制覇は遠いなー……
ガンガレ
- 631 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 00:47:01 ID:ppXFvphr0
- ニヤニヤ
- 632 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 01:02:34 ID:COsZJiX20
- 乙
クリスがアフォ過ぎてワロタ
- 633 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 01:48:06 ID:2NnucaDB0
- ツンデレヒロイン、人気過ぎて吹いたwwww
妙に京さんの人気があったから>>590前後の彼女の挙動を捏造したので投下
- 634 名前:憤怒の炎と不動の愛1[sage]投稿日:2009/10/27(火) 01:50:22 ID:2NnucaDB0
- 自室にて読書をしていた私は、大和の気が、強大な二つの気に挟まれた事を察知した。
これだけ大きくてダダ漏れな気配を放つ人物は、モモ先輩と胸がメロンのあの女くらいなものだろう。
そして人物の組み合わせと進行方向から、きっと向かう先は川神院と推定。
板垣辰子単体ならば非常な脅威だが、モモ先輩も一緒ならば、互いに牽制しあうことで特に深刻な事態にはならないだろう。
ただし間違いなく疲弊しており、仕留められる確立は普段の数倍から数十倍まで期待できるかもしれない。
大まかな戦略が立ったところで、遅くとも日付が変る頃に大和が帰ってくると狙い、作戦計画を立案する。
今読んでいる『幼馴染の逆襲・アナタは私のモノなのに!!(御仏蘭西書院)』を参考にするのもアリかも…。
ともかく、今はまだ慌てるような時間じゃない。
シャワーを浴び、念入りに身体を洗う。この先の事を考えていると乳首が立ってきたが、ソロ活動は自制しておく。
ちなみに脱ぎやすいようにパジャマではなくバスローブに身を通し、彼が戻ってくる時を今か今かと待ち構えた。
それなのに10分経ち、30分経ち、ついに1時間が経過した。
…おかしい。私の推理では既に15分以上も前に心身共に弱りきった大和が帰ってきているハズなのに…
一晩中、大和の部屋の扉が開く気配を待ち続けたが、結局、彼が帰ってくることは無かった。
…私の計算になにか誤算があったのだろうか?
...............................................................................................................
翌朝、2−Fのクラスにてワン子を捕まえて尋問する。
「大和?昨日の夜から、お姉さまと修行してるわよ。あと板垣辰子も一緒に」
やっぱり川神院に居た。…でも修行?あれだけ力量差があるから、モモ先輩相手の組み手など大和に務まるハズも無い。
かといって座禅を一緒に組むだけなら、別の適任者が幾らでも思いつく。
「アイゼンノギョウって言ってたかな?なんだか修練堂に曼荼羅を書いて、その上に布団を敷いていたけど」
アイゼン?…曼荼羅?……まさか、愛染明王の事?
愛染明王って愛欲を悟りに変える仏の筈だけどその行ってことは……まさか!?
- 635 名前:憤怒の炎と不動の愛2[sage]投稿日:2009/10/27(火) 01:51:57 ID:2NnucaDB0
- 「お姉さま、二人と一緒に三日三晩、お堂に篭りきるんだって。
アタシも参加したかったのに、ルー師範代にまだ早いって止められちゃった…」
大和は大丈夫で、ワン子には『まだ早い』……。……散らばったピースが嵌ったそんな感覚があった。
三日三晩、密室の中にある布団の上で、愛欲を高めあう修行……?
……なんて羨ましい修行をぉぉぉぉ!!!モモ先輩、ズルイ!!板垣辰子コロス!!
そしてきっとデレデレしているであろう大和も、絶対に許せないんだ!!必ず奪い返す!!性的なモノも含めて!!
「ひっ!?み、京…?」
「うわ!?なんだ!?」
「うぉぉ!?なんか鬼っぽい何かがみえるぞ!?これヤバくねぇか!?」
「…ふ、不動明王だよ、ガクト…」
ワン子を始め、周囲に居た人たちが急に離れた気配がしたが、そんな事など今はどうでもいい。
私はこの激情を押し殺すことに、ただただ専念していたから。
やがてHRが始まったが、大和は『インフルエンザで公欠』との連絡があった。
…こんなレベルの情報操作となると、やはり川神のジジイも絡んでいるのは間違いない。むしろ黒幕か?
しかし『インフルエンザ』ということなら都合がいい。一週間も療養期間が与えられるわけだから。
大和達が行に費やす時間は3日間…。もう1日は疲労で動けないだろうから、残りの期間に、この借りは返す。
「くく…。くくくく…………」
HR中にも関わらず、思わず笑い声が漏れてしまい、梅先生と目があう。
しかし目を逸らして何も言ってこない辺り、先生は干渉してくるつもりが無いのだろう。
今日の時間割では、真面目に耳を傾ける教科は無い。じっくりゆっくり、大和が帰ってからのプランを練るのも悪くない。
そう、私は待って耐えられる女。啼くまで待とうホトトギス。さぁ、どう啼かせてやろうホトトギス。
「ふふ……ふふふふふふふふふ………」
HRが終わっても妙に教室が静かな気もするが、考え事をするには好都合だった。
- 636 名前:憤怒の炎と不動の愛3[sage]投稿日:2009/10/27(火) 02:00:12 ID:2NnucaDB0
- ...............................................................................................................
やがて大和が連れ去られてから5日目の朝。
行の期間は昨日までのはずだが、予想通り彼は帰ってこなかった。
…きっと疲労のあまり川神院で一日中寝ていたのだろう。…おそらくモモ先輩と板垣辰子に腕枕をした状態で。
改めてふつふつと怒りが湧くのを感じるが、この思いも想いとして上乗せして、大和へ物理的、主に性的にぶつけるために溜め込んでおく。
ちなみに感情以外の別の物も溜まりに溜まっている。詳細を知ってからは、日課の自慰も絶っているし。
朝食に麦とろ飯、昼ごはんにニラレバ炒めとニンニク唐揚、夕食にはホルモン鍋を食し、更にマムシを漬け込んだ川神水も飲んでおいたし。
ふふ……ふふふふふふふふふふ…………。………凄く滾ってきたみたい。
私は大和の部屋で彼を待つ。お風呂も済ませたし、布団も敷いた。
小笠原さんからおススメのアロマキャンドルも焚き、ムーディーな雰囲気も作っておく。
準備を整えて待ち構えている内に、島津寮の玄関が開く気配。間違いなく大和の気配。
時は来た……。椎名京、いざ、参る!!
<了>
- 637 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 02:07:25 ID:pLGXFL+30
- 乙り
- 638 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 02:29:16 ID:ppXFvphr0
- 乙
大和逃げてー!
- 639 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 02:52:01 ID:0a+flVyB0
- 乙ん
- 640 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 05:43:35 ID:IrMjLHxN0
- 3日だぞ!?本気になった京に100発以上は余裕で持ってかれる……
- 641 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 13:10:30 ID:JmSJcqXD0
- 恐るべし、京……考える事が大和と同レベルの変態だ。
嫉妬に狂うよりも、大和への想いに変換して溜め込むのが京の良い所ではあるんですが……恐ろしい娘!
3日間、飢えに耐えて来た獣にしか思えない……死ぬなよ、大和。
- 642 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 16:17:55 ID:a4pMy6wo0
- 乙です!!
続きを激しく希望!!
- 643 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/27(火) 16:35:07 ID:ZVQcHl8k0
- 乙ぇー
- 644 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/28(水) 13:43:02 ID:ZIbKhKvK0
- 乙すぎます・・!
この絶対的不利な状況下でも俺らの大和さんなら大逆転してくれるハズ・・・!
ただ、京って大和に対して「許せない」とか怒り感情持つ人でしたっけ
- 645 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/28(水) 14:06:12 ID:QfZg1It00
- >>644
許せない。→だから自分を娶れ。という論理かと。
- 646 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/28(水) 15:59:19 ID:ZIbKhKvK0
- >>645
うん、そういった論理を大和との駆け引きに
テクニックとして使う事はあっても
一人で居る時に大和に対して純粋なマイナスイメージを持つ事は
無いんじゃないかなーって思ってね。
まあ細かい事ゆってスマンですよ
展開とか大好物だしGJと言わざるを得ません
- 647 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/30(金) 10:58:01 ID:oZk99J37O
- いくら俺達の軍師といえど、消耗した状態でフルチャージ京たんと戦えば危ない……!
- 648 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/30(金) 13:29:21 ID:cs0US/PoO
- 変態アナル軍師のことだ、そんな京を予測して自分もドーピングして帰宅したに違いない
なんという苦行……なんという頂上決戦……
そして皆さん規制乙orz
- 649 名前:軍師の帰還と明鏡止水[sage]投稿日:2009/10/31(土) 02:30:06 ID:xKWuiWkz0
- >>634の続きを捏造してみた
想像以上に頭の悪い内容なのは使用なので勘弁
- 650 名前:軍師の帰還と明鏡止水1[sage]投稿日:2009/10/31(土) 02:33:53 ID:xKWuiWkz0
- 島津寮の102号室。俺は自室の前で恐怖に慄いていた。
先日の『愛染の行』とやらが原因で、京が性的な意味で殺気立っている事が予想されたためである。
今日一日は川神院で休息を行い、かつこの連戦に備えて皇帝液によるドーピングも行ったが、この程度では焼け石に水。
物理的…特に性的に立ち向かうには分が悪いのだが、策を使おうにもこんな時に限って味方となりうる戦力が居ないのが痛い。
ゲンさんは終日バイト、キャップは例によって音信不通。
クリスに至っては俺が『インフルエンザに感染した』というダミー情報に騙され、親父の居る駐屯に避難させられている始末。
外部から助けを求めようにも、姉さんと辰子も俺と同程度に疲弊しているため、哀と嫉妬(いかり)と悲しみのスーパーモード京の相手にはならない。
ワン子には今回の件で助けを求めるのは酷だろう。ガクトとモロ?論外。
一縷の望みがあるとすれば、まゆっちだけである。
彼女の姿は見えないが、おそらく友達の大和田さんと遊びに行っているのだろう。
…いざという時は、彼女に助けを求めるしかない。
ここで勝敗条件を確認しておく。
勝利条件は俺が生き残ること。…ただし、俺の残り体力はわずか数ドット。
逆に京は、長期戦ほど有利。ヤレばヤルるほど、(精液を)飲めば飲むほど強くなる非常識な女である。
しかも今回は、これまでのアタックが冗談に思えるくらい、本気で攻めてくるだろう。
敗北条件の一つは、俺が腹上死してしまうこと。今の京はブレーキの壊れた暴走トラックである。加減や手心など、期待してはいけない。
また、京を妊娠させてしまってもアウト。
…姉さんや辰子のいる今でこそ肉体関係≒結婚とまで言わなくなってきたが、そこからさらに一線を越えては別の話だ。
危険日ではないが、安全日でもない。ゴムを着ける猶予は与えられないだろうし、中出しはリスクを数倍に跳ね上げる結果を招くだろう。
現実を見つめなおし、ため息を吐いていたところで俺の部屋の扉が開いた。
ドアの隙間から覗かれた顔に、思わず背筋が凍る。アロマキャンドルの甘い香りと、獲物を狙う猛禽類の眼力。
「お帰りなさい、大和」
「タダイマ、ミヤコ」
- 651 名前:軍師の帰還と明鏡止水2[sage]投稿日:2009/10/31(土) 02:36:35 ID:xKWuiWkz0
- 俺の部屋の中央に敷かれた布団を指し示し、京が優しげに微笑む。ただし目が全く笑っていない。不動明王のオーラまで見える。
金縛りにあったように動けない俺の傍に彼女が近づき、おもむろに胸元に顔を埋める。
「モモ先輩と、板垣辰子の臭いがする…。三日三晩、お楽しみだったみたいだね。
…私だって大和が好きなのに。一人だけ仲間外れは嫌」
こう言われてしまっては、『お友達で』という普段の断り文句が使えない。
................................................................................................................
「ぁんふぅ…。大和ぉ、大和ぉおお」
俺の腰の上で、京の肢体が跳ねる。俺の分身も彼女の胎内に捕えられたままだ。
三日三晩の行の疲労は結構残っていた。
一回目は口で抜かれ、二回目は手で抜かれ、準備運動は完了したとばかりに『絞り取り』に来た。
…もう本気でギリギリと、使える筋肉全てを使って。
この恐ろしいまでの快楽に、意識が遠くなりかける。…しかしここで気を失っては射精、最悪は腹上死のルート逝きになってしまう。
それでも俺は、視覚が闇に落ちていく感覚から戻ってこれなかった。
................................................................................................................
ブラックアウトした視界で、誰かが俺に語りかけている。…一体、誰だろう?
『直江大和よ…。この行はお主にとっても成長をもたらしたハズじゃ。
明鏡止水。わだかまりややましさのない澄んだ心。それが人に己を超えた力を持たせることができる。
苦しいと感じる時、川神魂と共に思い起こすが良い』
よりによって人生最後の走馬灯がジジイかよ…と一瞬思ったが、コレは違う。
どうやら一発逆転のフラグっぽい。…この助言、例の行が終わってから言われた少しカチンときたものだが。
せめて始める前に行ってくれたら、別の展開になっていたかもしれないのに…。
ともかく、可能な限り心を鎮めてみる。眼を閉じると、静かに映る水面に落ちる一滴の雫。
「見えた!見えたぞ!水のひと雫!」
- 652 名前:軍師の帰還と明鏡止水3[sage]投稿日:2009/10/31(土) 03:08:34 ID:xKWuiWkz0
- あれほど高鳴り続けた動悸は治まり、頭に上った血で霞がかって見えた光景も明瞭に見える。
美しく踊る、京の姿。心を落ち着けた結果、改めて彼女の際立った容姿を確認することにもなった。
しかし負けない。京をイかせないと、色々と大変なことになる。…とう言うか、最悪死ぬ。
「我が心、明鏡止水。されど怒張は烈火の如く!」
「そ、そんな!?まだ大きくっ!?ぅああああぁあああ!!」
俄然、力強さを取り戻した俺の分身と、俺自身の腰の動きに戸惑うように叫び、嬌声を上げる京。
ハイパーモードになれたところで、どうにかアドバンテージは取り戻せたようだ。ここは一気に行く攻め時だろう。
がっしりと京の腰を掴み、激しく挿入を繰り返す。俺の身体が真っ赤に火照る!!明日へ生きろを轟き叫ぶ!!
やがて、俺の突き上げに大きく身体を痙攣させる京。
目の焦点が合っていない辺り、相当な勢いでイッたのだろう。…あ、失神したっぽい。
ともかく俺の怒張は何とか引き抜け、中出しは免れることができた。
「ヒート・エンド。だな」
俺の胸元に倒れこんでくる京。彼女を受け止める事は容易だったが、今夜ばかりは一人で寝たい。…しんどい事には変らないし。
簡単に彼女の身体を拭いてやり、脱ぎ捨てていたパジャマを着せてやり、室内を軽く消臭して隠蔽工作しておく。
そしてまゆっちに電話連絡。彼女は予想通り、大和田さんとファミレスで話に花を咲かせていたそうだ。
彼女の帰宅が完了したとき、京さんには自室にお帰り願うこととする。
................................................................................................................
「京が俺の部屋で寝てしまったんだ。彼女を部屋まで送りたいんだけど、許可をくれないかな?」
「はい、構いませんよ。何なら京さんを運ぶの、お手伝いしますよ」
だがこの時、俺は気付かなかった。
普段は理知的に輝くまゆっちの瞳に、俺を雄として見つめる雌としての光が宿っていた事に。
<了>
- 653 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/31(土) 03:10:48 ID:PTOzHD9UP
- >>649-652
乙ww劣勢からの逆転劇は心躍るなww
ハリウッド映画みたいな終わり方もベネww
- 654 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/31(土) 13:16:28 ID:Gb7RBnX00
- 大和さんどんだけ無双なんだww
規制まみれの中、孤軍奮闘乙です!
次回まゆっち編も全裸正座で待機しておきますね
- 655 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/31(土) 16:48:06 ID:WY6Al93ZO
- 乙です
タダでさえ絶倫なのにさらにパワーアップするとは恐ろしい
- 656 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/10/31(土) 22:28:29 ID:ed1iGW4s0
- Gガン乙ですw
- 657 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/01(日) 20:29:16 ID:+lt70nGH0
- 規制長ぇなー
- 658 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:17:59 ID:keGpJrQm0
- 規制解除されたのでガクトで一本投下。
前作のサブキャラと仲良くなるのでNTR耐性ない人はスルーで。
- 659 名前:ファースト・ステップ 1[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:20:59 ID:keGpJrQm0
- 「なあ大和、明日はヒマか?」
金曜の放課後。帰り仕度をしているとガクトに小声で話しかけられた。
「明日?……特に予定はないな」
このところ、休日といえば姉さんにベッタリなのだが
明日は姉さんが川神院の行事があるとかで、デートできないのだ。
「だったらよー、俺様と七浜につきあってくれよ」
「いいけど、ナンパか?」
「おう。モモ先輩とつきあえるように協力してやったよな。
上手くいったんだから、今度は俺様の番。だろ?」
「まあ、確かに七浜のデート予行演習とかつきあってもらったけど。
モロは誘わなくていいのか?」
「アイツはスグルとゲームイベントだってさ。
……アイツが二次元にハマっているすきに
コッチは三次元で彼女をゲットしてやろうって寸法だ」
「ふむ。さすがに、キャップを誘おうとは思わないが……
これだと、男二人で七浜行きという、予行演習の再現になっちまうぞ。
ていうか、何故に七浜よ?」
「川神では連敗続きだからなー……俺様思うに、土地の相性が悪いんじゃねえかな」
「まあ、ゲン直しってのはあるか。いいぜ、時間とかは合わせる」
「じゃあ決まりな!アドバイス頼むぜ軍師!」
- 660 名前:ファースト・ステップ 2[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:24:10 ID:keGpJrQm0
- というわけで、翌土曜日。寮の前でガクトと落ち合う。
天気は快晴、ナンパ日和と言えなくもないが
「……もうちょっと涼しければよかったんだがな」
もう十月だというのに、けっこうな暑さだ。
「そうか?俺様、これぐらいのほうがいいぞ」
もうちょっと涼しければ、さすがのガクトもタンクトップでは来なかっただろうに。
これでは、女の子が剥きだしの筋肉に引いてしまう。
天気は快晴でも、ナンパの行く末には早くも暗雲が。
「それでも、夜は涼しくなるらしい。上着を取ってきたほうがいいんじゃないか?」
「いや、いらねーだろ?」
「……ナンパでいいムードになる。そうなると時間はあっという間に過ぎる。
日が暮れて、ナンパした女が寒そうにしたときに
上着をかけてやるというイベントが作れるじゃないか」
「おお!さすが軍師だ、ちょっと上着取ってくるから待っててくれ!」
ガクトに、自慢の筋肉を隠せと言っても
そう素直に言うことはきいてくれないだろう。
これで「見た目がゴツすぎる」という問題は何とかなったようだ。
「お待たせー!それじゃ行こうぜ!」
……タンクトップの上に羽織ってきたのは、袖なしの皮ジャンだった。
ダメかも。
- 661 名前:ファースト・ステップ 3[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:27:12 ID:keGpJrQm0
- そして七浜に到着。
駅前でナンパするより、観光名所で観光客を相手にするほうが
成功率は高いだろうということで、まずは中華街へ向かった。
「ん……大和、ちょっと待っててくれ」
「どした?」
ガクトが小走りに向かった先には、大きな荷物を抱えてよろけている人が。
「よう、よかったら手伝おうか?」
声をかけた相手は、ショートヘアの若い女性だった。
だが、ガクトにはナンパのつもりはないようだ。
「え?……ああ、大丈夫だって、これぐらい……っと」
「おいおい、ヨタヨタしながら強がりなさんな。ちょいと貸してみな」
ひょい、と荷物の一つを片手で持ち上げる。
「お、おい!……うわ、片手かよ。力あんねー、お兄さん」
「へへ、ざっと15kgってとこか?軽い軽い。
なんなら、そっちのもよこしなよ、俺様が運んでやる」
「いいのか?この先の、『稲村屋』って中華料理屋まで運ぶんだ。
俺、そこの一人娘でさ……けど、何か悪ぃな、見ず知らずの人に」
稲村屋か……確か、中華街じゃけっこう有名な店だ。
「気にすんなって……悪ぃな大和、ちょっと予定変更だ」
- 662 名前:ファースト・ステップ 4[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:30:14 ID:keGpJrQm0
- 少し歩くと、目指す稲村屋に。
「いやー、マジ助かったぜ!
な、メシまだだろ?食ってってくれよ、オゴるから!」
「いや、いいよ、ヒマと力持て余してただけなんだから」
「……俺にいたっては何もしてない。それに、まだ開店前なんじゃ?」
「このまま帰しちゃ俺の気がすまないっての。
おーい、オヤジー!今帰ったぜー!」
店の奥から怒鳴り声が返ってくる。
「遅ぇぞケイー!店開けられねえじゃねえか!」
「うるせーよ、あんな荷物あるのに俺一人行かせやがって!」
「てえした荷物じゃねえだろ……ん……どちらさんだい?」
奥から、調理服をまとった中年の男性が出てくる。
たぶん、この店の主で、父親なんだろう。俺たちを見て、怪訝な顔をしている。
「ああ、この人たち、俺がデカイ荷物抱えて困ってるのを見て
わざわざ手伝ってくれたんだ。何か旨いもの出してくれよ」
「バカヤロ、そういうことは先に言え!
……すいやせんねぇ、コレがご迷惑おかけしちまったみてえで。
おらケイ!ぼさっとしてねえで茶でも出しやがれ!」
「わかってるよ、うるせえな!オヤジはとっとと何か作れっての!
……悪ぃ、ちょっとそこら座って待っててくれや」
- 663 名前:ファースト・ステップ 5[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:34:15 ID:keGpJrQm0
- 女の子……ケイ、って呼ばれてたな。見た感じちょっと俺らより年上か?
早くナンパに戻りたいのか、ガクトがそわそわし始めた。
「なあ、ホントに俺様たち、別にかまわねえから……」
「いいから待ってな!」
「お、おう……わかった」
一喝されておとなしく椅子に座るガクト。仕方なく俺も隣に座る。
彼女は店の奥にズンズン入っていって、俺とガクトが残された。
「なんだよ、やけに素直だな」
「いや……なんか、あの声で怒鳴られたら、反射的に従っちまった」
「なんだそれ……で、この後どうする?」
「ナンパが上手く行ってれば、引っ掛けた女の子とメシ食うってプランだったんだがなー。
まあこれも何かの縁だし、オゴられておくか」
と、店の奥から皿を持ってケイさんが戻ってくる。
「とりあえず、茶でも飲んでてくれや……よっこらしょ」
茶碗をテーブルに置くと、自分も俺たちの対面に座った。
「今さらだけど、自己紹介がまだだったよな?俺、稲村圭子。
ま、見ての通りの料理屋の娘だ。ヨロシクな!」
俺とガクトもいちおう名乗ってから、雑談が始まった。
- 664 名前:ファースト・ステップ 6[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:38:19 ID:keGpJrQm0
- 「……へぇ〜、揚羽の弟と同級生かぁ」
意外なことに、川神大戦で助っ人を依頼した九鬼揚羽と
ケイさんは同級生だったという。
広いようで世間は狭い、といったところか。
「やっぱり、弟も高笑いすんのか?」
「ああ、何かってーと『ウハハハハハ』って笑ってるぜ。
ウルセーし暑苦しいし、勘弁してもらいてーよ」
「アッハッハッハ、なんだ同じじゃねーか!揚羽もよ……」
共通の話題があるので話しが弾む。ガクトもケイさんも楽しそうだ。
「……ま、そんなヤツでも、会わずにいると寂しいかな。
ガクトたちも、今のうちだぜ、遊んでられるのは。
……じゃ、俺は店の準備に戻るけど、ゆっくりしてってくれよな」
「いや、邪魔になっちゃ悪いし、俺たちもそろそろ行きます」
「そうか?じゃあガクト、頑張れよ、ナ・ン・パ」
「なんだよ、お見通しかよ!……まあいいや、じゃあな!」
ケイさんは店の奥に戻ってしまう。俺はガクトに耳うち。
「なあ。ケータイの番号でも聞いておいたらどうだ?」
「はあ?何でよ?」
「けっこういい感じだったじゃん。そもそも、そういうつもりで助けたんじゃないのか?」
- 665 名前:ファースト・ステップ 7[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:42:23 ID:keGpJrQm0
- 「おいおい、そんな下心ねーよ。ああいうときは、なるべく手伝うことにしてる」
「あれ、そーなの?」
「ああ。力自慢なんてな、力を誰かの役にたててナンボなんだぜ。
だから俺様、力の出し惜しみはしねーのよ」
そうだったな。
気は優しくて力持ち。この言葉がガクトはにピッタリだった。
「けど、ケータイ聞いとくぐらいはいいだろ。いい感じだったのにもったいないぞ?」
ガクトの好きな年上だし、可愛いしスタイルもまあまあだし
何より、今のところ相手がガクトに悪いイメージを持っていない。
ハッキリ言ってチャンスだと思う。
「んー……確かに、話してて楽しかったけど
男のダチと話してるような感覚だったからなー。
なんつーか、その……男っぽすぎて、色気が足りねえ」
「贅沢言える立場かよ。ファミリー以外の女の子と仲良くなれるチャンスだぞ」
「確かにな……じゃあ、ちょっと聞いておくか」
と、いいタイミングでケイさんが戻ってくる。
「あれ?ナンパ、諦めたのか?」
「ああ、そうじゃねえけど……なあ、おケイのケータイ、番号教えてくれよ」
「え?いや、その……悪ぃ、俺、ケータイ持ってねえんだ……」
- 666 名前:ファースト・ステップ 8[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:46:28 ID:keGpJrQm0
- 一気に空気が気まずくなる。
断り文句にしたってずいぶんな気もするが……
「あ、ああ、そう……ハハハ、持ってねえんじゃしょうがねえよな……
じゃ、行こうぜ大和」
「……ああ」
「ホ、ホントに持ってねえんだからな!
用があったら、だいたい店にいるからさ、また来てくれよ、な!?」
ケイさんが懸命に弁解する。
実際、もう会いたくないと思われてても
ここに来れば何とかなるわけで
ケータイ番号聞けなかったらオシマイというわけじゃない。
というか……まあ、ここはおとなしく引き下がろう。
「ああ、そうだね、そうするよ」
店を出ると、ガクトがため息をついた。
「ちぇ、そんな気なかったのに
ケータイ番号聞いただけであの反応はねえよなー」
「あれさ、ホントにケータイ持ってないんじゃないか?」
「今どきそんなヤツいるかよ……あ、まゆっち持ってなかったか。まあいいや」
その後は、ガクトが「何か気乗りしねー」ということで
ナンパもせずに川神に戻った。
ケイさん、いい線いってると思ったんだがなぁ。
- 667 名前:ファースト・ステップ 9[sage]投稿日:2009/11/03(火) 00:50:28 ID:keGpJrQm0
- 数日後。
授業も終わって、教室でグダグダしている俺たちのところに
ウメ先生がやってくる。
「島津、校門で人が待っているぞ」
「は?誰すか?」
「稲村という若い女性だ」
とたんに周囲がザワつきはじめる。
「ガクトに若い女が会いにくるだとぉ!?」「ありえん、ありえんだろうソレは!」
そんな周囲の反応をよそに、ガクトはいたって冷静だ。
「稲村って、おケイのことだよな?わざわざ何の用だ?」
「さあ……しかし妙だな、俺たち、ここの生徒だってことまでは言ってないぞ」
「そういやそうだな?……まあいい、待たせても悪いから行くか」
いちおう俺もガクトについていく。
その後を興味本位でファミリーのメンバーもついてくる。
2−Fの連中も何事かとついてくる。
ガクトを先頭に、ゾロゾロと集団で校門に向かうと
「お、来た来た。遅ぇーぞガクトー!って、なんでそんな大勢なんだよ?」
本当にケイさんが待っていた。
「よう、この間はどーも。後の連中は気にすんな。で、何か用か?」
- 668 名前:ファースト・ステップ 10[sage]投稿日:2009/11/03(火) 01:03:20 ID:keGpJrQm0
- 「ああ、ケータイ、買いにいくからつきあってくれよ」
「はぁ!?」
「だーかーらー、ケータイ買うんだよ!
……ガクトさぁ、あのとき、俺がケータイ持ってないって言ったの、信じてなかっただろ?」
「え?いや、まあ……てか、マジで持ってなかったのかよ」
「あーあ、ヤッパリ、適当なこと言ってごまかしたと思ってやがったな。
イヤなんだよ、そういうの。で、いい機会だからオレもケータイ買うことにした。
一緒に行こうぜ、そしたらケータイ番号だって教えられるだろ?」
「おいおい……わざわざそこまでせんでも。
……けど、よく俺様がここの学生ってわかったな?」
「あー、揚羽の弟と同級生って言ってたろ?
俺のダチに、揚羽と仲がいいのがいるから
ソイツに揚羽の番号聞いて、そっから聞きだした。
ここまで手間かけて、休みつぶして来たんだから、案内頼むぜ!」
「わーったわーったよ!ったく、強引だなー」
怒涛の展開に、俺も含めて皆ついていけずにポカーンとしている。
「えっと……ガ、ガクトの……彼女?」
モロがおずおずと質問。まあ確かにそんなふうに見えるか。
「いや、全然違う」「うん、そういうんじゃないね」
だが、本人たちの意識ではそうではないらしかった。
- 669 名前:ファースト・ステップ 11[sage]投稿日:2009/11/03(火) 01:07:45 ID:keGpJrQm0
- 「ケータイなら駅前かなー。モロ、どこがいい?やっぱヨドか?」
「え?ああ、うん……」
「ああ、君、ガクトのツレ?俺、稲村圭子、ヨロシクな!
なんだったらさ、一緒に来てくれよ」
「え……そりゃちょっと、いくらなんでもお邪魔なんじゃ……」
むしろ、周りのほうが気を使ってしまっていた。
いくら彼氏彼女ではないと本人が言っても
二人の気安そうな話しぶりを見れば気を使いたくもなる。
「いやー、ガクトだけじゃ頼りねえからさー」
「ざけんな、無理矢理つき合わせようとしてるくせに!」
「うっさいな、男なら細かいことつべこべ言わねーの!
なあ、皆ガクトのダチなんだろ?どうせなら、一緒に行こうぜ!」
皆が顔を見合わせる。
「うん、そうだね」「いろいろ話も聞きたいしな」「じゃ、チャッチャと行きますか!」
まあ、あまり女性として意識しない相手のほうが、ガクトはうまくやれるみたいだし
最初は友達としてつきあっていくというのもアリだろう。
そこから男女の関係になるかどうかは、本人たち次第だ。
「じゃ、今日はガクトのオゴリな!」「なんでだよ!?」
……そういう関係になるのは、果てしなく遠い先になりそうな気もするが。
- 670 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 01:10:41 ID:keGpJrQm0
- 終わり。
ガクトがうまくつきあえそうな女の子を探していたらこんな話に。
ずーっとこのままで行きそうな気も。
てか、彼女が出来たらガクトじゃないような。
- 671 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 01:22:18 ID:BXKa94vh0
- 乙
これぐらいならNTR耐性低くても平気じゃないかな
おケイの男前っぷりがいいね!
- 672 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 02:08:25 ID:wauPtDg60
- 乙
>「いや……なんか、あの声で怒鳴られたら、反射的に従っちまった」
これは中の人ネタかw
- 673 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 02:11:50 ID:gQZnJliv0
- 乙
名前で負けても中身は負けてないガクトさんパネェ
- 674 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 07:46:22 ID:fIft6x9f0
- 乙!
この二人、意外にいい組み合わせかもね
- 675 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 09:46:54 ID:UG+fm3Fd0
- 乙
おケイさんか、年上だし結構合うかもな
- 676 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 21:59:35 ID:keGpJrQm0
- 規制で投下できなかったネタもう一本。
- 677 名前:アンド・1[sage]投稿日:2009/11/03(火) 22:04:41 ID:keGpJrQm0
- 朝の島津寮。
学校は休みだが、ゲンさんはもう仕事に出かけている。キャップはまだ寝ているらしい。
俺と京、まゆっちで簡単な朝食をすませて
まゆっちのいれてくれたお茶でちょっと一息いれていると
ランニングに出ていたらしいクリスが戻ってきた。
「おはよう、大和。休みの日にしては早いな?」
「ああ、おはよう。今日は色々準備があってな」
「ん?何のだ?」
「今日はハロウィンだろ」
「ああ、そういえばそうか。トリック・オア・トリートか、懐かしいな」
「クリスさんも、子供のころはやっぱり仮装して
ご近所を周ったりしたんですか?」
「小さい頃にはな。訪れる家庭は、どこも私を恐れて大量にお菓子をくれたものだ」
「へえ。どんな仮装をしてたんだ?」
「普通に、子悪魔だったりだな。あまり貰うお菓子が多いので
後ろにいる父様の部下たちに持ってもらったりしてた」
兵隊引き連れてトリック・オア・トリートか。おっかねえや。
「やはり日本でも、ハロウィンの仮装はするのか?」
「ああ、そういやクリスやまゆっちは知らないのか。
川神では、毎年ハロウィンに盛大なイベントがあるんだ」
- 678 名前:アンド・2[sage]投稿日:2009/11/03(火) 22:09:00 ID:keGpJrQm0
- 「あ、私聞いたことがあります。仮装パレードとかあるんですよね?」
「お、よく知ってるなまゆっち。
そう、川神のハロウィンパレードは、規模もレベルも日本最大と言われてるんだ」
「そうなのか。じゃあ、それに参加する準備なんだな?」
「……甘い。甘いよクリス。私たちのハロウィンは、そんな生っちょろいもんじゃない」
「……え?」「……はい?」
「……残念ながら、京の言う通りだ。
俺たちのハロウィンは、地獄の戦場だと思え」
「な、何があるというんだ一体!?」
「具体的に言うと、川神姉妹が島津寮を襲撃しにくる」
「なんだ、モモ先輩と犬が遊びに来るのか?」
「遊び?……アレが遊びだったら、地獄の底だって遊園地だよ!」
「な、なんで京さんはそこまでキレてるんでしょう……」
「普通のハロウィンは『トリック・オア・トリート』
つまり『お菓子か、いたずらか?』だ。
しかし、姉さんたちの場合は『トリック・アンド・トリート』なんだ」
「……アンド、って……両方なのか?」
「ああ。ワン子が寮の中のお菓子を勝手に漁って食いまくる強制『トリート』で
そして姉さんがイタズラをしていく『トリック』、この両方なんだ」
- 679 名前:アンド・3[sage]投稿日:2009/11/03(火) 22:13:05 ID:keGpJrQm0
- 「それは、ちょっとヒドイですね」「犯罪者一歩手前ではないか!」
「と、いうわけなんで、お菓子の類は隠しておくか
夜になる前に食べきってしまうように。俺はその準備で早起きしてたんだよ。
あと、クリスとまゆっち、夜には寮にいないほうがいいぞ」
素直にうなずくまゆっち。
だが、クリスは、この処置では不満のようだった。
「モモ先輩のイタズラか?だが、それではやられ放題になってしまうぞ。
いかにモモ先輩とはいえ、私たちの寮で
あまりひどいイタズラをされては困るではないか」
「そうか。俺と京は出かけるし、キャップは午後からパレードに参加のはずだ。
ゲンさんも仕事があって一日留守だからな。
留守番はクリスにまかせるとしよう」
「まゆっちは、私たちとおいで」
「え?で、でもクリスさん一人でモモ先輩のお相手は……」
「なに、いくらモモ先輩でも
ハロウィンのイタズラに拳を振るうような真似はすまい。
よく見張っていればいいだけさ。ここは私に任せておけ!」
クリスは意気揚揚と自室に戻っていく。
まゆっちはまだ少し心配そうだ。
「本当に、大丈夫なんでしょうか……?」
「まあ死にはせんだろ……たぶん」
- 680 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 22:19:02 ID:TSv1uYy40
- 正直、この内容でNTRだの言う奴は損してる。
ガクトらしさ全開で面白かった。
「気は優しくて力持ち」だから、普段からこうならモテるのにねぇ…。
- 681 名前:アンド・4[sage]投稿日:2009/11/03(火) 22:19:07 ID:keGpJrQm0
- そして、翌朝。
秘密基地に外泊したのだが、まゆっちがいてくれたおかげで
京が暴走することもなく、無事に島津寮に戻ってきた。
「ただいまー……うお!?」「ただいま戻りまし……ク、クリスさん!?」
食堂に入ると、いきなり半裸でクリスがテーブルに突っ伏していた。
「見ちゃダメ」
京が素早く俺に目隠し。
「いや、それより助けろよ!」
「大丈夫ですか、クリスさん!?一体何が!?」
まゆっちが着ていた上着をクリスにかけ、揺り起こす。
「う……ううう……」
「あーあ……イタズラされたんだろうね」
「イタズラって……倒れてしまうようなイタズラなんてヒドすぎます!」
「ああ、暴力を振るわれたわけじゃないと思う……いや、ある意味、暴力なのか?」
「イタズラっていっても、モモ先輩のは性的な意味だから」
「せ、性的ッ!?」
「うん。俺、去年は尻にネギ差しこまれた」
- 682 名前:アンド・5[sage]投稿日:2009/11/03(火) 22:25:14 ID:keGpJrQm0
- 「私なんか、愛する大和の目の前で指をいれら……」
「俺見てないからね!見てなかったからね!」
「そ、それじゃ……クリスさんも……(ゴクリ)」
ちょっとまゆっちは残念そうだった。
「うう……あ……まゆっち……?」
む、クリスが意識を取り戻したようだ。というか、失神するほどのイタズラだったのか……
「クリスさん、大丈夫ですか!?」
「モ、モモ先輩は……?」
「もういませんよ、安心してください。
いったい、何があったんですか?」
「何って……(ポッ)」
「なんで頬を染めてるんだお前は」
「そ、そんなことはない!……ちょっと、予想してたイタズラと違っただけだ!」
「顔赤くして言っても説得力ないぞ……
あー、ここに隠しておいたマロングラッセ全部食われてる!」
「クリスさんも食べられちゃいましたしね」
『誰が上手いこと言えと』
- 683 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 22:27:49 ID:keGpJrQm0
- 終わり。
せめて一昨日に投下したかったハロウィンネタ。
モモ先輩は一歩手前どころか完璧に犯罪者。
- 684 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 22:35:15 ID:TSv1uYy40
- >>677
>>658の感想送信したら、投下途中でしまってすみません…。
恐ろしいハロウィン…ワン子はまだしも、百代がタチ悪いですな。
「まゆっちは残ってた方が良かったかも…そしたら、大和と2人きりだったのに」って京は思ってそうですな。
「地獄の戦場だと思え」とか、「アレが遊びなら地獄の底だって遊園地」がツボにはまりました。
- 685 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 23:26:23 ID:i/SB3btI0
- 乙
ダメだ百姉さんは早く何とかしないとw
- 686 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 23:53:25 ID:36q65DvF0
- 乙
できれば襲撃場面も見たかったw
実際、川崎のハロウィンは有名らしいし
FDとかあればハロウィンネタもありそうだな
- 687 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/03(火) 23:58:02 ID:XigWApg90
- これは酷いwwww
性的かつ食い意地的な意味でwwww
乙だぁ!
- 688 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/04(水) 00:36:24 ID:eSNQaICE0
- 乙
最後、なんで「マロングラッセ」なのかと思ったが
クリを食われてクリスも食われたってことかー!w
- 689 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/04(水) 00:40:12 ID:0GATEqav0
- 乙
モモお姉ちゃんパネェ
- 690 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/04(水) 21:29:09 ID:SjCpoKkb0
- 乙。
てっきり京が大和を食べるとばかりww
- 691 名前:剣士の想いと癒しの術[sage]投稿日:2009/11/06(金) 00:56:14 ID:JvKoGLmD0
- >>650の続きを捏造したので投下
軍師がアナルを責められているので、駄目な方スルーよろ
- 692 名前:剣士の想いと癒しの術1[sage]投稿日:2009/11/06(金) 00:59:45 ID:JvKoGLmD0
- 直江大和が椎名京を相手に死闘を繰り広げていたころ、黛由紀江はファミレスで友人と語り合っていた。
ただし大和田伊予だけでなく、いつの間にか仲良くなった不死川心の姿もあったりする。
「ところで、まゆっち、直江先輩と上手くいってるの?」
「え?はい?」
「そうじゃの。此方も詳しい話を聞きたいのじゃ」
「…でも、私などでは」
視線を落とし、もじもじとし始める由紀江。
そんな彼女の様子に庶民向けの大味なショコラケーキを上機嫌に満喫していた心が、真剣な眼差しを向ける。
「まさか眺めるだけで終わらせるつもりではあるまいな」
「で、ですが。大和さんには百代先輩も辰子さんも、京さんもいますし…」
「黛。友として言わせてもらうが、そなたは相手の懐に飛び込む勇気が些か不足しておる。…これは此方も同じじゃったが。
礼を弁えておるのはそなたの美徳じゃが、過ぎた分別は壁となる。いっそぶつかってやれ。
何より武士(もののふ)が戦わずして逃げることなぞ、己の魂が許さぬのではないのか?」
あんみつに至福の表情を浮かべていた大和田伊予は、思わず驚きの表情を隠せない。
「おー。不死川先輩って結構、格好良いこというんですねー」
「そうじゃろ!?そうじゃろ!?苦しゅうないから、もっと此方を崇め、讃えるのじゃ!」
調子に乗り始めた心の姿があったが、由紀江は己の思考に没頭していた。
「…立ち向かう、ですか。…大和さん」
静かな、だが決意を秘めた呟きは川神の夜空に消えていった。
- 693 名前:剣士の想いと癒しの術2[sage]投稿日:2009/11/06(金) 01:03:20 ID:JvKoGLmD0
- ................................................................................................................
俺の部屋の真上に位置する、島津寮の202号室。まゆっちの手を借りて京を布団に寝かしつける。
寝息が深く安定していることから、今夜中…むしろ明朝以降も暫く再襲撃はないと考えて良いだろう。
この事実に安心し、ふとため息を吐いてしまったところをまゆっちに聞かれてしまった。
「随分とお疲れの様ですね、大和さん。お茶をお出ししますので、休んでいかれませんか?」
「お願いしようか」
正直、かなり助かる。京に襲われてから水分は絞られるばかりだったからなぁ。
................................................................................................................
三杯目のお茶を飲みながら、この数日、寮に不在だった理由とここまで疲弊している原因をまゆっちに話す。
目を丸くして驚いていた彼女だったが、しみじみと感想をこぼす。
「京さんのご様子から、只ならぬ事に巻き込まれて居る気はしていましたが…。よくそご生還なさいました」
「…はは。流石に死ぬかと思ったけど」
「…むしろ今も相当に危険な状態ではありませんか?顔色、かなり悪いですよ」
そして何かを考え込むように黙ってしまった、まゆっち。
時折赤面しつつも、決意を秘めた眼差しでとんでもない提案をしてきた。
「…大和さん。私は武芸の技だけでなく、身体を癒す術も母から伝授されております。
川神院に伝わるような整体ではなく、………房閨術ですが。
大和さんがお嫌でなければ、いかがでしょうか?」
「ぶふぅ!?」
大人しいまゆっちから想像を絶する斜め上な言葉が紡がれた時、俺はお茶を噴くと言うベタなリアクションしかできなかった。
何割かは気道に入ったらしく散々むせることになったが、まゆっちが優しく背中を摩ってくれた。
「げほっ…。しかし房閨術って…。フィクションの中の話だけじゃなかった事に驚きだ。
でもさ、まゆっち。流石にそれは頼めないよ。…こういう事は本当に大切な人にしてあげないと」
- 694 名前:剣士の想いと癒しの術3[sage]投稿日:2009/11/06(金) 01:06:42 ID:JvKoGLmD0
- 大変に魅力的な提案だったが、やっぱり駄目だろう。嫁入り前の女の子なんだから、もっと自分を大事にしなきゃいけない。
しかし、提案を否定されたまゆっちは、より強い光を宿した瞳で俺を見つめたままだ。
「私は、大和さんの事をお慕いしております。ですから、どんな形であれ大和さんに抱いていただけるなら、望外の喜びです。
…浅ましい女と軽蔑なさるかもしれませんが、それでも大和さんのお傍において頂けるなら」
「本気…なんだね?」
「はい。身も心も、大和さんに捧げたいです」
どうしようもなく彼女が愛おしくなり、強く彼女を抱きしめ口付ける。
彼女の腕はおずおずと俺の背中に廻り、抱きしめ返してくれた。
................................................................................................................
「…ただ、気分は乗ってきたかもしれないけど、コッチは厳しいかもしれない」
お互い全裸になって相対した訳だが、やっぱり俺の息子は瀕死なようである。
…三日三晩の後、一日のインターバルを置いて京との死闘だからなぁ。
「問題ありませんよ。…我に秘策あり、です」
まゆっちの左手が、彼女の秘裂に伸びる。
自慰でも初めてビジュアル面から高ぶらせてくれるのかと思いきや、そうではなかった。
幾度か指に自分の愛液を絡めたまゆっちは俺との間合いを一気に詰める。
「ま、まさか…?」
「直腸側から前立腺を刺激させて頂きます。…楽にしていて下さいね」
将に神速の一撃だった。
「アッーーーーー!!」
お、俺が…。アナル軍師と呼ばれたこの俺が、菊門責めを受けている…だと?
いや、まゆっちの事だから、悪意や制圧欲など微塵もないだろう。
差し込まれた指も彼女が自身の蜜で丹念に濡らしていてくれたお陰か、特に痛みを感じずに済んだ。
しかし、この性的知識量は凄いな。…実は彼女、オープンスケベな京とも渡り合えるムッツリさんかもしれない。
- 695 名前:剣士の想いと癒しの術4[sage]投稿日:2009/11/06(金) 01:09:06 ID:JvKoGLmD0
- そして、空っぽになったはずの俺の分身も力強く蘇る。
「……お、大きい、ですね」
「そ、そうかな。ありがとう」
耳年増な彼女にしても、戦闘態勢に入った現物は初めて見たのだろう。
「そ、それでは癒させていただきますね」
ただし、直ぐに気を取り直して向き合うまゆっち。…健気だ。
「っ。くぅ」
「だ、大丈夫か?まゆっち」
まゆっちの胎内が俺を受け入れる。
初めてだった彼女の中は狭かったが、射精感がこみ上げないよう、刺激を与えないよう、まゆっちは静かに腰を沈めてくる。
「…ん、ふぅ。…大和さん」
…なんだコレ。繋がった所から暖かい何かが俺の中に入ってくる。
俺の目にはまゆっちの秘所から溢れる蜜と、破瓜の血が流れているようにしか見えない。
きっとこれらを媒体に彼女の気そのものを送ってくれているのだろう。
「大和さんは、私に身を委ねていて下さい。無理に出す必要もありません。
今はただ、鼓動を整えることだけに集中して下さい」
この間も、彼女の手は俺の身体を解きほぐすように常に動き続けていた。
まゆっちが全身を火照らせ、息を荒げ、珠の汗を浮かせる。
しかしこれは気を送る作業に起因するらしく、彼女の腰はほとんど動いていない。
先日までの姉さん、辰子との交わりや先ほどまでの京との交わりと比べると、驚くほどに優しく、穏やかだった。
- 696 名前:剣士の想いと癒しの術5[sage]投稿日:2009/11/06(金) 01:27:59 ID:JvKoGLmD0
-
................................................................................................................
俺の顔に血色が戻ったことを確認して、まゆっちは身体を離す。
大きく肩で呼吸していたが、数回の深呼吸で息を整える辺り、やはり一角の武芸者なのだろう。
「…本来なら、明日の朝までまゆっちに腕枕をしてやりたいところなんだけどな」
「気になさらないで下さい。今の大和さんに必要なのは休養です。
…でも、次の機会にはよろしくお願い致しますね」
少し寂しげに微笑んだまゆっちが、甘えるように俺の胸に顔を埋めてくるまゆっち。
「約束するよ、必ず。…次が、いつになるのか判らないのが悲しいところだけど。ちゅ」
「ん、ちゅ。はい。大和さんを信じて、お待ちしております」
少し長めのキスを交わした後、俺は彼女の布団を抜け出す。
俺が部屋をでるまで、まゆっちは三つ指を突いた姿勢で送ってくれた。
改めて102号室に戻り、己の布団に包まる。京の残り香も感じるが、流石に今日は打ち止め。
だがまゆっちのお陰で、澱のように蓄積していた疲労はほとんど抜けており、やがて心地よい睡魔だけが訪れる。
『インフルエンザ』が原因の公欠は残り2日。コレだけの時間があれば療養期間内に『全快』まで持っていけそうだ。
................................................................................................................
『大和さん。お弁当を作りましたのですが、いかがでしょうか?』
ああ、頂くよ。…軽い気持ちで返事をした俺だったが、これが思わぬ事態の引き金となった。
昼休み、フタを開けて出てきたのはデンプでハートを形どった、いわゆる愛妻弁当。
「おぉ!!?これは!!?」
「なんてベタな!!…まゆっちもやるなぁ」
周囲がどよめくが、それをかき消すように爆発的な殺気がこの教室を覆った。
「くく、くくくく。…まゆっちからの宣戦布告、この椎名京、受け取った」
やっぱりこの日も激しく立ち上る不動明王のオーラ。
今日の昼休みも2Fは静寂に包まれており、2Sの生徒は心置きなく勉強に打ち込めたとか。
- 697 名前:剣士の想いと癒しの術5[sage]投稿日:2009/11/06(金) 01:30:15 ID:JvKoGLmD0
- 一方、1Cの教室。黛由紀江に加えて、最近親しくなった武蔵小杉と囲んで昼食をとっていた大和田伊予は、上機嫌な友人に気付く。
「ん〜?何かまゆっち、機嫌よさそうだね?」
「そ、そう見えますか?…実は、大和さんにもお弁当をお渡しして来たのですが、思ったよりも良い味付けが出来てましたので」
「プッレーミアムな展開ね!…ということは、川神先輩や椎名先輩と勝負するってこと?」
「はい。今日のお弁当も宣戦布告も兼ねてますから」
一点の曇りもない、穏やかな笑顔。この微笑に、武蔵小杉は今までに経験した事のない恐怖の慄いた。
大和田伊予は特に気に留めた様子は無かったが、小杉には嫌と言うほど感じさせられている気の高まり。
その像たるや、阿修羅。その力は人智を超え、仁王や不動明王の属する天部衆よりも遙かに獰猛な戦神。
普段は鞘に納まり、刀袋に包まれ、さらに厳重に施錠管理されている黛由紀江の闘志が、鯉口を切っている。
この闘志は鞘走られた時、この学校はどうなってしまうのか…。
自分はとんでもない相手を見下していたものだと、背中に冷たい汗が流れる。
この尋常無い勢いで燃え上がる闘志に目を細める老人。
「…炎が、燃え上がっておるの。この愛の炎は一体なにをもたらすのやら」
放火したジジイ本人は全く何食わぬ顔で校舎を眺めていたりする。
「ワシも若かりし頃は…ふぉふぉふぉふぉふぉふぉ」
ジジイが過去を振り返っている頃、直江大和は必死に策を練っていた。
川神百代に板垣辰子、椎名京に黛由紀江。この先、一手でも間違えたら取り返しの無い事態になる。
『し…死ぬのか!?俺は死ぬのか!?…まだた!まだ終わらんぞ!!』
川神を包む愛の業火。この真っ只中を切り抜ける策を、直江大和は見出せずにいた。
<了>
- 698 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/06(金) 01:36:14 ID:SIHehKxf0
- よく投下したと褒めてあげましょう
お疲れ様
- 699 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/06(金) 01:37:40 ID:BZv8XjE20
- 乙だがキャラ壊れすぎじゃね
あと、「閨房術」な
- 700 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/06(金) 02:10:49 ID:b/x79nrw0
- ちょっとこのまゆっちはナシかな
- 701 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/06(金) 11:56:05 ID:mWWPDx110
- お疲れ様。ただ、まゆっちがこうなる理由付け、っていうか最後の一押しがないような・・・
- 702 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/06(金) 18:56:44 ID:y6kKBSkc0
- まだレスは700超えたばかりですが
容量は現在すでに447KB
そろそろ次スレの季節です
テンプレの変更・追加などの希望があれば今のうちに
- 703 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/07(土) 00:42:12 ID:dwm6kO130
- 乙
まゆっち、お前もか
それでも軍師なら・・・軍師ならきっと何とかしてくれる!
- 704 名前:LOVEアマガミ?[sage]投稿日:2009/11/07(土) 00:42:58 ID:EWpZjYnV0
- 空気を読まずに単レス小ネタ投下
LOVEかわかみのゲストにクリスが来たと想定しての前枠みたいなノリで
百「アマガミテトリス…か。ファンディスクみたいなのにしては殊勝な心がけだな」
ク「ギャルゲーと落ちゲーってそんなに合うものなのか?」
「ときメモにはぱずるだま、サクラ大戦にはコラムス、まぁ昔からの伝統だ」
(※オンエアではこれ以降何箇所かピー音が入ります)
「伝統ってのはさすがに大げさじゃないか?それにエンターブレインは落ちゲー出してないし」
「細かいこと気にしたら負けだぞ、クリ」
「それにしても、この”森島はるか”ってキャラ、なんか親近感がわく、
というか、他人のような気がしない、というか…」
「おお、クリもか。実は私もだな、この”塚原ひびき”ってのが、
なんか自分と共通するようなものがあるんじゃないかって感じてな、
”先輩”とか”武芸が強そうな名前”とかじゃなくって、
自分でもよくわからないんだが、もっと根の深いところで何かが同じなんだろうな」
「まぁ、うちのタカヒロも高山氏と対談してたくらい仲が良いらしいし」
「そうだ!いい事考えたぞ!みなとそふともファンディスク2つ目にこんなの作ってみようじゃないか!」
「先に言っておくが、”まじこい人間テトリス”『だけ』は却下だ」
「ちぇっ、NGワードかよー」
終わっとく
実際の方はクリスとまゆっちが出ないままLOVEかわかみ終了(…?)
- 705 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/07(土) 00:45:11 ID:uvZJchUy0
- 特にテンプレに変更の希望はないけど
>>1の保管庫は機能してないようなので
後から読み返したりしたい人は
ログ保存するなりして自分で手を打たないとダメっぽい
- 706 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/07(土) 01:34:08 ID:2CcExZlJ0
- 新しく保管してくれる人が保管庫作ってくれればいいんだがね
- 707 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/07(土) 08:00:49 ID:uvZJchUy0
- >>702
今のペースだと投下なしで750ぐらいで次スレかな?
投下する場合には残量注意ってことで
- 708 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/07(土) 18:30:31 ID:yh7Le1lBO
- 小雪ルートと辰子ルートがないとかバグなんだよな?
つかマジ血の雨降らして気象庁ビビらせてやろうか
- 709 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/08(日) 00:29:31 ID:myquUyxx0
- ハーヴェストなら辰子さんと姉さんと大和の3Pを出版してくれると信じている
- 710 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/08(日) 09:30:32 ID:EtOcZiZmO
- 正直チカマヨを抜いて小雪ルートを…って思ったなぁ。
梅先生は声がかっこよすぎて抜けへんかったし…
辰姉は本当に理想。もっと多く絡んで欲しかったなぁ
- 711 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/08(日) 10:45:28 ID:TyU8I9110
- 乙
京にもっと出番を
- 712 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:12:59 ID:ry/HVC0W0
- 埋めついでにマルギッテ一本投下
- 713 名前:極秘任務・1[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:15:59 ID:ry/HVC0W0
- 「……あれ?」
学院帰りにちょっと寄り道をしていたので
寮に帰ってくるのが少し遅れたのだが
なぜかマルギッテが洗面所の前に立っていた。
「あれ、ではありません。帰ってきたのなら
『ただいま戻りました』と挨拶なさい」
「はあ……ただいま戻りました」
「よろしい。そうやって、目上のものの言うことを素直に聞くのはよいことです」
「で、何してるの?俺、手を洗いたいんだけど」
インフルエンザが流行っているので
うがい・手洗いを絶賛励行中なのだ。
「よい心がけですが、少し待ちなさい。今、クリスお嬢様が入浴中です」
昼間っからあのお嬢は……
「じゃあ、終わったら声かけて」
「いいでしょう。おそらく……はっ!?」
マルギッテの視線が俺の斜め後ろ、少し下のほうに釘づけになる。
「ん?……うぉ、Gか!あ、くそ隙間入りやがった」
振り向いた俺が何かする前に、Gは壁の隙間に消えてしまった。
- 714 名前:極秘任務・2[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:20:04 ID:ry/HVC0W0
- 「……直江大和。あのクリーチャーは、よく出現するのですか」
何故か握りしめた拳をワナワナと震わせて
低い声でマルギッテがきいてくる。
「たまにな。清潔にはしてるつもりだが、どうしてもなー」
マルギッテが怖い顔をしながらケータイを取りだすと
たぶんドイツ語で何やら喋っている。
そのうち、ガックリと肩を落とし、俺にケータイを差しだした。
「直江大和。フリードリヒ中将殿が、あなたにお話があるそうです」
「え、俺?」
ていうか、クリスパパに電話してたのか。
「……もしもし?直江大和ですが」
『やあ、久しぶりだね。クリスとは、仲良くしてくれているかね?』
「はい、良き友人としてお付き合いさせていただいています」
『うむ。君はなかなか良識があってよろしい。見所がある。
そんな君に頼みがある。急な話で申し訳ないのだが
マルギッテ少尉に協力してやってほしい』
「協力?」
『うむ。今報告を受けたのだが
その寮に、危険なクリーチャーが出現したそうだね?』
- 715 名前:極秘任務・3[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:24:04 ID:ry/HVC0W0
- おいおい、危険なクリーチャーって、ただのGだぞ。
「危険かどうかはともかく、出ましたね」
『ふむ……危ないな』
「いやただの虫ですからね?」
『私はわかっているよ。不快な虫だが、たいした実害はない。
だが、マルギッテ少尉はアレを毛嫌いしていてね。
今も、一個中隊の派兵と、対クリーチャー用装備の使用許可を求められたのだよ』
なんだよ対クリーチャー用装備って。
ていうか、一個中隊が軍の装備でG退治ですか?
『マルギッテ少尉は優秀な軍人なのだが
アレが相手だと冷静さを保てないようでね。
一度、家族旅行に出かけた先で、私が目を離している間にアレが出て
宿泊していたキャンプ場が30分で火の海になった』
危険なのはマルギッテのほうじゃねーか!
『というわけで、君に協力してもらいたいのだよ、直江大和君。
彼女の行動にブレーキをかけてほしい』
「いや、そんな危険な任務は民間人の俺にはムリっス。
……そうだ、クリスさんに頼んでみては?
マルギッテさんも、彼女の言うことはきくでしょう?」
『……キャンプ場を火の海にしたのは、半分くらいはクリスなのだよ』
二人揃って危険人物かい。
- 716 名前:極秘任務・4[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:28:11 ID:ry/HVC0W0
- 『こんなことで、マルギッテ少尉の経歴に傷がついては可哀想だ。
君も、住んでいる街が廃墟と化すのは見たくなかろうし
私としても、これ以上日本政府に睨まれるのはマズイ。
とはいえ、あの不快な虫が大事なクリスの傍を這いまわるのも許せない』
「で、俺にどうしろと?」
『君を、今回特別に、この作戦の指揮官に任命しよう。
作戦行動中は、マルギッテ少尉は君の命令に絶対服従だ。
彼女をうまくコントロールして、寮に潜むクリーチャーを殲滅してほしい』
「要するに、お目付け役ということですね?」
『さすがに飲みこみが早いな、その通りだ。
さらに言えば、この件はクリスには隠しておいてほしい。
あんな不快な生物の存在を、知らせてしまうだけでも可哀想だからね。
無論、成功の暁にはそれ相応の報酬を約束しよう』
ふむ。上手く行けばドイツ軍中将の覚えもめでたく
Gもいなくなっていいことづくめだが……
「失敗したらどうなるんですか?」
『これは余談だが。マルギッテ少尉が火の海にしてしまったキャンプ場は
翌日、不幸な事故で、周囲の国立公園ごとナパーム弾で……』
「必ず成功させます!」
このオッサン、証拠隠滅のために何するかわからんぞ。
『うむ、よい返事だ。では、もう一度マルギッテ少尉に替わってくれたまえ』
- 717 名前:極秘任務・5[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:32:11 ID:ry/HVC0W0
- 俺からまたケータイを受け取ったマルギッテが
ドイツ語でクリスパパと何やらまた喋っている。
やがて会話が終わって、ケータイを切ったマルギッテが
俺に向き直ると
「では、ご命令を、隊長殿」
なんて冷ややかな目線で言った。
クリスパパの指示とはいえ、どうも俺が命令する立場なのが気に食わないらしい。
ここはガツンと、軍人になったつもりで応対するとしよう。
「作戦開始は本日2530時とする。当島津寮、玄関前に集合だ。
装備はこちらで用意する」
「……作戦開始には、少し時間が遅いのでは?」
「勝手に発言するな、マルギッテ少尉!本作戦の指揮官は、私だ!」
「も、申し訳ありません!」
俺の口調に、どこか俺を舐めていたマルギッテの態度が一変した。
「まあいい……この作戦は極秘任務である。
寮住人が寝静まるのを待たねばならんのだ。他に質問はあるか?」
「いいえ、ありません!」
「よろしい!では、時間まで待機して作戦に備えよ!」
「了解!」
- 718 名前:極秘任務・6[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:36:13 ID:ry/HVC0W0
- そして、深夜。
「来ているな、マルギッテ少尉」
「はい、隊長!」
予定の時間に玄関前に行くと
戦闘服に身を包んだマルギッテが直立不動で待機していた。
……近所の人に見られていないといいのだが。
「では、装備を支給する……使い方は、わかるな?」
「このスプレー缶は、対クリーチャー用のガスですね……
あの、新聞はどう使用するのでしょうか?」
「これは、こう……丸めて、棒状にして、ヤツらを叩き潰す」
「ククククリーチャー相手に白兵戦闘デスカッ!?
しかもこのような貧弱な武装で!?
アハトアハトは!?パンツァーファウストは!?」
何と戦うつもりだよ。てか、寮でそんなものぶっ放せるか。
「そんなものはない。これが極秘任務であることを忘れたのか?
まあ、そう心配するな少尉。直接遭遇しなければこれらの出番はない。
今回の主な任務は……これの設置だ」
「……この、紙の箱が、ですか?これは一体……?」
「対クリーチャー用トラップだ。これを寮の各初に設置する。
ヤツらは小さくて素早いからな。これが一番有効なのだ」
- 719 名前:極秘任務・7[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:40:14 ID:ry/HVC0W0
-
「このような紙の箱にそんな威力があるとは……
さすがサムライの国ですね!」
ホイホイとサムライ関係ねえし。
「これがトラップを設置する地点を指定したマップだ。
効率をあげるため二手に別れよう。マルギッテ少尉は2階を。
俺は1階に設置していく。最後に、キッチンで合流しよう」
「は、はい……」
別行動と聞いて不安そうなマルギッテの肩をポンと叩く。
「心配するな少尉。2階はヤツらもあまり出現しないのだ。
もし遭遇してしまったら、無理に戦闘はせず、1階の俺のところに来ればいい」
「隊長……ありがとうございます」
なんかマルギッテの俺を見る目がウルウルしてるようにも見えるが
たぶん気のせいだろう。
「では、行くぞ。健闘を祈る!」
「了解!」
二人して真っ暗な寮に入っていく。
マルギッテは2階に上がり、俺はそのまま1階に。
懐中電灯の明かりを頼りに、予定通りホイホイを仕掛けていく。
そろそろ、敵の本拠地、キッチンというところで
マルギッテが、2階を終わらせて階段を降りてきた。
- 720 名前:極秘任務・8[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:44:43 ID:ry/HVC0W0
- 「お待たせしました隊長。2階、設置完了です」
「ご苦労。では、いよいよこれから
敵の本拠とも言うべきキッチンに突入する。
設置は俺がするから、マルギッテは後ろから明かりで照らしてくれ」
「ダメです、それでは隊長だけが敵の矢面に……」
「なに、この寮のことなら俺のほうが良く知っている。
だから俺がやったほうが上手くいくというだけさ」
俺が前でマルギッテが後ろの隊列でキッチンに。
冷蔵庫の後ろ……クリア。食器棚の裏……クリア。
シンクの下の収納スペース……クリア。
「ふう……あと、一つだな」
ゴミ箱の脇。今までもっとも発見した回数が多い所だ。
かがみこんで、ホイホイを隙間に差し込もうとしたとき
カサッ
何かが、動いた。
いや、黒光りしてて長い触覚をウニョウニョさせてる平べったいヤツとかは
もう「何か」なんてあやふやなものじゃなくてGなわけだが。
「マルギッテ……ガス、用意」
背後のマルギッテが震える手でスプレーを差しだした。
ヤツが逃げこめないほどその姿をあらわすまで、息を潜めてそのときを待つ。
「…………今だ!」
- 721 名前:極秘任務・9[sage]投稿日:2009/11/09(月) 00:48:49 ID:ry/HVC0W0
- プシュー!
勢い良く噴射される殺虫剤にヤツがバタバタともがき
「ッ!?」
向きを変え、俺たちのすぐ横をすりぬけようとする!
くそ、奥に逃げこむと思ったのに!
ホイホイを放りだし、俺も追うように殺虫剤を噴射するが
「ヒィッ!?」
しまった!ヤツが逆襲飛行しやがった!
羽を広げるその先は、明かりを持ってるマルギッテ!
「……なぁっ!?」 「あ」
……飛びあがったヤツはマルギッテの軍服の襟から服の中に侵入。
「と、取って!取ってください隊長!」
「いや……取ってって言われても……って、えええええ!?」
服の中に手を突っ込むのをためらっていたら
マルギッテがものすごい勢いで着ているものを脱ぎ始める。
「ああああああ、下にぃっ!」
「あ、出てきた……この!」
軍パンを脱いだところで、裾からポロリと出てきたヤツを新聞紙で攻撃。
殺虫剤がかかっていたのだろう、動きが鈍っていたので簡単にしとめられた。
- 722 名前:極秘任務・10[sage]投稿日:2009/11/09(月) 01:00:36 ID:ry/HVC0W0
- ヘナヘナとその場にしゃがみこむマルギッテ。
すでにスポーツブラとパンティだけという格好なので、目のやり場に困る。
「えーと……大丈夫か、マルギッテ?」
「も、もう私はダメです……
きっとあのクリーチャーに、卵とか植えつけられたりしてます。
このまま、幼虫の餌にされちゃったりするんです……」
どこのエイリアンだそれは。
「そんなことになるぐらいなら……今いっそ一思いに……!」
「オイオイ……あー、その心配はないぞ。コレ、オスだ。
ほら、この尻尾のところで見分けがつくんだよ」
新聞紙に貼りついてるのをマルギッテに見せて解説……
「ひゃあああああ!?」
するんじゃなかった。
半裸のマルギッテが新聞をはたき落として俺にしがみつく。
しなやかな体が、今は緊張でガチガチになり、震えている。
「まあ、とにかくもう終わった。よく頑張ったな、マルギッテ」
ぎゅ、と抱きつかれたまま、その背中をゆっくりと撫でていると
パチン
キッチンの、明かりがついた。
- 723 名前:極秘任務・11[sage]投稿日:2009/11/09(月) 01:04:39 ID:ry/HVC0W0
- 「……何をしてるんだ」
「……やあ、おはようクリス」
「おはよう、ってまだ夜中の2時だぞ……
バタバタ何やら騒がしいので来てみれば
マルさんが裸で震えているわけだが。
もう一度きこう……何をした、直江大和ッ!?」
極秘任務、特にクリスには内緒と言われているので
G退治のことは伏せておかねばならないが
この状況、何と言い逃れしたものか……
「クリスお嬢様……実は、私が直江大和を誘惑していたのです」
「マルさん……嘘はやめてくれ。
そんなことをする理由がないじゃないか」
「いえ、私、実は密かに直江大和に思いを寄せていたのです。
思い余って今夜寮に忍び込み、夜這いをかけたのですが
なかなか色よい返事をもらえず、悔しさに身を震わせていたのです」
よくもまあでまかせを並べたものだが
いかにクリスが抜けているといっても、さすがにこれは……
「な、なんと……そうだったのか!」
信じた。さすがクリスだ。
マルギッテは、そそくさと服を着なおすと慌ただしく帰っていった。
帰り際に、俺のことをチラッと見て
頬を染めながら微笑んでいたのが印象的だった。
- 724 名前:極秘任務・12[sage]投稿日:2009/11/09(月) 01:08:41 ID:ry/HVC0W0
- 翌朝。
「おはようクリス……眠そうだな?」
辺りを見まわしてから、声を潜めてクリスが怒りだす。
「当たり前だ!あんな光景を見せられて、すぐに寝つけるわけがないだろう!
……で、マルさんのことはどうするんだ?告白されたのだろう?
その……受け入れる気は、ないのか?」
あー、そういやそういう設定になってるんだっけ。
設定だけですまなくなった気もするが。
と、クリスのケータイが呼びだし。
「あ、父さまだ……おはようございます、父さま!
はい?……はい、います。はい……大和、父さまがお前と話したいそうだ」
またかよ。怪訝な顔のクリスからケータイを受け取る。
「おはようございます、直江大和です」
『おはよう、大和君。先ほど、マルギッテ少尉から報告を受けてね。
よくやってくれた。少尉は君のことを絶賛していたよ』
やっぱり惚れられちゃったかなぁ。その気はなかったんだけどなぁ。
『どうかね、卒業したら、私のところで働いてみないかね?
君のような参謀タイプも、軍の組織には必要なのだよ。
君と少尉の二人でクリスを支えてくれると、私も安心して引退できるのだがね』
火の海にはならなかったが、泥沼になったかもしれない朝だった。
- 725 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 01:10:42 ID:ry/HVC0W0
- 終わり。大丈夫か、ドイツ軍。
ちなみに、投下終了時で463KB。セフセフ。
- 726 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 01:14:07 ID:lDTEbtuf0
- 乙
深夜にニヤニヤしてる俺きめぇ('A`)
- 727 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 01:25:30 ID:QIFh48k50
- 乙!
クリーチャーw
ゴキ相手にアハトアハトとかワロス
- 728 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 06:45:01 ID:/fMRvm+70
- やっぱドイツ組は洒落にならんよなwwwww
やり口が大げさ過ぎるwwwwwwwww
- 729 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 07:35:24 ID:Cq8jL6sY0
- 乙
後半のマルギッテ可愛いくていいなぁ
- 730 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 11:48:13 ID:e5GRPWZ30
- >>697>>725
GJ&乙!
>>728
だがそれがいい!
このスレは全部良作だなあ
- 731 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 12:45:39 ID:muV5DGvSO
- マルさんやっぱ可愛いのぅ
- 732 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 13:41:12 ID:aryBSWYk0
- >>702
真剣で私に恋しなさい!! 妄想スレ
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1250425653/
このスレ過疎ってますし、新しいスレの代わりに再利用するのはどうでしょうか?
>>713-724
欠点無さそうなマルギッテもGがダメだったのか……ああ、こんな時キャップや京や源さんやまゆっちがいれば。
フランクの命令とは言え、上司と部下シチュが面白かったです。
- 733 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 16:15:47 ID:Bv6Pc8K10
- >>732
そのスレ見に行ったら妄想雑談用だし過疎てても住人がネタ雑談してるとこに押しかけたら迷惑では?
テンプレもできてるし普通に新しいSSスレ建てたほうがいいと思う。
- 734 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/09(月) 20:22:31 ID:e5GRPWZ30
- まあ新しく作るべきかな
- 735 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/10(火) 07:31:29 ID:2TWpYBI5O
- 辰姉は本当に可愛いなぁ
見てるだけで癒される
なんで辰姉一本のルートがないんだろ
辰姉純愛SS見たいお
- 736 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/11(水) 12:24:29 ID:ePgrG8FoO
- そろそろ次スレかな?
竜舌蘭ルート後は大和は誰と結ばれたのかな?
辰子だったら嬉しいが竜兵と兄弟か…
- 737 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/12(木) 03:16:39 ID:G1+T/dcdO
- リュウゼツラン後はフラグ立てまくって争奪戦ってのがプレイヤー的に一番美味しい
- 738 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/12(木) 03:49:28 ID:IAWtKaMC0
- 今までずっと我慢してたのに成り行き上一線を越えてしまった京が恐ろしい>竜舌蘭後
- 739 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/12(木) 07:38:49 ID:3pUXe2PKO
- ハーレムか…辰子が幸せならなんでも恋!
辰子は騎乗位と正常位のCG欲しかった…
京はやばいなw毎朝尺で起こしそう。百代は辰子と大和の仲に嫉妬かな
- 740 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/13(金) 00:40:05 ID:2TPUNDRN0
- そこで竜兵ルートですよ
- 741 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/13(金) 04:50:21 ID:Lbp5OulfO
- 出所してきたマロードとの濃厚なルートですね
- 742 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/13(金) 07:33:31 ID:1Txm0s7qO
- そんなのアッーすぎる…
竜兵×岳人ならまだわかるけどw
大和は辰姉を幸せにしてほしい。
小雪と辰子は攻略できると思ってたのに…頼むよタカヒロ
- 743 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/13(金) 19:46:22 ID:V1KHoxFuO
- >>742
分かるのかよww
辰子小雪は欲しかったな
ただリュウゼツランやった後だから逆に小雪攻略は大和はもやもやするかもと思ってしまう
- 744 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/13(金) 20:30:38 ID:1Txm0s7qO
- >>743
竜兵は岳人ヤろうとしてたじゃないか
バックじゃ辰子の胸が活かされてないしやっぱ騎乗位は欲しかった
小雪ルートは過去の修正から入って欲しい
小雪「仲間に入れてよー」
大和「俺は…」
→いいよ
だめ
って感じで
- 745 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/13(金) 22:21:58 ID:ftUzGNuS0
- 冬馬×小雪が好きな俺は異端なのか…。
- 746 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/13(金) 22:54:38 ID:iyBQjBLC0
- その2人はハゲ加えて家族のままでほのぼのして欲しいな
- 747 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/13(金) 22:57:54 ID:1Txm0s7qO
- そんなおまいらも小雪を犯したいと思うこともあったはずだ
- 748 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/11/13(金) 23:56:17 ID:liBHQtZ30
- ファンディスクで小雪ルートあってほしい
- 749 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/14(土) 00:29:16 ID:XERP34bN0
- 1本書きあがったけど新スレに投下するほうがいいかな?
- 750 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/14(土) 03:07:48 ID:nL/0qt8D0
- 長くなけりゃこのスレでいいんじゃね
- 751 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/14(土) 23:56:29 ID:XERP34bN0
- では姉さんもので締め
- 752 名前:水槽の中・1[sage]投稿日:2009/11/14(土) 23:59:30 ID:XERP34bN0
- 文化祭も終わって、そろそろ朝の木枯らしが冷たく感じるようになった。
今日はここ数日のうちでも特に寒い。
学院に向かう皆の表情も、なんとなくこわばりがちだが
最後に合流してきた姉さんは、特に険しい顔をしていた。
「どーしたの姉さん。何か浮かない顔してるけど」
「ん……ちょっと、タケルが具合悪いみたいでな」
「?タケル、って……誰のことでしたっけ?」
まゆっち始め、皆が誰だっけ?という顔をしている。
「私が飼っている金魚。タケルって名前なんだ」
七夕のときの話だから、俺と姉さん以外はもう忘れてるのかな。
「モモ先輩が金魚?なんでまたそんな可愛らしいペットを。
似あわねーよな、クマとかイノシシならわかるけど……グホァ!?」
余計なことを言ったガクトは姉さんの蹴りで宙に浮いていた。
「俺が七夕祭りのとき、金魚すくいでゲットして、姉さんにプレゼントしたやつだよ」
「ああ、あのときのかぁ。モモ先輩、ちゃんと育ててくれてるんだね」
「モロが色々調べてくれたんで、すごく助かったんだぜ」
昔だったら、面倒くさがって放りだしていたかもしれないけど
けっこう気に入って、大事にしてくれている。
こういうところも、微妙に変化してきているのかな。
しかし、今は具合が悪いという。ちょっと心配だな。
- 753 名前:水槽の中・2[sage]投稿日:2009/11/15(日) 00:02:31 ID:SVHejt6F0
- 「餌もあまり食べないし、なんというか生気がないんだ」
「ここ数日で、急に寒くなったからじゃないの?」
「いや、水槽にヒーター入れてるから、それはないはずだな。
……心配だから、今日でも見に来てくれ、弟」
「わかった、帰って調べてみてからそっちに行くよ」
「うん……頼りにしてるぞ」
俺に相談して、少し気が楽になったのか
その後は姉さんもいつもの明るい表情に戻った。
やがて退屈な授業も終わる。
姉さんは「タケルが心配だから」と
一人で飛ぶように帰っていった。
俺は休み時間にケータイで調べておいた
金魚用の治療薬などを仕入れに
ヤドカリの餌を飼ってる馴染みのペットショップへ。
ついでに、金魚の病気についても店の人に少し聞いておく。
……けっこう、デリケートな生き物なんだな。
と、ケータイが鳴る。姉さんだ。
「もしもし?どしたの?」
『大和、すぐ来てくれるか?……タケルが、死にそうかも』
む、ノンビリしてもいられなくなったか。寮には戻らず川神院に直行だ!
- 754 名前:水槽の中・3[sage]投稿日:2009/11/15(日) 00:05:33 ID:SVHejt6F0
- 「姉さん、タケルの具合どう?」
「それが……こんなことに……」
急いで川神院の姉さんの部屋にかけつけると
水槽の中で、タケルはお腹を上にひっくり返っていた。
姉さんはどうしていいのかわからないといった様子で
水槽を覗きこんではオロオロしている。
「……死にそうな魚って、こんな風にひっくり返るんだろ……」
「いや、ひっくり返ってるけど、まだ泳いでるし……これは『転覆病』かな」
「てんぷくびょう?」
「うん、こういう丸っこい金魚がかかりやすい症状らしい。
症状が出ても、すぐに死んじゃうわけじゃないらしいから安心して。
んーと……あれ、姉さん、水槽のヒーター切った?」
「いや、特にいじってないけど……」
「おかしいな、水温が下がりすぎてる……あ!コンセント抜けてるじゃん!」
水槽の裏側なんで気づかなかったのかな。後は、餌の問題か。
「姉さん、最近タケルの餌変えた?」
「う、うん……大和のくれた分が切れたから買いにいったら
同じのがなかったんで、店で自分で選んでみたんだけど」
「それが合わなかったのかも。しばらく、餌はやらないでみよう」
- 755 名前:水槽の中・4[sage]投稿日:2009/11/15(日) 00:08:38 ID:SVHejt6F0
- とりあえずの対処をして、しばらく様子を見ることに。
「……情けないなぁ。金魚の世話も満足にできないのか、私は」
「気にすることないって。
俺も初めてヤドカリを飼育したときは、失敗ばかりしてたよ」
「……大和は、気づいてるかな。川神院って、ハトがいないだろ」
「へ?……ああ、言われてみれば」
普通、こういう大きなお寺とかは
よくハトが集まってるもんだけど、確かに川神院にはいないな。
「それって、私がいるかららしい」
「何ゆえ」
「動物って、本能的に自分より強い動物を避けるんだよ。
犬や猫も、私にはなつかないだろ。
私がいるから、ハトは怖がって寄ってこないんだとさ。ジジイが言ってた」
寂しそうに姉さんが笑う。
「それにな、自分より強い動物と無理やり一緒にいさせると
ストレスが溜まって、寿命も縮むらしい。
そういう意味じゃ、私なんか最強の武神って言うより、疫病神とか破壊神かもな。
……タケルがこんなになっちゃったのも、私と一緒に……」
「 違 う ! 」
姉さんが言い終える前に、俺は全力でそれを否定した。
- 756 名前:水槽の中・5[sage]投稿日:2009/11/15(日) 00:11:38 ID:SVHejt6F0
- 姉さんの肩を掴み、正面から見つめる。
「確かに強いヤツは怖いよ。おっかねーよ。
俺だって、最初は姉さんが怖かったよ。けどさ……
俺も、ファミリーの皆も、今は姉さんのこと、怖がったりしないだろ?」
「それは……仲間だから……」
「そうだよ!俺たちが姉さんが好きで
姉さんが俺たちを好きでいてくれるから
その強さを頼もしく感じてるんだ。支えになってるんだよ。
……だから、自分の強さを否定するようなこと、言わないで」
「でも、タケルは具合悪くなっちゃったし」
「姉さん、タケルのこと大事にしてきたじゃないか。
タケルにだって、それは伝わってる。
逆に考えようよ。ホントはもう死んじゃいそうなんだけど
姉さんが見守ってくれてるから、タケルは頑張ってるんだって」
「うん……でも、弟にこんな説教されちゃってるようじゃな」
あの姉さんがここまで自信をなくしてしまうとは。
しょうがない……ちょっと深呼吸して、覚悟を決める。よし。
姉さんを抱き寄せて、唇を重ねる。
「ん……ちゅ、む……大和……もっとギュってして……」
「ギュ、だけでいいの?」
「ん……今日は、ちょっとな」
- 757 名前:水槽の中・6[sage]投稿日:2009/11/15(日) 00:14:49 ID:SVHejt6F0
- 「わかってる。今日は『アブナイ日』だよね。
姉さんの『スケジュール』ぐらいは把握してるよ」
「うん……ゴメンな、慰めてくれてるのに……」
「でも、しちゃうから」
喋りながら、ソフトに姉さんの体にタッチしつづける。
「?……ゴム、持ってきて、る……?」
「いや……姉さん、子供作ろう」
姉さんの顔がキョトンとして、そしてすぐに真っ赤になった。
「ちょ、待て!お前、何言ってるかわかってるのか!?」
「わかってる。二人で育てよう。きっと強くて賢い子になるから」
「だから!……金魚も満足に育てられないんだぞ私は!?
赤ちゃんなんか……無理、に決まってる……だろ」
何と言おうと、俺はやめない。姉さんならできる。そう信じている。
だから、実際に証明しよう。愛撫する手に熱がこもる。
「そ、それに、まだ……卒業、して……」
「たぶん、今ならそんなに目立たないところで卒業できるよ」
いつか通る道なら、今、無理矢理にでも……押し通る!
「う、はぁっ!?……もう、強引だぞ、お前……」
- 758 名前:水槽の中・7[sage]投稿日:2009/11/15(日) 00:18:52 ID:SVHejt6F0
- その日から、俺は機会があれば姉さんに精を注ぎこみ
姉さんも結局は積極的にそれを受けいれていた。
が、ある日。
「せっかくその気になったのに、できてないってどういうことだッ!?」
姉さんに、生理が来ていた。
「どういうことと言われましても」
「おかしいだろ、アレでできてなかったら
どんだけヤればいいんだよっちゅー話だぞ?」
機嫌が悪いのは、生理のせいなのか、できてなかったせいなのか。
……両方かな。
だけど、落ちこみからは立ち直ったんだから
無駄ではなかったハズ。
「まあ、こういうものは授かり物っていうから。
きっと、俺たちはまだそういうタイミングじゃないんだよ」
「……これじゃ跡継ぎも心配だな。
お前、弾数は多いけど実は空砲でした、とかじゃないだろうな?」
「なんですと!?」
……いいでしょう。どうやら本気の俺を見せるときが来たようだ。
もう、泣こうが腰抜かそうが失神しようが許しませんよ?」
そんな二人の思惑を知ってか知らずか
部屋の片隅の水槽の中では、青文魚が悠々と泳いでおりましたとさ。
- 759 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/15(日) 00:21:12 ID:SVHejt6F0
- 終わり。そして二人の激闘が始まるのだが
隣の部屋のワン子はどうしているのだろうか。
ちなみにこれで475KB。次スレよろしくです。
- 760 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/15(日) 00:32:15 ID:Btqt232V0
- 乙!しおらしいモモ姉さんも可愛いな
感想もあるだろうから次スレは>>770に頼む
- 761 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/11/15(日) 00:33:12 ID:09tIjrGE0
- マジおつ!
姉さん大好きで飢えてたからうれしいぜ
また書いてくれ
- 762 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/15(日) 01:31:48 ID:xUaGc6pb0
- 乙だバッキャロ!
姉さん最高だバッキャロ!
- 763 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/15(日) 11:41:07 ID:XxKq/RtR0
- 乙
姉さんって精神的には脆いところあるよねー
そういうところがあるほうが可愛いんだけど
- 764 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/15(日) 14:39:50 ID:hJHYz1iO0
- 鬼畜軍師の本気とか、怖すぎるw
良い作品でした!
このスレ、良スレすぎる!次のスレも期待しています!
- 765 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/16(月) 22:59:49 ID:jGM0RlMJ0
- 加速
- 766 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/17(火) 00:31:34 ID:Q4H/NEJQ0
- 良かろう、我が1レス埋めてやる
- 767 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/17(火) 12:37:53 ID:3+w4XIvXO
- >>770が次スレってことで
- 768 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/17(火) 18:00:50 ID:jxJsxVsCO
- ksk
- 769 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/17(火) 21:47:35 ID:3FHuyts90
- ksk
- 770 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/17(火) 21:54:25 ID:3FHuyts90
- あ
- 771 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/17(火) 21:58:30 ID:3FHuyts90
- 次スレ 【姉しよ〜】タカヒロ作品SSAAスレ2【〜マジ恋】
http://set.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1258462557/
- 772 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/18(水) 08:24:31 ID:ebV0czGeO
- >>771
乙!!
- 773 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/18(水) 10:01:45 ID:BjNtiLS20
- >>771
次スレに書き手さんがすぐ投下できるよう、乙はこちらでさせてもらいますねっ☆
- 774 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/19(木) 21:42:43 ID:rygaZH9n0
- 埋めるべーよ
- 775 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/19(木) 23:43:45 ID:ceYqonJu0
- 埋め
- 776 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/20(金) 07:22:19 ID:Nn+bUdZQ0
- あと20Kほどをこんな調子で埋めてくわけなのか…?w
- 777 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/21(土) 10:43:54 ID:DIK7/P5/O
- ここのSSレベル高いのになぜ京が少ないんだ
- 778 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/21(土) 13:29:10 ID:Lobc80KC0
- 京さんのお話はストーリー内でお腹イパ〜イなんじゃない?w
- 779 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/11/21(土) 13:40:26 ID:PZ/VVHZU0
- 埋め
- 780 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/21(土) 14:43:38 ID:RtJvI6p60
- 規制で投下できないんだよと言いつつtst
- 781 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/21(土) 14:47:28 ID:RtJvI6p60
- ……書き込めた……だと……?
ちょっと頑張ってみるか
- 782 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/22(日) 00:22:11 ID:5NuTAdMf0
- 京さんメインはガチエロ以外残されてない感じがするんだよなあ…w
- 783 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/22(日) 05:36:24 ID:z1gYQpyo0
- そろそろキャップ√後でファミリーの冒険物が必要だな
- 784 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/22(日) 18:54:40 ID:+UaLhsGF0
- 埋め
- 785 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/24(火) 19:36:12 ID:ZcK+XAoG0
- 埋め
- 786 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/24(火) 19:39:51 ID:DLusdGJP0
- 埋め
- 787 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/11/24(火) 22:49:54 ID:qzvjjr0w0
- 埋め
- 788 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/25(水) 00:52:47 ID:/iR2SXOW0
- 一子「マヨナカテレビって知ってる?」
- 789 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/25(水) 01:25:08 ID:s1DCKn6x0
- , イイハレ、
ト、 ィ/ ヽ ト、
ト、 | ヽ ,イ ハ ト、 レ1 さぁ埋めだ埋め!
, へvヘrヘァ、 \l / V ヽ レイ とことんやんぞー!
, -‐-、ハ}> V <乂ヽ ヘ } /
/ Y / , 个。、`ヽ} }ゝ-ヘヘイ ∠Z
ノ /⌒Zユl { { ∧∨} ト、ノ }リ L ノ
-=ニ. ̄ ア /⌒Zケ¨ハ{ ヽゝニソ ハ ゝ‐` チt。ァYhノ‐< ̄ ̄ ヽ
Y / /´ /ィ1ゝ√¨T¨ヘ ,イ ノレィ { ` ´ ljノ:::::::::::>‐-、 \
l ,' / ,ィ´ ハY} i| 〈 li レ'/ノr===ァ ,イ:::::::::/ ⌒ヽ、ヽ、_ >、
l ! ,' || レイ ({o}) 〉 ({o})/_ ゝ`ニ´//:::::∠_ イ ̄  ̄ ___ >、
∧| l i| / ,イ 〈 k^:.、ヽ`二´イ:::∠ 二 / , -‐ ´:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
/ ! l i i / / il 〉 l::ヽ:\ /::::{‐-‐ァ) `Y´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}
/ l l l ∠ _ ノ ノi 〈 ハく::::::::ヽ l::::::}二._イ‐- }:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./
/ ,ヘ ヽ ヘ、 Zニイ´,イ 〉 ハ::\:::::} |::::{‐-イ 人__ ,. -─- 、 __ ノ
ムイ ハ ヽハ V/ 〈 ヽ:::::Y l:::::`¨´l r´:::::::::ハ
\ ヽハ 〃 〉 ハ::ノ l:::::::::::::し′::::::::::::}
ヽ l l 〃 〈 ∠Z ハ l:::::::::::::|::::::::::::::: /
l i l 《 人 <> l l::::::::::::|::::::::::::::/
l | l ヽ、_ ∠ >、 ,イ| l::::::::::_L _:::_ノ
l | ! \`Y´ ,イ l N レ ´ l
l N `ーi::::| レイ |
- 790 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/25(水) 20:54:32 ID:0ONnUtXj0
- >>788
まじこいメンバーでペルソナ4、いいかも。
- 791 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/28(土) 08:16:37 ID:sc3Fwcsd0
- まったりすぎて埋まらんねw
- 792 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/28(土) 11:02:00 ID:qyDjdpbW0
- 此方が華麗に埋めるのじゃ
- 793 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/28(土) 11:30:25 ID:coo/QMqlO
- キャップのお出ましだっ!!
- 794 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/28(土) 14:32:51 ID:bv2IrbV/0
- どうした!てめえも意地をみせてみろー!
- 795 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/28(土) 20:16:52 ID:+R5NRboi0
- 梅先生俺だー結婚してくれー
- 796 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/28(土) 21:39:09 ID:U98OexHW0
- 埋めるのを手伝ってさしあげましょう
- 797 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/28(土) 22:38:44 ID:bv2IrbV/0
- KANEを払え!埋め代だ!
- 798 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/29(日) 01:17:41 ID:UIdtHQz9O
- キモいですね。
マイマザーと先輩の頼みじゃなきゃ、絶対に埋めません。こんなスレ。
- 799 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/11/30(月) 09:00:50 ID:xM3+WdxMO
- >>798
はいはいココナッツココナッツ
- 800 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/12/01(火) 00:29:26 ID:VfwCFjIXO
- 俺、風と共に去りぬ
- 801 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/12/02(水) 01:24:00 ID:LO/nNRly0
- 梅
- 802 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/12/02(水) 03:51:50 ID:rSRV8GXu0
- 胡桃沢梅
- 803 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/12/09(水) 00:14:32 ID:09jbTxQb0
- うめうめうめうめうめうめうめうめうめ
- 804 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/12/09(水) 00:14:57 ID:S28ate4H0
- うめ
- 805 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/12/13(日) 22:44:50 ID:u1RGY/9H0
- ウメス
- 806 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/12/17(木) 20:37:44 ID:x2lLS+Xh0
- うめうめ
- 807 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/12/18(金) 21:14:31 ID:yEQbHbpa0
- 梅
- 808 名前:名無しさん@初回限定[]投稿日:2009/12/20(日) 15:37:04 ID:/QKKmZJL0
- 産め
- 809 名前:名無しさん@初回限定[sage]投稿日:2009/12/20(日) 17:44:00 ID:e51TyUJO0
- 【姉しよ〜】タカヒロ作品SSAAスレ2【〜マジ恋】
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