***G線上のメリークリスマス #pre{{ 235 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2010/12/23(木) 19:03:00 ID:yPlKJBuF0 クリスで小ネタを一本 }} #pre{{ 236 名前:G線上のメリークリスマス・1[sage] 投稿日:2010/12/23(木) 19:06:00 ID:yPlKJBuF0 ギュイイィィ!ギュギュギギギギュウギュッギィ! 突然、秘密基地に奇怪な音が鳴り響く。 「なんだ!?」 思わず寝そべっていたソファから身を起こし、辺りをうかがうと 「あ、スマン、いたのか大和」 いつの間にかやってきていたクリスが 見覚えのある弦楽器を肩に構えていた。 「なんだ、バイオリンか。俺はまた、眠っているうちに 豚の屠殺場にでも迷い込んだかと思ったぞ」 「失礼だな!……とはいえ、我ながらヒドイ音だった。 久しぶりに持ち出してみたが、どうもダメだな」 「というか、バイオリンなんか弾けるんだ?」 「まあな。小さい頃に、ちょっと習っていたんだ」 確かに、お嬢様の習い事として ピアノとかバイオリンとか色々やってそうではあるな。 クリスの場合、ピアノよりバイオリンのほうが絵になりそうだ。 「じきにクリスマスだろう? 父様に、プレゼントとして何か一曲演奏してさしあげよう…… と、思ったのだが、これではちょっとな」 クリス、歌はけっこう上手いんだけどな。楽器の演奏はまた別らしい。 }} #pre{{ 237 名前:G線上のメリークリスマス・2[sage] 投稿日:2010/12/23(木) 19:09:01 ID:yPlKJBuF0 「てっきり誰もいないと思ったので、ちょっと練習してみたんだが…… 騒がせてすまなかったな。どうも自分には、楽器の才能はないようだ」 そう言うと、バイオリンをケースにしまい始めた。 「珍しく諦めが早いな。 俺は楽器は詳しくないが、何が上手くいかないんだ?」 「どうも複数の弦を上手く操作できん。 ただ音を出すだけなら何とかなるのだが 何か演奏しようとすると、さっきの有様だ」 音が出せるだけでもたいしたもんだとは思うが。 まあ確かに、指とかつりそうだよな、バイオリンって。 4本の弦を指で押さえて、奇妙な形の弓でこするだけで あんなキレイな音が……4本? 「時間があれば、猛特訓でもするところだが クリスマスまでもうそんなに日もないからな。 何か違うプレゼントを考えるさ」 「……いや、ちょっと待てクリス。 使う弦が一本だけなら何とかなるんじゃないか?」 「はあ?……そんな都合のいい曲があるのか?」 「ああ、確か弦1本だけで演奏するので有名な曲がある。 素人考えだが、複数の弦を処理できないなら、1本だけで演奏すればいい。 それなら何とかできるんじゃないのか?」 「確かに素人考えだが、やってみる価値はあるな。 よし、今日から特訓だ!……で、何という曲なんだ?」 }} #pre{{ 238 名前:G線上のメリークリスマス・3[sage] 投稿日:2010/12/23(木) 19:12:01 ID:yPlKJBuF0 「大和ー!おかげで、何とかモノになってきたぞー!」 明日はクリスマスイブ、という段になって ようやっとクリスの特訓は実を結んだらしい。 ところかまわずギコギコされたので、けっこううるさい思いもしたが。 「……大和、礼といってはなんだが、今ちょっと聞いてもらえるだろうか?」 俺の返事も待たずに、クリスはケースからバイオリンを取り出す。 「まあせっかくだ、聞いてみよう」 「うん!では……クリスティアーネ・フリードリヒ、参る!」 深呼吸を一つして、バイオリンを構えると、クリスは目をつぶって演奏を始めた。 『G線上のアリア』 4本あるバイオリンの弦のうち、一番低音の「G線」という弦だけで演奏する曲らしい。 モチロン、上手に演奏するにはきちんとした技術は必要だろうが 形だけでも、ということなら、クリスでも何とかなるのではと提案したのがこの曲だった。 「……どうだった?」 そして、短い期間でクリスはその「形だけ」のところまでは到達したようだった。 「よかったと思うぞ。何ていうか……心がこもってる感じがした」 「なら、ちょっと早いが大和へのクリスマスプレゼントもこの演奏でいいな!」 普通のプレゼントがほしかった気もするが、たまにはこんなのもいいだろう。 再び流れ出した「G線上のアリア」をバックに、メリークリスマス、クリス…… }} #pre{{ 239 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2010/12/23(木) 19:17:32 ID:yPlKJBuF0 おしまい タイトルでほぼオチが見えるけど気にしない }}