***シューマイ定食680円 #pre{{ 369 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 23:21:19.43 ID:MViUyblh0 ほぼ1年ぶりの投下 マジこいS、メイド達との未来の続きな感じで李静初ルートっぽいのをを }} #pre{{ 370 名前:シューマイ定食680円・1[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 23:25:29.18 ID:MViUyblh0 正式に九鬼家の従者として働き始めて、今日が初めての休日。 久々に私服に袖を通し部屋を出ると いきなりヒュームさんとクラウディオさんに遭遇。 「おはようございます」 「フン、今日は非番か。赤子の分際で休みなど贅沢なことだ。 遊んでいる暇があったら、せいぜい己を磨くことだな」 「まあ若いうちは羽を伸ばすことも必要でしょう。 紋様には私とヒュームでつきますからご心配なく」 「はい、よろしくお願いします」 クラウディオさんの言うように、たまには息抜きもしておこう…… とは思うのだが、特に何をするというあてもない。 まあファミリーのほうに顔を出すか、と思い廊下を歩いていると 「おや。あなたも非番ですか、大和」 私服姿の李さんに声をかけられた。 黒のスラックスに淡いブルーのブラウスというシンプルな服装が 李さんが着るととても決まって見える。 私服、ということは李さんも休みなのか。 「はい、今日が初めての休みです。李さんはどこかにお出かけですか?」 「ええ、ちょっと散歩がてら、七浜の中華街まで」 そう言うと、チラリと俺の顔を見て 「よかったら、一緒に行きませんか?」 }} #pre{{ 371 名前:シューマイ定食680円・2[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 23:31:38.90 ID:MViUyblh0 散歩で七浜はちょっと遠い気もするが、せっかくのお誘いだし ファミリーのほうも特に予定していたわけではない。 素直にご一緒させてもらうか、というところで思い出した。 「中華街ってひょっとして、シューマイの食べ歩き、ですか?」 「おや。私の好物、ご存知でしたか」 「ええ、あずみさんに聞きました」 暗殺稼業のころは匂いで気取られるといけないので食べられなかったとか何とか。 「まあ、平たく言えば食べ歩きで正解です。 ただ、あまり食い気ばかりに走るのもどうかと思い ちょっと色気の補充ということであなたを誘ってみたわけです」 色気の補充って、俺が李さんの色気の対象ってこと? ……考えすぎかな。普段は俺、イジられてるだけだし。 「それなら、七浜まで行かなくても 川神で美味いシューマイ出す店知ってますよ」 クマちゃんに教えてもらった、隠れた名店があるのだ。 散歩で食べ歩きなら、川神でのんびりのほうがいい。 「川神で、ですか……これでも、川神の中華料理店は あらかた知っているつもりですが、どの店のことでしょうか?」 「あ、中華料理屋じゃなくて、普通の定食屋なんです。 そこのシューマイ定食のシューマイが絶品なんですよ」 「定食屋……それは盲点でした。案内してもらえますか?」 }} #pre{{ 372 名前:シューマイ定食680円・3[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 23:48:18.27 ID:MViUyblh0 こうして、二人で川神の街へ。 いちおう並んで歩いているわけだが 李さんはまるで俺など存在していないかのように まっすぐ前を見たまま黙々と歩いていく。 が、不意にチラ、とこちらに視線だけ向けると 「……私がどうかしましたか」 しまった、気になってついマジマジと見つめてしまっていた。 「あ、いえ、その……俺とじゃ楽しくないのかな、って」 なんか表情硬いし。 「そんなことはありません。そもそも、誘ったのは私です」 「でも、ぜんぜん喋らないし、俺のほうも見ないし」 「……緊張しているんです。それぐらい、察してください」 「はあ」 「あなたのほうこそ、つまらないのではありませんか。 こんな、無愛想な女が一緒では」 「いえ、そんなことは。それに、言うほど李さん無愛想じゃないでしょ」 「そうですか?クラウ様にも、もっと愛想よく、と いつも注意されてしまうのですが」 「あー……まあ、対外的に見せる表情としてはそうかもですね。 でも、しばらく一緒にいればそうでもないって気づきますよ」 }} #pre{{ 373 名前:シューマイ定食680円・4[sage] 投稿日:2012/02/12(日) 23:54:57.36 ID:MViUyblh0 確かに、李さんは表情が豊かとは言えないが だからといってまるっきり無表情なわけじゃない。 最初はよくわからなかったけど 今はそこから感情の起伏を読み取ることだってできる。 「まあ、俺が人の顔色をうかがうのが得意ってのもありますけど」 「ああ、確かにあなたはそういうところがありますね。 では、私が今どんな気持ちでいるか、わかりますか?」 「ええと、喜んでます……よね?」 「ええ。とても」 「じゃあ、こうしたら……どうなるかな」 思い切って、李さんの手をとり、握る。 驚き。はにかみ。そんな表情を垣間見せながらも 俺の手を握り返してくる李さんの顔は 今、誰が見てもはっきりとわかるほどの笑顔だった。 「意外に大胆ですね。けど、顔が真っ赤ですよ」 う。姉さんや京とのスキンシップからすれば これぐらいどうってことないはずなのだが 俺のポーカーフェイスもまだまだってことか。 「えーと、そこの角を左です」 「ごまかしてる……かわいい」 ……俺ってやっぱり年上にイジられるなぁ。 }} #pre{{ 374 名前:シューマイ定食680円・5[sage] 投稿日:2012/02/13(月) 00:00:41.58 ID:MViUyblh0 「はい、ここです」 昼にはちょっと早いけど目的地の定食屋に到着。 「これは……ずいぶんとその……レトロなお店ですね」 木造2階建ての古い家屋の1階部分が 老夫婦が二人で切り盛りする定食屋になっている。 場所も路地裏で、地元の人ぐらいしか客がいない。 「すいません、あんまりキレイな店じゃなくて」 「いえ、私も九鬼に来るまでは そういい暮らしをしていたわけではありませんから。 むしろ馴染み深くていい感じです」 暖簾をくぐって店の中へ入り お目当てのシューマイ定食を注文。 やがてお婆ちゃんがお盆に載せた定食を運んできた。 「お待ちどうさま。熱いから、気をつけてね」 お。わかりにくいけど、李さんこれは期待している表情。 「では、いただきます」 さっそくシューマイを一つ口に運ぶ。 もむもむと、小さくて形のいい口が動くたびに その表情が、パァッと花が開くように喜びに満ちていく。 わざわざ感想を聞くまでもないかな。 李さんの表情に見惚れながら、俺も自分の分のシューマイに箸を伸ばした。 }} #pre{{ 375 名前:シューマイ定食680円・6[sage] 投稿日:2012/02/13(月) 00:07:36.86 ID:ZYSyvJpt0 「ごちそうさま。本当に、美味しかった。 ありがとう、いい店を教えてくれました」 李さんはここのシューマイがたいそう気に入ったようで 帰り際、店のお婆ちゃんに名刺を渡していた。 渡されたほうは目を白黒させていたが。 食事が済んでしまうと、後は特に予定もない。 が、せっかく李さんと一緒なのに このまま大扇島に帰るのはもったいない気がした。 もう少し、この人と一緒にいたい。 「いえ、俺も人から教えてもらった店ですから。 それより李さん、この後の予定は?」 「静初」 「は?……ジン……チュ?」 「私の名前です。李は苗字。名前が静初(ジンチュー)。 名前で呼んでもらってかまいません……その、二人だけのときは」 あ、照れてる。俺もだけど。 嬉しいけど、年上でしかも上司の女性を呼び捨てもどうか。 「じゃあ、静(ジン)姉と呼びます」 「はい。では大和、もうちょっと遊んでいきましょう」 「はい!」 こうして、二人での休日をマッタリと楽しんだ。 }} #pre{{ 376 名前:シューマイ定食680円・7[sage] 投稿日:2012/02/13(月) 00:14:20.81 ID:ZYSyvJpt0 「ただいま戻りました」「お疲れ様です、ステイシーさん」 日の暮れかかる頃、大扇島に戻る。 入り口警護のステイシーさんが怪訝な顔で俺を見た。 「何だ、お前も休みだったのか?な、何で二人仲良く帰ってきてるんだよ!?」 「いや、元からそういうスケジュールでしたけど」 「ファック!李テメェ、土壇場で休み交替してくれって、これが狙いか!?」 ……え?休みを交替? 「偶然です。ね、大和」 「静姉が休みを俺の休みに合わせてずらしてきたってこと?」 「ですから、偶然です。あと、『静姉』は二人きりのときだけに。 まあ、ステイシーならいいですが」 「くっ……なんか呼び方まで馴れ馴れしくなってるし!二人で何してやがった!?」 「ただの散歩です。が、二人の仲は進歩しました」 「……」「……」 「……散歩で進歩。無理しないで、笑ってもいいんですよ?」 「笑えるかぁ!抜け駆けなしとか言っといてどういうことだゴルァ!? テメェ大和、次の休みはいつだ!?さっさと教えろー!」 やれやれ。九鬼に来ても、周りが騒がしいのは変わらないのかなぁ、俺。 }} #pre{{ 377 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2012/02/13(月) 00:22:31.91 ID:ZYSyvJpt0 おしまい 李はラストでてへぺろをしてる顔グラとかあったらいいな、みたいな ゲーム的には、次の休みでステイシーに引っ張りまわされて その次の休みでどちらかを選んでルート確定って感じで }}