***認めません #pre{{ 106 名前:認めません・1[sage] 投稿日:2010/01/26(火) 21:03:00 ID:9lNwxDHE0 「お、これなんかいいな」「どれどれ?……ん~、ちょっと派手すぎない?」 秘密基地でのマッタリした時間。 女子メンバーが揃って、テーブルの上の雑誌に集中している。 男が俺しかいないので、ちょっと緩んでる気もするが 武士娘、といってもやはり「娘」ではあるわけで 見ていると何やら微笑ましさすら感じる。 どれ、どんなモノに興味があるのか、軍師として把握しておくか。 「さっきから、皆して何見てるのさ?」 「あ、コレですか?いわゆるコンカツ情報誌です」 「……コンカツ?」 「知らないの大和?えっと、結婚活動のことを略して……ケッカツ……あれ?」 自分が知っていて、俺が知らないコトがあると思ったのか ワン子が自慢げに説明を始めようとして間違えていた。 「コンカツな。言葉の意味ぐらい知ってるが」 「うぎゅ」 「俺が聞きたいのは、何故にコンカツ情報誌なんか見てるのかと。 今からってのはいくらなんでも早すぎるだろ」 当然ながら、みんなまだあわてるような年齢じゃない。 それに、皆の容姿を考えれば、男の一人や二人捕まえるのは造作もないハズ。 「いーじゃないか、女にとって、ウェディングドレスは憧れだからな」 }} #pre{{ 107 名前:認めません・2[sage] 投稿日:2010/01/26(火) 21:06:10 ID:9lNwxDHE0 ウェディングドレスか。確かに、男でも見とれてしまうものだが。 「意外だね。姉さんでも、ウェディングドレスに憧れ痛たたたたたたっ!?」 全部言い終わる前に、姉さんの拳がコメカミに食いこんでいた。 「……何か言ったかな?」 「いや、姉さんはウェディングドレスも似あうんだろうな、とですね」 「フンだ……私だってそういう夢は見るんだからな。 あーあ、ウチが寺じゃなきゃなー」 「そうか……姉さんやワン子の場合は 家が家だけに、婚礼衣装は文金高島田になるんだろうな」 「……大和、ブンキンタカシマダとは何だ?」 「ああ、クリスは知らないか……ほら、これ」 雑誌のページをめくって、文金高島田―日本伝統の花嫁姿を見せてやる。 「おお!これが日本の花嫁がかぶる『キンカクシ』というやつか!」 便器を頭にかぶってどうする。 「やれやれ……しかし、一度でいいからウェディングドレス着てみたいなー」 いや、一度着れば充分なのでは。中には二度三度と着る人もいるけど。 「あれ……モモ先輩、ここちょっと見て」 }} #pre{{ 108 名前:認めません・3[sage] 投稿日:2010/01/26(火) 21:10:17 ID:9lNwxDHE0 雑誌のページを繰っていた京が、その一角を指で示す。 「んー?……なになに……一般からのモデル募集?」 気になったので俺も覗き込んでみる。 「どれどれ……『様々なシチュエーションの花嫁姿を映像化するために 一般からのモデル大募集!』か……」 「いいなこれ!……オーディションとかどうなってるのかな?」 「えーと……郵送の書類で審査をして、月末に駅前の会場で面接審査だって。 姉さん、オーディション受けるつもりなの?」 「当然だな。夢がかなってギャラも貰えれば、二重に美味しい話だぞ。 ……なんだ、微妙な顔して」 どうも「様々なシチュエーション」ってのが引っかかる。 普通の花嫁姿なら、普通にモデルさんを使えばいいわけで それができないような「様々なシチュエーション」ってことなのではなかろうか。 「そうだ、どうせなら皆で行かないか?先取りしてウェディングドレスを着るチャンスだぞ」 「いいですね、私も是非!」 「お姉さまと花嫁姿のペアルックもいいかも!」 「父さまにはナイショにしておいたほうがいいかな?」 「じゃあ私も一応つき合いで」 まあ、この人たちなら何があっても大丈夫か。 気にはなるが、皆かなり乗り気だし、ここで水を差すこともないだろう。 あえて忠告はしないでおくことにした。 }} #pre{{ 109 名前:認めません・4[sage] 投稿日:2010/01/26(火) 21:13:22 ID:9lNwxDHE0 そして月末。書類審査は皆通ったということで 今日は朝からファミリー女子メンバーは揃って駅前の審査会場に行っている。 終わったら秘密基地に顔を出すということだったが 果たして、どうなっていることやら。 「……あ、大和。ただいま」 ドアをあけてひょこ、と京が顔を出す。 「おう、お帰り京……あれ、一人だけ?他の皆は?」 「何か疲れたから帰るって」 「へえ。あれだけ体力あっても、慣れないことすると疲れるものなんかね」 「そだね。撮影もしたからね」 「え、もう撮影?っていうか、本採用されたんだ?」 「うん。条件のせいか、私たちにすぐに決まっちゃったよ。 で、すぐに撮影。スケジュールがいっぱいいっぱいだったみたい」 「……どんな条件で選んだんだよ」 「特集記事用の写真が欲しかったらしい。 記事のテーマは『闘う花嫁さん』だって」 ああ。そりゃピッタリだわ。 テーマそのものが微妙な気もするが。 「画像サンプルも貰ってきたよ。見る?」 }} #pre{{ 110 名前:認めません・5[sage] 投稿日:2010/01/26(火) 21:16:29 ID:9lNwxDHE0 京がメモリーカードを基地のPCに差しこみ スライドショー形式で画像を流していく。 「……あれ、普通の花嫁姿じゃん」 純白のウェディングドレスに身を包んだ 艶やかな花嫁姿の皆の映像が映し出されていく。 見慣れたメンツのはずなのに、どこかいつもと違う。 ……表情か。 晴れやかで、誇らしげで、幸せそうで。 「……いいもんだな。で、これだけじゃないわけか」 「ん。そろそろ。最初はクリスかな」 「どれどれ……っ!?」 ウェディングドレス姿のクリスが……馬に乗ってる。 馬のほうも結構な速度で走ってるっぽい。 「乗馬のできる人、という条件で選ばれた。 テーマは『もう白馬の王子様は待たない』」 「なるほど、相手を探して積極的に動こうというテーマなわけだな。 ……何か、ワン子が走ってる画像が出たんですけど?」 長いドレスの裾をたくし上げて、ハードルを飛び越えてる。何の罰ゲームだこれ。 「それは『乗り越えろ!結婚までの10の障害』とかいうテーマだった」 まあ……確かに乗り越えてはいるわな。 }} #pre{{ 111 名前:認めません・6[sage] 投稿日:2010/01/26(火) 21:19:34 ID:9lNwxDHE0 「この、まゆっちが刀で巻き藁を切ってる画像は何!?」 ウェディングドレスを着て日本刀を振りかざす花嫁ってシュールすぎるぞ…… 「たしか『切り捨てろ!結婚に関する間違った常識』とか何とか」 「何なんだこの雑誌……あれ……姉さんタキシードじゃん!」 タキシ-ドを着た姉さんが、ドレス姿のワン子をお姫さまだっこしている。 あまり嬉しそうではない姉さんと対象的に ワン子はウットリして抱かれている。変な方向に走らなければいいが。 「こちらのほうが似あうと判断されたらしい。モモ先輩すごく怒ってた」 「どんなテーマなんだよ……」 「同性婚がどうとか」 現実化しそうで怖いわ。 「てっきり、花嫁姿で大暴れ、とかいう画像だと思ったのに」 「それはそれで、別にあるよ」 あるのか。 「ほらこれ」 折り重なって倒れている男性数人を足で踏みつけ、腕まくりしている花嫁とか どんなシチュエーションでありえるのだろうか。 姉さんの表情が、さっきのよりは生き生きとしているのが印象的だった。 }} #pre{{ 112 名前:認めません・7[sage] 投稿日:2010/01/26(火) 21:22:44 ID:9lNwxDHE0 「……あれ?お前の画像なくね?」 一通り画像を見終わったようなのだが、京の画像は普通のものも含めてなかった。 「私のはないよ。モデルには採用されたんだけど、辞退した。皆に付き添っただけ」 そういえば、京はそんなにはウェディングドレスを着たがってなかったが 別に辞退することもないだろうに。 「たとえ撮影のモデルでも、大和以外にウェディングドレスを着せられるわけにはいかない」 「……そうか」 「私はその時、隣にいるのが大和であれば、どんな服だってかまわないし」 今さらだが、ときどきこういうグッとくるセリフを京は言うんだよなぁ。 その都度、よろめいてしまう俺がいる。今のもかなり…… 「全裸でもおk」 ……持ちなおした。なんだよ花嫁が全裸で結婚式って。 それ何てエロゲ?って話だぞ。 「というか、何かいいよね、全裸結婚式。 誰もいない教会で、大和と私は生まれたままの姿で愛を誓うの」 「よくねーよ!しかも俺まで全裸になるのかよ!」 「そしてそのまま二人は……ハァハァ……」 「そんな結婚式、神様も俺も認めません!」 }} #pre{{ 113 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2010/01/26(火) 21:25:50 ID:9lNwxDHE0 終わり。ヒロインたちの花嫁姿を妄想してもらえれば ちなみに、自分は全裸結婚式を認めます ベールに長手袋とガータストッキング、でもいいやね }}