フラッグ!

505 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/10/17(土) 21:59:03 ID:Ue/h7TZv0
ここでまさかの羽黒ルート投下
506 名前:フラッグ![sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:02:06 ID:Ue/h7TZv0
ひるがえるF軍の旗の下、川神大戦の祝勝会は賑やかに進んでいく。
戦功談義もたけなわといったところで、モロが俺に近づいてきた。

「皆の動きがそれぞれ素晴らしいのは大前提として」

「ん?」

「大和は、その中でも特に誰を評価してる?」

「そうだなぁ。あえて選ぶとしたら……」

皆、本当によくやってくれた。全員の働きがあって、この勝利があった。
だから、誰か一人、というのは選びにくいが、あえて、一人の名をあげた。

「個人的には……羽黒黒子の働きに、もっとも感銘を受けた」

その場が、静まりかえる。
無理もない。
本陣に詰めていただけ、敵兵を一人でも倒したわけでもなく
彼女がこの戦いでしたことはただ一つ。

旗を見上げ、その真下に立つ。

「彼女が、この旗を守ってくれた」

皆がざわめき始める。
一部の人間しか知らなかったことだから無理もない。

「この旗が倒されようと、燃やされようと、俺たちは勝ったかもしれない。
 だが、この旗の下、俺たちは戦った。俺たちのシンボルだった。
 それを、彼女は敵の奇襲部隊から守りぬいたんだ」
507 名前:フラッグ!・2[sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:05:08 ID:Ue/h7TZv0
「ちょ、よせよ直江、改まってそんなこと言われても照れる系ー」

「照れることないだろ。ちょっとコッチ来な」

珍しく照れる羽黒を、皆の真中に引っ張り出す。

「俺は皆に色々指示を出した。そして皆は指示以上に働いてくれた。
 でも、俺は羽黒に『旗を守れ』なんて指示はしてない。
 彼女が自分の意思で、この旗を守った。皆の心を、守ってくれたんだ。
 俺はそれを評価したい。どうだろう、皆」

ざわめいていた連中から、声があがり始める。

「いいぞー、羽黒ー!」「よくやったー!」「ありがとー!」

「やーめーろーって!そんなたいそうなことしてねえっての!
 ……だいたい、直江だって
 旗がどうなっても勝敗に関係なかったって言ってたジャン。
 アタイってば無駄に頑張っちゃった系?」

「……無駄じゃ、ありませんよ」

大将である委員長が、俺と同じように旗を見上げながらそれを否定する。

「もしこの旗が倒されてしまったり、燃やされてしまったりするのを見たら
 戦っている皆さんは、きっと頑張れなかったでしょう。
 ここに、この旗があった。この旗が、ずっと立っていた。
 それは、とても大事なことだと思います。だから、無駄ではありませんでした」

「……ハハハ、こーんなに皆に誉められるなんて……
 生まれて……初めて系……」
508 名前:フラッグ!・3[sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:08:09 ID:Ue/h7TZv0
「ちょ、羽黒……!泣くとメイクが……!」

小笠原さんが慌てて駆けよりハンカチを差しだす。

「うお!?ヤッベ、ちょいメイク直してくる系ー!」

ハンカチで顔を隠すと、そのまま走り去ってしまった。

「……別にいいのにな、スッピンぐらい」

「羽黒は羽黒なりに、メイクにはこだわってるのよ」

そういうもんか。
しかし、スッピンの羽黒か……
ネタ的には、メイクを落としたら実は美人とか……ねえか。
むしろ、メイクを落としてもやっぱり羽黒は羽黒でした、というほうが。

どっちにしても、ちょっと興味が。
悪いとは思いつつ、その場をこっそり抜け出して
俺は羽黒が走り去った方に向かった。
しばらく歩くと、川岸のほうからバシャバシャと水音がする。
ぼんやりと明かりも見えて、どうもアレらしい。
洗ってメイクを落としているのだろうか。
コッソリ後ろに忍び寄って……

「よ、羽黒!」

「直江!?ちょ、見るな、見るなよー!」

「いーじゃんか、減るもんじゃなし…………あれ?」
509 名前:フラッグ!・4[sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:11:13 ID:Ue/h7TZv0
何と言うか……メイクを落とした羽黒は……
美人ではなかった。
かといって、不細工というわけでもない。

「……フツーだな」

そう、化粧を落とした羽黒黒子は
ちょっと色黒というぐらいで、いたって普通の女の子だった。

「あー、やっぱり言われた……だーから見られたくなかったっての」

「ああ、ゴメンゴメン……でも、別に気にしなくていいじゃん、普通なら」

「その『普通』ってのが、アタイはイヤなんだって」

「なんでさ?」

「……アタイの父ちゃんがプロレスラーなの、知ってんだろ?」

「ああ、悪役レスラーだけど、派手なパフォーマンスで人気だな」

「ま、あんなんでも、アタイにとっちゃ自慢の父ちゃんなわけだ。
 けど、アタイが生まれたとき
 自分が悪役だから将来イジメられんじゃねーかって
 スゲー気にしたらしい」

ふむ。そういうの、悪役専門の俳優の人とかでもあるらしいな。

「で、イジメにあわないようにどうするか考えて
 目立たなきゃ平気だろう、っていうんで
 『黒子』なんて名前つけやがったのさ」
510 名前:フラッグ!・5[sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:14:50 ID:Ue/h7TZv0
「……黒子って、黒い子供ってわけじゃなかったのか」

「当たり前だろ。何だよ黒い子供って。生まれたときから悪役かよ」

歌舞伎で介添えをしたりするほうの意味だったわけだ。
確かに、目立たないようにって意味にはなるかも。

「冗談じゃねえよなー。コッチは父ちゃん誇りに思ってんのにさ。
 コソコソしてなさい、みたいな名前つけてんじゃねえっての。
 だからアタイは目立ちてーんだよ。
 目立って、父ちゃんの娘だってこと誇りてーんだよ」

……意外、というか。羽黒黒子は、父親思いのいいやつだった。

「けどま、ご覧の通り、スゲー美人ってわけでもねーし
 頭は悪いし、特技っていやプロレス技かじってるぐれーだし。
 そんなアタイが目立つためにやってるのが、このメイクなんだよ。
 だから、スッピンの話はすんなよな」

「わかったわかった……除き見して、悪かったな。
 メイク終わったら、戻ってこいよ。
 なんせ今日の第一功労者なんだから、目立ちまくりだぜ?」

「あったり前だっての!でも……ありがとな、直江。
 ちゃんと見ててくれて、アタイ嬉しかったぜ……
 ちょっと、こっち来いヨ、いいコトしてやっからよ」

羽黒が俺の手を取る。あれ?なんか変なフラグ立てちゃった俺?

「ホラ、遠慮すんなよ!同じ旗の下戦った仲間だろ?
 任せときな、何たって、竿おっ立てるのは得意だからさ!ギャハハハハ!」
511 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:17:07 ID:Ue/h7TZv0
終わり。「黒子」なんて名前を親がつけるとしたら
どんな理由だよ、みたいなところから。

大和が逃げ出せたかどうかはわからない。