***Tricks for maid #pre{{ 417 名前:Tricks for maid[sage] 投稿日:2009/10/13(火) 00:35:27 ID:HXlIYi6B0 なんとなく、あずみルートを捏造してみたので、投下 全く有り得なさそうだが }} #pre{{ 418 名前:Tricks for maid1[sage] 投稿日:2009/10/13(火) 00:37:43 ID:HXlIYi6B0 6月を過ぎた頃、俺はある人物の事を思い浮かべていた。 忍足あずみ。九鬼英雄に使える腹黒メイド。 彼女にとって、英雄とそれ以外の人間の間には越えられない壁があると同クラスの井上準は語っていた。 ただし、逆に言えば強烈な忠誠心と、献身的な愛があってこその所業。 俺は心の底から思った。彼女を自分のものにしたいと。…しかしどうやって。 …簡単なことじゃないか。障害を取り除いて、彼女の心を取り込んでしまえば良い。 障害とは九鬼英雄に対するあずみの想いだろう。この想いを切り捨てざるをえない状況にしてやれば良いだけのこと。 …九鬼がワン子とくっつけば、外堀くらい埋める効果があるな。 なら、やりようがあるか…。 ................................................................................................................ 幸いにも、数日後に校舎屋上にて接触する機会が得られた。当然の様に、忍足あずみも近くに控えている。 「直江大和!珍しいな、貴様が我に謁見を求めてくるなど」 「まぁ、な。だが、その前に人払いを…」 当然、護衛に付くつもりでいるあずみの眉間に縦皺が走る。しかし反論する暇を与えず、九鬼からの指示が下る。 「よかろう。あずみ!しばらく下がっておれ!!」 「…了解です、英雄さま」 あずみが離れた事を確認して九鬼に耳打ちをする。 …彼女にもいずれ知られることだが、今邪魔をされると都合が悪い。 「お前、ワン子に気があるんだろ?アイツを大事にすると約束できるなら、俺もお前の恋路を手伝ってやろうと思ってな」 「何だと!!我は貴様の事を見直したぞ、直江大和!!」 …声でかいって。顔を顰める俺の様子を気にした様子もなく、喜色満面に俺の手を取り、ぶんぶん振り回す九鬼。 多分、この性格が引かれてる原因だよな。 }} #pre{{ 419 名前:Tricks for maid2[sage] 投稿日:2009/10/13(火) 00:39:43 ID:HXlIYi6B0 「…九鬼。ワン子を狙うなら、少し声のトーンを落とすことを勧める。アイツ、どうもお前のテンションが苦手らしい。 …逆に言えば、この点を改善すれば攻略できる可能性が高まるだろう。あとアイツは無類の鍛錬好きという事は知っているよな? お前もスケジュールが合うようなら、見てるだけでなくて一緒に走りこんであれば、おそらく喜ぶぞ」 「なんと!これは貴重な情報、感謝するぞ!!」 こんな事を九鬼に吹き込んでいる俺を、遠くから冷ややかに射抜いている眼差し。当然、忍足あずみ本人である。 軽く前傾姿勢をとり、腕を身体の後ろに廻している辺りから、俺が九鬼に何かすれば抜刀しつつ飛び込んでくるつもりだろうな。 そんな彼女を尻目にいくつかの情報(ワン子の嗜好や性格面)を纏めたメモを渡してやる。 「フハハハハ!!感謝するぞ、直江大和!!!」 高笑いと共に去っていく九鬼と、それに付き従うあずみ。 …今は九鬼の従者で結構だが、いつか俺とともに歩ませてやるさ。 ................................................................................................................ やがて夕暮れの河川敷。走り込みに専念しているワン子と、彼女の背中を追いかけている九鬼。 どうやら、俺の授けた策を実行しているようなだ。さらに、その姿を眺めているあずみの姿もその場にあった。 「おいガキ。一体、何を企んでいる?」 改めて敵意丸出しで睨みつけてくる。そりゃ、敵対関係のあるクラスの人間が接近してきたら怪しむだろう。 それ以上に、一介の平民が取り入ろうとしている…とも受けとられているかもしれないがな。 「九鬼に対して、お節介でも焼いてやろうと思ってな」 俺の一言に、驚きの表情を見せるあずみ。そりゃ驚くだろ。…俺もこんな日が来るなんて考えた事なかったし。 }} #pre{{ 420 名前:Tricks for maid3[sage] 投稿日:2009/10/13(火) 00:43:31 ID:HXlIYi6B0 俺の言葉にイラついたのか、屋上の時にも増してキツい視線を寄こしてくるあずみ。 まぁ勝手に自分の内心に土足で踏み込まれ、挙句、自分の恋路を邪魔するとまで言われてしまえば聖人君子でも腹を立てるだろう。 「…ガキが。何勝手に決め込んでやがる。しかも仲間まで売るなんざ男の風上にも置けないぞ」 「ガキで結構。惚れた女を手に入れるために、色々考えているものでね。 ただ、アンタを自分のモノにするために、ベストと思われる手段を試させてもらったさ」 ただしもっとえげつない手が考え付かない訳でもない。親父がお袋を落とした時は、こんな生易しい策ではなかったし。 「あと別にワン子にしても、アイツが誰と付き合うか決めるのは彼女自身の問題だ。 俺は助言こそするが、ワン子を口説き落とせるかは結局は九鬼次第だしな。…個人的には良いヤツだから報われて欲しいが」 これも本心だ。九鬼のヤツ、少々鼻につくが一本気で誇り高く、何より高貴なる者の義務を理解している男だからな。 そこまで言って、ようやくあずみから放たれていた殺気が収まった。主の想いと自分の想いを天秤にかけ、更に現状を整理しなおすことに集中することに決めたようだ。 「ま、アンタがアタイの事を冗談で口説いている訳じゃないってことは理解した。 英雄様が幸せになられるならお前の申し出も悪くはないかもしれないが…。…そこまで上手く事が進むかな?」 この返事だと保留ってことか?まぁ第一段階としては上等だろう。 …さて、あずみの視線を追って河川敷に目を移す。先頭を走るワン子に追いかける九鬼。更に併走する…源さん…!? 「なん…だと…」 何で源さんまで一緒になって走ってるんだよ?…まさか!? 「あのワン公、モテモテみたいだな…。ま、お前の策が成功するようなら、申し出も考えるくらいはしてやるさ」 手をひらひらを振りながら去っていくあずみ。 その後姿と、ワン子を追ってダッシュしている野郎二人の姿を見て、俺は頭を抱えざるを得なかった。あの漢が相手だと、九鬼といえど苦戦するぞ…。 結局、ワン子へ告白する権利を賭けて九鬼と源さんがミニ川神戦役で決闘、その陰でキャップが大儲け etc.。 片手で数え切れない位の騒動こそあったが、紆余曲折の末に、どうにかあずみと結ばれたことは追記しておく。 <了> }}